五大湖解放戦
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●オヘア空港地下攻撃
 ステアー撃退とフレア弾投下という航空部隊の奮闘。さらに地上部隊の勇戦。
 この2つの勝利により、傭兵達はオヘア空港を守るバグア軍を退け、辛うじて地上施設と滑走路の占領を果たした。
 だが、目指すSoLCまでたどりつくには、滑走路上に開いたバグア軍のワーム射出口から地下へと侵入する必要がある。
 SoLCの所在地は空港に近接するドーム状建造物の地下だといわれるが、そこに続く地下通路の入り口が、この射出口しか発見されてないからだ。
 フレア弾直撃のダメージによるものか、スライド式の射出口扉は半ば開いたままであり、今のところ周囲にワームやキメラの姿も見えない。しかし、空港内を守っていたゴーレム部隊が潮を引くように射出口内へ撤退したところからみて、地下にはまだ相当数のバグア軍が立てこもっていると思われる。
 だが、悠長に援軍を待っていられる状況ではない。UPC北中央軍、ヴァレッタ・オリム中将からの通信によれば、現在こちらにあのギガワームが接近しつつあるという。
 加えてギガワーム到着までに女神砲奪回が間に合わなかった場合、「フレア弾集中爆撃により地上施設もろともSoLCを破壊する」という有り難くないおまけつきだ。
「ここまで長丁場になるとはな‥‥」
「あの中将、ヴァレッタだったか‥‥気に食わん女だが‥‥」
 スコール・ライオネル(ga0026)とアルミア・エルミナール(ga0041)が互いにグチをこぼし合う。
 が、いずれにせよSoLCまであと一歩のところまで来た傭兵たちの取るべき道は一つ――空港地下への突入あるのみだった。
「ここまで来て負けるなんて絶対イヤよ! 未来は自分達の手で引き寄せるわ!」
 ナレイン・フェルド(ga0506)の呼びかけに、傭兵達も改めて腹を括る。ゴーレムが逃げ込めたということは、この地下通路に彼らのKVでも充分活動可能なスペースが存在しているということだろう。
 問題は地上との交信であるが、これは【ガーデン】隊長メアリー・エッセンバル(ga0194)が他部隊の協力も得て構築した情報共有網「CL」が担う事となる。これにより、万一の際に空港爆撃を実施する航空部隊ともリアルタイムで連絡が取れるはずだった。
「『CL』は蔓薔薇、ClimingRose‥‥全戦域に、勝利の薔薇を贈るわ!」
 限られた時間の中で手早く補給や破損した機体の応急修理を終え、傭兵達は再び戦闘体勢に入る。
 先鋒を務めたのは、雪ノ下正和(ga0219)率いる【サムライ・スピリット】だった。
「ドリルで武士道突き進む、我等サムライスピリットッ!!」
 かけ声も勇ましく、ツインドリルを振りかざし威力偵察も兼ねた切り込み部隊として、射出口から地下深くへと続くなだらかな斜面に乗り込んでいく。

 足場に注意しつつ進んでいく正和達の前に、やがて地下とは思えないほど巨大な空洞が現れた。
 元々はドローム社の施設にバグア軍が後から手を加えたのか、いずれにせよ人型KVでも充分動き回れそうなほどの規模である。
 だが、そこにはやはりタートルワーム数機を主力に、数知れぬキメラからなるバグア軍守備隊が待ちかまえていた。
 遮蔽物もない地下空洞にプロトン砲の光条が閃き、たちまち伊達青雷(ga5019)、伊達正和(ga5204)の機体が被弾する。
 通報を受けて駆けつけた【ソーディアス】、【ガーデン】、【アングラー】、【Erfolg】、【ペガサス分隊】、【チーム榊】その他掃討部隊の援軍が加わり、たちまち地下空洞はエネルギー兵器と実体弾が飛び交う戦場と化した。
「誰かが礎にならなくてはならないのならば、ここが命の掛けどころだろうな」
 他部隊の高分子レーザー、ガトリング砲の援護を受けつつ、榊兵衛(ga0388)率いる【チーム榊】――日向翔悟(ga0024)、クラリッサ・メディスン(ga0853)、小鳥遊神楽(ga3319)らがタートル目がけて肉迫。大口径プロトン砲と強靱な防御力を誇る亀型ワームではあるが、いったん間合いを詰められて手足や頭部を攻撃されると慌てたように甲羅の中に引きこもり、動きが止まったところをレーザー、ビーム等の知覚兵器で蒸し焼きにされていく。
 彼らが大型ワームを攻めている間、他の傭兵達はキメラの群を相手に大立ち回りを演じていた。
「バグアどもは消毒だァァァァァァァァ!!!」
 遊撃部隊【R】のモヒカン(ga4695)が豪快にブレイク・ホークを振るって有象無象のキメラをなぎ倒し、後続部隊のため道を切り開く。
「残らず叩き潰させていただきます‥‥ガラじゃありませんけどね」
 セラ・インフィールド(ga1889)もまた、【ガーデン】の前衛としてディフェンダーの刃を閃かせキメラたちをなで切りにしていった。
 その間、「岩龍」搭乗のアイロン・ブラッドリィ(ga1067)は敵側のジャミングを中和しつつ、地上班との通信を維持。
 【ハニー・ビー】のカーラ・ルデリア(ga7022)、シーク・パロット(ga6306)、三谷佐 遥(ga5986)らは他の私設補給部隊とも連携して補給路を確保、地上から地下の前線へとKVによるリレー方式で燃料や武器弾薬、応急修理用のパーツなどを送り続けた。
「カーン一族って‥‥あまり目立たないのよねえ」
 【零】補給班としてやはり物資運搬にあたるゴエイ・カーン(ga6315)が、どこか哀しげに僚機にぼやく。まあ「一族」というだけあって全員容姿が似て区別がつきにくいためかもしれないが。
 地下空洞で待ち伏せていたバグア軍のほぼ半数を倒し、敗走する敵をさらに追撃しようとした、そのとき。
 突如、「CL」も含む地上からの通信がぷっつりと途絶えた。
 これはギガワームから放たれたシェイドを含むワーム群と地上の防衛部隊が交戦状態に入ったためだが、そんなことはつゆ知らぬ地下攻撃部隊は一時パニックに陥った。

「仲間を、未来を信じよう! 諦めないよ、この空を取り返すまで‥‥!」

 諫早 清見(ga4915)が叫んだ一言により、動揺していた傭兵達も冷静さを取り戻し、再び地下道の奥を目指す。ラマー=ガルガンチュア(ga3641)がブレイク・ホークで巨大な鉄扉を打ち破ると、そこには中にも人工的な緑が植えられた、さながら地下都市ともいうべき広大な空間が開けていた。
 だが、そこにも潜んでいた新手のゴーレム部隊が出現し、再び激しい戦闘が始まる。

 そのさなか、一時中断していた回線が復旧。地上からの通信が入った。
『君らが能力者の傭兵か? こちら‥‥ドローム社研究員のアルバート‥‥』
 たどたどしい声でそう名乗った男は、誰かサイエンティストと話がしたいという。
 代表として無線に出た【ヘイムダル】の嶋田 啓吾(ga4282)に対し、アルバートは現在の状況を尋ねてきた。
 啓吾が地下都市の光景を説明すると、
『‥‥旧ドローム開発部の名残がそのまま残っているようだな。‥‥これは少し期待しても‥‥よさそうだ』
 SoLC回収のため派遣された研究員らしいが、その言葉にはどこか奥歯に物が挟まったような響きがある。啓吾を始め傭兵達の胸に一抹の疑念が生じるが、いまは同じ人類同士で腹を探り合っても仕方がない。
 やがて掃討班がゴーレム隊を撃退したのを見計らって、傭兵達はアルバートの指示に従い地下施設の非常電源設備を発見。それを作動させると施設全体の機能が回復したらしく、薄暗かった地下都市は明るい電灯の光に照らされた。
 啓吾の呼びかけで急遽集められたサイエンティスト班が【ヘイムダル】、そして流 星之丞(ga1928)率いる【イエローマフラー隊】の護衛を受けつつ、やはりアルバートの道案内でドーム内に存在した貨物用エレベータを破壊し、KVの脚部ブースターを使いさらに地下の深層へと降りていく。
 かなりの深さだ。地上から50mはあるだろうか。
「まるで地下要塞ね‥‥そもそも、本当にフレア弾で破壊できたんですか?」
 シイナ・ライティエッタ(ga6544)の疑問に対しても、通信機の向こうにいるドロームの研究員は、
『私は、その質問に答える立場にない‥‥』
 と素っ気ない返答だった。

 そして――彼らはついにたどり着いた。
 かつてドローム社が開発し、オヘア空港陥落と共に封印された対衛星砲SoLC。
 その象徴ともいうべき砲座上の「自由の女神」像は破壊されているものの、巨大砲じたいは素人目にも「まだ使えるのでは?」と思えるほど原形を留めている。
「俺達ゃ泣く子も黙るヘイムダル! 女神は頂いてくぜぇ!? ヒャッハー!!」
 アッシュ・リーゲン(ga3804)が手を叩いて歓声を上げ、砲台を見上げる他の傭兵一同もそれぞれ感慨に耽る。
「まあ、大きな物ね〜、できることなら今すぐ隅々まで調べ上げてみたいわ〜」
 興味津々、といった様子で御棺・ルキア(ga4066)が呟いた。
「女神さん、一緒に戦いましょう。起きてくれますよね?」
 廻谷 菱(ga4871)は思わず声に出して呼びかける。
 もしこの巨大砲が正常に機能するようなら、あのギガワームさえ撃墜できるかもしれないのだ。
 サイエンティスト達は無線を通してアルバートに詳しく状況を報告。
 だがその結果、砲座のコンソールパネルはバグア側によってかなりいじられており、ボタンらしきものさえ見あたらないという説明に、ドロームの研究員は失望を隠せない様子で何やらブツブツ呟いている。
 そのとき、ふいに地下施設全体が地震のごとく揺れ、天井からバラバラと瓦礫が降り注いできた。地上で何かが起こったらしい。無線の向こうからも、凄まじい地響きが聞こえてくる。
「今の音は何です? 何か起こったんですか!?」
 ペルツェロート・M(ga0657)の問いかけを無視し、アルバートは慌てふためいた声で、すぐに砲座の中心、ならびに砲台周辺にあるめぼしい機械類を片っ端から解体し、なるべく傷つけずに持ち帰るよう指示を下した。
 えらく無茶な命令だが、これだけの人数の能力者サイエンティストが揃っていれば、決して不可能な作業ではなかった。
「SoLC‥‥解体作業、開始してください」
 エクスティ・レミントン(ga5106)が周囲のサイエンティスト達に呼びかける。
 本来なら「解析」したいところだが、それは地上に戻ってからでも遅くはない。
 サイエンティスト達、そして他の能力者も協力して作業にかかり、SoLCの解体および持ち出しにかかった。
「科学者と技術者の苦労の結晶なんだ‥‥バグアに渡してたまるもんか!」
 北柴 航三郎(ga4410)が叫び、常人の数倍のスピードで解体を進めていく。
 長大な砲身はKVが数機がかりで抱え、その他機材は分割して各機が運搬。
 解体終了と共に補給班・援護班が総動員され、残存のキメラ・ワームを掃討班が蹴散らしつつ傭兵達は撤収を開始する。
 またこのとき、並行して負傷者収容や破損KVの回収も実施された。
 
 
 地下攻撃部隊が解体したSoLCを運搬して帰還したとき、地上での戦いもまた終わりを告げていた。そして彼らはその時になって、「ユニヴァースナイト墜落」というショッキングな事実を知らされたのだった。
 
<担当 : 対馬正治>



【遊撃機動戦艦ユニヴァースナイト】
 オヘア空港上空‥‥。ちょうど、空港を背にする形で、能力者達は、自らの機体でもって、修理中のユニヴァースナイト守護へと回る事になっていた。
 開戦を告げる警告が、傭兵達の作り上げた情報網――【天糸】を通じて鳴り響く。本当は、他の情報網とも連携をとりたい責任者の桜神羅 乃衣(ga0328)だったが、バグアの妨害電波が激しく、遠くはなれた他の部隊とは連絡がつかない。舌打ちしたい気分でいっぱいになりながら、彼は天糸を通じ、こう告げる。
「皆さん、コレが奴等の最新情報です。 出撃前に頭に入れて置いて下さい」
 ギガワームとシェイドのデータが、傭兵達に順次伝わって行く。ある者は専用回線で、ある者は傍受して。
「来ました!」
 同じ様に天の糸構築に勤めていた補佐部隊、【奔神】のリーダーである斬皇樹(ga4701)がそう叫ぶ。見れば、ワシントン方面からその『影』が、威圧感を撒き散らしながら姿を見せている所だ。
「ここは私達にお任せを。合流を阻止してください!」
 藤川 翔(ga0937)が、そう言うや否や、自前のドリルを持ち出し、果敢に向かって行く。それを迎え撃たんと、ギガワームの腹から射出されるヘルメットワーム達。勢いに押され、負傷する藤川。
「オラトリオ隊各機、二線符陣。目的は戦線の維持です。突出は避けて下さい」
 天上院・ロンド(ga0185)が、配下である井上・セレスタ(ga0186)、高木・ヴィオラ(ga0755)にそう命じた。お互い、2機1組でエレメントを組み、付かず離れずと言った陣形で、前後に並びながら、それぞれの武器を打ち込んで行く。ただし、あまり積極的に前には出ず、遠距離射撃を中心に行っていた。
「あれは‥‥」
 だが、その直後。高速で空気を切り裂き、接近してくるもう一つの影。そう‥‥シェイド。
「シェイドにギガワーム…豪華キャストね。でもここが踏ん張りどころよ!」
 空の舞台に踊るように。だが、奏でるBGMは勝利の凱歌であって欲しいと、そう願うヴィオラ。
「たいよーけん、オーロラぷらずま‥‥ごはぁっ!」
 挨拶代わりとばかりに、三つのバルカンを放った朏 弁天丸(ga5505)が、お約束の通り、すぐ傍に居たL(ga5469)ともども強制帰還の憂き目を見ていた。
「フィーロ、容赦無しで一気に叩き込むよ〜!」
「姉さん‥‥恨み果たしましょ!」
 共闘されてはたまらない。そう感じたのか、霽月(ga6395)、フィーロ(ga7235)が、そのシェイドに向かって、攻撃を仕掛ける。本当はお腹空いたし、撃沈されたら資金繰りが無駄になるから‥‥らしいのだが、気合の理由は人それぞれだ。と、シェイドはそんな2人を、相手にする気がないかのように、その速度でもって避ける。
「く‥‥。何‥‥」
 直後、湧いて出てくるように現れるのは、ヘルメットワーム。取り囲まれた二人、何とか横の隊列を寸断するものの、2人仲良く病院送りだ。
「邪悪は放っておけませんっ!くっらえ〜〜〜〜っ!!」
 その隙に、シエラ・フルフレンド(ga5622)が、ギガワームの上へ回りこもうとする。しかし、彼らの前には、大量のヘルメットワーム。
「やれることをやるまでだ!」
 彼女の指揮する【FS】隊の隊員、雷(ga7298)が、そう言いながら、庇うような形で囮になる。ふらふらと飛び回るその機体を、ワーム達はうっとおしいと感じたのか、被弾したような‥‥ではなく、本当に被弾していた。
「命の輝き、その闇に飲み込ませしないぞ、シェイド!」
 後ろに居た日乃 晃(ga1085)の機体が、ブーストを吹かす。ディフェンダーを盾代わりに突き立て、その影から煙幕を放つ。視界が閉ざされている間に、雷の機体を支えながら、離脱していく。
「シェイド、ギガワーム、共に速度上昇。ワーム・キメラ共に多数」
 状況を周囲に伝えながら、リーゼロッテ・御剣(ga5669)が、シェイドの動向を注意深く監視していた。どうやら彼らは、ワームとキメラにこの場を任せ、早々にここを突破してしまいたいようだ。
 と、その時である。
「こちらUPC。援軍に参上した。生きてるかい?」
 後方から現れる、F戦闘機の部隊。天糸を通じて聞こえたのは、カラス・バラウの声である。本来、ULTの所属であるはずだが、能力者と言う事で、駆りだされたらしい。彼の話では、早々にミシガン空港が使用可能になったため、出撃してきたそうだ。彼らは、いっせいにキメラへ向かって攻撃を開始した。
「これだけの援軍か。だったら、そろそろ終わりにしたいねぇ」
 ベーオウルフ(ga3640)がそんな事を呟きながら、残ったワームの掃除に取り掛かる。こうして、次々に攻撃を仕掛けて行く傭兵達。逆に、注意が散漫になったワーム達は、徐々にではあるが蹴散らされて行く。
 だが、その直後。
「さぁ幕引きと行こうか!! 貴様の独り舞台などもう飽き飽きだ!!」
 そう言って、藤村 瑠亥(ga3862)が、ミサイルをシェイドに向かって全て撃ちこむ。
「砕けろぉおおおお!!」
 その間に、ハンマーボールを叩き込み、コクピットを潰そうとしたのだが、それはシェイドに弾かれるようにして、明後日の方向へとそらされてしまう。そして、お返しとばかりに、病院送りにされていた。
「エル、ピラミッド状に展開」
「ゼファー了解。特殊電波波長装置、スイッチONです」
 【ゼファー】リーダーの鷹見 仁(ga0232)が、そう言って、エル15(ga6546)達に立体陣形の構築を命じている。そう言って、それぞれの武器で一斉掃射するゼファー隊。その間に、仁はブレードで持って、シェイドへと切りつける。
「‥‥」
 中の京太郎は、何も言わなかった。ただ、押し返すように、仁を吹き飛ばす。距離をとられた仁は、ディハイングブレードを投げつける。が、届かない。
「今の俺に出来ること……それは、このたった一撃をぶつけることだ!」
「僕は僕に出来ることを…!」
 援護するように、ブレイズ・カーディナル(ga1851)と、水城 凍也(ga6892)が、その後に続いた。しかし、彼らはワームに行く手を阻まれ、病院送りになってしまう。その隙に、仁もまた、負傷していた。
「まともにやっても勝ち目はない。そろそろあれをやるぞ・・・」
 ファルロス(ga3559)が、そう言って、研究所で強化してきたG放電管を持ち出し、ブーストを吹かす。その一撃を当たりやすくする為、崎森 玲於奈(ga2010)、ジーン・ロスヴァイセ(ga4903)が、それぞれの武器に、練力を注ぎこむ。しかし、前衛として前によりすぎた彼らは、護衛のワームに怪我を負わされてしまう。
「合図を出すぞ!3・・・2・・・1…今だ!」
 ばりばりと、放電管が唸りを上げる。しかし、一部しか削れない。そのため残りのワームのいくつかが、周囲に居た者達に襲い掛かった。
「失うことの悲しささえ…知らないお前たちがぁ!」
「…え…先輩!?」
 後輩のカルム・クウィンテス(ga6208)を庇うグリク・フィルドライン(ga6256)。機体が軋みを上げているが、カルムを失うよりはよっぽど良い。
 激しい戦いに、次々と負傷して行くKV達。ココ・バレット(ga4752)、大上誠次(ga5181)他、補給部隊[[蓬莱]]の一部、【R】の面々と、ずらりと名前が並ぶ。その殆どは、前に出て積極的に攻撃していたものだ。
「傭兵ども。待たせたな、修理が完了した」
 その時、天の糸を通じて、ツォィコフ中佐の声が響いた。直後、傭兵達の広報から、左翼を直したばかりのユニヴァースナイトが、姿を見せる。そのおかげで、レーダーの一部から、エラーの文字が消えた。
「よし、時間稼ぎは出来るようになったな。この隙に、シェイドを落とすのだ」
 ドクター・ウェスト(ga0241)が、所員にそう指示をする。三度、G放電管を浴びせかける彼ら。
「あなたの為に用意した‥‥蝕の齎す闇の中‥‥眠りなさい‥‥永遠に‥‥」
 隊長の終夜・無月(ga3084)が、部下達に陣形の展開を命じる。前衛を勤める一番隊の月森 花(ga0053)が負傷する中、同じ部隊の愛紗・ブランネル(ga1001)は別の事を気にかけていた。
「シェイドの中の人って、同い年‥‥くらいなのかな?」
 画像に移った京太郎の容姿は、ずいぶんと若い、それが引っかかっているようだ。
「こんのぉ!」
 そのシェイドはと言うと、所員である内藤新(ga3460)、ハワード・ラヴクラフト(ga4512)の支援を受けたドクターに、コクピット部分に組み付かれていた。
「無粋‥‥だね」
 コクピットをねじあけようとする彼に、京太郎はそう言ってくる。だが、ドクターは構わずコクピットにバルカンを乱射する。
「残念だが、キミの申し込みに答えている暇はなさそうだよ」
 突き飛ばされる、ウェスト。その手に握られたエネルギーガンは、シェイドの表面に当たっただけで、かすり傷ひとつ付いて居ない。そうしている間に、シェイドはギガワームの上から、空中へと逃れてしまう。
「ギガワームを見捨てるつもりか! させないわよ!」
 その背中が、ブースターで淡く輝く。それを見て、アクアリウムのリーダー、鯨井昼寝(ga0488)は、隊員達に合図する。いつもと同じ‥‥Y字型の陣形を。
「馬鹿の一つ覚えを‥‥ほほう?」
 その矢を、シェイドは体一つずらして、避けようとした。だが、その軌道は、今までとはわずかに違う。数センチ単位でずらされた陣形から放たれたその砲撃は、人型へと変形したシェイドの片腕を、機動不能に仕立てていた。
「はっはっは。捻りもなく、同一陣形での攻撃を繰り返したのはこの為の布石!」
 鯨井起太(ga0984)が、自慢げにふんぞり返る。しかし、シェイドも黙っているわけではない。
「そうか。では今の内に処分させてもらおう‥‥」
 そんな事を、シェイドが言ったように聞こえた。そして、残った片腕が持ち上がり、そこから高出力のレーザーが放たれる。それは、正面に居た鏑木 硯(ga0280)、ゴールドラッシュ(ga3170)、遠石 一千風(ga3970)をかすめ、機体を大破させてしまう。
「UK、被弾! 飛行能力に損傷! 高度、低下していきます!」
 その延長に居たのは、傭兵達が守ろうとしたユニヴァースナイト。レーザーはその大きな翼を貫通し、遥かオヘア方面へと消えて行った。
「ギガ、後は任せた」
 浮上能力を失ってゆっくりと墜落していくUK。それを見下ろすように、シェイドはあっけにとられて動けないでいる傭兵達を振り切り、遥かオヘア方面へと消えて行く。
「くっ。ギガワームだけでも、何とかするぞ!」
 ジュエル・ヴァレンタイン(ga1634)が、残ったギガワームへと攻撃を再開する。同じ様に、攻撃を仕掛ける神崎・愛莉(ga3993)。
「ギガ・ワームの馬鹿ぁ!! 嫌いだぁ。愛莉を叩いた罪は重いんだから! 思い知らせてあげるから覚悟しなさいよね」
 ぷくううっと頬が膨らんでいる。どうやら、相当怒っていらっしゃるようだ。そして、それは彼女ばかりではなく、ルード・ラ・タルト(ga0386)も同じ。
「落ちろっ落ちろっ!」
 そう叫びながら上から飛び降り、動きの止まったギガワームに、装備していたKV用のスピアを何度も突き刺す。王様として、部下の仇は討ちたい模様だが、周囲に散らばったワームに囲まれ、危うく撃墜されそうになる。
「私の前では誰も死なせない!」
 ネーヴェが怪我を覚悟で回収しなければ、大破重傷で、次回出撃はかなわなかった事だろう。確かに節々は痛いが、何とか機体は無事なようだ。
「プロントン砲が怖いな。よし、彗星作戦機動!」
 その攻撃を少しでも和らげる為、鴉部隊の奏乃 蒼音(ga2828)が、ブースター近くに仕込んだ水蒸気発生装置で、周囲に霧を発生させる。視界が煙って行くのに紛れ、同じ隊のフル・リュミナス(ga4152)が、ギガワームに突入しようとするが、ワーム達に丁重にお断りされてしまったようだ。
「UK、不時着完了。損害は飛行能力のみ。乗員に負傷者は出たものの、それ以外に損傷はないようです」
 天の糸を通じて、UKの状況が傭兵達に告示されていく。こっちは、【F/Fs】、緋隊、Simorgh隊、【たそがれ】、固まって動いていた八咫烏と、結構な面々が、薙ぎ払われているが、その犠牲に見合うだけの仕事は行えたようだ。
 中には、わんこ(ga5343)とエル16(ga6547)のように、機体を犠牲にしてまで、ギガワームの中にフレア弾を投下しようとした者もいるが、周囲に散らばったワーム達が、それをさせない。逆に、囮になろうとした一之瀬 大河(ga7397)が、被弾過多で炎上、前に出ていた樋野・よし美(ga6460)が、病院送りになる。同じ様にフレア弾を投下しようとしていた【Delta】の蓮見 円(ga4620)もだった。
「ギガワーム、依然健在。各位、負傷者の回収を急いでください!」
 宵谷 香澄(ga4626)が、そんな怪我人を回収しようと、忙しく動き回っている。彼らの仕事を無駄にしない為にも、天衝隊はある賭けに出る事にした。
「分の悪い賭けってところですか・・・私、嫌いじゃないんですよ」
 それを聞いた【朱翼】の櫻小路・なでしこ(ga3607)がそう呟く。傭兵達には、彼女のようなタイプが多いのか、朱翼隊は、その名が示す通り、左右に両翼を広げ、挟み込むように攻撃を行う。もっとも、前衛を勤めていたレーゲン・シュナイダー(ga4458)と、暁・N・リトヴァク(ga6931)が、病院送りになってしまうのだが。
「く‥‥。【神威】隊が突入するまで、やらせはしない!」
 中には、美川キリコ(ga4877)のように、損傷度度外視で突っ込んで行くものもいる。そう言う傭兵達が、例外なくワームに落とされて行く中、天衝迎撃班【神威】は。
「さあ、行かせて貰うわ・・・そしてこれで全てを終わらせる・・・!」
 多数のワームに囲まれながら、緋室 神音(ga3576)が、武器をいっせいに乱射する。その攻撃に、いくつかのワームの注意がそちらを向いた。
「ターゲットロックオン…試作型帯電粒子加速砲ファイヤ――ッッ!!」
 その隙に、ノビル・ラグ(ga3704)が残りのワームを撃っている。怪我を負う2人。しかし、その間に、フレア弾を搭載した3機‥‥リャーン・アンドレセン(ga5248)、アリス(ga1649)、ゲック・W・カーン(ga0078)が、上空へと回りこんだ。
 炸裂する赤い焔。熱量がコクピットを通して、肌に伝わるような明るさだ。明るさで視界が覆われた直後、ゲック、そして神楽克己(ga2113)、煉条トヲイ(ga0236)が切り込む。
「山椒は小粒でぴりりと辛い。疾風迅雷の一寸法師、神楽克己とは俺のことだ!」
 仲間を落とされた恨みは根深い。その様子に、援護とばかりに、御山・アキラ(ga0532)がアグレッシブファング掛けM12帯電粒子加速砲と、ロケットも撃ち込んでいる。
「…舐めるなよ。撃とされた仲間の借りは、必ず返す―この命に代えてもな…!」
 隊を壊滅させられたトヲイのうらみは根深いらしく、雪村の白刃が、損傷部分を狙う。
 そして。
「ヘルメットワーム、オヘア空港方面へ離脱。ギガワーム、なおも動かず。硬いですね‥‥」
 どうやらギガワームは、このまま能力者達との決戦を選んだようだった。

<担当 : 姫野 里美>





 オヘア空港上空、まだバグアから奪還していない滑走路の傍に建設されている白いドームから離れること数百メートル。滑走路の一部には大穴があけられていた。地下に侵入し、SoLCの奪取を狙う突入班の侵入路である。侵入路はそれ程頑丈な素材で作られている様子もなく、比較的簡単に、KVが通れる大きさに拡張することに成功した。
 しかし、それを防衛するには計り知れない労力が必要だった。
 バグア軍側見れば、UPCの目標がSoLCにあることは既に明白。そして目標が分かっているからこそ手の打ち様も存在する。つまり補給線の分断である。そして分断するのに最も適切な場所は、やはりドーム突入口だった。
 自然と最重要激戦地となる突入口、加えてバグアが撒き散らすジャミングのせいで、通信機系統にも異常が発生している。そして総責任者であるヴァレッタ・オリム中将は、後1フェイズ経ってSoLCの奪還が叶わないのなら、空軍にフレア弾の投下を命じるという通告を下していた。
「畜生!折角俺達の力になるハズの物を‥‥。むざむざ爆破するなんてぇっ!」
 マーガレット・ラランド(ga6439)設立の燕網にもたらされた情報を聞いた時、放課後クラブ所属の新条 拓那(ga1294)は思わず叫ぶ。
「だがそれが賢明な判断って奴だ」
 同隊隊長であるゼラス(ga2924)が、熱くなっている副長に冷静な対応を求めた。
「元々この作戦には無理があった。そういうことだ」
 現在オヘア空港周辺には大きく三つの部隊が存在する。SoLC奪取を狙う突入部隊、地下施設破壊を狙う侵入部隊、そしてギガ・ワームとシェイドの合流阻止を狙う足止め部隊、どれも重要な任務を担っている。そしてどれも重要であるが故に、戦力が分散しているのも事実だった。加えて突入部隊の一部は重いフレア弾を搭載している。
「‥‥ヘルメットワームが数機、最終防衛ラインを突破。こちらに向かっている模様、至急迎撃を」
 スピーカーからは、度々防衛ラインを突破したヘルメットワームやキメラの迎撃要請を求めるラビットイヤーβの声が聞こえてくる。苦戦している何よりの証拠だ。唯一の救いはUKもこのオヘア空港方面に向かっているという事なのだが、進水式を終えたばかりの船でギガ・ワーム、シェイドに対応できるのかどうかは、まだ誰にも分からない。
「まずは投下作戦開始の指示が出るまで待機だ」
 新条は一度深呼吸をした後、隊長の指示通り待機することにした。 

 一方、地上部隊も撤退命令が出されそうな雰囲気を感じ取っていた。そこでまず着手したのが、上空を狙う固定砲台の破壊である。
「神様‥‥この戦いが終わるまで、皆に御加護を」
 【シャスール・空】隊長の麓みゆり(ga2049)は、同隊の地上部隊【シャスール・陸】と連絡を取った後、しばしの時間を祈りに費やした。
 誰が見ても敗色濃厚なこの戦いではあるが、SoLCだけは何とか対応しなければならない。でなければ今まで戦ってきた意味が失われてしまう。
 やがて燕網に報告された対空砲火が全て沈黙したのを受け、同隊所属のクラーク・エアハルト(ga4961)が麓の元に戻ってくる。
「行きましょうか」
「今更、引き返す訳には行きませんね」
 短い会話の中でお互いの意思を確認する二人。既にUPC正規軍はフレア弾投下の準備に入り、そして傭兵側にも【シャスール】の他に放課後クラブが控えている。いつしかUPC軍側には、まるで死を覚悟した上で突撃をかけるような雰囲気が漂い始めていた。
 そんな中、燕網に一つ吉報が届く。シカゴ陸軍、そして補給物資の到着だった。

 一気に湧き上がる陸軍、先程の葬儀のような雰囲気はいつの間にか消え去っていた。フレア弾使用及び撤退命令が下される様子もなく、SoLCの奪還を諦める事もなさそうだ。
「‥‥出撃命令が、出ませんでしたね‥‥」
 【ファフニール】所属の紅露(ga4649)は苦笑交じりに呟いた。彼女の任務は空港及びSoLCの破壊、つまり撤退命令が出てからが仕事と言う事になる。他にも放課後クラブの一部も同じように出番が来なかったことを喜ぶべきなのか、それとも悲しむべきことなのか複雑な表情を浮かべていた。
「‥‥だが、まだ勝った訳ではない」
 ファフニール隊長狭霧 蓮(ga0213)は隊員を軽く諌め、待機態勢を維持させていた。否定的な物の見方ではあるが、それは仕方の無いことでもある。背後は未だにギガ・ワームとシェイドに脅かされ、足元はキメラの巣窟になっている。そして眼前には突入することを手ぐすね引いて待っているゴーレムとタートルワームが存在している。状況はそれほど大きく変わっていない。
 念のため狭霧も燕網で確認するが、冷静に判断すると状況は不利だった。特に合流阻止でギガ・ワームとシェイドに立ち向かっているUKが激しく攻め立てられているらしい。
 最悪のシナリオを考えると、やはり動くべきではないと狭霧は判断していた。

 一方、フレア弾の準備までしていたシャスールの面々は周囲の盛り上がりに飲まれるように、活気を取り戻していた。そして勢いそのままにドームに突入していく。
 勢いとは不思議なもので、時に生き物の様に他者に大きな影響を与える。先程までの死んだような状態もそうだが、今の活気の良さも典型的な例だろう。そしてその勢いに乗じて戦いは再び五分、途中起こっていた突入班との通信障害もいつの間にか回復していた。
「いけますかね?」
 スナイパーライフルのスコープ越しに、ドームの様子を眺めながら尋ねるのは放課後クラブ所属の赤霧・連(ga0668)だった。放課後クラブも【ファフニール】と同様に待機の判断をしていた。それが命令違反にもなりかねないことを踏まえての隊長の判断である。
 そして今報告には「突入成功」「電波障害解除」等吉報が続いている。勝てるかもしれない、にわかにそんな気持ちが赤霧の胸にも湧き上がってきていた。だがしかし突然、彼女の見ていたレーダーから一つの点が消えた。

 それは地震を思わせる程の揺れだった。そして揺れに続いて大音量の落下音。それはUKが撃墜される音だった。 「損害は軽微、推進装置の一部がやられた模様」
 次々と舞い込む情報、情報処理を得意とするラビットイヤーβの面々でも苦戦するほどの情報が、突入部隊の方にも送られてくる。そしてそんな報の中でも最重要要件とされていたのは、シェイドが迫ってきているというものだった。

 シェイド来襲にスワロウ戦隊等一部の部隊が一時撤退の決断を下す。そして単機突撃を試みていた天草・渉(ga0015)らにもUPCの方から撤退命令が下されると誰もが判断した。
 だが、オリム中将は続行を命じた。SoLCの修理は放棄、至急解体して運搬・回収、その間、シェイドからSoLCを死守せよとの事。
 シェイドは能力者達の戦いで片腕を吹き飛ばされている上に、空中で激戦を繰り広げてきたばかりだ。だがその動きに衰えはなく、むしろ勢いづいてすらいる。

 能力者達には聞こえる由もない、シェイドの搭乗者――佐渡・京太郎に当てられたブライトン博士の通信。
「SoLCはあとでどうにでもなる、墜落した今がチャンスだ、UKを破壊せよ」
 その命令に対し、京太郎は眉をひそめ。
「……シェイドは、あと10分も戦えません。このままオヘア空港ドームに向かい、相手の自爆を誘発します。動けない空母くらいいつでも壊せる」
 そう拒否した。

 シェイドは、行く手を阻むKV達をかわし、撃墜し、そしてオヘア空港へと変形して着陸。
 襲い掛かる能力者に対し、シェイドは怯むことなく暴れ続ける、さながら一騎当千の武将のように。
「だったら特攻あるのみ」
 ブーストで急接近しながらホーミングミサイルを射出し、天草が突入をかける、だが、ただ勢いだけの攻撃ではシェイドに届かない。
 残った片腕で天草のKVを撃墜し、生き急ぎ、燃え尽きる流星のようにシェイドは猛威を振るう。道を開けと、行く手を阻むKVをなぎ倒す。
 そのシェイドに対し、能力者は一歩も退かない。SoLCは奪わせないと言わんばかりに。此処が一番の激戦地になる事など、最初から承知。機体が弾き飛ばされ、傷を負おうとも、退く能力者など誰一人としていなかった。  そんな彼らがいるのに、フレア弾を落とす事など、誰が出来るだろうか。

「―――援軍です!」

 時間にして僅か7分、感覚にして永久。
 誰かが、唐突にそう叫んだ。ギガ・ワーム方面で、シェイドと戦っていたKV部隊が合流したのだ。

「…………潮時ですか……」
 京太郎の唇が、そうかたどられ、シェイドが周囲のKVを振り切り、撤退を始める。
 一瞬、能力者達の間に走る迷い。彼らの仕事はシェイドの撃墜ではなく、SoLCの死守だ。追いすがろうとしたKVもいるものの、それは悉く返り討ちにされ、それ以上追う人間はいなかった。
「とりあえず……護りきれた事だけ、祝いましょうか」
 それも後の話である、次、第五フェイズが待っている。

<担当 : 八神太陽>


●陸軍――都市シカゴ到着

 先の戦いで、リリアンの駆るステアーを撤退にまで追い詰めた傭兵達と陸軍は、その勢いを背にシカゴ目前にまで迫る。一方、緊急措置を施したユニヴァースナイトは傭兵達の護衛を受け、ギガ・ワーム、シェイドとの戦場へと赴こうとしていた。迫る人類を迎撃に出る、バグア軍側との激しい戦いが始まる。

 蒼き空をひしめくキメラ達と、300機近い傭兵のKV部隊が陸を地上を駆け抜ける。
 無数の敵と味方のせいで戦場が混乱の渦に飲み込まれるであろう所、傭兵部隊は独自の通信情報網『蕾』を構築し、それを各部隊が利用する事で戦場を有利に支配していた。
 伊佐美 希明(ga0214)率いるリンクス部隊はシカゴまでの陸路を切り開き、それに合わせる様に傭兵達が篠森 あすか(ga0126)が率いる若葉隊を中心に空の敵を撃ち落して行く。
「情報網『蕾』、これが今回の要‥‥」
 瑞浪 時雨(ga5130)が僚機である不知火真琴(ga7201)のKVを見やりながら呟く。彼の所属する若葉隊蕾班は戦闘空域での情報収集を担い、その情報を各部隊へと伝達、更に各部隊から上がってくる情報を収集しそれを公開しているのだ。この敵味方入り乱れる戦場においてその情報網はまさしく部隊の生命線とも言える存在であった。
「リンクス部隊、市街地へと突入を開始しました。陸軍の先遣隊がシカゴ市街地へと侵攻します。各部隊、タートル・ワームの砲撃に警戒しつつ援護をお願いします」
 不知火が地上を突き進むリンクス部隊が市街侵入と同時に無線を開く。これを受けてやや後方で戦力を温存していた部隊たちが前に進み出る。
 敵の対空砲火に密度が増し始める。
 遂に、陸軍がシカゴ市街へと侵攻を開始する。

●ユニヴァースナイト――シカゴ上空

「カルヴァリオ1より全機へ。俺たちの希望を箱舟に届けるためにもシカゴ内の敵を掃討する‥‥全機、発進準備が整い次第出撃しろ」
「さあ皆、生き残りましょうや! カルヴァリオ2、行くッ!」
「OK! バグア共、蜂の巣にしたるっ!」
 カルヴァリオ隊の隊長ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)の指示に従い、カルヴァリオ全機がUKの内部格納庫より管制のGOサインを受けて飛び立つ。
「全部隊に告ぐ、第1投下ポイントをC−23に指定、マーキングを忘れるな」
「助かる! これで弾切れの心配をしなくて済みそうだ!」
 カルヴァリオの何機からか補給物資が戦場へと投下され、投下地点では傭兵達がガトリングを遠慮無しに掃射していた。
 市街地に入り込んだ陸軍と傭兵部隊は大通りを中心にKV部隊を展開。後方から陸軍の戦車が援護砲撃を放つ。KVは前方に展開するキメラとタートル・ワームに向けて接近を試みる。
「露払い‥‥こういう役も必要だ」
 空中から沢辺 朋宏(ga4488)がAAMを発射し、一気に敵機の懐へと飛び込む。同時に、変形しながら姿勢制御をマニュアルに変更、操縦桿を細かく操作する。
「伊達にKVは人型じゃない!」
 KVが飛び蹴りを放つ―――10トン以上の重量を持つKVが放つ蹴りにフォースフィールドを持つキメラがいとも容易く吹き飛ばされる。
「IMP隊全機へ、この勢いに乗ります。前へ!」
 緋霧 絢(ga3668)が彼の激しいパフォーマンスに乗って瞬時に指示を出す。IMP隊、そして他傭兵部隊も負けじと攻撃に拍車が掛かる。大通りの戦線が押し上げられ始めた。
 一方、大通りを逸れた場所でも戦闘は展開されていた。各機が建造物を盾に敵に牽制を加える。タートル・ワームの砲撃が層の薄い建造物を貫通してKVに襲い掛かる。
「おい! 大丈夫か?」
「あぁ‥‥なんとか。腕部の油圧系が狂ってるが、他は大丈夫だ。建物がなかったら終わりだった」
 被害を受けたKVのパイロットがシステムをチェックしながら答える。そのKVは後方に下がり、代わりが前に出て牽制を再開する。
 この区域ではバグア側もUPC軍側も攻勢に転ずる事ができず、一時的に膠着状態が続くかの様に思えた。
 しかし。
 ―――ゴン! ゴン! ゴン!
 突如、着弾音が響き渡りタートル・ワーム達の装甲がへこんでいく。タートル・ワームが機能を停止して動きを止めていく。
『――こちら、LuckyDays。響月 鈴音(ga0508)です。UPC軍の皆さん、援護します。侵攻を開始してください』
「傭兵か! 了解した。流石だな‥‥行くぞ!」
 他戦闘区域でも同じように傭兵達の援護を受けてUPC軍の部隊が侵攻を再開する。
 徐々に、人類側がシカゴ市街の戦線を押し上げていくのだった。

 UPC軍側が猛攻に転じている頃――
 戦線を少し前に出たところで小隊を率いてキメラ掃討を行っている8246小隊がいた。
 彼らはバグア軍側が建造物などに罠を仕掛けている事を警戒し、それを探索しながら先行しているのだ。
「‥‥おかしい、これは」
「隊長! どうしたんですか?」
 桜崎・正人(ga0100)が隊長のリディス(ga0022)の様子に気づき声を掛ける。リディスは建物の影から機体を乗り出し、飛び出してきたキメラに向かってディフェンダーを突き立てた。
「敵の戦線が後方に下がってきましたね。これは、早めにシャワーが浴びれそうです」
 同じように建造物を盾にしながらガトリングを撃ち込んでいたレイラ・ブラウニング(ga0033)が声を弾ませる。
 しかし、リディスはそれを否定した。
「いや、これは明らかにおかしいぞ。敵が後退するにしても、何も罠を仕掛けていない‥‥」
「――隊長、どうします?」
「何か嫌な予感がしてなりません‥‥8246小隊、いきますよ!」
『了解!』
 8246小隊は機体を後方に向けて加速しながらガトリングを背後に放ち、各機が脚部バーニアを吹かして空へと飛び出す。
 向かうは、人類の希望の舟――ユニヴァースナイト。
 タートル・ワームの散発的な対空砲火を潜り抜けながら、後方に見えるUKへと機体を加速させた。

●赤き巨兵――シカゴ市街激闘

 ――何機かが気づいた? まぁいいわ‥‥予定通りに始めるだけ――

 放たれた弾丸がキメラのフォースフィールドと接触し、SESの衝撃エネルギーで無効化し内部へと突き抜ける。
 魔弾小隊の狙撃手、幸臼・小鳥(ga0067)は自らが撃った攻撃が成功したのを確信しながら、次の標的に向けて銃を構え直す。
「うぅ‥‥なんだか、敵がキメラばかりになってきてます‥‥」
「私達が押しているから―――というだけではなさそうね」
 隊長のロッテ・ヴァステル(ga0066)が敵の陣形を見ながら言葉を返す。
 何かが起こる、『蕾』から送られてくる情報から傭兵達は迫る脅威を少なからず予感していた。
 それは、まるで―――嵐の前の静けさのようで‥‥。
「各機、警戒を怠るな。敵が何か‥‥」
 ロッテが無線で指示を送ろうとした時だった。
 突如、各機の無線に何者かの介入を受ける。

『傭兵の皆さん‥‥先の戦いでは、世話になったわ―――でも、今度はそうはいかない!』

「リリアン・ドースンか!」
 月狼隊第3中隊所属第8小隊長の皐月・B・マイア(ga5514)がその声に対し叫ぶ。
『当たり。今回はこの機体で貴方達相手してあげる‥‥前回の借りはここで返させてもらうからっ!』
「前方より、敵機多数! ゴーレムです!」
 情報網『蕾』からの報告が入る。傭兵達の進路にゴーレム達の集団が見えた。
 その中に、機体を血で赤く染めたような塗装をしたゴーレムが一機。微かにフォルムが違うのが分かる。
「赤いゴーレム‥‥あれか。ステアーじゃない、嘗められたものだな!」
 鬼界 燿燎(ga4899)がその機体を見て鼻を鳴らす。
『嘗めているのは、どっちか――その身に刻んであげる!』
 ゴーレム達は前方で散開し、赤いゴーレムと3機の通常機が正面へと突撃してくる。
 傭兵達の各部隊が応戦を開始する。
 ゴーレム対ナイトフォーゲルの激戦が始まりの鐘を鳴らした。

 ビルの屋上から狙撃をしていたKVにゴーレムが体当たりをして、絡み合うように落下し地上へと激突する。
 それを援護するように動いたKVに、更に別のゴーレムが斬りかかる。
 ゴーレムの集団が数の多いKVに対し、性能の差で押し潰そうと戦う。
 しかし、傭兵達も伊達に数々の戦場を渡り抜いて来たわけではない。仲間に背を預け、迫りくるゴーレムに向かって連携攻撃で押し返そうと奮戦する。

「北西より、ゴーレム4機!」
「まだよ! まだ終わらせない!」
「見ろ、まるで敵がアリのようだ! 次から次に‥‥切りがない!」
「各機! 射線の確保に注意しろよ。確実に敵に弾を送り込んでやれ!」
「上上下下左右左右BA!」
「馬鹿やってないで、さっさと応戦しろ! 正面来るぞ!」
「我らが騎士様に近づこうなんざ100年早いぜっ。出直して来な!」
「希望への道を切り開く! 邪魔だっ! 落ちろ!!」
「一分なら持たせる、その間に何とかしてくれ!」

 戦場で幾千の無線が飛び交う。
 怒号、悲鳴、要請――――人の心の奥から放たれる叫びは戦場を包み込み、それを昇華させていく。
「リリアン・ドースン! 貴様ぁああ!!」
 魔弾小隊はリリアンの赤きゴーレムに向かって猛攻を加えていた。しかし、対するリリアンは護衛のゴーレム達を盾にしそれを防ぎきる。隊長のロッテが先の戦いで使った作戦を決行する。
「私達は『成長』する事ができる‥‥行くわよ、小隊各機! 私に続けぇっ!!」
 魔弾の新たなフォーメーション、ロッテを先陣に小隊員たちが攻撃を仕掛ける。
『甘いよ! 同じ事を二度も喰らうわけないでしょ!』
 リリアンはそう叫び、ゴーレムを急上昇させる。
「これで終わりじゃない!」
 空へ浮かび上がったゴーレムに更に別の隊員達が待ち構えていた。しかし―――
『甘いっていってるでしょ!!』
 特攻を仕掛けた御山・映(ga0052)がリリアンに斬り落とされる。更に、追い討ちをかけようとしたロッテも振り下ろされたゴーレムの拳で叩き落される結果となった。
『前回は手加減してやってたってこと―――気づかないの、貴方達は!』
「くっ! そんな‥‥!!」
 損傷した機体を立て直しながらロッテが呻く。
『それに‥‥貴方達、私達を気にしすぎだよ―――タートル・ワーム、砲撃開始! あの空に浮かぶ影を叩き落せ!』
「何!?」
 傭兵達はこの時になって気づく。このゴーレム達を相手している間に、タートル・ワーム達がUKに狙いを定めていた。

●希望の盾――空の軌跡

「ユニヴァースナイトはやらせない!」

 タートル・ワームがまさに砲撃を開始しようとしたその時、リリアーナ・ウォレス(ga0350)の声が響き渡った。
「数が多いッてんなら目の前のヤツからブッ潰す! MAXキメるぜ!」
 八田光一郎(ga0482)ら、部隊に所属していなかった傭兵達の有志と壬生浪士隊が集い、タートル・ワームに向けて一斉砲火が放たれる。
 彼らはゴーレムの襲撃に際し、UKを狙うであろう敵部隊を警戒していたのだ。
『くぅっ! タートル・ワーム、狙いはいい! 兎に角、撃てぇっ!!』
 雪崩れ込むKVに薙ぎ倒されつつも、タートル・ワームがプロトン砲を解き放つ。
 上空を飛ぶUKがこれに気づき、回避運動を開始する。しかし、放たれた凶弾はその船体を貫かんと突き進む。

「敵弾、来ます!」
 通信に入る『蕾』の情報よりも先に宇佐見 香澄(ga4110)が機体をUKとの間に滑り込ませる。
「ここでユニヴァースナイトを墜とさせるわけには、いかないから‥‥」
 彼女の呟きは無線に流れる事もなく、空へと四散する。衝撃がUKを揺らし、その手前で大きな煙が上がった。煙の中から炎を上げながら一機のKVが堕ちる。コックピットから投げ出されるように彼女の体が空へと飛び出す。そこへシスター・マリィ(ga6992)がKVを操り受け止める。空中での強制変形によって高度が下がるが、これを脚部スラスターを焼ききるまで吹かす。地上激突までになんとか踏み止まり、無事に着地するが、スラスターは完全に沈黙する形となった。
 その救出劇の間にも、対空砲火は続いている。宇佐見が防いだ攻撃に続いて別の砲撃がUKに直撃しかけるとき、これを防がんとクロスフィールド(ga7029)が飛び出した。彼はプロトン砲を磁気で逸らそうと戦闘中に実験を試みる。しかし、プロトン砲はその進路を変えることなく、UKとの間に立ったクロスフィールドを掠めていく。UKは対空砲火をいくつか撃ち込まれる結果となる。
 しかし、その対空砲火も長くは続かなかった。傭兵の援護を受けてシカゴ内に陸軍の本隊が到着し、タートル・ワームを退けていく。
『くっ! ここまでか‥‥だけど、まだ私とゴーレムがいる!』
 リリアンの叫びに反応して、それまで地上部隊を相手にしていたゴーレム達が次々にUKの方を目指し飛び立っていく。慣性制御を使い、空へと舞うゴーレム達を傭兵達は必死に撃ち落そうと遠距離装備で攻撃を仕掛ける。
 先にUK近辺まで下がっていた8246部隊が迎撃の要になり、次々とゴーレム達を撃ち落す。
『役立たず共っ! だったら、私が―――』
「行かせるわけにはいきません!」
 飛び上がる赤いゴーレムに向かって一機のKVが体当たりを仕掛ける。飛び出したKVがリリアンの載るゴーレムごとビルへと激突する。
『―――っ、邪魔ぁっ!!』
 蒼井(ga2848)が操るKVの体当たりを受けてリリアンが怒りに声を荒げた。ゴーレムが蒼井のKVを蹴り上げてビルから崩れ出る。KVが隣のビルに叩きつけられ動かなくなる。
『‥‥最悪だ―――』
 周囲を傭兵達に囲まれ、一機の赤いゴーレムが浮かんでいる。
「リリアン・ドースン、ここまでよ。動けば‥‥」
『‥‥動けば?』
「撃つ」
 若葉隊の篠森がそういってガトリングをゴーレムへと向ける。周りのKV達も同じように構えた。
『――ふっ‥‥あっ、はははは! やってみなよ!』
「警告はした!」
 リリアンの挑発を受けて全KVの銃器が咆哮をあげる。数秒足らずで全弾丸がゴーレムへと叩き込まれ、ゴーレムの腕を脚を吹き飛ばす。
 周囲に硝煙が立ち込める。
 粉々になったゴーレムの赤い破片が空から降る中、各部を吹き飛ばされた赤いゴーレムが煙を突き破り飛び立つ。
「やはりまだ生きていたか!」
 傭兵達が追撃をかける。しかし、それを邪魔するように他のゴーレム達が射線を遮るように飛び出す。
 リリアンの操るゴーレムは他のゴーレム達を盾にしてシカゴ市外へと逃走。傭兵達がそれを追いかけるものの、生き残っていたゴーレムやキメラに邪魔され見失うこととなる。
 シカゴ市街のバグア軍掃討が遂に終わりを告げた。
 そして軍の無線が入る。デトロイトから補給部隊が到着し、修繕環境が整ったのだ。

○ドローム社

―――陸軍到着同刻、ドローム社・重役会議室、オタワにて。

 やけに縦に長いその部屋には、やはり縦に長い楕円の卓が置かれていた。
 部屋は異常なまでに白く清潔で、卓を囲むように幾人かの中年が座り、そして一人、中年たちの前に立たされた研究員がいる。
 ブラインドからは薄く光が差し込み、完全防音の部屋に響く声はやけに空虚で、なんともいえない緊張感と溶け合い、非常に居心地が悪い。
 時間が動いてる事を主張するのは放映終了を告げるスクリーンだけで、時折、思い出したようにノイズが混ざっては映像をぶれさせる。

 先ほど入った、陸軍のシカゴ到着の報、そしてドローム社に当てられた前線からの伝言。

「空港確保直前、技術部の派遣を求む」

 その報告に、ドローム社の幹部達は浮ついた事だろう。
 そして緊急重役会議だ。そんな悠長な事をしている暇があるのか、といわれたら否だが、SoLCの技術はドローム社にとってほぼ最高機密、慎重に扱わないといけないのは必然だった。
 会議場は黙り込み、その中で研究員は微動だにせず、前方の重役を見つめている。

―――SoLCについて、使えると思うかね?

 そう、重役の一人が研究員に尋ねた。

「予備電源が生きていれば。少なくとも―――今フェイズ中に使用するのは難しいでしょう」

 予備が生きていればの話、だ。予備の予備ではとても賄う事など出来ないだろうし、それもバグアが都合よくSoLCに手を加えていてくれたのならの話。更に今フェイズでの使用は絶対不可能。
 ―――そもそも、まだ空港が確保出来ている訳ではないのだ。前線は綱渡りのような攻防が続いているという。
 作った兵器がバグアのものになったというのでは、社の威信にかかわる。なんとしても奪還しなければいけない。

―――あれで、ギガワームを撃墜するのだ。

 「かしこまりました、直ちに技術班を派遣します」

●願い――希望に乗せて

「それじゃ、頼んだぞ」
「えぇ、任せてください」
 補給部隊から受け取った物資を、UKが待つオヘア空港へと運ぶのを請け負ったハーベスター隊が補給兵に向かって敬礼を返す。
 隊長のシエラ(ga3258)は部隊員達に指示を出し、自らも愛機に乗り込む。
「掃討は終わっているとはいえ、未だ潜伏している敵もいるようなので警戒は怠らずに」
「了解です」
 油圧、フライト圧、共に上昇。KVのエンジンに火が灯る。各部チェック項目を確認してパイロットは頷く。
「ハーベスター隊、行きます」
 KVが補給物資を抱えて空へと舞い昇る。

 先の戦いで損傷を受けたUKは、輸送部隊が運んできた補給物資で一通りの修復と整備を終わらせる。その確認作業も間もなく終わろうとしていた。
 整備兵と共に回っていたミハイル・ツォイコフ中佐は、UKの大きな機体を眺めながら呟く。
「長い戦いだ‥‥こんな代物まで持ち出して、如何ほどの結果が得られるというのか――だが、それも分かる時が来た‥‥」
 そこへ整備主任が近づいてくる。
「中佐。整備作業、終了しました」
「あぁ。ご苦労――――さぁ、行くか。進む先は天か地か‥‥ユニヴァースナイト発進準備!」

○技術連の到着
 バイパー数十機の護衛を受け、ドローム社の技術連を乗せた小型機がオタワより到着した。
 場所は旧ミシガン空港。やけに荒っぽい着陸路に着陸し、完全に停止した小型機から、研究員と思われる白衣の人々が順に降機してくる。
 突貫工事で用意された着陸路、遠目に見える旧ミシガン空港の残骸、瓦礫。
 降機前から、ミシガン空港の惨状に言葉を失うものは少なくはなかった。空中からは、きっと空港が今どうなってるのかはよく見えた事だろう。
 これでも片付けたほうなのだと、技術者である彼らは知る由もない。先頭を切る男だけがただ一人、状況に動じずに、臨時本部への案内を要求してくる。
 そして案内された、シカゴ内・臨時本部。
 移動中、地下部隊は女神像の確保に成功していた。ギガ・ワームが迫ってくるのなら、空港ごとSoLGを爆破するという話だったが‥‥どうやら傭兵達は間に合ったらしい。
 現地のサイエンティストからの報告は『砲台残存、恐らく動作不能』。
 KVのカメラから転送されていく映像を食い入るように見つめ、爪を噛む研究員。
「やつらめ‥‥。‥‥‥‥こちらの技術を奪うつもりだったのか? ‥‥‥‥あてにならないものだな」
 表情には苛立ちの色が濃い。マイクが切断されているため、呟く言葉は傭兵達には聞こえず、俯いた顔のため見える事もない。
「だが、‥‥‥‥まだ生きていそうな場所はある」
 そうして顔を上げ、マイクを手にした。起動キーなのか、聞き取りにくく、発音もしづらいであろう言葉を呟く研究員。
 ‥‥‥‥言葉なのか?とてもそうとは思えない。
 だがその瞬間、サイエンティストですらお手上げだったハッチが作動し、内部の仕掛けがあらわになる。上がる驚愕の声、飛びつくように中身を覗き込むサイエンティスト達。
 ―――結論、理解不能だ。いや、とりあえず現状では操作不能な事位は判る。
 これは持ち帰って解析し直す必要がある、そう、男が傭兵達に告げようとした時―――。

○上層部の判断
 シェイドの一撃により、ユニヴァースナイトが墜落した。
 別に撃墜された訳でもないのだが、それでも本部の陣営には悲鳴が上がる。
 騒然とする本部、頭を抱えるヴァレッタ・オリム中将。その中でハインリッヒ=ブラット准将は冷静にモニターと地図を見比べている。
 苛立ちと共に机を叩き、オリム中将が立ち上がった。
 このままでは、シェイドとギガワームを阻止しきる事は不可能だ。
 そう判断したオリム中将がフレア弾の投擲と、全部隊のユニヴァースナイト護衛を命じようとするが―――それは、ブラット准将によって制止される。

「片手を失ったシェイドが相手か‥‥あの攻撃も濫用できるならとうの昔に使っていただろう。
 何らかのリスクを背負っていると考えて間違いありますまい。
 既にシカゴはおさえてあります。デトロイトから援軍部隊を派遣することも、オタワから決死部隊をワシントンにむかわせ、さらなる援軍を防ぐこともできます。
 予定ではギガ・ワームかシェイド、どちから片方でも到着したら空港を爆破でしたが‥‥どうなさいます?
 SoLCとUK。両方失わなければ、私も、あなたも責任を追求されることはありますまい」

 シェイドは、既に傭兵達の手によって片腕を吹き飛ばされている。
 SoLCは既に目の前にあるのだ、シェイドのレーザーが何度も撃てない事に賭けても、決して分の悪い賭けではないだろう。
 SoLCの奪取、及びユニヴァースナイトの死守、援軍が来るまで、持ちこたえさせる事は出来るのか。

「‥‥私は、完動していない機体を動かすことには反対だったのだ」

 そう、中将が呟き、そして決断を下す。

「オタワ守備部隊をシカゴに派遣! UKが相手の手に落ちることは許されない!!」
「了解いたしました。‥‥もう一戦おこなわれるということですな」

 准将が、頷いた。

<担当 : 日乃ヒカリ ・ 音無奏>

負傷者一覧

●大破重体(次回作戦参加不可能)
L(ga5469
天草・渉(ga0015)
宇佐見 香澄(ga4110 
蒼井(ga2848     

●大破(次回その機体では出撃不可)
鷹見 仁(ga0232
グリク・フィルドライン(ga6256
鏑木 硯(ga0280
ゴールドラッシュ(ga3170
遠石 一千風(ga3970
エル16(ga6547
一之瀬 大河(ga7397
美川キリコ(ga4877
煉条トヲイ(ga0236

●重傷
藤川 翔(ga0937
朏 弁天丸(ga5505
霽月(ga6395
フィーロ(ga7235
雷(ga7298
ベーオウルフ(ga3640
藤村 瑠亥(ga3862
ブレイズ・カーディナル(ga1851
水城 凍也(ga6892
崎森 玲於奈(ga2010
ジーン・ロスヴァイセ(ga4903
カルム・クウィンテス(ga6208
ココ・バレット(ga4752
大上誠次(ga5181
国府方 綾女(ga0459
カレン=キルヒナー(ga5144
クレア=オーガスタ・F(ga7312
ジョニー・マッスルマン(ga4697
姫川ミュウ(ga4713
雨宮慶(ga4715
終夜・無月(ga3084
月森 花(ga0053
ドクター・ウェスト(ga0241
内藤新(ga3460
ハワード・ラヴクラフト(ga4512
神崎・愛莉(ga3993
ルード・ラ・タルト(ga0386
ネーヴェ(ga6502
フル・リュミナス (ga4152
吾妻 大和(ga0175
間 空海(ga0178
霧島 亜夜(ga3511
キョーコ・クルック(ga4770
寿 源次(ga3427
カオーナ・シノハラ(ga2366
千葉・達哉(ga4916
ケマル・チャルシュカン(ga5586
佐伯 (ga5657
劉黄 柚威(ga0294
獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166
忌咲(ga3867
叢雲(ga2494
MIDOH(ga0151
劉・黒風(ga5247
ミハイル・チーグルスキ(ga4629
一条 かがり(ga5193
わんこ(ga5343
樋野・よし美(ga6460
百瀬 香澄(ga4089
蓮見 円(ga4620
櫻小路・なでしこ(ga3607
レーゲン・シュナイダー(ga4458
暁・N・リトヴァク(ga6931
緋室 神音(ga3576
ノビル・ラグ(ga3704
リャーン・アンドレセン(ga5248
アリス(ga1649
ゲック・W・カーン(ga0078
神楽克己(ga2113
御山・アキラ(ga0532
伊達青雷(ga5019)
伊達正和(ga5204)
雑賀孫一(ga0044)
青島・遼平(ga0258)
弓亜・優乃(ga0708)
烏莉(ga3160)
夏 炎西(ga4178)
香倶夜(ga5126)
石動 小夜子(ga0121     
秋子(ga0710         
花咲 カニヤ(ga0338     
ヴァルター・ネヴァン(ga2634 
藍晶・紫蘭(ga4631      
柊神・祢於(ga4633      
肴木(ga6372         
幾主 零図(ga7234      
クロスフィールド(ga7029   




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