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シナリオ形態:大規模作戦 |
難易度: 特別 |
参加費: 無料 |
参加人数: 無制限 |
報酬:120,000C(全作戦参加)
※活躍に応じてさらに支給 |
備考:重体システム実装
残生命力に注意せよ!
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決行日時:
2008年9月12日 リアルタイムイベントページ公開
9月30日 第2回結果発表
第3回行動入力開始
10月10日
各種褒章配布
10月15日
小隊勲章反映
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■オープニング本文
●巨人、東京へ
新たに下された命令を睨み、バークレーは片眉を持ち上げた。
「‥‥転進だと?」
嫌な言葉が、この男の深い記憶を刺激する。
負けを負けと認めない、そんなニュアンスを『転進』という言葉から感じるのだ。
「転進先はどこか?」
ラインホールドはチベット山脈を越えチベット高原を北東へ進み、北京へと退却する途中でその転進命令を受けた。指示された新たな目的地は、バグアの占領下にある日本最大の都市、東京。
「どういう事だ」
「北京では、ラインホールドの修理設備が不足しているとの事です」
「‥‥」
秘書の応対に、バークレーは余計に不機嫌な顔を見せた。
「八王子は爆撃されていた筈だ」
「はい、少なからず損傷を受けております。具体的には――」
「皆まで言うなッ!」
彼が一言怒鳴れば、女は小さく頭を下げ、黙ってしまう。
「おのれ‥‥」
オーストラリアから呼び出しておきながら、最上部は勝ちを棄てた挙句、爆撃を受けて破壊された工場で修理を受けろと言う。修理施設が稼動状況も解らぬのに、だ。おそらくはブライトン辺りの意図だろう――彼はそう結論を下した。
考えれば考えるほど沸々と湧いてくる、苛立ち。
「‥‥何の嫌味だ!」
一言、苦々しげに吐き捨てた。
だが、命令は命令である。
絶対者に対する当然の服従を誓う――そうでなくては、人間と同じだ。彼は、バークレーは人間をヨリシロにしてはいるが、人間になったつもりは、無い。KVやエミタが登場してたかが数年、この男にはまだ利用価値があるが、必要なのは知識と経験だけだ。所詮、ヨリシロはヨリシロだ。
そういえば――と、彼は秘書の事を思い出した。
あの不愉快な女は、一体どんな人間をヨリシロにしたのか、と。
(まぁ、どうでも良い事だな)
大きく溜息をつき、大きく手を振って指示を下すバークレー。
「進路変更、目的地東京! ラインホールドは日本海を渡るぞ!」
彼は椅子に座って天井を睨んだ。
ラインホールドの移動音が微かに響いた。
●合わせ鏡の悪魔
薄暗く、他に誰もいない、二人だけの部屋――
「ユカ‥‥生きてる‥‥ちゃんと、在る。在るよね‥‥?」
ユカの頬をぺたぺたと触り、ぽろぽろと涙を零すミカ。
だが、あの時、月神陽子(ga5549)の一撃を受け、爆死寸前にまで追い込まれたのはユカだ。それなのに、部屋で泣くのはミカばかりで、ユカは普段通りに笑って、彼の頭を抱えて優しく撫でている。
「大丈夫、心配しないで。僕が大丈夫って事は、ミカが一番解ってるでしょ?」
「だけど‥‥だけど‥‥」
なおも顔を押し付けるミカ。
「ゴメンね、解ってる‥‥ゴメンね‥‥」
強く胸に抱き、ユカが呟く。
ようやく嗚咽を収め、しゃくりあげるミカ。だが、ミカがユカのシャツで鼻をかむ中、ユカはふと、ミカの耳元に囁く。
「おかしいよ‥‥狂ってる」
二人は、幾度か窮地に追い込まれた。だがそれ以上に、戦いの最中に今まで接した事の無い感情の渦巻きに逢いまみえた。
何もかもが、解らない。
ある者は敵もろとも死のうとし、ある者は命を棄てて捨て身の一撃を挑んでくる。二人にとっては、負の感情そのものだった。機体を貫く程の生々しい感情に接して、彼等はただ戸惑い、恐怖しか感じられなかった。だから、それは負の感情なのだとしか思い至らない。
傭兵達から見れば――世界から見れば、歯車の狂っているのがどちらかは明白だった。だが、それを理解する事は、今の彼等にはできなかった。
二人の世界では解する事のできぬ感情。
「だけど――」
「――解ってる」
ただ、歴然たる事実だけは、既に眼前に突きつけられている。
「遊びでやってたら――」
「――殺されるのは僕等だ」
二人は互いの視線を交わらせ、唇を結んだ。
命を賭す――傭兵達がそう決意するに至る感情の泉源を、二人はまだ解さない。
●どこまでも広い空の下
ふうん――北米、ね。
有機的な閉鎖空間の中、一人の女性がくすりと笑みを漏らす。
シェイドのパイロットを務める、エミタ・スチムソンだった。
彼女の見詰める画面には地図が浮かび上がり、明るい赤色のポインターが、北米の一点を指し示していた。
「インドや関東と思ったら今度は北米、か‥‥随分忙しいものね」
そしてある一点に思い至り、ふと思案を巡らせる。
自分の地位の元で知る限り、我々は――そこまで考えかけて、彼女は頭を振る。
(そう、ね。それに、これは博士の決める事ですもの)
彼女自身、考えたところで何をどうしようという意志がある訳でもない。
ならば、それは思索としては非生産的なだけだし、何より、無価値で、無意味であった。そう結論付いたなら、それで十分だ。彼女は無意味な思考をそこで打ち切り、己の分身を奔らせる。
(――けれど)
ふと、思う。
デリーでの降伏勧告を、人類は受け入れなかった。
人類特有の妙なプライド、その剛情な性を知っている彼女にとって、それは当然の帰結に思えた。ただ、その結果としてあの戦いが待っていた。結論から言えば、人類はデリー、ひいてはインド亜大陸を堅守した。
無論、シェイドやラインホールドといった最精鋭が失われた訳ではなく、シェイドへと向かってきた能力者達の存在は、彼女には、風車へ突撃するドン・キホーテにも思えた。
だが今回、ファームライドは敵の攻撃によって大きな損害を蒙り、のみならず、ステアーまでも傷つけられた。そもそも、先に述べたように、人類はインドを守りきったのだ。俯瞰的に眺めればバグアの完敗である。
人類は、成長している。
(それも、もしかしたら私達の予測を超える勢いで、ね‥‥)
再び頬を緩ませるエミタ。
それに同調するかの如く、音も立てずに水面を飛んでいたシェイドが、加速する。
ふいに、先ほどまで静かだった水面が大きく揺り立った。
まるで風そのものが駆け抜けていくように、シェイドの駆け抜けた跡を漣が追う。彼女のシェイド以外、他に何一つ人工物の無い太平の海を、破壊の為の翼が一直線に飛んでいく。
静かに、それでいて、ただひたすらに速く。
まるで何かの終着駅を探すかのように。
●デリー、UPC西アジア軍本部
「‥‥まずは、こうして命あるうちに空を再び見ることができたこと、礼を言わねばならんな」
マルート・スタン・インディア社の権力者、ダルダは空を見上げながら‥‥決して地面に視線を落とすことなく准将に言葉をかける。
KVとワームの残骸転がり、ビルが折り重なった市街‥‥。
遠くから聞こえる砲の音は、戦いがまだ続いていることを示していた。
『戦いは勝利に終わった』
『バグアの本格侵攻を防いだことは地球奪還に向けての大いなる一歩である』
と、UPC本部は声高に伝えているものの、失ったものはあまりにも大きい。
避難した住民をデリーに戻すことができるのはいつになるだろうか?
「いずれにせよ、ご苦労。 ‥‥避難できる場所があるだけ幸せということだろうなこれは。想定していた中ではいい結果ではある」
「‥‥今は攻撃の手は止んでいますが、侵攻は再開されるでしょう。それまでにデリーを防衛都市とみなし、敵の疲弊を待つ他、現状ではないと思われます」
ダルダの問いかけに、端的に返答するブラッド。
空では轟音と共にKVが飛び去っていく。 L・Hの駐留軍、第一陣は既に戻り、残りの部隊もほどなくして撤退する。
敵の侵攻は一時止まっているものの、いつまでも平穏なままとはいかない。
「私も次の任地に明後日より向かいます。‥‥また、この場所でお会いしましょう」
「ああ‥‥せめて茶くらい落ち着いて飲めるよう、掃除しておく」
砲撃の音は徐々に小さくなっていき、久しぶりに晴れた空の先には‥‥赤い星が存在していた。
Event illust : Kuratch!
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ミユ・ベルナール
イラストレーター : 萩原みくみ
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みなさん、お疲れ様です。
まだ戦いは続いており、
デリーも完全復活‥‥とはいきませんし、
これからもデリーを巡っての攻防はありますが、
ひとまず、休める時間はとれそうですね。
とはいえ、北米では我社も絡んだ、
一大プロジェクトがまもなく動く予定です。
そちらもよろしくお願いします。
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