北アフリカ進攻作戦
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追加情報2 慣性制御装置の研究成果

(※実験に使われたドローム社製F-201フェニックス。ジェームス・ブレスト大尉とジョン・ブレスト博士の親子)

 人類が生産はおろか、仕組みさえ碌に理解できていないバグアの超科学。
 その一つの象徴である慣性制御装置が外装、というよりはむしろ殻を外され、無遠慮に探針を突き立てられて、そこから伸びるコードが群れをなしている。
 先の大規模作戦Bogus Valentine's Day作戦の成功によって入手した慣性制御装置の一つである。
 これまでは確保した数が少なく、貴重な装置の破壊を恐れて出来ない実験も多かったが、作戦の成功で確保数が増加したことで流れが変わった。
 今は非常に大胆な実験も遠慮なく行われているようだ。作動中の装置の状態観察を様々な角度から行った結果は速やかに各部署に共有され、新たな試験の要請が返ってくる。
「試験装置の予約で数ヶ月待ち、等と言う事が無いのは戦時だからだろうな」
皮肉っぽく言うジョン・ブレスト博士だが、今回の件については彼が総指揮を取っているわけではない。久しぶりに姿を現したトマス・スチムソン博士は、いつものように指針だけを示して再び行方をくらましていた。スチムソン博士の頭脳がその試験結果から見つけ出した、全く無関係の物との類似。
「作動中の慣性制御装置から観測された振動、発熱、発光などの出力数値のバランスが‥‥」
「まさか、俺を呼んだのは難しい話をする為じゃないだろう。親父?」
 耳の穴をほじりながらそう返したのは、ブレスト博士の息子、ジェームスだった。父とは全く方向が異なるが、彼も明らかに天才である。パイロットとしては、おそらく人類圏でトップクラスの技量の持ち主だ。しかし。
「‥‥お前はバカだったな」
「ちょ‥‥」
 父の評価もまた、妥当だった。肩を竦めて説明を諦めたジョンは、格納庫を早足で歩きだす。長身の父よりも更に長いストライドで、息子はその後を追った。すぐに、2人の足は駐機姿勢の一機のKVの前で止まる。
「へぇ。フェニックスか。テストカラーだと案外可愛いな」
 ドローム社製のF-201フェニックス。『気流制御力場発生装置』という装置を使い、人型形態で文字通りの『空中格闘戦』を行える唯一のナイトフォーゲルである。
「そうだ。未来研が独自開発した特別プログラムで飛行形態でも気流制御ができる試験機だ。失速で落ちかけた時、立て直すにはこいつが一番だろう」
 最悪でも人型で落ちれば、足をクッションに出来る。などとニコリともせずに言うジョンの口元へ、ジェームスの腕がぬっと伸びた。
「格納庫は禁煙だぜ、親父」
 笑いながら、逆の手を伸ばす。その掌に乗せられた重さに、ジェームスは眉をしかめた。
「ファクターが確認しきれていない。それに、上手く合致するかもわからん。とりあえず一通り、テスト用の数値に保った所で振り回してみてくれ。落ちない程度にな」
「げ‥‥」
 リストの表紙をめくって、リストアップされた文字の多さに悲鳴を上げつつも。
「まあ、親父の手伝いできるなんて、滅多にないしな。たまには親孝行もしておくもんだ」
 ジェームズは、掌に逆の拳を打ち付けて気合を入れた。

 ――その結果が出たのは、実験開始から2週間後。
「結論から言えば、過剰にエネルギーを投入したSES機関は、慣性制御と似た振る舞いをする、と言う事だけが分った」
 やつれた博士は、釈然としない様子で首を振る。どうしてそうなるかが分らない、というのは科学者にとって落ち着かない状態だ。
「要するに、ブースト中のKVは急旋回が可能になりましたって事だろ。空気抵抗があるから、ヘルメットワームみたいに後ろ向きで飛ぶとか横滑りとかは無理にしてもさ」
 それで充分じゃないか、と言うジェームズを横目で見てから、ジュリア・ラナンが小さく肩を竦める。
「まあ、現場レベルはその理解で充分だ。ただし、制御は繊細だからエミタAIによる補助が必須なのは覚えておくように」
「ああ、忘れたくても忘れられねぇよ」
 ジェームズが文字通り身体を張って得たデータをプログラム化したのは、エミタAIの権威であるこの白衣の女だった。その辺の自動車が空を飛ぶようにはできていないらしい、とジョンも笑う。エミタとリンクしているAU−KVであってもダメな所を見ると、SES側にもある程度大きな出力が必須のようだ。
「制御プログラムは、能力者達がULTに来た時に随時アップロードを掛ける。能力者であれば誰でも、すぐに問題なく飛ばせるようになるさ」
 ジュリアの顔色も、良くはない。結局、エミタに関わる事は彼女やブレストですら届かぬ、神の奥義なのだろうか。
(どれだけ実験室で状況を整えても、能力者が制御しない限り慣性制御は実現しなかった‥‥。エミタには、私たちの知らない何が隠れているのだ)
 そして、と彼女は隣の男を見る。彼女達2人をもってしても理解できぬ高みに、エミタの製作者たるスチムソン博士は届いているのだろうか、と。
「間に合ってよかった、と思う事にしよう」
 何に、とは言わず。ブレスト博士は紫煙を吐く。苦笑しつつも、息子は悪癖に耽る父を見守っていた。



※技術の進歩により、ルールの一部の改訂を予定しております。
 続報をお待ち下さいませ。

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