ボリビア防衛作戦
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――第2フェイズ統合情報

●北米:北中央軍司令部
 ボリビア国境における、防衛線の僅かな乱れ。それはバグアの潜入工作による計画的なものだった。『デスペア』の名を聞いたオリム中将は、北米の地にあって瞑目する。
「アキラ・H・デスペア‥‥。爆発物の専門家。トリプルイーグル最後の生き残り、か」
 得意とするのは、絡め手からの一撃だ。第二次北米決戦において、鹵獲戦艦を用いた脅迫戦術でUPCの戦略をゆるがせに掛かったのは記憶に残っている。今回予想される行動と言えば‥‥。そこまで考えて、オリムは通信兵へ指示を飛ばした。
「ボリビアの首脳へホットラインを。どのような手段でも構わん。この情報と、国王への危険を知らせろ!」
 暗殺と言う手段は、バグアらしくは無い。だが、バグアではなく彼らに与する人間であれば、躊躇無く取る選択肢だ。UPCが全軍を挙げて防御にかかった裏側で、嘲笑うかのようなタイミングで刃を振り下ろす事を、あの男ならば狙う。UPCが防衛しているのはボリビア、というよりはそこに芽生えた人類側へ傾く機運。そして、その中心には一人の少年がいる。言い換えれば、ただ一人の命がそれまでの戦いを無為に帰す可能性があるのだ。
 「このタイミングで情報を察知できた事は幸いだ。今ならば対処は間に合う。前線から艦をボリビアへ回せ」
 ユニヴァースナイト、あるいは弐番艦でもいい。あの艦内に保護してしまえば、バグアと言えど容易に手出しはできない筈だ。アフリカ戦線の二の舞は、何としてでも避けねばならぬと彼女は思う。
「ユニヴァースナイトは中破、航行速度50%にて東方へ離脱中です。ユニヴァースナイト弐番艦は――」
 帰ってきた知らせに、剛毅な女傑は一瞬、言葉を失った。

●クルゼイロ・ド・スゥル北方:ユニヴァースナイト弐番艦
「――なんだあれは」
 ハインリッヒ・ブラット准将の脳裏に、昨年の極東ロシアでの戦いがよぎった。そして、続く東南アジア。戦いに敗れ、最後に人の姿を脱ぎ捨てて羅刹の如く闘ったバークレー。回収されたシモンのステアーから現れ、参番艦の内部を埋め尽くした増殖体。
「あれが、バグアか――。ドリル反転、ギガワームより離脱する」
 自失は一瞬。下した指示は、悲鳴のような報告に遮られる。その様子は、ブリッジからも見えた。弐番艦のドリルで貫かれたギガワームの装甲がゆがみ、まるで口のような形状に変じてガシリと艦を咥え込んだのだ。アフリカ戦線での固定アームの比ではない、捕食されるかのような恐怖。
『ユニヴァースナイト弐番艦、指揮官のハインリッヒ准将。先ほどは挨拶もなく失礼した。ようこそ、私の艦へ。短い間だがゆっくりしていくといい』
 周囲から青年の声が響く。艦外のKVからの映像が、外から見たギガワームの形状を送ってきていた。ブリッジが再度ざわめく。つるっとした外観だったはずのギガワームは、弐番艦が突き刺さった左舷後部側が盛り上がり、艦体の半ばを取り込むように触手を伸ばしていた。蛸、というには青いカラーリングが異様だ。不幸中の幸い、弐番艦の後部までは取り込まれていないため、KVの発着はまだ可能だった。
 そして、ゆがんだ円盤の中央。外装甲の上に青年が立っている。いや、立っているというのは正確ではない。その下半身は装甲に同化し、背に生えた翼は数条の白い線となってギガワームの艦体に刺さっていた。それが何なのか‥‥考えをめぐらせた途端。
「ジャミング濃度、増大。発信源、ギガワームです」
「何!?」
 ギガワームに翼が生えていた。円状のギガワームの中央付近、キュアノエイデスを囲むように上方へと生えた二対四枚の翼は、飛行の足しになる形状でも位置でもない。ギガワームのサイズを考えれば異様な光景だった。広げた翼から羽が舞い落ち、それ自身が意思を持つかのように辺りを舞い始める。どうやらその羽がジャミングを行っているらしい。
『こちら艦首ハッチ。青いキメラが襲来、応戦中です!』
『羽が、攻撃してきます! 指示を!』
 内外からの通信が切迫感を増し、ブラッドはそれに指示を返す。
「主砲、射撃開始。少々の余波は構うな。内部からギガワームを破壊、離脱する。KV部隊はキュアノエイデスへ攻撃を開始せよ」
 その身を挺した時間稼ぎだと判ってはいても、乗らざるを得ない。あるいは、政治的には弐番艦を捨ててボリビアへ向かうのが正しい選択やもしれなかった。中立国へのバグアの攻勢に対してUPCが総力を挙げて迎撃――その結果、中立国が守れるのかどうかを、世界が固唾を呑んで見守っているのだから。


●マナウス:ヴァルトラウテ
 現時点で、南米戦線でただ一隻だけ、自由の利く艦があった。ヴァルキリー級弐番艦『ヴァルトラウテ』。事実上このボリビア防衛が初めての作戦行動になる処女艦だ。しかし、潜り抜けた戦いの激しさを物語るようにその艦体には幾つもの傷が刻まれている。
『北米への通信中継はできるけど、ブリュンヒルデの修復は間に合わない。貴女の艦が要になるわ、ビビアン』
「状況は把握しました、マウルお姉さま」
 若き才媛、ビビアン・O・リデル中佐はもう震えていない。バグアによる正面攻撃と同時の暗殺。これが通れば、周囲はUPCが裏をかかれたと考えるだろう。きわどいタイミングだったが、今ならば間に合う。その筈だ。
「である以上、敵も手を打っているでしょうな」
 副長のチャールズ・ハイデマンが呟く。内通していた大尉を逮捕してしまった以上、暗殺計画が明るみに出たのはバグアにも判っている事だ。その言葉が聞こえたかのようなタイミングで、モニターの向こうのマウルが振り向く。
『ベネズエラ国境付近にてバグアの部隊が行動を開始。迎撃に出た南中央軍の部隊は、全滅したそうよ。‥‥気をつけて』
 最後に一言付け加えて、マウルは通信を切った。僅かにうつむいてからハイデマンは嘆息する。おそらく、バグアが次に打つ手は混乱を狙うものだろう。先の戦いで宇宙へ上がったのが確認されたリノ、ドット、オリ=グレイ、それにベネズエラへ帰還した風祭鈴音とシェアトについては不安は無い。だが、後一名、この地にいる筈なのに所在が不明となった男がいる。
 ――魚座、アスレード。単体での攻撃能力は知られているバグアの中では極めて高く、撹乱に回れば恐ろしい相手だ。その名を思い浮かべて暗澹たる心持に襲われたハイデマンの耳に、細いが凛とした声が響いた。
「ヴァルトラウテ、機関全速。ボリビアへ向かいます」
「しかし、状況がまだ――」
 言いかけた初老の軍人を見上げて、ビビアンは笑う。まかりなりにも、笑顔のような表情を作って見せた。
「どうせ行かねばならないのですから、行きながら考えましょう」
「――そうですな。現地に到着するのは夕刻。少し休まれると良いでしょう」
 副長の提案に異議を唱える事も無く、ビビアンは艦長席を立つ。バグアとの戦争、少なくとも中立国家の動きの分岐点となりうる戦いを担う事となったその肩は、余りに細い。

●エクアドル国境:南中央軍
『こちらブラボー3、攻撃は効いていない、繰り返す、攻撃は効いて‥‥ッ!?』
 真紅のプロトン砲が蒼穹を裂き、KVを1つ火球に変えた。エクアドルから現れたバグア軍を率いる黒いゼダ・アーシュはいまだ一発の光線も放ってはいない。南中央軍のKV部隊を一方的に屠っているのは、ほぼ同数のヘルメットワームだった。そして、その後ろに控える中型クラスの奇妙なヘルメットワーム。
『く、SES出力低下‥‥! なんなんだあの敵は!』
 忌々しげに、距離を取り直す。攻撃開始前の半数になった部下の数を確認し、隊長は唇を噛んだ。七つ首の龍の如き形状のヘルメットワームを睨んだ瞬間。
『おっと、いいのか? ホイホイ集まっちまって』
 若い、とぼけたような男の声が通信回線に響く。はっとして見たモニター越しに、黒の機体が光を放つ姿が見えた。

「国境警備隊はあたしの子達が掌握したわよ。じゃ、あとは、任せるわねぇ」
 妖艶な女性の声を背景に、エクアドル国境付近に展開していた南中央軍の戦車隊が回頭。ボリビア側へと移動を始める。
「何でだ。体が勝手に‥‥くそ、誰か止めてくれ!?」
 1名で運行可能なM−1戦車の車内では、悲痛な叫び声が響いていた。その首付近に、掌ほどもある蜘蛛が張り付いている。
「さて、それじゃあ次は‥‥」
 楽しげな笑い声と共に、薄紫のフォウン・バウがふわりと浮き上がり、東へと飛び立った。その進路の先には、一路ボリビアを目指すヴァルトラウテがいる。

追加情報9 バグア、その実力
追加情報11 第3フェイズ選択肢詳細
追加情報12 第3フェイズ、敵NPC動向
追加情報13 ボリビア王国について



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