五大湖解放戦
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●黒き機影を退けて
 ワシントン方面へと撤退したシェイド。だが、それと引き換えに、ユニヴァースナイトもまた、手痛い傷を負っていた‥‥。
「皆‥‥戻ってこないと許しませんよ?」
 出撃して行くKV達を見送りながら、補給部隊の尾上・楓(ga1814)が、そう呟く。UKの墜落を聞きつけてか、バグア軍再襲来の報告に、彼らは次々と飛び出して行った。
「戦いも佳境、ってところかしら? 気合入れていかないと‥‥」
 出撃したKVの中で、的場・彩音(ga1084)もまたそう呟いていた。その言葉を体言するかのように、ギガワームから出撃したと思われるヘルメットワーム達が行く手を遮る。
「いっちょ真面目に支援ですな。第二の故郷のアメリカは、僕が守る!」
 武蔵・兎萌(ga4208)が、どこかの落語家の真似をして援護射撃を撃つ。だが、相手も強化されているようで、志貴(ga2732)のように機体が大破してしまう者もいた。
「強化型は、チーム組んでる奴に押し付けろっ。無所属の奴は、邪魔にならないように援護しとけっ」
 アーヴァイン フランツ(ga4386)がそう言って、バラバラに飛んでいる面々へ向けて通信網を開く。だが、その間に他のワームに取り付かれ、怪我をするハメになった。
「狩りは群れで行うもの。味方の方に追い込んで叩く!」
 その助言を受けて、イグニスがワームをチーム編成組の方へと追いやっていく。おかげで、天宮 士朗(ga5570)が負傷者の救援に向かう事が出来る。
「無理をして出撃して、死んで帰ってきたら元も子もないでしょう!? 今は戻って下さい!!」
 中にはだだを捏ねる奴もいるが、機体が無事なうちに、強制的に帰還させられる彼ら。その時間を稼ぐ為、フィル・フォーチュン(ga6082)のスナイパーライフルが飛んでくる。反転するヘルメットワームの進路を阻むかのように、カルル・ローディス(ga6826)がジャミング能力を発動させる。邪魔になるキメラは、レーザー砲で狙撃だ。
「シェイド、ヘルメットワームの向こう側に出現。積極的に仕掛けては来ませぇん」
 おっとりボイスで、そう報告してくるカルル。と、それを聞いたKV達は。
「だったら、引きずり出すまでです。黒塔くん、行きますよ」
 紫悠・久遠(ga7074)が、相方の機を探すが、どこにも居ない。逆に、その隙を狙われて、シェイドの攻撃を受けてしまう。落ちて行く久遠の機体を、御影 葉澄(ga3577)がおいかける。
「大丈夫、今からUKまで搬送するわ。後は任せて!」
「黒塔くん‥‥」
 もっとも、久遠にしてみれば、姿を消した相方の方が気になっているようだ。そんな2人を落とさせまいと、イヴ・ヴィオレット(ga3579)がG放電管を打ち、秋篠 小雪(ga3578)がレーザー砲を撃つ。だが、足止めと言うのも厳しいもので、全員どこかを怪我していた。
「おのれェェェ、ヘドリアンじょ‥‥あたたたた!! もうちょっとそっとやってくださいよー」
 一方、ユズ(ga6039)に回収された朏 弁天丸(ga5505)は、バグア側に女性がいるのを、どこかで小耳に挟んだのか、敵の女王様扱いしているようだ。
 生憎、黒き刃の機体‥‥こっちのシェイドの搭乗者は佐渡・京太郎なのだが。
「敵さんめ、腕は相変わらず利かないか‥‥。その分、慎重になっているのかもしれませんね」
 相変わらず積極的には仕掛けてこない敵機を見て、そう呟く八咫烏隊の隊長、叢雲(ga2494)はそう気付く。ならば‥‥と、命を下す叢雲。
「八咫烏01:Ravenより各機へ。敵部隊を切り裂きますよ! 全機突入!」
 目の前にいるヘルメットワームを蹴散らせば良いだけのこと。3隊に分かれた彼らは、木花咲耶(ga5139)らのいる第一小隊、比良坂 和泉(ga6549)のいる第2小隊、櫻井 壬春(ga0816)の順で、波状攻撃を開始する。ちょうど、扇形に広がったような形で、ワームと向き合う彼らからは、それぞれの武器でもって、少しづつ戦力を削って行く。
 しかし。
「シェイド、進軍再開。こっちに来ます!」
 情報網『天の糸』から、シェイドの動きを聞き取ったハルカ(ga0640)が、悲鳴じみた報告をしてくる。その間に、あっという間に距離を詰めるシェイド。気付いた時には、既に遅く、シェイドは彼女へと肉薄する。
「やらせませんわ!」
 アリオノーラ・天野(ga5128)が援護射撃を放つ。が、ジャミングが主な任務の岩龍では威力足らず、共に病院送りだ。
「弾が尽きるのが先かそれとも‥‥」
 真壁健二(ga1786)が、弾をリロードしながら、そう呟く。まだ弾薬には若干の余裕があるが、シェイドから生き残るのに、自信のある量ではなかった。
「UK離床までは持たせないと・・ハイマニューバーモード起動!」
 藤宮 鈴花(ga6724)の援護を受けつつ、霞澄 セラフィエル(ga0495)がご自慢の能力を機動させる。その能力で持って、シェイドを翻弄しようとした彼女だったが、やはりヘルメットワーム達に邪魔され、被害を受けてしまう。せめて大破は免れたのが救いだろうか。
「損傷の激しい機体は捨てて構いません。人命を優先します‥‥」
 今回は、シエラ(ga3258)率いるハーベスター隊もそうだ。隊長でもあるシエラが、白に薄紫の機体で殿を務める中、他の隊員達は協力して森野風音(ga5147)の運転するトラックに、怪我人を運び込む。
「しっかり‥‥まだ、大丈夫」
「‥‥がんばって‥‥ください‥‥」
 UKに運び込まれた怪我人は、ネーヴェ(ga6502)や姫藤・蒲公英(ga0300)によって治療を受けていた。中には、逃げ遅れていたらしい民間人の姿もある。それを見ると、これ以上UKに被害を出させるわけにはいかなかった。
「敵、いまだ半数以上健在。ギガワームは依然動かず。シェイドは、ヘルメットワームを効率の良い武器として動かしているようだな」  Simorgh隊のジャミング担当、千葉・達哉(ga4916)が、その動きを見てそう言った。それは天の糸を通じ、他の部隊へも伝わって行く。しかし、その間にもKVの被害は拡大して行く。彼の部隊でも、時間稼ぎをしていた佐伯(ga5657)、それに、千葉の護衛についていたケマル・チャルシュカン(ga5586)と、カオーナ・シノハラ(ga2366)が、病院送りになった。
「ここが正念場だ。足並みを揃えようではないか!」
 西研のハワード・ラヴクラフト(ga4512)が、他のメンバーと共に、もはや定番と化したG放電管の照射を始める。だが、シェイドはヘルメットワームを盾にして、それらの攻撃が自身を捕らえないようにしてしまった。
「ふん、その程度では我が輩の眼鏡すら壊せないぞ〜!!」
 以前のように突出しないシェイドに、業を煮やしたのか。隊員‥‥いや、所員である国谷 真彼(ga2331)と内藤新(ga3460)が、全弾発射と言わんばかりにミサイルの雨を降らせている間に、ドクター・ウェスト(ga0241)が空戦スタビライザーを発動させる。
「さぁて‥‥お手並み拝見だな。シェイド」
 渡鴉隊の伊流奈(ga3880)が、後方からライフルで援護射撃を放つ。同じ様に、イリアス・ニーベルング(ga6358)も狙撃に加わったところで、隊長の御影・朔夜(ga0240)が、こう命を下していた。
「各機連携態勢を取れ、足止めと言わず撃墜する気で叩き込むぞ‥‥!」
「了解。‥‥これで決めさせてもらう」
 隊員のファルロス(ga3559)が、そう言ってブーストのスイッチを入れた。青白く輝くバーニアが、機体を押し上げる。盛大にスパークを散らせる放電管。研究所で強化したものだが、シェイドはそれさえも、周囲のワームを使って防いでしまう。逆に、牽制として前面に出ていたジーン・ロスヴァイセ(ga4903)が生贄となった。
「損傷を受けた機体はこっちへ持ってきて!」
「しっかり整備しますので、存分に性能を発揮して来てください!」
 シイナ・ライティエッタ(ga6544)や藤川 翔(ga0937)と言った整備班の面々が、休む暇を惜しんで整備に当たってくれた為、激戦で尚機体を損傷したものは殆ど居ない。弾丸を撃ちつくし帰還する面々に関しては、ヘクサ・マキナ(ga6084)ら補給要員が次々と弾丸を運搬していく。
「ただの波状攻撃では、通用しないな。ゼファー各機、奴にとっておきをお見舞いするぞ」
 鷹見 仁(ga0232)が、部下にそう指示していた。それを受け、部隊のあちこちから一斉にG放電管が照射される。そのスパークに合わせ、エル4(ga1877)が、雪村を煌かせる。さえぎるワーム。しかし、その一撃は彼らではなく、切り離した小型燃料タンク。それを、まるで野球のボールか何かのように、それを打ち込むエル。高く舞い上がったそれをブレスノウのスナイパーライフルで撃ち込むエル2(ga1875)。
「ここで足止め、なんて言う気はない。ここで墜としてやるよ!」
 吹き上がる爆炎の中、そう叫ぶ鷹見 仁(ga0232)。手ごたえはあったが、その正体を確かめぬまま、渾身の力を持って、ディハイングブレードの一撃を叩き込む。
「やったか?」
「いや、まだです!」
 エル4が悲鳴じみた声を上げた。その直後、煙を引き裂くようにして現れたシェイドに、体当たりを食らう仁。まるでボールを蹴り返すかのように、ヘルメットワームを当てられる。わんこ(ga5343)が救援に当たらなければ、そのまま大破していたところだろう。
「く。ただ闇雲に放電管を使うだけでは、ワームを盾にされて終わりだな。ならば、出てくるように仕向けるまで」
 そう言って、神楽克己(ga2113)は自機の通信周波数を変えた。バグアの周波数なんぞわからなかったが、一番電波障害の酷いエリアへとそれをあわせる。
「聞こえるか? シェイドの操縦主。俺たちは血を流しながらも、高く高く飛ぶ鳥だ。落とせるもんなら落としてみやがれ!」
 半ば挑発めいた台詞を放つ克己。それが聞こえたかどうかはわからないが、シェイドはG放電管や、威力の高い武器を使う彼の所属部隊‥‥天衝【神威】を、目障りだと感じたのだろう。くるりと反転して、その左手のレーザーをお見舞いしてくる。被弾し、帰還する克己を見て、今は治療中の先輩を思い出したのだろう。カルム・クウィンテス(ga6208)が、主兵装を手に、こう叫ぶ。
「そうやって‥‥悲しんでる人を見るのが‥‥楽しいんですかあぁ!」
 敵討ちとばかりに、近接攻撃を仕掛ける彼女だが、黙れと言わんばかりに、突き飛ばされてしまう。
「やはり、ただの攻撃では駄目だ。フォーメーションY起動。シェイドとの決着を付ける!」
 アクアリウム隊の鯨井昼寝(ga0488)が、隊員達にそう指示をした。今度は、多少射程がズレたとしても、そう簡単には当たらないだろう。だが、彼女達には秘策があった。
「皆、この戦いで最後にしてやろう。ハッピーエンドを取り戻すぞ」
「キミは強い。だがボク達はもっと強い。仲間がいるってのはそういう事さ!」
 強気な台詞を吐きつつ、黒川丈一朗(ga0776)と、鯨井起太(ga0984)が、前衛三方から攻撃を開始する。その後ろ側には、岩龍が陣取り、ジャミングを開始。そこまでは、いつもの通りだ。シェイドも、その程度では攻撃を受ける事もなく、逆に回りこまれてしまう。
「今だ! 岩龍突撃!」
 ところが、その直後、後ろ側に居たはずの岩龍三機‥‥ゴールドラッシュ(ga3170)、遠石 一千風(ga3970)、鏑木 硯(ga0280)が、本命であるはずの昼寝達の機体の影から、食らいつくように特攻をしかけた。あまり丈夫でない岩龍のこと、すぐに機体が悲鳴を上げる。が、そんな事はお構いなしだ。
「これが本当に最後だ―――受けきってみろ!!」
 藤村 瑠亥(ga3862)が、そう言ってそこにハンマーを叩き込んだ。予想通り弾かれるそこへ、雪村を叩き付ける藤村。しかし、それさえも受け止められ、放り投げられる機体。逆さまになり、目を回してしまう。その間に、シェイドは戦場を離脱してしまっていた。
『馬鹿の一つ覚えでは、私は倒せませんよ』
 くくくっと、笑い声が流された。やはり、力押しだけではどうしようもないと行った所だろう。
「こうなりゃ、ギガワームだけでもやるぞ!」
 残されたKVの1機、ジュエル・ヴァレンタイン(ga1634)が口火を切る様に、残るギガワームへ向けて、ブーストを吹かす。目指すは、今だ数多く生き残っているプロトン砲。残るヘルメットワームは無視しようとした彼だったが、そう簡単に攻撃をあてる事は出来ず、怪我を負わされてしまう。
「んもう! 今度こそ絶対に許してあげない。覚醒は嫌いだけど、覚醒してでも叩きのめしてあげちゃうんだから!!」
 神崎・愛莉(ga3993)、同じ様にぷりぷりと頬を膨らませながら、ギガワームへ突っ込んで行く。
「ああもう。無茶はしないの!」
「だってぇ! 何回も怪我を負わされて怒ってるんだから!」
 水鏡・珪(ga2025)に助けられた彼女、かなりお怒りモードのようである。それは、花火師ミック(ga4551)も同じである。
「いやっはぁぁぁ。派手な花火を上げやがれっ」
 前回、見事に撃墜されたので、その雪辱に燃える彼。その割りには、何も考えず、自分の主砲を、ギガワームの主砲の中に浴びせかける彼。
「炎の料理人、ふっかぁぁぁつ!」
 それにあわせるようにして、R.R.(ga5135)が上空から急降下し、フレア弾を投下してくる。流石に護衛のヘルメットワームは殆ど射出しているらしく、ろくな攻撃が来ることはない。そこへレーザーを発射するR.R.。
「ギガワーム本体、移動を開始。どうやら、私達の相手は、ヘルメットワーム達に相手をさせるようです」
 天の糸を仕切る桜神羅 乃衣(ga0328)が、そう言って周囲に状況を伝えて行く。それは暗号をもって他の連絡網へと飛び火する手はずになっていたが、ジャミングは相変わらずで、どこまで通じているか分からない。代わりに、部下であるリーゼロッテ・御剣(ga5669)が、各部隊への伝令に飛んで行った。そのおかげでいくらか被弾してしまうが、心に誓うものがあるのか、大破までには至って居ない。
「鴉部隊・・・美しい四重奏を奏でようか・・・」
 逃がすものか‥‥と言わんばかりに、奏乃 蒼音(ga2828)が、部下達に命を下す。その噴出口から、水蒸気が立ち上り、彼らの姿を隠す。
「縛られるの嫌いかい?」
「たく〜こっちの親玉は地面に寝そべってるし・・・やれやれだよ」
 そんな事を言いながら、夜桜 焔兎(ga5006)と姫神 夢那(ga5169)が、アンカーを発射する。急ごしらえだが、動きを止めるだけなら充分だ。反対側を地面へとたたきつける彼らだったが、ギガワームの集中砲火を食らってしまい、2人とも看護兵の手当てを受けるハメになった。
「天衝『朱翼』、ワームの掃討を続行します」
「蒼翼、護衛に付くぞ」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)が、その邪魔となるヘルメットワームを、ハンマーで砕きに行く。中央でぐるぐると振り回す彼女を援護するように、千道 月歌(ga4924)が、部下達に命を下す。都合3つに分かれる事になった彼らに阻まれ、シェイドの統率を失ったヘルメットワームは、徐々にその数を減らし始めた。
「道が出来たな。迦楼羅各機、ケツに一撃くれてやろうじゃないか」
 その状況を見たトヲイ、そう言って、自らの率いる部隊に、攻撃命令を下す。その刹那、他の面々が集中砲火を浴びせかけた。
「神威、余力のある奴は攻撃を集中させろ」
「了解。シェイドは、ろくに当てる前に逃げられましたからね‥‥」
 漸 王零(ga2930)の指示に、ゲック・W・カーン(ga0078)が残っていた弾薬をばら撒きはじめる。
「堕天使の翼‥‥か」
 グングニルを握り締めたキリト・S・アイリス(ga4536)が、誰も言わない作戦名を呟いた。その翼の持ち主であるノビル・ラグ(ga3704)が煙幕とブースターを使い、距離を詰める。
「いい加減堅ぇーんだよッッ!!尻尾の一つ位、落として行きやがれっっ!」
 その射程内に入れようとしているのは、ギガワームから生えている謎の『尻尾』。
「ギガ・ワームの尻尾には、一体どんな機能があるのか‥‥非常に気になるな」
 気になるのは、リャーン・アンドレセン(ga5248)も同じだ。
「これ以上は大切な人達を傷付けさせはしないんだから!ラージフレア投下!!」
 その熱さに負けない思いでもって、葵 コハル(ga3897)が、フレア弾を投下する。閃光が、周囲へと走る。
「あの尻尾、絶対何かある! お友達、触ると嫌がるもん!」
 和奏が、直ったばかりの機体と体を手に、その閃光の中へと飛び込んで行く。地面へと回りこんだ彼女は、雪村を手に、上空のギガワームを見上げた。
「大人しく斬られろってんだよ!!」
 そこでは、フレア弾を撃ちつくした蓮沼千影(ga4090)が、その尻尾にライトディフェンダーで切りこみを入れているところだ。
「行くぞ、和」
「うん」
 隊長のトヲイに声をかけられ、頷く彼女。
「これで最後だ。F-104‥‥俺に力を貸してくれ」
「大好きなみんなのおかげで復活できた‥‥。次は大好きな中佐のUKの番だもん!」
 練力が満ちて行く。光り輝く雪村。狙うは、上空遥か彼方のギガワーム。
「‥‥貫き通せ、雪村――ッ!」
 両手で持つようにした白き刃が、2人の思いにしたがって、大空へと舞い上がる。視界が、奪われる。ばしゅりと、盛大な音がして。
「ふふふ。面白い。その力、必ずや我が神の手足となろう。その日まで、預けておくぞ。脆弱なる人間どもよ」
 そんな‥‥不適な声が聞こえたと同時に、爆発が置き、ギガワームはその姿を遥かワシントン方面へと消して行くのだった。

<執筆:姫野里美>



 オヘア空港の攻防戦は、断続的に続いていた。
 空港の一時的な確保に成功したUPC軍ではあるが、バグア軍はUPC軍にSoLCを奪還されたと知ると、空港周辺に戦力を掻き集め、攻撃の圧力を増した。一方のUPC軍は、輸送機が到着、そして離陸するまでは、是が非でも空港を確保していなければならない。
「点ではなく、線を。突破を許しては、困る」
 最前線で戦場全体を見渡すのは、UNKNOWN(ga4276)。正体不明の男。
 彼は前線で戦いつつも、【De】と呼ばれる作戦の他、幾つかの共通作戦を調整し、部隊間の齟齬を減らす事に貢献していた。
「悪いがここで倒れて貰おうか」
 榊兵衛(ga0388)に率いられた【チーム榊】や、【サムライスピリット】がバグア側の軍勢に斬り込み、そこに生じた隙を逃さず【ラビットライヤーα】や【フルーツバスケット】等の大部隊が殺到する。
 だが、戦場そのものは乱戦の様相を呈してはいても、統率、連携を重視するUPC軍には一定の秩序が存在する。対するバグア軍は集結途上にあって、指揮系統は混乱気味で、攻撃の手は鈍り、やや劣勢にあった。
 となれば、今はただ、優勢にある間に、バグアを叩けるだけ叩くのみだ。
 一方、後方――という程最前線から離れてはいない空港では、SoLCの解体が進められていた。
「遊び心が無いのも、致し方ないかの」
 Dr.Q(ga4475)がドローム社の研究員を急き立てる。
 黙々と解体を進めるセシリア・ディールス(ga0475)や、まだ少年の明星 那由他(ga4081)は、驚くべき速度で部品の解体を進め、しかも、再組み立てを行い易いよう、パーツのナンバリング等、効率的な輸送を計画、実施までしている。
「女神を解き放つために、がんばりましょう」
 ドローム社の社員達もまた、彼等の熱意にお尻を蹴飛ばされて慌しく動き回っていり。
 轟音と共に、寸胴な機体が滑走路へ進入する。SoLCを運ぶ為に準備された輸送機だ。
 輸送機は、30機のバイパーに護衛され、やっとの思いでオヘア空港へと辿り着いた。例え、如何に危険な滑走路であろうと、UPCに選り好みをする余裕は無い。
 それでも、少しでも着陸の安全性を高めようと、【ヘイムダル】隊が滑走路に群がる飛行キメラを薙ぎ払っていく。
 ヘイムダルの一機、沢村 五郎(ga1749)が地上の輸送班に通信を入れる。
「打ち合わせ通り、ダミーを準‥‥」
「待ってくれ、数が少ないぜ」
 その言葉を強く遮ったのは、KVに狙撃銃を構えさせる大山田 敬(ga1759)だ。
 到着する筈だった輸送機22機は、オヘア周辺に到着した時点で、既に8機を消失。その数を14機まで減らしていた。予定の6割程度しか、空港には到着出来なかったのだ。
「残った14機だけでも守り抜けば良いんだろ!?」
 通信に割り込み、飄々とした声が響き渡る。
「護龍、全機クライマックスフェイズだっ!気合入れすぎて落とされんなよっ!」
 人によっては軽く見えたが、それでも、ユーニー・カニンガム(ga6243)は【護龍】のF小隊の小隊長を務めている。護龍各機が、一斉に空域確保に展開した。
「はいは〜い、そのコンテナはあっちの輸送機に、それは重量的にこっちね」
 KVのスピーカーを全開にして、カーラ・ルデリア(ga7022)が元気な声を響かせる。
 事前に解体されていたSoCLを、戦場のど真ん中であろうと変わらぬ采配を振るい、【ハニービー】隊が、効率的に積み込みを進めていく。
 十分に計算された事前解体と、積み込み作業に従事する傭兵達の度胸や洞察力が、回収を速める。SoCLを持ち帰る事は、不可能などではない。そんな希望が、多くの傭兵達を勇気付けた。

 クラーク・エアハルト(ga4961)のF-104が、軽やかに空を舞う。
 他に数機のKVが編隊を組んでいる。麓みゆり(ga2049)率いる【シャスール】の一隊だ。輸送機のルートを確保する為、予定経路に侵入する飛行キメラやヘルメットワームを、集中攻撃で潰して回っていた。
 そのエアハルトが、何かに気付く。
 空――対空砲が炸裂し、ミサイルの飛び交う一角に、黒い影が現れた。

 ステアーだ。

 黒い影は猛禽類が急降下するように戦場へと侵入する。
「そう易々とッ!」
 エアハルトは機体を捻り、ステアーの初弾を辛うじて避ける。
 ‥‥だが、しかし。
 ステアー現る――この通信だけを残して、機影がレーダーから消える。通信を受け取り、ステアーを補足するシャスール隊、そしてオヘア空港全域に展開するUPC軍。だがこれも、初弾をかわしきったエアハルトのテクニックがあればこそ伝えられたのだ。
「邪魔はさせねえ!俺が相手になってやる!」
 醐醍 与一(ga2916)がG放電装置を射出したが、間に合わない。
 コントロールパネルを叩きたくなる衝動を抑え、ステアーの軌道を見た。
 その先に、空港の滑走路‥‥そして、SoLCだ。
 ステアーの腹から、何かが放り落とされる。
 直後、巨大な火柱が上がった。
「フレア弾!?」
 ラビットイヤーαの隊長、朱雀院沙羅(ga5440)が驚きの声を上げる。眼前に広がる爆発は、確かにフレア弾のそれに近い。だが、威力は桁違いに強力で、単機であろうと、滑走路や補給路を破壊するには十分過ぎる威力だ。
「補給路は別ルートを使います!」
 古河 甚五郎(ga6412)が、KVのコックピットから身を乗り出す。
 彼は、もしもの場合に備えて空港全体を把握していたが、こうも早く使う羽目になるとは思わなかった。
 補給を途絶えさせまいと動く傭兵達を尻目に、ターンを掛けるステアー。その機影に対して、補給部隊である【蓬莱】や、カーン一族の【零】が、牽制射撃を展開した。それでも、安全を確保出来る程の牽制にはならない。何よりステアーからは、SoLCを奪還せんとする意思が感じられない。苛烈な攻撃を加えてくるばかりだ。つまりステアーは、SoLCの破壊を狙っている。
 フレア弾の第二波が投下された。
 迎撃が間に合わないかと思われたその時、フレア弾は空中で閃光を放つ。【アイギス】隊の陸戦班、白鴉(ga1240)が放った弾幕が、辛うじて着弾を阻止した。
 この流れを、傭兵達が見逃す筈が無い。ブースト状態で突貫する智久 百合歌(ga4980)が、ステアーの翼を狙う。
「響け、勝利の調べ‥‥ガーデン隊、デイジー小隊GO!」
「あれがステアー……これ以上奴の好き勝手にはさせないのでござるっ!」
 【ガーデン】隊のような、編隊を組んだ部隊から、黒羽(ga7631)のような単独機まで、多数のKVがステアー目掛けて殺到する。
 濃密な弾幕を前に機体を翻すステアー。まるで、戦いを楽しみに空港に来たとでも言いたげに、急上昇を掛ける。傭兵達の中でも、ステアーを撃破する為だけに装備を固めた機体が、負けじと上昇をかけた。
 驚異的なステアーを構成するメインパーツ――ジャック・レイモンドは、コックピットの中、薄っすらと笑みを浮かべた。これは楽しめそうだ‥‥と。

 ステアーとの空戦、そしてSoLCの積み込み作業が並列して行われる中、最前線では、バグアの軍勢が集結を完了しつつあった。
「ぶつ切りにして料理してやるよ!」
「‥‥やれやれ、こうも仕事が長引くとはね」
 マートル・ヴァンテージ(ga3812)が豪快に突撃して攻撃を加え、南雲 莞爾(ga4272)がぼやきながらも確実に、敵を始末していく。
「俺の拳が魂で燃え上がるぜ!」
 地表スレスレを飛び、R-01がタートルワームの眼前で人型に展開する。サイクロン(ga0284)の操縦に従って、R-01の拳が、タートルワームの頭を叩き潰した。生々しい光景と共に、轟音を響かせて地に伏せるタートルワーム。その隣に、落下傘付きのコンテナが転がる。
 それは、【櫻小隊】や【フルーツバスケット隊】等の中でも、補給作戦を展開する小隊による、航空からの物資投下だ。だがそれでも、軽装であるが故に補給部隊は攻撃され、退却していく。
「他部隊の動きを意識して、突出控えて!」
 【ガーデン隊】を統率しつつ、メアリー・エッセンバル(ga0194)は、戦場の流れを肌で感じとる。
 バグアは体制を立て直しつつあり、近いうちに攻勢へ出る筈だ、と。
 そして、それを感じ取っていたのは彼女だけではない。
「どう思われますか?」
 近場で戦う指揮官機を捉え、流 星之丞(ga1928)が問い掛ける。
「そろそろ、危ないと思います」
 大曽根櫻(ga0005)が応える。それぞれが、【イエローマフラー隊】と【櫻小隊】に後退を打診する。
 バグア側の反転攻勢も警戒されたが、それ以前に、目的はあくまでオヘア空港の戦線維持、そしてSoLCを安全に持ち帰る事だ。
 後退際に弾薬を補給し、秩序を持って、彼等は戦線の縮小を開始した。これを敗退と受け取ったのかは定かではないが、引きずられるように、バグアの軍勢が突出する。
「後はブツをいただいて逃げるのみ」
 デューク フラガ(ga4792)が弾幕を張ってその動きを抑え込み、電子戦を展開し、八重樫 かなめ(ga3045)がこれを援護する。
 そうしてゆっくりと後退していた傭兵達が、一線を境に、一斉に退却に移った。その退却は、ともすれば無秩序にも見え、敵の攻撃を呼び込んでしまいかねないものだ。当然、バグア軍が、これを見逃す訳が無い。
 新たなゴーレムやタートルワームを導入して追撃に移るバグア軍。
 UPCが、このまま一斉に押し包まれると、そう思われた瞬間。
 空を輝かせる程の光が、視界を覆った。
 爆炎に包まれ、追撃に移った筈のゴーレムやタートルワームが手足をもがれ、吹き飛ばされてゆく。
 その攻撃はフレア弾の集中爆撃に見えたが、違う。上空にKVの姿は無く、爆炎は地を割いて噴出している。
「よし、目にもの見せてやった!」
 笑混じりに叫んだのは、リヴィエラ・トゥルビナ(ga4038)だ。突然に光ったフレア弾の正体は、綾波 結衣(ga4979)や篠森 露斗(ga5125)ら、【Erfolg】の仕掛けた罠だった。余ったフレア弾を目一杯地中に埋めてカモフラージュし、近寄ったバグアに対し強烈な一撃を見舞う‥‥作戦によって、バグアの前線は極度の混乱状態に陥った。
 辛うじて生き残り、起き上がったゴーレムが、遥か遠方からの狙撃に貫かれ、爆散する。
 イレーネ・フォン・ノイエ(ga4317)が、薄暗いコックピットの中、照準を覗き込んでいた。
「此れで無事勝利と行きたいが‥‥な」
 前線と連絡を取り合い、射程ギリギリからの狙撃が、キメラやゴーレムを次々と沈黙させる。
 今まで無様な退却を演じて見せた傭兵達も、ここぞとばかりにバグアの先頭集団を叩き、進撃を鈍らせた。これで、攻勢を立て直すまでに時間が掛かる。今度こそ、空港へ後退する機会が訪れたのだ。

 パーツを抱えて輸送機に駆け寄るのは、セレノア・キューベル(ga5463)のH-114だ。
 偵察兵の数は足りていると見て、積込み作業の援護に回ったのだ。状況を読み、余力を生かし、多数の傭兵が積込みに回っている。
 積み込みの終った輸送機は、順にエンジンの出力を上げ、滑走路を滑り始める。
 護龍のノエル・イル・風花(ga6259)が煙幕を展開して輸送機を覆い隠し、七枷 妃譜美(ga6388)が攻撃を受けながらも、弾幕を張って離陸を援護する。
 輸送機が煙幕を過ぎ、今まさに、離陸せんとしている。
「ふっ、せっかくのプレゼントだ。遠慮なく貰ってやろう、ブライトン」
 護龍の司令官を勤める司令∀(ga6834)が呟いた。
 そして輸送機の鼻先では、エスコートするように、坂崎正悟(ga4498)が周囲を警戒している。
「進路前方に敵影多数‥‥生憎だが、女神様を渡す訳には‥‥!! いかん、待つんだ!」
 何かに気付いて、彼は機体を躍らせた。真に警戒すべき敵影は、真上から降ってきたのだ。
 プロトン砲の光が、戦場を一閃に貫く。
 輸送機のコックピットは、一瞬で蒸発した。ステアーの攻撃が連続し、エンジンが巻き込まれ、正悟の機がコントロールを失っていく。
 多数の傭兵達が釘付けにしていた筈の黒い翼が、舞い戻って来たのだ。
「それは俺達の物だ。立ち去れ」
 沈黙を通していたステアーが、ジャック・レイモンドが、冷たく告げる。
 彼は離陸直前まで輸送機に攻撃を加えずに過し、UPCにここまでの余裕を与えてしまった。
 少し、遊びが過ぎた。
「来たか‥‥!ここは通さん!」
 傭兵達がステアーを補足する最中、赤村 咲(ga1042)が叫んだ。
「アイギス1より各機へ、今‥‥盾の誓いを果たす!」
 輸送機を狙い始めたステアーに対し、最初に喰らい付いたのは、【アイギス】の空戦班だ。
 KVの編隊へと突っ込んだステアーに呼応し、アイギス空戦班は、花火の広がりを見せるかの如く散開する。KVの群が、弾幕を張った。
 しかし、ステアーの基本性能に加え、ジャック・レイモンドが120%の力を引き出している。
 生半可な攻撃では――いや、生半可と呼べよう筈も無い。これだけの攻撃を加えても尚、ステアーは紙一重で弾幕をすり抜けていってしまう。
 彼等が弱いのではない。ステアーが強すぎるのだ。
「今のうちに女神のエスコートと洒落込むか。無粋な輩に浚われちゃかなわん」
 どこかのんびりと空を見上げ、嶋田 啓吾(ga4282)が呟く。
 今を逃せば、離陸するチャンスは巡ってこない。
 残る13機の輸送機が、一斉に移動を開始する。
 しかし当然、ステアーは看過しない。遠距離から叩き込まれたプロトン砲が、輸送機の左翼エンジンを貫く。煙を噴き上げ、高度を落す輸送機。だが、崩れる輸送機から落下していくのは、ただの残骸だ。ステアーの攻撃は、ダミーを破壊しただけだった。
 もっとも、ダミーの数なんてたかが知れている。
 本命の輸送機が撃墜される前に離陸してしまわなければならない。
 数分、数秒で良い。時が必要なのだ。
「速さ比べに興味は無ぇ! 敵の機動の先、そこに全弾‥‥叩き込む!」
 弾幕に入り混じり、【アングラー】所属のエミール・ゲイジ(ga0181)が特攻覚悟で追い縋る。アングラーの各機もまた、攻撃を同調させる。気迫が勝ったのか、当りこそしなかったものの、ステアーはアングラー隊の攻撃に気を取られた。人類側の兵器には不可能な急制動で反転して放たれるフェザー砲。連続する光線に、エミールのKVは羽をもがれる。
 ステアーの動きに、乱れが生じ始めた。
 事が思い通りに運ばなくなるにつれ、ステアーの集中力が散漫になる。
「さあ、全員でステアー撃墜と行こうか!」
「せめて私の目の前のものは守りたいものです」
「――ステアーか……相手にとって不足は無い」
 アイギス隊やアングラー隊、ガーデン隊、ラビットイヤーα等の部隊に単独機の奇襲が加わり、ステアーへ集中砲火を加えたかと思えば、間隙を縫って放たれたフェザー砲の射線上に、御嶽星司(ga0060)がKVを割り込ませ、機体を盾にしてでも輸送機を守る。
「ったく、しつこい客だ!」
 大破炎上する彼のKVを越え、輸送機が離陸していった。
「さぁ、片をつけてやりましょ!!アイギス04『Maeve』、行くわよっ!」
「時間になるまで奴らに全てぶつけてくれ。ロスタイムは無しだ」
 反撃を受けながらも放たれる集中砲火が、ステアーをの脇を掠めていく。
「この瞬間を待ってたんですよ!粒子砲、くらえええ!!」
 如月の放つM-12帯電粒子砲が、ステアーのプロトン砲と交錯し、行く手を阻む。
「命を捨てるつもりは無ぇ…だが、貫き通す意地もある!」
「これを敵の手に渡すわけには行かない‥‥何としてでも!」
 日乃 晃(ga1085)や宗太郎=シルエイト(ga4261)が、ステアーに追い縋り、攻撃の手を休める事はない。傭兵を振り払うようなステアーの反撃に一機、また一機とKVが墜落する向こうで、輸送機が火を吹き、あるいは爆発しながらも、少数が離陸し、空へ上がり始めた。
 護衛に展開する護龍やヘイルダムの諸隊が輸送機と共に飛び立ち、散らばった重要部品を、日乃 晃やにゃんこ(ga5312)達、一部の傭兵達が回収して飛び去っていく。
 全てではない。だが確実に、何機かはデトロイトへと到着できる。
「チッ‥‥」
 小さな舌打ちと共に、ジャックはステアーを翻した。

 傭兵達はステアーを相手に、数分数秒の時を争った。そして――見事に稼ぎきって見せたのだ。

<執筆:御神楽>



●ブラインドカード
 嵐の前の静けさと言う言葉がある。この時、粛々と補修を続けていたUK周辺の戦域はまさにその状態だった。だが、それでも嵐は必ず来る。
 10km以遠で周縁警戒を行っていた放課後クラブ所属、忌瀬 唯(ga7204)の前に、北米全域からかき集めたタートルワームを主力とするバグア軍が現われたのは、修復完了まであとわずかと言う時だった。
『敵‥多数接近‥‥撃破を‥‥お願い‥‥します』
 十分に自機の安全も留意していた彼女だったが、その連絡を出すのが精一杯。衆寡敵せずに護衛機のアイリス(ga3942)と共に継戦不能に追い込まれる。だが、その早い情報によって傭兵達の集結は一手早まった。
「クマッハッハッハッハッハッ〜〜〜!! ゲームオーバーには早いわぁぁ!」
 近傍に展開していたR隊が先陣を切る。テンションの高い連中ばかりだが、策は手堅く雑魚のキメラから減らす選択だ。部隊未所属の単機傭兵にも積極的に共闘要請を発して、まずは数の差を減らして行く。
「方位240に敵影を確認、機数5。IMP全機、これより迎撃に入ります」
 緋霧 絢(ga3668)以下、IMP隊は共闘者と連携しながら敵を1機づつ確実に屠っていった。より徹底した空戦シフトを使い分け、ワームとキメラを落として行くのは汀祐作(ga0463)指揮の海神隊だ。それとは逆に、ガンアンツは徹底した陸戦で、タートルワームを守るように布陣するゴーレムを相手取っていた。
「うっうー、アリも空を飛ぶご時世です‥‥!」
 上機嫌な比留間・トナリノ(ga1355)の指示でガンアンツは次の陸戦を求めて航空移動をはじめる。初手で仲間を落とされた放課後クラブ隊もUKめがけて突出した敵を叩いていた。彼らが縦横に駆け巡る事が出来るのは、この戦線で最大の戦力を擁している若葉隊の情報支援によるところが大きい。だが、敵の情報を収集、分析し味方を誘導する情報網『蕾』の有効性を認識していたのは、味方だけではなかった。
「タートルワーム!?」
 地上から無数の火砲が伸びる。精密射撃などできる距離ではないが、それを熟知した何者かの意思による制圧射撃だ。ヘルメットワームとキメラを盾に使い、じわじわと前線を押し上げてきた憎むべき亀。その長射程砲が初めて火を噴いたのは、蕾の前線管制役、マリオネット・マリオン(ga7323)機めがけてだった。
「――来マス‥‥ワタクシ達ヲ滅ボソウトスル方々ガ、来マス」
 マリオンの呟きは、その攻撃の裏の意志を感じたのだろうか。護衛の呉葉(ga5503)、チェルト(ga6638)、ツァディ・クラモト(ga6649)の3機がその身を盾と変えてマリオン機を守ったのが幸いし、撃墜こそ免れたが4機ともこれ以上の滞空は不可能だった。
 連携が崩れた所を押し込もうとヘルメットワームが波状攻撃をしかけてくる。だが、それを迎え撃つ傭兵達にさほどの混乱はない。同じ戦線にいたスワロウ戦隊の情報網『燕網』が蕾と連携し、管制をそのまま代替していたのだ。それに気付いたヘルメットワームが肉薄してくるが、今度はバグア側が長射程のスワロウ隊護衛機に蜂の巣にされる番だった。
「オラトリオ隊各機、フォーメーション・ダブルウィング。戦線を押し上げる」
 天上院・ロンド(ga0185)の指揮の元、オラトリオ隊が前後衛のシフトを敷き、突出するワームを翻弄する。旋風隊の5機も管制に従って掃討に回った。だが、バグア側もただやられていたわけではない。
「早いトコ、飛び立ってくれよ?」
 いまだ動かぬUKを見ながら、海神の小塚・雄吾(ga4303)が黒煙を引きつつ戦線を離脱して行く。IMPからはミオ・リトマイネン(ga4310)が。R隊は、前線指揮を続けていた隊長のモヒカンとルイス・ウェイン(ga6973)機が撤退に追い込まれている。
「独りで戦おうとするな。仲間を信じ、共に戦って下さい」
 若葉隊副長の愛輝(ga3159)の声に、隊員達の声が返る。損傷が浅いうちに帰還する若葉隊には、交戦で大きく損害を受けた機はいない。しかし、交戦が続けば補給や簡易補修の回数が増えてくる。NEST補給隊や無所属有志の活動もあれど、200機を越える戦域に対しては明らかに手が足りない。バグア軍は個々の戦闘で失地を見せつつも、全体的に見れば人類側を圧してじわじわと前線を進めつつあった。そう、じわじわと。

「敵指揮機はステアー。リリアン・ドースンです!」
 その報が入ったのは、交戦開始後1時間が経過した頃だった。重要情報を読み上げるFM−Revのルュニス(ga4722)の声は、蕾、燕網を介して前線へと届く。その貴重な情報を得るために、倶利伽羅・狩倶(ga4724)機が撃墜された悔しさは、声音に出す事は無い。
「赤いゴーレムじゃないのか」
 放送を聴き、緋隊長、霧島 亜夜(ga3511)が舌打ちをする。
「いかん!」
 UK艦橋で、その知らせを受けたツァイコフ中佐が唸り声を上げたのはそれとは全く別の理由だった。あの目立ちたがり屋のリリアンが密集隊形のタートルワームの群れに隠れるようにして所在を気付かせなかったのは何故か。
『私に気付いたみたいだけど、遅い遅い遅ーい!』
 その答えは直後に閃光の形をとって傭兵達の前に示された。

●リリアンの誤算
 ステアーの長距離把握能力。そしてタートルワームの長射程。動けぬUKの巨体。これらを掛け合わせれば、出てくる答えは自明だった。UKまでの距離は既に4km。その地点から砲撃してくるプロトロン砲の一斉射撃は修復中のUKを狹叉する。
『3番と4番の間、ね。次は全部あてるよー?』
 もはや隠す事も無い、ということか。通信回線から漏れるリリアンの声は邪気に満ちていた。一刻も早く、タートルの砲撃を止めなければならない。UKの直衛だった緋隊、8246小隊も攻撃に向かった。補給を終えた各部隊も攻勢に入る。
『間に合わないよ!』
「守ってみせる!」
 裂帛の気合は誰のものか。円形陣を組んだタートルワーム隊の周囲を残存のヘルメットワームとゴーレムがガードにはいる。タートルワームが再充填するまでの時間との勝負だ。
「悪ィな‥‥。卑怯だとは思うが、形振り構ってられねぇんだ。」
 8246小隊の仲間と挟み撃ちの形で強襲をかけたベールクト(ga0040)が言う。強引な回り込みのツケは、すぐに彼自身へと降りかかった。だが、そこが楔の一端となる。ボアー小隊、蟲虎他の小部隊が、ペアやトリオゆえの連携で1機づつ敵を足止めした。そこへ、バランスの取れた編成のチーム零が攻撃をかけ、敵の防御の綻びを直す暇を与えない。
『くっ‥‥』
 この期に及んで、迎撃に出てこないステアー。レミングス小隊がゴーレムの防御をこじ開け、上空のヘルメットワームには【B・B】の4機が切り込んだ。2隊とも隊長を中心に強固なスクエアを組んでいる。
「ねぇ貴方、即席で悪いけど私のバックスをお願いできるかしら?」
 報酬は、自分と一晩、などという槇島 レイナ(ga5162)の言葉が本気かどうかはわからない。しかし、各個に戦っていた所属部隊の無い傭兵達の中にも、これをきっかけに手近なところでコンビやトリオを組み始める者が出てきた。戦場での即席コンビが実現するのは、いまだ健在な連絡網のおかげだ。背中を守りあう相手がいると言う事は、長期にわたるこの戦いで疲れた心を奮い立たせてくれる。
『この‥‥』
 ここまでの戦闘で、戦力を消耗しすぎた。あるいは、能力者達がしぶとかった。あるいは‥‥。リリアンがそれ以上を考えるより早く、タートルワームの円形陣の一角が崩れる。その機会を狙っていたクールマ・A・如月(ga5055)が強引に突っ込んだ。
「敵のエース‥‥これは良いネタですね。聴取者大喜び」
 人型形態のステアーから伸びる、無数のコード。タートルワームへ射撃指示をダイレクトに行うための小道具だろうか。
『雑魚の群れが、ふざけるな!』
 ステアーがそのコードを引きちぎり、すれ違いざまにクールマ機と僚機の影守・千与(ga4725)機を撃破した。一瞬遅れて、周囲のタートルワームが、周囲の傭兵機へと充填していたエネルギーを叩きつける。急な目標変更のせいか、砲撃が直撃したケースは皆無だったが損傷機は多数。
『‥‥でかいのから先に潰そうかと思ったけど気が変わったわ。先にハエを全部叩き落してあげる!』
 昂然と言い放ったリリアン機の背後にガンアンツのファルル・キーリア(ga4815)が回り込む。
「リリアン‥‥、あなた、やられ役がすっかり板についてきてるわよ?」
 ファルルの声に、リリアンが返したのは長射程ビームの輝きだった。かすっただけだと言うのに片腕が吹き飛び、ファルル機は慌てて後退する。
『何か言った?』
 ゴーレムとヘルメットワームはその数を大きく減らしているものの、まだ健在のタートルワームは多い。そしてようやく戦いに参加したステアーは無傷だ。戦況は決して人類に有利ではない。だが、負けるつもりの能力者はいなかった。
「正念場を乗り越える気概を持たなきゃ、流れをこっちに引き込めない!」
 若葉隊隊長の篠森 あすか(ga0126)が自分達を叱咤するように叫ぶ。

●増援‥‥そして戦いの終わり
 と、その声にかぶるように、通信回線を軽薄な口笛が流れた。
「いいねぇ、かっこいいよ、傭兵さん」
『何!?』
 リリアンの驚いたような声。一瞬遅れて、ステアーのいた地点が複数のフレア弾に吹き飛ばされる。
「チッ。外したか。まだ調整があまいんじゃないの? これ」
 長い戦いで傷つき、汚れた傭兵達の機体を大空から睥睨するのは、見たことの無い機体だった。それが、20機はいるだろうか。シルエットは明らかにバグア側のものではない。誰かからあがった誰何の声に、謎の機体からの声が鋭く答えた。
「こちらはドロームの応援だ。傭兵諸君、後始末は我々に任せて戻れる者はデカブツの護衛に戻れ」
 その中の隊長機とおぼしき1機がそう告げたと同時に、新型機が舞い降りた。20機の新手が加わったことで、戦力比は一気にひっくり返る。もしも、この時に能力者達が感じた思いが何かあったとしても。
「ステアーはどこだ!?」
 その疑問が誰かの言葉になった瞬間、遠いものになった。

 ステアー単機でも、その破壊力を持ってすればUKに大打撃を与える事はできるのだ。例えば、推進機関。例えば、艦首主砲。だが、リリアンが狙っていたのはそれよりもなお、代替の利かないものだった。
『もう小細工は終わり! 潰してやるから!』
「狙いはこのブリッジか! ‥‥あと僅かだと言うのに」
 ツァイコフ中佐の声を聞いて、対ステアー用のシフトを組んでいたペガサス隊がその邀撃に向かう。
「8246小隊は作戦通りに展開を。ここまできて落とされるわけには!」
 ステアーに追随する動きを見せたバグアは8246小隊がリディス(ga0022)の指示の元、迎撃した。
「こちらペガサス分隊。ステアーに集中砲火後、近接攻撃を仕掛ける。併せて!」
 みづほ(ga6115)の声と共に、各機にデータが転送された。回避を捨て、高速に物を言わせて突撃するステアーを守備側の火線が追う。数発の直撃弾を経てなお、ステアーの機動は揺るがない。UKまで後僅かな位置で、一気に切り込んだペガサス隊とステアーの軌跡が交錯した。ステアーがエクセレント秋那(ga0027)と朧 幸乃(ga3078)の両機を蹴散らした所に、白鐘剣一郎(ga0184)が追撃をかける。
「皆の力を俺に貸してくれ。必ず騎士を護り抜く為に!」
『邪魔よ!』
 交錯は一瞬。そして、ステアーは天高く舞い上がる。リリアンの攻撃はブリッジの直上、レーダーの一部を掠めていた。煙を数条引きながら、それでもステアーが上空で旋回、再攻撃の構えを見せる。だが、彼女の手番は既に終わっていた。
「‥‥ユニヴァースナイト、発進せよ!」
 彼女を駆る男の声に答えて、地に堕ちた巨艦は再び浮上する。飛行船のように、あるいはヘルメットワームのように。一拍おいて傭兵達の歓声が響く中、ステアーと残余のバグア軍は退却に転じた。

「では、シカゴはどうすると?」
 高度4000まで上昇したUKのブリッジで、寡黙なロシア人は言葉を失っていた。長距離通信の向こう側のブラッド准将の声も沈痛だ。
「‥‥残念ながら、放棄せざるを得ないだろう。バグアの方面軍が西海岸を発したそうだ」
 データが転送されてくる。ツァイコフ中佐の戦域地図に、一際巨大な赤の矢印が付け足された。それはまっすぐにシカゴをさしている。
「止むを、得ん」
 吐き捨てるような声と共に、UKはその艦首をデトロイトへと向けた。UKは失われることなく、SoLCが敵に手に渡る事も阻止できた。だが、これは勝利といえるのか? 窓の外、シカゴ周辺を見下ろす中佐の拳は硬く、きつく握り締められたままだった。

<執筆:紀藤トキ>



●訪れる絶望、それを打ち砕く希望
 その日、西海岸の空がヘルメットワームで覆われた。
 目標は空港であり、シカゴの補給路を断とうという相手の判断が見受けられた。
「高射砲斉射ッ! てーっ!」
 ヘルメットワーム対して、UPC陸軍の高射砲部隊による対空砲火が行われるも、効果は見えない。
 それどころか、大型ヘルメットワームより、ゴーレムやタートルワームが降下作戦を行ってきた。
 ヘルメットワームに乗って襲来してくる姿はまさに圧巻。瞬く間に滑走路が埋められ、UPC陸軍は敗走の危機に瀕した。
 高射砲がゴーレムの一撃によって屠られ、ヘルメットワームのプロトン砲によりF−15が落とされる。
『シカゴに始まりシカゴに終わる‥‥。最後に笑うのはこっちだったな!』
 高射砲をつぶしたゴーレムにツインドリルで襲いかかる一体のKV。
 【リンクス隊】のロイ・キューブリック(ga4439)だった。
『ここは‥‥通さない!』
 押さえ込まれているゴーレムに永瀬 奈美(ga1844)の乗るKVがガトリングを叩き込んだ。
 それをきっかけとし、【ヴァルキュリアーズ】【ヒヨコ隊】【ヒヨコ隊乙女組】が総じて攻め込んだ。
『作戦、轟発動! 皆、がんばれよ!』
 黒頭巾(ga7171)の掛け声により、降りてきたゴーレム、タートルワームを複数で囲み倒し、または撤退させていく。
『月狼第弐中隊進軍‥‥同調する撃破隊も‥‥よろしくお願いします』
 部隊間連絡網『月読』で得た情報を統括した終夜・無月(ga3084)の指示により、【月狼第弐中隊】【雪灯】【ソーディアス】【壬生浪士隊】も続々と空港に終結し、滑走路の開放をしていった。
 銃弾が乱れ飛び、敵味方が入り混じる。
爆音、金属が火花を散らす音が辺り一体を支配していった。
そうして、滑走路を保持しつつも押されていた戦線を取り戻していく。
しかし、空中のヘルメットワーム軍が空港へと侵入を始めた。
『おいでませー! そしてさようならー! てめぇらを『蝕んで』やるぜ!』
 戦場に似合わない陽気な声、NAMELESS(ga3204)の作戦コードが発令された。
同時に空港のビルディングで待機していた狙撃隊が姿を現し空中にきたヘルメットワーム群に対して狙撃を開始。
呼応するかのように【月狼第壱中隊】【LuckyDays】【たそがれ】【リンクス】がオヘア側の空から現れ、G放電装置による広範囲に広がる光の帯を作りだした。
ヘルメットワーム群は回避しようとするも、逃げ切れず深手を負い、速度を落とす。
また、何機かは落下し、狙撃隊の狙撃により破壊された。
そして、激しい戦場にしばしの休息が訪れる‥‥。

●希望を侵す『影』
 いつまで続くかわからない沈黙。
滑走路をはさんで両軍とも膠着状態に陥っていた。
沈黙を破ったのは月狼第肆中隊11番隊隊長であり、月読中枢でもある海薙 華蓮(ga4079)である。
『M8で近づく機影確認。間違いありませんシェイドです。十数分ほどで到着します』
 KVのコックピットの通信機から、華蓮の言葉が響く。
『来るのね‥‥戦線が変わるならそのときでしょうね。【魔弾】各自準備しておいて』
 遊撃班【魔弾】隊長のロッテ・ヴァステル(ga0066)は自隊に作戦『魔弾の軌道』の準備を促す通信を行う。
『こちら補給部隊『カルヴァリオ』のAnahiteです。補給物資を後方に投下しました。牽制担当の方補給を行い備えてください』
 補給の準備、陣形作戦の連携も整い、傭兵達の士気は今まで以上に高まっていた。
 それは底知れぬ不安を押さえ込むための無意識の反応だったかもしれない。
 そして、時間通り『影』がやってきた。
『敵機来ました‥‥数は、え、なに!? このミサイルの数は!‥‥!?』
 先方で様子を探っていた羽曳野ハツ子(ga4729)からの通信は爆音と共に途切れる。
 それと共にKVの射程外からミサイルの雨が飛来した。
 青い空が灰色の帯で覆われる。
『回避! 駄目だ、間に合わない!』
『うそっ!?』
 悲鳴のような通信がひっきりなしに響き、被害報告を行う通信も行われた。
 牽制に飛んでいたKVの八割がこのミサイルによって無力化される。
 先の通信がなければもっとひどかったかもしれない。
『何とか耐え切りましたが‥‥もう一発は無理ですね』
 フォル=アヴィン(ga6258)は少なくとも改造していた装甲に救われ、人型形態で不時着をする。
 だが、シェイドの到来により膠着していた戦線はあっという間に覆された。
 ヘルメットワーム、ゴーレム、タートルワームが進軍してくる。
『陸戦指揮に回ります、爪作戦開始!』
 軋む機体で援護射撃をする態勢をとらせつつ、フォルは作戦を発動させた。
 【リンクス隊】の撃破チームが二機一組で戦場に躍り出た。
『こちら遊撃【404隊】の鋼だ。月読の通信網が崩壊しかけている。現場判断で、そちらに協力する』
 ツインドリルをまわす鋼 蒼志(ga0165)がフォルに声をかけた。
『亀の砲台を中心につぶしていきます! 撤退できる人は撤収してください』
 煙幕弾を敵に投げ込み神崎・神無(ga1871)は大きく叫ぶ。
『【JAM】総指揮より連絡。無理に戦わず初撃を受けたものは撤退してくれ、繰り返す初撃を受けたものは撤退! 【JAM】隊員は被害の大きいものの回収に向かってくれ』
 高峰 奏(ga3114)による避難誘導も始まりだす。
 名古屋での一戦の再来だった。
 シェイドはそのまま猛スピードで編隊をつきぬけ、旋回しつつ戻ってくる。
『早い、牽制するにも追いつけません』
 援護として少し離れていたため、被害の少なかった【たそがれ】の劉黄 柚威が淡々ではあるが驚愕の声を上げる。
 背後を取られたKV隊は距離をとろうにも相手の行動力、速度はKVの非ではない。
『だめ、振り切れません‥‥。せめて、足止めを』
 向きをかえ、如月・由梨(ga1805)がG放電装置による攻撃を仕掛けた。
 他の機体も同じように攻撃するも、シェイドはバレルロールで交わし、お返しとばかりに同じ様な放電兵器が飛んでくる。
 一瞬の眩い光と共に雷撃が飛び、KVが瞬く間に沈黙していく。
 由梨もその一人だった。
 あるものは味方の盾となり、シェイドの攻撃防ぎ、大破していった。
『こんな化け物にかてるのか!』
『くそ、あたりもしない!』
『勝たなければ‥‥ならないんです。少しでも、被害を負わせれれば‥‥遊撃隊や残った牽制隊の方はシェイドを集中攻撃お願いします』
 無月は辛うじて保てている月読を使って聞ける部隊に指示をだした。
 【S.G】、【魔弾】の航空班、【ワプス隊】、【月狼第参中隊】がシェイドのほうへ回っていった。
『地上も厳しいけれど、ここで補給拠点を失うわけにはいかないからね! 皆、がんばるよ!』
 十得・梨緒(ga0524)は墜落したヘルメットワームの破片を遮蔽物にし、隠れつつも戦闘を続ける。
『ええ、上も気になるけど‥‥目の前の敵が優先ね!』
 ロッテが弱ったゴーレムを雪村によって一閃した。
 【魔弾】の一団も『魔弾の軌道』を発動し、残った兵力をフルに使って戦線の維持に必死だった。
『空港で暴れられては被害が増えたり救出が困難になります。【孫呉の赤壁】が補給物資を用意している市街地まで誘導してください』
 深井 零(ga4529)による通信を聞き、無月はそちらに作戦を移行する。
『遊撃部隊は‥‥地上より‥‥市街地へ、牽制部隊は‥‥しばらく‥‥俺と一緒に‥‥シェイド‥‥と追いかけっこをお願いします』
『悪いが、俺は総大将とお供するぜ、連携するなら気の会うやつが多いほうがいいだろ?』
 クーヴィル・ラウド(ga6293)のKVが無月の隣につく。
『制空権確保をしなければならないので、お供いたしましょう。ワルツより、勝利の凱旋を聞きたいものでしてな。』
 【カルヴァリオ】に所属しているアルヴァイム(ga5051)もラウドの反対側についた。
『ありがとう‥‥ございます。いきます!』
『『おう!』』
 無月の掛け声と共に小さな希望の光が影へと飛んでいった。

●影沈み、日はまた昇る
 無月たちの必死の奮闘により、時間を稼ぐ事には成功した。
 そして、目的の市街地への誘導が始まる。
『こちら救護担当の海音・ユグドラシルです。シカゴ空港での戦闘は一時収まりつつあります』
 海音・ユグドラシル(ga2788)が連絡を出す。
『こちら、シェイド遊撃にでている美弥です。君の通信は僕から皆に伝えておくよ。連携してないから効果ないかもしれないけれど』
 美弥(ga7120)が不安げに答えた。
 戦争の緊張が彼をそうさせているのだろう。
『わかりました、よろしくお願いします。ご武運を‥‥』
 ユグドラシルからの通信が切れた。
 そして、深井からの通信が続く。
『月読連動で今そちらに向かっていると思われる人、全員に連絡しています。シェイドはあと30秒後にそちらに現れると思います。各自射撃体勢において待機してください』
『了解』
 初めての戦闘でどうなるかわからない。
 そんな状況でふらふらしていたら生き残っていた。
 なら、今こそ役に立つときだと美弥は思った。
 物陰に隠れつつ砲塔を空へと向ける。作戦では低空ギリギリを通るはずだ。
 機体の時計がゆっくりと時を刻んでるように感じる。
 そして、目の前の空をKVが通り過ぎた。
『集中砲火!』
 誰の叫びかもわからない声、だが誰もがそれに従わなければならないと思っていた。
 続いて出てくる黒い影にありったけの銃弾やレーザーが叩き込まれる。
 さらに一緒に移動していたUPC陸軍の砲撃も続いた。
 多くの衝撃を受け、フォースフィールドを持ってしても押されるシェイド。
 そして、シェイドとの追いかけっこでも生き延びたわずかなKVがミサイルやG放電装置などの総攻撃が見舞った。
 ダメージが少しずつ蓄積され、シェイドの装甲が剥げだす。
 それを察知したか、シェイドはブースターを放ってその戦域から南へと離脱していった。
『やった‥‥のか?』
 美弥は震える手で頬を軽く叩き、現状を確認する。
『UPC陸軍より、傭兵諸君へ。シェイドは撤退したが西海岸に増援がきた。ここまでがんばってくれて申し訳ないが、シカゴを撤退する』
『了解しました‥‥戦争には負けてしまった‥‥』
 シェイドを作戦によって撤退させることはできた。
 だが、戦線の維持は現状では難しい状況にある。
 傭兵が常駐して守れるような状態ではないからだ‥‥。
『美弥、撤収します』
 その声は重く苦しい一言だと、美弥自身思っていた。

<執筆:橘真斗>



負傷者一覧

●大破重体
倶利伽羅・狩倶(ga4724)
クラーク・エアハルト(ga4961)
エミール・ゲイジ(ga0181)
御嶽星司(ga0060)

●大破
アイリス(ga3942)
忌瀬 唯(ga7204)
志貴(ga2732)
朏 弁天丸(ga5505)
ゴールドラッシュ(ga3170)
遠石 一千風(ga3970)
鏑木 硯(ga0280)

●重傷
ベールクト(ga0040)
白鐘剣一郎(ga0184)
エクセレント秋那(ga0027)
朧 幸乃(ga3078)
ミオ・リトマイネン(ga4310)
小塚・雄吾(ga4303)
マリオネット・マリオン(ga7323)
呉葉(ga5503)
チェルト(ga6638)
ツァディ・クラモト(ga6649)
ファルル・キーリア(ga4815)
モヒカン(ga4695)
ルイス・ウェイン(ga6973)
影守・千与(ga4725)
クールマ・A・如月(ga5055)
武蔵・兎萌(ga4208)
アーヴァイン フランツ(ga4386)
フィル・フォーチュン(ga6082)
紫悠・久遠(ga7074)
御影 葉澄(ga3577)
秋篠 小雪(ga3578)
イヴ・ヴィオレット(ga3579)
叢雲(ga2494)
木花咲耶(ga5139)
比良坂 和泉(ga6549)
櫻井 壬春(ga0816)
ハルカ(ga0640)
アリオノーラ・天野(ga5128)
霞澄 セラフィエル(ga0495)
ケマル・チャルシュカン(ga5586)
カオーナ・シノハラ(ga2366)
佐伯(ga5657)
国谷 真彼(ga2331)
内藤新(ga3460)
ドクター・ウェスト(ga0241)
崎森 玲於奈(ga2010)
ファルロス(ga3559)
ジーン・ロスヴァイセ(ga4903)
御影・朔夜(ga0240)
エル1(ga1874)
エル2(ga1875)
エル4(ga1877)
神楽克己(ga2113)
カルム・クウィンテス(ga6208)
鯨井昼寝(ga0488)
黒川丈一朗(ga0776)
鯨井起太(ga0984)
藤村 瑠亥(ga3862)
ジュエル・ヴァレンタイン(ga1634)
花火師ミック(ga4551)
R.R.(ga5135)
リーゼロッテ・御剣(ga5669)
夜桜 焔兎(ga5006)
姫神 夢那(ga5169)
五十嵐 薙(ga0322)
漸 王零(ga2930)
ゲック・W・カーン(ga0078)
キリト・S・アイリス(ga4536)
ノビル・ラグ(ga3704)
リャーン・アンドレセン(ga5248)
葵 コハル(ga3897)
水理 和奏(ga1500)
蓮沼千影(ga4090)
煉条トヲイ(ga0236)
坂崎正悟(ga4498)
智久 百合歌(ga4980)
七枷 妃譜美(ga6388)
クレイフェル(ga0435)
猪狩 直子(ga0166)
梶原 暁彦(ga5332)
香林さくら(ga0086)
日向翔悟(ga0024)
宗太郎=シルエイト(ga4261)




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