バレンタイン強襲戦
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第2フェイズ統合情報

■第2フェイズ オープニング本文

●馬鹿騒ぎの結末
「予想以上に派手にやってくれたようだな」
 生徒会室の窓から外の風景を眺めつつ、リヴァプール伯ウォルター・マクスウェル准将はそう言っては口端を歪めた。
 彼の視線の先には、傭兵たちの大騒ぎの舞台の一つでもあった広場が見える。
 本格的な戦闘が始まるまでの僅かな間、覚醒禁止ルールの違反者による可能な範囲での片づけが行われていた。
 その破裂痕や神輿の細やかな破片といった大小様々な道具の残骸も勿論だが、何より無数の血痕が事態の壮絶さを物語っていた。前哨戦で大怪我を負うつもりも負わせるつもりもなかった為、一つ一つに流れたであろう量は決して多くはないが――塵も積もれば何とやら、である。図書館の方は去年ほどの惨状ではないのが、学園としては救いだった。
「さて」
 准将は視線を部屋の中に向けた。
 そこには自身と聖那の他に、数人の生徒がいる。
 騒ぎの間にもこそこそと動いていたスパイたちである。これで全員ではないが、生徒会役員である遠藤春香の姿もあった。ちなみに、彼らが諜報活動に用いていたメモやカメラについては全員分が机の上に置かれている。
「悪意がないと分かっている以上、諸君を処罰するつもりは今のところない、が」
「それでも訊いておかなければならないことがいくつかあります。‥‥協力していただけますね?」
 聖那の言葉に、ある者は申し訳なさそうに、またある者は「ない」と明言された処罰に尚も怯えるように項垂れながら――全員が、肯いた。

●遥か高みの傍観者
 一方、氷上基地では――司令官は拳を震わせていた。
 地球最古のバグア基地。
 その司令官の任に就いてから長らく、彼は司令室からこの世界の蹂躙を見守ってきた。
 人間など幾ら殺してもいずれ虫のように湧いて出るのだから、生かしておく必要性はない――ホワイトバレィのイェスペリとかいう司令官とはほぼ対極にある考えを持つ彼にとっては、司令室というのはある種の安寧の場所であった。
 だが、今は違う。
 参番艦の来襲と、それを早い段階で排除することが出来なかったこと。そういった現実と司令官という立場が今、彼の首を絞めようとしている。
 鉄壁の守りを誇る氷上基地とはいえ、今回はただ守り切ればいいという話でもなさそうだ、というのも彼の焦りを生んでいた。

 ――今この瞬間の氷上の全ての動きが、遥か宇宙から睥睨されている。
 そのことを、彼は知っているから。

 ■

 宇宙に浮ぶ、地球の第二の衛星。
 青い惑星の開闢以来数十億年を経て、突然押しかけた赤い星の中に異形の生命体がいる。
「‥‥何だ、これは。遊んでいるようにしか見えないが」
 軌道上のカメラが収めたゴッドホープ周辺の録画に、巨漢が腕組みした。
「遊んでるんだろうさ。だが、その裏で動いていた連中もいたようだぞ」
「‥‥欺瞞?」
 応える声のあった後、人間の女に似た生き物が、首を傾げる。首から上だけは、確かに人のような存在だった。
「策と言って欲しいですね。ひ弱そうな種族ですし、生きるためには必要だったのでしょう」
 細面の青年に見える異星種族が微笑し、四本腕の異形と、爬虫類のような異形が歯を見せる。彼らがヨリシロとする種も、笑いと威嚇の仕草だけは共通だった。
「我々の出撃許可は、まだ頂けないのか?」
 直立した昆虫のような異形が通路への開口部を覗くが、返事はまだ来るはずも無い。
 彼らの首領が、業を煮やしてブライトンに直談判に向かったのは僅か数分前の事だった。

 ■

 明りの消えた室内に、コーヒーの香りのみが漂う――。
 ジョン・ブレストは長々と溜息をついてから、テーブルの隅においた封筒を手にした。
 消印はアフリカ。
 前回はオーストラリアで、その前は北極だった。
「相変わらずの手紙だな」
 郵便の経路を追跡しても、どこにも繋がらないのは知っている。どうやって彼のポストに届いているのかは判らないし、訊く気も無い。消印はただの欺瞞なのだろう。差出人流の冗談という可能性も否定は出来ない。
『彼』自身が冗談を解するようになったとすれば、格段の進歩だ。あるいは、退行なのだろうか。
 そんなことを考えながら、ブレストは封筒から一枚の紙を取り出す。
『――ゼオン・ジハイドが目覚めたらしい。注意せよ』
「それに挨拶もなし、か」
 最初の一行を読んで、ブレストは小さく鼻を鳴らした。目を下に滑らせれば、すぐに二行目の文字が続く。
『ゼオン・ジハイドとは何か?
 ――バグアの戦士に相当する集団だ。ブライトンの直属で、その数は十とも十五とも言われる。過去の征服戦争では、常に止めを刺す段で現われたらしい。それ以上は、私の階層では知る事が出来なかった』
 後は、A4の用紙の半分くらいを白が埋めていた。味もそっけもない紙切れに、ブレストは再び溜息をつく。
「まったく、相変わらずの役に立たない警告だ」
 それでも、事前に届いているだけマシなのかもしれない。
「‥‥さて。今度はこれをどう軍に話すか、だな」
 コキコキと首を鳴らして、ブレストはキーボードに向き直る。
 ULTの重力波通信研究部門が実験中に、敵の通話を奇跡的に傍受、解読したというでっち上げの文書が出来上がったのは、その5分後だった。

 ■

●ゼオン・ジハイド
 青い惑星を見下ろすように、老人は座していた。立ったままで休息を取れぬ身体は不完全な進化の果てだろうが、老人がその気になればどうとでもなる。つまり、物憂げに肘掛に手を置いたポーズも含めて、彼の趣味だった。

「ブライトン様、どうなされましたか。眉間に皺など寄せて」
 掛けられた声に、ブライトンは眉を上げる。氷上基地が攻撃を受けているという通信にも動かさなかった眉を。この惑星の制圧を任せられた彼に形式上の配下は多いが、ノーチェックでこの部屋に入れる程の者はそう多く無い。その一人は今、北米で任についているはずだ。
「ヨリシロを手に入れたか。‥‥また、役に立たない物を」
 古臭いセーラー服を纏った東洋人の少女が、ニッと笑う。交戦中の種族の中から、なるべく役に立たないヨリシロを選ぶというのは、彼女のわがままだった。
「リノ、とお呼びください。それがこの身体の名のようだ」
 弱いと見た相手に叩き伏せられてこそ、敵は己を弁える。価値ある強力なヨリシロは、征服してからゆっくり選べば良い‥‥、というのが、彼女の奇妙なこだわりである。
「お前達に許可は出していない。出番はまだ先だ。控えよ」
「しかし、既に20周期です。今までに無く、長い」
 リノは不満げに口を尖らせた。バグアがこれまで征服してきた種族で、ここまで長く抵抗を続けた物は無い。いや、抵抗を続けようとした種族はあったが、それには、バグアにとって有意義な進歩を続けながら、という付記がつかなかった。
「この星は、特殊だ」
「バークレーが死んだと聞きました。油断にしても、愚かな事だ」
 彼女自身と同じ、強力なバグアの死。それもまた、堪えてなかった事ではある。
「まだ、進歩しているのだよ。戦いについてな」
「そのような種族であれば、恐怖に抗う事も出来ましょう。我ら『ゼオン・ジハイド』の前に心折れればそこで終わり。継続か否か、審判の時は今ではありますまいか?」
 少女の雄弁に老人はゆるゆると首を振り、しかし明白な拒絶の言葉は出さなかった。
「‥‥ふむ。眉間に皺、か。黙認と取りますぞ」
 また口をついた表現に、リノは微笑する。それが、『クラスで国語の成績が一番』という少女が彼女に与えた些細な『能力』だった。

 少女が去り、静寂の戻った室内で、ブライトンは呟く。
「仕方があるまい。だがリノよ。バークレーは油断のみで破れた訳ではないのだぞ」
 一言だけを置いて、老人は先の思索へと戻った。地球人は、どこまで強くなりうるだろうか、という思索へと。


執筆 : 津山 佑弥/紀藤トキ



第2フェイズOP※2/25更新
基礎情報 北極圏のバグア、および味方の戦力状況※2/15更新
追加情報6 第2フェイズ作戦概要※2/15更新

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