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<報告書は前編:後編から成る>
カメル救出作戦 カメル脱出作戦 工作部隊潜入 瀋陽解放作戦
【工作部隊潜入】
キャプテン・エミター(gb5340)曰く。
「後に手を加えられた部分ってのは、案外目立つものだよ」
との事である。そのご意見に従ったかどうかはさておき、傭兵達はそれぞれの手段で、バグア製地下発電施設を攻略しようとしていた。
「まぁ、なるようになりますか」
その地下に繋がる電源ビルが、どこかにあるはずだと、正倉院命(gb3579)は、言い出す。人間には理解不能な形式で動いていると噂されるが、一部は人類製のものがあるはずだ、と。
「ふむ、増設されたモンがあるはずだが‥‥。このあたりかな」
地上の送電装備から延びるいくつもの配線。そのうち、大電力を送電出来そうな太いものを追いかけるエミター。流れを逆にたどれば、ゴールにたどり着くはず。
「どっかに、発電所を集中管理してるやつがあるはずだ。そいつを探そう」
ハウンド(gb9069)が、メンテナンス通路へと侵入していく。しかし、その中は、普段使っているとは思えないほど、広く、どこまでも伸びていた。
「やれやれ…ネズミがいないと良いのだが」
赤い霧(gb5521)がそう言いながら、暗視スコープを起動させる。手元には、かつて使われていた排気用ダクトの地図があるか、正直どこまで使えるか、わかったものではなかった。
と、その時である。送電施設のあちこちで、スパークがはじけとんだ。どうやら、お出迎えのようだ。
「方位磁石が回ってるし。まったく、バグアもやっかいなものを作ってくれるわよね」
葛城・観琴(ga8227)が持ち込んだ方位磁石は、正体不明の磁場にやられて、くるくるとダンス中だ。それでも、今進んだばかりの通路を記すと、近くの端末にまとめて流す。
「進行方向は‥‥こっちかなっと」
そんな彼らの道を確かめるべく、森 伊蔵(ga1262)が空になった薬莢を、一見何もない通路へと投げ込む。が、その刹那、ぴしっと電撃のようなモノが走った。
刹那、盛大に警報が鳴り響く。アクセスしていた者達には、侵入者を警戒するように冷却液が浴びせかけられ、IDを求める音に答え切れなかった傭兵達に、エラー音が鳴り響いて、侵入者を告げていた。
「ここは、だめかっ」
投げ込んだ薬莢を敵と認識したのか、がりがりと崩れ落ちる両側の壁。慌てて飛びのくが、通路は既に使えない。いや、そればかりではなく、振り返れば、あちこちで崩落が起きていた。
「どうやら盛大にトラップを引いちまったようだなー」
ハイア・フォールス(ga4614)と2人だけにされてしまった フロスト(ga3202)がそうぼやく。見回せば、連絡通路はあちこち分断され、傭兵達は小さなチームに分かれて行動せざるを得なくなっていた。
「さぁて、こっからが本番だ。行くぜ、相棒」
「…………」
偶然出会った相手をバディと決め、フロストはその先に続く漆黒の空間へ、体を滑り込ませていく。無口なハイアは答えなかったが、現れたキメラ相手に、援護射撃を食らわせてくれているところを見ると、協力してくれるようだ。
目指すは、KVの侵入出来る出撃用ハッチ。地下通路網の先にあるハッチは、敵の背後をつくに適している。
ところが。
『ようこそ。僕のダンジョンへ。君達って、ホントこう言うの好きだよねー』
通路に時折設置された監視用モニターから、声が響いた。どこへなりを潜めていたのか、そこにいたのはゾディアックの1人、レンである。毎度、バカにしたような口調で響かせた笑い。それを合図にしてか、次々とシャッターがしまっていく。
「パーティはこれからだぜ、お嬢さん方!!」
そのシャッターが落ち切る前に、須佐 武流(ga1461)が瞬天速でもって駆け抜けて行く。スピードを緩めようとか、現れるキメラ。しかし彼はそれを、しまりかけたシャッターごと蹴り飛ばす。
「賽は投げられた…鬼と会えば鬼を切る! 仏と会えば…叩き潰す!」
一方では、出会う敵に片端から突撃している。ミア・エルミナール(ga0741)が、倒した敵を盾にしながらタバールを叩きつける。キキっと小さな断末魔をもらすキメラをつっかえ棒に、しまりきらないシャッターに一撃を食らわせるミア。盛大に、通路が炎上する。その炎にあおられて、表れた警備らしき強化人間達に、フレデリカ・リンツ(gb7720)が突っ込んで行った。どうやら囮のつもりらしい。
「今のうちに、深く静かに潜行せよ‥‥っと、フフ」
密やかに笑みを浮かべた飯山 みちる(ga1840)が、キメラだけになった通路を、奥まで進む。這い伸びたコードは、もはやコードなんだか植物型キメラなんだがわからない。時々鳴動するように脈打ち、手元の機器が混乱しているかと思うと、上の方で何やらうなるような音。
「ふせて下さいっ」
刹那、頭の上を風が通り抜けて行った。ばちっと切断される音に顔を上げれば、何やら赤い珠の様なモノについた太いケーブルが、雲空獣兵衛(gb4393)の手によって引きちぎられている後だった。どうやら、死角になっていた場所にあったトラップを排除してくれていたらしい。
「気をつけろよ。ラシュ達は一人じゃないけど、錬力を温存しておくに越した事はないぉ」
かわいらしくそう言ったラシュカ・ファエッド(gb9485)の手には、監視カメラが握られている。どうやら、地の利は相手にあるらしい。罠だらけなのも、頷ける。
「2人とも、こっちだ!」
と、反対側の、閉鎖された扉から声がした。見れば、特殊な形のAUKVに身を包んだ夏目 リョウ(gb2267)が、閉鎖された筈の扉を強制的に開けている。
「残念だが、この地下扉の閉鎖は校則違反だ…速やかに開放させて貰うぜ!」
バグアに校則どうのっつっても聞かないんだろうが、そこは学園特風カンパリオン、白きヨロイに身を包み、出動準備はOKだ。人用通路を通って効率よく移動し、扉を開放して回っていたらしい。
「悪いね。配置状況はどうだった?」
「この先にいます。どうします?」
「OK、三人であわせれば、囲い込めるだろう。任せたよ」
それだけを言って、レムは封鎖通路の向こう側にスコーピオンを向けた。同じ様に、S−01を向けるシルバー。
「弾き飛べっ、紅き閃光!」
リョウの声が響くと共に、そして竜の翼と咆哮が、バグアの強化兵へと襲い掛かった。閉鎖区域の向こうでは、やはり分断されていたのだろう。
「にゃにゃい〜んばすた〜っ!」
フルーツバスケットαのアヤカ(ga4624)が、その右手を真っ赤に燃え上がらせている。
「この辺は、どうやら西側かな。そっちはどうだった?」
「大型輸送路から判断するに、このあたりのようです」
歩兵小隊ゾルダートの平野 等(gb4090)が、古い地図を持ち出して、格納庫の状況と照合している。通路との位置関係を意識していたリョウとも照らし合わせてみるが、通路は相当に複雑化していた。何よりも、シャッターやIDの入力ミス、明らかな侵入などで、今自分達が侵入してきたルートすら変わっているようだ。
「だったら、相手に道案内を頼めば良いのですわ」
同じ小隊のエリザ(gb3560)がそんな事を言い出す。巨大な竜の牙と言うべき、その手に握られた竜斬斧『ベオウルフ』がうなりを上げて振り下ろされる。
「やはり、いましたわね」
何もない、と思ったシャッターの向こう側に、人の姿があった。傭兵でもUPCの兵士でもない。そう判断したエリザが、その身を捕らえようと、距離を詰める。
「投降すれば生命の保証は致しますわ! 何ならワイン位はつけてもいいですわ!」
「人の食事は好みに合わないんだよねっ」
聞こえたのは、まだ少年の声だった。聞き覚えはなかったが、彼は近づかれる前に姿を消してしまう。どうやら、簡単に捕らえられるような者ではないらしい。逆に反撃を受けてしまう。仕方なく退くものの、払われた足が痛かった。折れているのかもしれない。
「皆さん、こっちに通路がありますよ!」
隠密先行を使って、脇道での警戒を行っていた綾野 断真(ga6621)が、見つけた通路へと手招きしている。そこには、どこから掛かりうけたシェパードを連れたグロウランス(gb6145)の姿もあった。
「どうやら、マウル大尉はここにはおられないようだが‥‥。若者に、こんな死に場所は似合わんよ。似合わせて堪るものか」
たまたま、マウルを捜索しにきていた所、偶然合流していたらしい。怪我をした者達もいる為、マウル嬢用に用意されていた救急キッドの一部は、応急処置に消えた。
「おかしいですね。やはり、監視されているような気がします」
小隊ごと地下に落ちたイエローマフラー隊の流 星之丞(ga1928)が、そう呟く。これまで、電力ケーブルの敷設状況や、地下道の使用状況から電力施設の位置を探していたが、その動きに先手を取るように、バグア達の姿があった。
「この地下通路があるからEQはいなかったのかな…思うよりもっと深くに施設への道は存在するのかも?」
「えー。流石に罠のテレポーターは仕掛けられてないと思いますが…石の中は勘弁です」
同じく護衛の諫早 清見(ga4915)の判断に、そう答える星之丞。今までの通路を地図に記録していた香原 唯(ga0401)が、照明を作動させている為、周囲はそう暗くはないが、手元の地図は人には理解出来ない形になりつつあった。
「ヒトを使うなら必要な空気の流れがあるはず…」
「冷却水の流れを追ったら、たどり着けないかな」
清見のセリフに、凛が端っこの排水パイプを示す。だが、追いかけた所で現れたのは、やはりバグア達強化兵だった。
「斬り込みます、援護を!」
隊長の命が下される。他の隊員が切り込んで行く中、凛と潮彩 ろまん(ga3425)がそれぞれの武器を振り下ろした。
「飛べ、忘れない思い!」
「必殺、波斬剣…神割の太刀!」
いや、チェーンソーなのだが。しかし、バグアはそんな彼らを嘲笑するように、囲い込んでくる。おかげで、小隊の中にも多数のけが人が出ていた。唯が治療してくれなかったら、重体に陥っても不思議はなかっただろう。
同じ事は、スターゲイト隊の周囲でも起きていた。
「こうでるとはね‥‥」
他の部隊から手に入れた暗号を中継して、敵の配置や規模を報告しているサーシャ・ヴァレンシア(ga6139)が苦々しく言った。だがそこへ、まるで作業している事を見越したかのように、バグア兵達が現れる。慌ててスパークマシンで応戦するものの、危険であるのは変わりない。
「無理しないで、下がっていてくれ。全員! 白兵戦を! 心してかかって下さい!」
部隊を指揮するクレア・アディ(gb6122)が、ドローム製SMGを掃射し友軍の道を作る。都合10人ほどの部隊になった隊の面々が、それぞれの役割と共に、応戦していた。だが、狭い通路で分断され、カメラは回らない。次第に追い詰められるスターゲイト隊。そこに光を差し込んだのは、スタートライン陸戦隊に属する紅月 風斗(gb9076)。
「安心しろ、峰打ちだ」
上部にあった細い通路から飛び降り、急所と思しき場所に一撃を食らわせる。が、人と違う彼らにそんなモノが通用するわけもなく、側面から流し斬りを食らわせる。背後に回ろうと、半歩身を引いた刹那、太いケーブルのような腕がしなって当たる。
「流し斬りが完全に入ったのに‥‥!」
二連撃につなげられないまま、がふっと吐血する紅月。自分の隊ではないものの、負傷した彼を未遂てては置けないと、クレアが援護射撃を試みた。乱戦となったせいか、バグア兵が気味の悪い笑みを浮かべて退却する。どこにあったのか、隙間へと転がり込んだのを見届け、くレアは通信機越しに応援を要請する。
「ほいほい、怪我人が出てるって? すぐ行きますよっ」
答えたのは、КЛЕВЕРの望月・純平(gb8843)。咥え煙草を手放さない彼、少しでも安全な場所を確保しようと、周囲を見回すが、すでに囲まれていた。
「道は開きます!そして、全員で帰りますよっ!」
が、隊長のアリエーニ(gb4654)は怯まない。AUKVのエンジンを吹かし、隊員達に強制突破を試みさせる。ヴぃぃんとマフラーがうなりを上げ、スピードが乗ったまま、通路の向こう側へと突破する。
「やれやれ・・・無茶な隊長を持つと苦労するな」
ぼやく純平。強化した装甲が役に立ったらしい。何とか囲みを突破してたどり着き、怪我人を運びだす。幸い、命に別状はなさそうだ。
「行くぞアルケオ各員、戦果をあげて生きて戻る」
その代償を奪いに行くかのように、別の場所では、アルケオプテリクスのルナフィリア・天剣(ga8313)が吼えていた。目指すは、この地下施設を預かる司令部だ。だが、複雑に入り組んだ迷路は、中々ゴールを見せてはくれない。逆に、アルケオの各員を分断してしまう。
「切り込み撃ち込み押し通る! 道を開けなさい!」
ヘッドライトをつけた緋沼 藍騎(gb2831)が、ガトリング盾で弾幕を張り、イアリスの一太刀を浴びせに行く。そのせいか、キメラや比較的弱いと思われるバグア兵が弾き飛ばされる。
「私のミカガミの代償はこの拳だぁああああっ!!」
いや、弾き飛ばしたのは、別の傭兵だった。愛機を落とされ、頭に来ているらしい零崎 魅識(gb4804)が、盛大に叫び倒しながら、ツインブレイドでぶん殴っている。そんな妹の姿を見て、ため息をつく零崎”こいつ”重蔵(gb4063)。
「ふぅ…ふぅ…この姿ではここは、蒸すな…」
何しろ、空調が効いているわけではない。全身タイツの重蔵には少し暑いらしい。そう、妹の怒りも耳に入らないほどに。だが、そのおかげでか、関節技でもって沈めた敵の戦闘服を採取する事が出来た。
「ここはクリア、と。さて、行きますよ?」
ネヴァン(ga7635)が目印のペイント弾を撃ち込む。特殊な塗料の入れられたそれは、闇に閉ざされるはずの通路を照らしている。
「ふむ、だんだん分かってきました‥‥」
マッピングを行って、状況を整理すると言うアイディアは、そこかしこで実行されていた。デイジーガーデンもその1つ。担当の鈴木 一成(gb3878)が、建設当時の地図を頼りに、自前の方眼用紙に書き込んでいる。その情報源となっているのは、部隊を率いている鴇神 純一(gb0849)の探査の目だ。
「・・・む、ここだけ音違うな。よしこいつをくっつけて、ワイヤーびよーんと」
遺跡探索経験のある彼、壁をこんこんと叩いては、隠された鍵穴のない扉や、怪しい偽装工作を見つけようとする。目的は、出撃ハッチの制御室発見開放と敵機動兵器格納庫の位置特定だが、そう簡単には行かなかった。
「伏せろッ」
八島 翔(gb5297)が、軍から調達してきた施設破壊用の携行爆薬をセットし、ワイヤーを引っ張れば、ちゅどんっと装甲が吹っ飛ばされる。だが、バグア製の壁はそう簡単には壊れない。逆に、壁中にキメラと思しき目玉が浮き上がった。
「やはり罠か・・・・」
「純一さん、危ないっ」
テミス(ga9179)が悲鳴じみた声を上げた。見れば、その手には閃光手榴弾が握られている。ぽいと投げられたその爆弾は、周囲に盛大な光を撒き散らす。
「今のうちに突破を!」
目玉の化け物のようなキメラが右往左往する中、砕かれた壁を乗り越えて行くデイジーガーデン。気付いて追いすがるキメラ達には、林・蘭華(ga4703)と鳳由羅(gb4323)の2人が立ちはだかった。
「・・・・・・やらせない」
蘭華が懐に入り込み、爪で目玉を突く。腐臭にも似た体液が撒き散らされ、壁に飛び散った。その死体を踏み越えて攻撃を加えてくるキメラに、今度は由羅が剣を振るう。
「単純ですね……ルチア君の方がもっと高度で趣のある罠を作りますよ。傭兵部隊、徐々にではあるけれど、クリアするエリアが増えてきたようですね」
白雪(gb2228)が弓で監視カメラを破壊し、地面に撃ちこんでは、振動系の罠を確かめている中、
持ち込んできたノートパソコンで、情報を処理していた明治剣客浪漫団のシン・ブラウ・シュッツ(gb2155)が、記入したマップを、当のルチア(gb3045)へと見せている。それを、通信機で他の部隊にも流していたルチアだが、予想外に手当てを求める声に驚いていた。
「けど、怪我人も多い‥‥。流石に一筋縄ではいかないですね」
傷ついた仲間には、極力練成治療を施している。他にも、時折治療と手当てを行っているらしき声が聞こえていた。大きな部隊ともなれば、必ずと言って良いほど、衛生班が同行している。それでも、重傷中傷軽傷と、排水溝に流れて行く血は多かった。
かくして、局地的な戦いに、苦戦を強いられる傭兵達。しかし、傭兵達はそれぞれの手段で、地下通路の置く深くへとたどり着く。だが、ほとんどの傭兵達は、まるでゲームでもするように配置された強化人間やキメラ達に行く手を阻まれ、盛大に傷を負っていた。持ち込んだ機材の半数は、ジャミングにやられて役に立たなかったが、紙とペンという原始的な手段が、もっとも効果的だった。事態が動いたのは、その原始的な手段を、日常誰よりもよく使っているだろうカンパネラの学生達である。
「ここではない。ということは次ですね。急ぎましょう!」
竜装騎兵第一分隊のノルディア・ヒンメル(gb4110)が味方に呼びかける。ラストホープで彼氏が待っているのだ。こんなところで沈むわけにはいかない。
「脇道から敵の反応あり! すぐにきますよ!」
「こんなところで止める訳にゃいかねぇっすよ!」
イザベルの警告に、吉影がクルメタル製のP−38を向ける。わさわさと現れたキメラは、細い通路でも走り回れるよう、車輪のついた細身の体をしていた。まるで、スズメバチのような体躯のキメラは、低空飛行を行いながら、傭兵達を囲い込む。
「命を懸ける戦いであっても一歩も退かない。それが竜装騎兵です!」
応戦するマリエ・クラヴサン(gb2694)。先陣を切って戦うマリエが倒したのは、小柄なバグアだった。とてとてと近寄ってきたリティシアが、おもむろにそのヘルメットを引っぺがす。
「マウルたんじゃないか」
『ナイナイ』
中にあったのは、どう見ても豚鼻の化け物と言った顔。行方不明のマウルではなかった。おかげで、リティシア(gb8630)は部隊全員からツッコミを受ける事になる。
「さ〜って、管制室はどこかな〜?」
リティの後頭部に、手にしたミニハリセンで、盛大にツッコミを敢行した大槻 大慈(gb2013)が、隅っこにあるケーブルの束らしきものをぶっ叩いて回っている。天戸 るみ(gb2004)も、「ケーブル探検隊っ、って何かの番組に聞こえません?」何ぞと言いながら、同じ様に破壊行為を繰り返している。だが、るみは破壊したよくわからない機械から、ケーブルを引っ張り出すと、それをディンゴ・ディー(gb4350)へと渡した。
「管制室が予想されている通りなら、センサーのケーブルが集まっているはずだ」
ぐいっと引っ張ると、かなり奥の方まで続いている事が分かる。その様子に、ディンゴは招待には属さずに動いている面々‥‥【暴竜】へと連絡を取ってみる。
「‥‥と言うわけだ。そっちにペイント弾のあとはないか?」
「あ、はい。あります。見つかった奴をそっちに転送しますね」
通信担当ディノ・ストラーダ(ga4973)がデータを返送してくれた。それには、数々のマーキングだけではなく、在位置との照合や制御室の予測地域情報など、暴竜の各生徒傭兵達から集められたポイントが映し出された。
「どうやらゴールは近いようですね。他小隊のデータもお願いします」
「了解。この先は狭いので、スイッチをお願いします」
隊長の鬼道・麗那(gb1939)が、ヨグ=ニグラス(gb1949)の補佐を受けながら、いままで傭兵達が集めた情報を整理している。その一元化された情報により、地下通路の姿が、次第に明らかとなっていた。3次元映像で表示されたそれは、この先に細い通路が何本も延びている事を明らかにしている。細い通路に誘い込んで殲滅と行きたかったのかも知れないが、そこはヨグの指示で、怪我だけで済んだ様だ。
「……味方部隊より、マップ攻略確認。 ……隊長、号令を」
竜脈システムを使って、その情報を受け取った聴講生部隊『竜友』のドニー・レイド(gb4089)がそう言った。と、隊長の澤本 咲夜(gb4360)は大きく頷いて、他の隊員達に命を下す。
「OK。竜の片翼を担う我等『竜友』、ここに見参! ですわ」
「陽光の切れ味を試されたい者は前に出よ!」
ハッチは近い。そう確信した片桐 綾乃(gb3443)が、周囲の敵を切って切って切りまくっている。と、その向こうに、非常口と書かれた扉が見えた。鉄製と思しき扉に、麗那がこう断を下す。
「あの向こうがハッチね。皆様、お願いします!」
うぃんっと、AUKVがバイク形態に変化する音が聞こえた。散発的に続く戦闘の合間を縫って、ヘッドライトの明かりが点る。
「正面より切り結ぶのみがAU−KVの使い道ではありません」
戦いが膠着していると見て取ったのか、メグリム・ギルス(gb2180)がバイク形態のまま、その中央を駆け抜ける。弾き飛ばされたキメラの肉片が降り注ぐ中、同じ様にバイク形態にしたのは、レイード・ブラウニング(gb8965)。
「塵も積もれば何とやらだ。こんだけブチ壊せば、少しは足しにはなるだろ!」
その足元にあるコンデンサーを、レイードは見逃さなかった。竜の翼を発動させ、そのコンデンサーを貫いて行く。そして。
「ぶんぶ〜ん、エルのお通りデスぅ〜♪ バイクの前に飛び出ちゃ危ないデスぅ」
残骸を踏み越える用に突進して行くエルミナ・ハディハディ(gb1899)。轍と残骸、そしてキメラの死体が残る凄惨な光景。そんな中、リンガーベルのイーリス・立花(gb6709)が、探査の目を使いながらこう言った。
「これを突破すれば、行けます!」
既に、同じ小隊の潜入班から、手近な端末を経由して、地下マップを受け取っている。それによれば、ハッチはすぐそこだ。それを見て、小隊を率いる紫藤 望(gb2057)が、隊員達に突撃命令を下す。
「よぉし、リンガーベル。突撃ーー!」
「了解。面倒なことになる前に、さっさと済ませるか」
御門 砕斗(gb1876)が水を得た魚、振り動かされた鈴と言わんばかりに、乱戦へと持ち込む。七市 一信(gb5015)がガトリングを乱射し、その開けた穴に、隊員が身を躍らせる。扉の向こう側に広がる制御室を目指して。
「怖がってる暇があったら……前へ進めばいい」
ソリス(gb6908)がそう言いながら、切り込み役に続いて瞬天速で間合いを詰めると同時に、ラブルパイルを打ち込む。ごぉんっと言う轟音とと共に、鉄の扉が吹き飛んだ。
「なんだ。たどり着いちゃったんだ。つまんないねー」
扉の向こう側にいたバグアと思しき兵が、無表情のまま答える。楽しんでいるようには見えないが、それでも彼らは後ろの画面へ合図する。刹那、格納庫の護衛が目を覚まし、乱入していた傭兵達を踏み潰そうと稼動する。彼らが、何を考えているのか知るよしもないが、制圧できなければ、ハッチは開かない。
「悪いが手加減できないぜ!」
しかし、竜装騎兵は止まらなかった。嵐 一人(gb1968)がそう言いながら、手近な強化人間へ飛び掛る。
「まだまだ、勝負はこれから」
彼の天元剣と共に、盾を構えて突入する水無月 春奈(gb4000)。鮫島 流(gb1867)がグラファイトソードで敵を薙ぎ払い、邪魔する敵は、舞 冥華(gb4521)が、ガトリングシールドで蜂の巣に。
「まだだ! トリガーオフ・・・インパクト!!」
両の手に握られた機械刀が受け止められた刹那、姫咲 翼(gb2014)がそのトリガーを絞る。乱戦模様となり、怪我人も多く出たたその隙に、ジェイ・ガーランド(ga9899)が、フェアリー・チェスを率いてハッチの中へなだれ込む。
「一発必中、一撃必殺…貫けっ!」
その攻撃により、薄暗かった周囲に、地上の光が差し込む。照らし出したのは、出撃ハッチ内部の光景。
「どうやら、この姿が役に立った見たいだね」
その影で、ほくそ笑む小森バウト(ga4700)。頭のヘルメットが地に転がった。整備員に成りすまし、ハッチを開きやすくしておいたのが幸いしたようだ。その手には、イザと言う時の脱出用に、爆弾のリモコンが握られている。
「いいね〜、ヒリヒリするぜ」
出てきた護衛に、嬉しそうに言う蓮田 倍章(gb4358)。鳴り響く警報が、タロスを呼び出すが、
「そっちはそっちにお任せするよ〜っと」何ぞと言いながら、武器を使いまわしている。
「こっちは任せて!あとは頼んだよ!」
そう答える氷雨・翡翠(ga1860)。ハッチ開放を受けて、既に外側で待機していたKV部隊がなだれ込んできたのだ。それは、彼ら未入隊の者達ばかりではない。空にいる時と同じ様に、隊列を組んだ各小隊や分隊が、そのハッチを占領しようと、暴れ始める。
「この銃撃音が貴様らへのレクイエムだ! 疾く逝くがいい!」
Ham−sterのゴールデン・公星(ga8945)が、小隊の面々と共に、ガトリングをばら撒いている。ゴーレムの幾匹かをひきつけている。
「的が動かないと楽でいいですね。派手に壊しますよ」
「よし、どっからでもかかってきなさい! グーで殴るから!」
そこへ、ガーデン・バーベナ隊のセラ・インフィールド(ga1889)がチェーンソーとグレネードで派手に施設破壊し、デイジーガーデンの梶原 悠(gb0958)が、KVのグーで殴っている。タロスもまた然りだ。
「こいつらはユダでもシェイドでもない。確実に仕留めるよ!」
「サブ機体であろうと新型機に遅れは取りませんよ!」
若葉分隊【碧】を率いるの夕風悠(ga3948)が、メンバーと連携し、高分子レーザーの集中砲火をお見舞いする。タイミングを見計らいブースト使用し肉薄、月光を炸裂させたすぐ後に、アテナイを手数で振り回すソード(ga6675)。
瞬く間に破棄された敵の巨人兵に、味方の傭兵が歓声を上げて答え、KVに乗っていた傭兵達が、その声に答えている。それらは、月狼第肆師団にある氷狼と共闘する【薔薇姫】にも言える事だ。
「私達も参りますわよ、美しき薔薇には棘がございますの」
メシア・ローザリア(gb6467)が、未名月 璃々(gb9751)に合図している。歩兵部隊の彼らだが、歓声に答えわけには行かない。
「シャッターチャンスは逃さないっと。これで破壊できるかな」
コードを取りつけ、電圧を上げようとする璃々。だが、バグアの施設は電圧で動いているわけではないので、罠までは壊せない。それでも、璃々はその部品をカメラに収めていた。
「おっしゃ、これで何とかなるな」
トラップの嵐に、閉口していた、マーズドライヴのシルバーラッシュ(gb1998)が、嬉しそうに言った。当たって砕けろは性に合わないのか、口調の割には慎重に進んでいた。
「気をつけてくれ。そろそろ、出てくるはずだから」
組んでいる鯨井レム(gb2666)が油断なく周囲を見回している。と、目の前のシャッターがゆっくりと開き始めた。そして、その隙間から見える一番発電所。そして、周囲には護衛の姿。
「シェイク・カーン、か。成程、多少は切れるらしいな」
苦々しくそう言うレム。発電施設が敵のウィークポイント足りえるのであれば、無人の迎撃装置のみに防衛を頼ることはしない、と推測したまでは良かったが、相手はそれよりも一枚上手だったらしい。どこから見ていたのか、強化人間を警戒していたレム達に、有毒ガスを浴びせようとする。だが、それと同時に、地上の一部が重々しく開いた。見れば、ちょうどそこへKV部隊がなだれ込む所だ。
「例え破壊できなくても、施設に通じる道を爆破するだけでも効果はある筈です!」
橋頭堡付近で待機していた、ガーデン・フリージアの九条院つばめ(ga6530)が、発電所の設備をG44と機関砲で破壊してくれる。それにより、地上の歩兵部隊が、制圧を行い始める‥‥。
こうして、被害を多数出しながら、地下に設置されたバグア製の発電施設を発見、破壊する事に成功した。
だが、地下は要塞であると共に、逃げ場のないトラップであるとも言える。その事に、傭兵達はまだ気付いていないのだった‥‥。
<執筆 : 姫野 里美 >
<監修 : 音無奏 >
<文責 : クラウドゲームス株式会社>
【瀋陽解放作戦】
如何に強固な城壁を以ってしても、陥落し得ぬ城などは存在はしない。
‥‥でも、それは本当に――?
瀋陽市街地、入り口付近。その光景は、一言でいえば圧巻であった。
目の前に聳える近代建築物。それを囲むように展開する、地下通路網へと繋がるポイントも有するであろう巨大道路の渦。
「皆‥‥どうか御武運を」
市街地へと向けて進むKV、リッジウェイの操縦席でスタートライン支援隊の八束 奨真(gb7848)は1人呟く。
今回はスタートライン隊の歩兵戦闘要員を同乗させていた彼だったが、思わずこう呟くのも無理はない。何故ならば
「この都市の施設そのものが兵器か‥‥」
そう、ここは巨大都市瀋陽、またの名を重武装要塞都市・瀋陽。
つまり、この目の前に広がる都市そのものが兵器としての機能を有しているのだから‥‥。
「さて‥‥何処までいけるか‥‥」
この先に見るものは何か。フェニックス隊を指揮しつつ、夕凪 沙良(ga3920)は静かに
一度目を閉じた。
本作戦の主目標は、瀋陽市内の1番発電所破壊である。だが、ただ1か所の施設を破壊するにしても、その困難性は明らか。
しかし、それでも成し遂げなくてはならない。小さな力でも良い。それが集まれば、瀋陽の長城ですら壊せるはずだから。
かくして、強き信念のもとに集った傭兵達は、数多の犠牲の上に敷かれた道を歩み、瀋陽市街地へと足を進めるのだった――
●河を越えて
「‥‥うげー。コレ、行けるか?」
「行くしかなていんだよ、さァ気合入れな、アンタたち!」
進攻開始。まず、市街地への入り口を確保する為動いた傭兵達。当初の予定では3番発電所から順次破壊する手はずであったが、、発電所付近にユダが出現したことから、UPC本部は急遽渡河地点を瀋陽東塔空軍基地周辺の橋へと移行。1番発電所の破壊を優先することになっていた。
それに伴い、傭兵達の進軍も該当橋へと集中していたのだが、場所は敵軍基地に近接する区域だ。さすがにあちら側も進攻を簡単に許す様子はないらしく、初っ端から激しい戦闘が始っていた。
目の前に飛び散る激しい閃光の波に目を細めながら、思わず言葉を濁すlilaWolfe隊のジングルス・メル(gb1062)。その発言を無線越しに聞いた同小隊のレーゲン・シュナイダー(ga4458)は、機槌で前方のワームを潰しながらメンバー全員へと喝を入れる。
「うへ〜おっかね〜。まっ、やってやるけどなっ!」
そんな、覚醒により口調の変った彼女の言葉に背を押されてか、メルの操縦桿を握る手にも力が入る。
渡河作戦。この作戦を実行するにあたり真っ先に直面する難関、橋梁の守護。それこそが、lilaWolfe隊の課題だった。
「気分は武蔵坊弁慶って所だな。つー事で、此処から先は通しゃしねーぜ‥‥!」
KVの片腕には機盾を構えつつ、ライフルで的確に敵を撃つのは小田切レオン(ga4730)。照準を定め、発砲。直線上に位置する大型キメラへ命中。が、それでも止まらない敵が突進してくる。
「レオンさま、お下がりください。私が参ります‥‥」
しかし、舌打ちしたレオンの後方から飛び出した聖 海音(ga4759)がレッグドリルで敵の突進を正面から受け取った。
飛び散るキメラの体液、肉片。それを半回転して海音は振り払う。
「先はまだまだ長そうだな」
「お互いのフォローで乗り切りましょう」
機体は背中越しに、声は無線越しに。戦は果てなくとも、信頼出来る仲間とともに。激戦は、まだまだ始ったばかり――
「T−ストーン、作戦行動開始!」
橋梁の確保に少し遅れつつ、緩急をつけずにうたれる次の手は、いよいよ市街地への本格的進攻であった。
だが、無論その前に見える空軍基地への敵対も疎かにはできない。基地からの猛攻を抑える部隊とは別に、こちらは一足早く散開し市街部へと入り込んだ小隊T−ストーン。
「破壊作戦ならば俺のはんまーの出番だな!」
クリス・ディータ(ga8189)の指揮の下、まずは生身部隊の進軍する為の前準備として、周辺の雑魚と敵出撃ポイントをアルト・ハーニー(ga8228)らTストーン隊の面々は破壊して回る。
今回の作戦は、ここ瀋陽という1地域の単位で見ても、KV部隊、生身部隊を軸に、いくつもの作戦が同時実行されると言う非常に複雑なものであった。
故に、生身部隊の動きを鈍らせないTストーンの助け船が果たした成果は大きく、第一波として重要な役を回されていた彼、彼女達。
だが、何よりも大きかった収穫、それは――
「これなら向こうからは使えないけど、僕らは必要な時に使えるはず‥‥!」
そう、この『勢い』だった。敵の出撃ハッチを破壊しつつ、更に瓦礫を遮断物に見立てるビッグ・ロシウェル(ga9207)。一見派手な突撃ながらも、緻密な戦略が生んだ人類側の好機。
地の利はバグア側にある。だが、故に気後れしてはならない。先行部隊に続き、第2波の部隊は胎動を始める。
第1波が作りだしたチャンスに指揮も奮い立ち、猛き者達はいよいよ本格的な進攻を告げいくのだった。
――同時刻、生身部隊班
本作戦の初動は、KV地上班によって担われる。というのも、作戦の流れとして、まず市街地周辺にかけて集中する敵勢力をある程度排他する必要があるからだ。
特にアグリッパ、都市内の武装内蔵ビルといった対空兵装の存在は人類側にとってネックで、これらをある程度無力化するまでは、KV爆撃班は始動すらままならない状況であった。
だが、事は中々上手く運ばないのも事実。まず空軍基地の制圧を試みた傭兵達を手荒く歓迎したのは、数多くのワーム達と、KVでは手のおえないマグナムキャットといった小型高火力キメラ達。
特に厄介なのは後者で、死角からの重い一撃で機体を揺さぶられたKVは、敵の良い的だ。
「蒼穹武士団、出陣っ!!」
とは言え、それらに対抗する戦力がないわけではない。
そう、KVで対応が難しければ、生身の人員を送り込めば良いのだ。
「気合い入れていくぜ!」
雪ノ下正和(ga0219)の一声と共に、一気に戦火渦巻く激戦区へと突入していく蒼穹武士団。前衛で攻防に出る伊達青雷(ga5019)に続き、雪ノ下はスコーピオンで敵を狙い撃つ。
だが、この小隊の何よりも凄かった部分が‥‥
「ヒーロー登場っ! 簡単に倒せると思うなよ?」
あしゅらのお面と鎧に盾、そして機械剣を片手に携えたどう見てもヘンt‥‥ヒーロー姿の囮、リュウセイ(ga8181)の存在だ。
「グルゥア!」
とにかく色々な意味で目立つ彼。言うまでもなくキメラから集中砲火を浴びるわけだが、痛みなど何のその。若干涙が滲んでいる気もするがガッツリと敵を引き付け、蒼穹武士団の皆が待ちうける場所へと敵を誘導する。
そんな彼らの努力もあってか、航空基地の戦力を完全とまではいかなくとも、ある程度削ぐことに成功した傭兵達。
かくして、繰り返される攻撃はUPCや傭兵に大きな損害を与えたものの、結果的にバグア軍は防衛機構が豊富な市街地へと撤退を決断する。
UPC軍を引き込もうという意図は見えていたが、前進のチャンスには違いない。そして戦場はKV地上班を先頭に、いよいよ本作戦の大部隊、瀋陽市街地へと向かうのだった。
●要塞都市
「道を切り開くのはガーデンにお任せ、です」
目の前に広がる建築物全てが敵に成り得る。これ程のプレッシャーを感じる場面は、そうないだろう。
そんな重圧にも負けず、市街地へと斬り込んだのはガーデン・アイリス隊。
「梅雨払いのために派手に暴れるぜ」
風間 静磨(gb0740)の弾幕に支援されながら、近接する敵にドリルを突き立てる来栖 晶(ga6109)。
「厄介な物、作りやがって‥‥」
しかし、やはり市街地中心部に近づいて行けば行くほど、機体に至る衝撃の回数が増えるのを感じ、待威 勇輝(gb4230)は唇を噛みしめる。彼の視線の先、そこには、衝撃を作りだす元凶の武装内蔵ビルが聳え立っていた。
そのビルから煌めく閃光が奔る。瞬間、空高く舞い上がる土煙。大地が裂けるほどの爆発が、至る所で起こっていた。
「白クマー! 道は作ったぞ。思う存分機体のうらみ晴らしてこいよ!」
その衝撃に呑まれ、ウーフーの脚部が限界なのを警報アラームで確認した神撫(gb0167)は、無線越しに声を張り上げる。
視認すら困難なほどの噴煙が機体を包みこむ。無論、それは神撫だけでなく、その場にいたアイリス隊全員の機体をだ。
「アイリス、バトンは受け取ったぜ。さぁ繋ぐぞ、この思い!」
だが、その爆音にすら負けぬ力強さで飛び出す機体が1機。
「木端微塵に叩き潰してしまいましょう!」
「これだけ多いと面倒だな。手当たり次第、片っ端から壊していくか」
いや、2機、3機。次々と飛び出して来る機体達。
「ガーデン・ガーベラ隊、進軍を開始する!」
繋がれたバトン、それはきっと勝利へのリレー。
そこでは、鈴葉・シロウ(ga4772)率いるガーデン・ガーベラ隊のリゼット・ランドルフ(ga5171)や常 雲雁(gb3000)が、アイリス隊の作った活路を走っていた――
「みんなの広場のアイドル! マウたんをヨリシロにさせる訳にはいかないよねッ」
さて、場面は変わってこちらは、小隊ゲソレンジャーが活動している瀋陽市街の西寄りに位置する市街地。
「マウたんを失う事は全国マウたんファンにとって地球を失うに等しい大打撃! 絶対救助だよ!」
そう声を上げ、自身に気合を入れるのはミヅキ・ミナセ(ga8502)。
「我々はゲソレ‥‥いや、マウたん救助し隊だッ!」
実は今回、行方不明となっているマウル・ロベル大尉を始めとした正規軍将兵の救出活動を行っていた彼ら。
周囲のキメラをガトリングで牽制しながら、Dr.ヘナチョコビッチ(ga4119)達はマウたんことマウル大尉の姿を懸命に探していた。
瀋陽市街の西寄りの本市街地では、相変わらず武装内蔵ビルが砲火を浴びせてくる状況であったが、HWやゴーレムなどの機動兵器は数えるほどで、大型キメラとの遭遇がある程度。
拍子抜けするような状況ではあったが、ユダの巡回ルートに位置する為、それに一度遭遇すれば1隊の全滅は必至という状況でもある。とはいえ、その全滅までの僅かな時間と移動にかかる時間を稼いで、捜索を行うマウたん救助し隊。
多少の時間はかかりながらも、人類側は確実に進攻しつつ、更に捜索の手も緩めずに済んでいた。
となれば、次の目標はやはりアグリッパといった対空兵器の破壊であろう。
「陸戦KVの本領発揮だ! 疾風迅雷の進撃、見せてやらぁ!」
「高速道路と言うこの立地、この機体の真骨頂をお見せ致しましょう」
まずアグリッパ破壊の為動いたのは、月狼第壱師団焔火、月狼第零師団槍皇といった月狼のメンバーだった。
アグリッパを視認後、急接近しつつKVを車型から人型へシフトした宗太郎=シルエイト(ga4261)は、その勢いを殺さぬまま加速し最大まで高められた突進力もろともエクスプロードを突き立てる!
だが、風穴を開けつつも活動停止までは至らないアグリッパ。と、そこに更なる一撃をぶち込んだのは宗太郎の左右後方から追従していた夜月・時雨(gb9515)と銀・鏡夜(gb9573)の2人。
「高速道路と言うこの立地、この機体の真骨頂をお見せ致しましょう」
地の利はバグア側にある。だが、活用の仕方次第では、その状況もまた変るのだ。
高速道路というタイヤでの走行に適した地は、彼ら車型のKVにとってはこれ以上ない程の地形であった。
「其処退け其処退け儂等が通る、大破が厭なら小破して退けぇ!!」
徐々に戦闘の舞台は市街地へと移っていく主力部隊。
移れば移る程今まで以上に激しい武装内蔵ビルからの砲撃、銃撃、ミサイルが出迎えるのは至極当然。
しかし、本来奇襲用の兵器である武装内蔵ビルなどは、一度位置が判明してしまえば情報共有によって二度目の奇襲を封じられ、結果一つずつ確実に破壊されていく。
鬼界 燿燎(ga4899)は周囲の雑魚キメラを駆逐しつつ、沈んで行く武装ビルを横目にアグリッパに機刀の一薙ぎ。
先の航空基地制圧にて疲弊こそしていたものの、その勢いは未だ衰えない。
「後方には後方の戦場がある!」
「ほな、次の機体どうぞ」
しかし、それもそのはずだった。何故ならば、この瀋陽解放作戦には、最前線の部隊の戦線を維持する為に、数多くの後方支援部隊も出撃していたのだから。
前戦には前線での戦いがあるように、後方には後方の戦いがあると言う孫六 兼元(gb5331)。彼と同じ小隊スタートライン支援隊の逆代楓(gb5803)は、孫六が人の怪我を治療している間、KVの整備へと手を回す。
役割を分担しての、的確かつ迅速な援護。このような後方支援部隊がいてこそ、前線の勢いは維持できるのだ。
そして。
「前進在るのみ! アヘッド! ゴーアヘッド!」
FANG隊の九条・護(gb2093)達の目の前で地に首を垂れるアグリッパを確認したG.of.F隊の鈴原玲(gb6154)は、力強く無線へと声を発する。
「【獣道】は構築された、これより我等は敵を狩る【猟犬】なり!」
その言葉から数秒後、近接する武装ビルは機動を停止した。彼の手によって、ビルの電力ケーブルが切断されたのだ。
「狩りの始まりですわね」
呟く同小隊のアイシア・ウィッチ(gb8048)。かくして、遂にアグリッパ、武装ビルの機能停止にも手が届き始めた傭兵達。
それはつまるところ――
「遅れ分は取り戻す!! SMG小隊各員突貫します!」
そう、KV空戦班の、本格的な進攻の開始であった。
●地を食らい空を制す
その壁は、鉄壁を誇るはずだった。しかし、大地を支配すれども、空に壁を敷くことは叶わず。
対空兵器という、ある種の要を次々と失っていくバグア軍。それにより始りを告げたKV空戦班の進撃は、敵側にとって予想を越えるものであった。
「待ちなさい楓!! 一人じゃ危ないでしょうが!!」
「うきぁ〜ミサイルパティーだ〜にげろ〜」
一斉攻撃開始との合図を受け、待ってましたとばかりに飛び立ったのはSMG小隊の火絵 楓(gb0095)。その後を追うキッカ・小林・クルス(gb0155)や滝岡海(gb0746)もHWへの攻撃を順次始める。
「どんな状況も、皆で切り抜けるんだ! 切り抜いてみせる!」
今回、対空兵器の多さもあり、人手が多いとは言えなかった対空班。しかし、それでもここが踏ん張りどころ。
人数は少なさはチームの連携で補いHWの各個撃破を狙う放課後別動隊【道草】の白成 高己(gb8650)。
「空はしっかり押さえておきませんとね」
「救出は一分一秒がカギだ。士気は落とさずに、な」
弾丸の的中により弾け飛ぶキメラの肉片。それでもまだ湧いてくる敵に砲口を向けながら、L70・セエレ(ga7284)は空という最高のポイントを押さえんと欲す。
それを手助けするように、友軍機のサポートに専念するガゼル・タチャリン(gb1634)。
「頭上注意。制空権を渡す気は無いからな」
人員は少なくとも、空は簡単には渡さない。ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)を始めとした月狼第弐師団天翼の面々も、それぞれ武装を展開。空中でも激しい火花を月狼は散らすのであった。
さて、こうなってくると、このままの作戦を変更せざるを得なくなってくるのはバグア軍だ。戦局の変化、特に対地・空迎撃用兵器の連続する破壊は、バグア側の対応を一変させるには十分なものであったのだろう。
彼らはこれまでの隠匿を諦めて、次は積極的な援護射撃と併せ、地下通路網を用いた神出鬼没なタロスの奇襲という一手を放ち始める。
「地下通路網の出撃ハッチを破壊せねばな」
UPCからの指示により、オルタネイティヴといった陸軍では地下通路網の無力化を行う小隊も出てきていた。
最初は城門の攻撃へと向かっていた彼らだったが、戦場舞台の本格的な移行も既に始っていたのだ。
更に、タロスの抑制に動き出した部隊の中でも特に秀逸だったのはファルル・キーリア(ga4815)率いる雪風で、KVをあえて汚し瓦礫の山に見立て、逆にタロスに奇襲を仕掛けると言ったメンバーの斬新な手法は、中々の成果を見せることになる。
――しかしそれでも、タロスの奇襲が止まる様子はなかった。
言ってしまえば、地下と言う隠れ蓑がある限り、何よりも傭兵達にとって必要なタロスへのトドメを刺し得る決定打が欠ける状態だったのだ。
追いこんでも横から突如現れる援軍。そして逃げられる標的。この繰り返しに、一度は有利に立ったかと思われた傭兵達にも、次第に焦りが見え始めていた。
だが、そんな折。
「あれは‥‥」
突如として、地下から発生した白煙。
そう、内部に突入した工作部隊が、地下通路網へダメージを与えねことに成功したのだ!
***
別部隊の地下への攻撃成功によるタロスの奇襲減少。また、外壁や城門7方面の継続攻撃による敵の分散。そして、対空兵器の破壊による空からの援軍。これらの要素は、傭兵達を1番発電所へ導く鍵となっていた。
「私たちでは力不足かもしれない。それでも‥‥!!」
「おうおう。どうしたガキ共? 元気ねーと死ぬぞ? おら、気合入れろ」
更に、後ろからは聖闇十字−動「与道」隊のエメラ(gb5498)やアークァーサ(gb9392)といった後方支援のメンバーらが背中を押してくれる。
そして、首筋を汗がなぞり始めてから僅かばかりの時を経て。彼らの視線の先には、1番発電所が全貌を見せ始めるのであった。
●金色を纏う闇
1番発電所。
「不甲斐無い部下達ですね。やはりこの私自らが手を下さなくては」
遠目越しに黒煙を眺めつつ、そこではドリスの操る金色のタロスが隠れる様子もなく陣を張っていた。
偵察機からの連絡で、防衛網も突破され、すぐそこに傭兵達が迫っている事を彼女は報される。
だが、それを聴いた後発せられた彼女の言葉は、意外と言うよりも、あたかもこの結果を予想していたかのような冷たいものだった。
「シェイク様も私に持ち堪えろと命ぜられた。所詮、下級兵士などに期待は無用というものですね」
そして、静かに頬笑みを浮かべた彼女は、前方のスクリーンに冷徹な眼差しを向ける。その先には、彼女に向かって走る幾つもの機体が並んでいた――
「あれが話にあった金色のタロス‥‥。でも金色塗装って、ちょっとシュミが悪いですよネー」
まず金色のタロスを確認後、真っ先に刃を向けたのはアクアリウム小隊の面々。情報網への接続を担当していたアグレアーブル(ga0095)によって、既に金色のタロスの操縦者がドリスであることは確認済みだ。
それを知りつつ、敵を挑発するように言葉を投げるのは平坂 桃香(ga1831)。何だかんだでアクアリウムによる対ドリスはこれで既に3回目。さすがにここで仕留めると、指揮官の鯨井昼寝(ga0488)を始めとしたメンバーも意気込みは十分だった。
「貴様との対峙にもさすがに飽きた。暴虐の波濤に、飲まれて爆ぜろッ!」
「そんなに醜い声を上げて‥‥。底の浅さが知れるわよ?」
ロジーナを巧みに駆使し、タロスの機動力を抑えた昼寝。後方からのゴールドラッシュ(ga3170)らによる援護射撃を利用し、その圧力と同時にドリスへとドミネイターを突き立てる。が、それをタロスは左腕で弾いたかと思えば、右腕の斧で昼寝の機体を足元のコンクリートごと下段からの斬り上げ。
「ちっ」
その一撃で腕を殺されたロジーナは一度後退するが、ドリスはそのまま追撃の手を緩めない。と、そこへ
「最大出力で、一気に行くわよっ!」
「次は無い! ここで、片をつけるっ!」
マイクロブースターにより加速したシャロン・エイヴァリー(ga1843)と、遠石 一千風(ga3970)が左右両側面から一気に接近!
「!」
相手の満足なガードすら許す暇を与えない、2人の雪村によるX斬り。さすがにこの攻撃には耐えきれなかったのか、装甲の一部が剥げ飛び散るタロス。
「やってくれたわね」
しかし、その攻撃を食らってなおタロスの機動力が鈍る様子はない。むしろ、それが良い目ざましになったとばかりに、集束するエネルギーの束は地を焦げ付かせ周囲のKVを襲う。
しかもその間にも不気味に鼓動するタロスの破損部分は、徐々に剥がれた装甲が再生していくではないか。
「‥‥つまらない時間稼ぎに付き合う程、暇なわけではありません」
再生。そう、これこそがこのタロスという機体に与えられた、何よりも警戒しなければならない特徴。
長期戦は分が悪い。そう判断し、一気にケリをつけようとエメラルド・イーグル(ga8650)は中のドリスごと吹き飛ばす勢いで、粒子加速砲を放射。
「時間稼ぎ? あなた達程度に私が時間稼ぎ? あはは、随分と良い気なことね」
が、その一撃を瞬く間に呑みこんだのは、タロスによるフェザー砲の光。目では捉えられても、その速さには回避が追い付かず。光流により熱せられた空気は周囲の視界を揺らし、やがてエメラルド達の意識を強引に剥奪していた。
――さて、時は遡り3番発電所付近。
「こちらラミア、マウル大尉を発見! 至急援護を頼む!」
こちらでは、ラミア=I=バークレイ(gb1967)により発せられた、ひとつの報せがUPCの待機本部を賑わせていた。
あえて敵の一切には目を向けず、生身一つで路地裏など狭いルートを駆け、アナートリィ中尉の証言にあったマウル大尉撃墜現場に急行していた彼女が、遂にマウル大尉を発見したのだ。
「こちらマウたん救し隊。了解!」
そしてそれを確認した近場のゲソレンジャーはすぐさま現場へと駆け付ける。そこにいたのは、かろうじて呼吸を行える程度にまで傷ついたマウル大尉と、彼女を抱きかかえるラミアの姿だった。
マウル・ロベルを含む数名の正規軍パイロットの救出成功。それは付近で戦っていた傭兵達にとって何よりの活力となり、指揮を奮い立たせたのも事実であった。となれば、このまま近くの3番発電所に奇襲に向かうという選択肢も自ずと考える者も出始める。
何故なら、この戦域で戦う理由のひとつが、既に解決したのだから。しかし、その希望も一瞬のうちに砕かれる。ある1つの救難信号によって‥‥。
「これが噂に聞くユダか。まともに扱うにはとてもじゃないが荷が重すぎるな‥‥」
1つ、2つ。マウル大尉を救出したポイントから離れた場所にて。
膨らんでは弾ける閃光にあわせ、KVのパーツが次々と宙を舞っていた――
「あたしらはできる事をすればいいんだ。くれぐれも無理は禁物だ!」
ユダとの遭遇。この戦域で戦う者達にとっては覚悟しておかなければならない可能性ではあったが、改めてその力を目の前にしたElevado隊のMIDOH(ga0151)は、知らず知らずのうちに首筋に冷や汗を浮かべていた。
すぐ傍にいたJ・B・ハート・Jr.(ga8849)が、本人に大きな怪我はなかったものの、一瞬にしてKVの機能を停止させられたのだ。
「ユダ‥‥今の私達にできる事は敵をより引き付け、多くを知る事です」
半ば自分に言い聞かせるようにLaura(ga4643)は言葉を放つ。これ程の制圧力、既に1個小隊の手に負えるものではない。
「どうしました? 悲鳴を上げ逃げ去っても良いのですよ?」
と、その時ユダから聞こえてくる冷たい声が1つ。――そう、この作戦における最大の敵、シェイク・カーンである。
「逃げる? 仲間は見捨てない。それがバグアと私達の違いです」
「愚かな、所詮あなた達など使い捨ての駒でしかないと言うのに」
ジェミリアス・B(ga5262)の信念を込めた一言も、まるで嘲笑うかのように一蹴してみせるシェイク。彼女にとって、仲間の為に戦い朽ちていく者達がどれほど滑稽に見えていたか、ジェミリアス達に知る由はない。
「さて、それでは話も済みましたし、さっさと死んでもらいましょうか」
そして、吐き捨てるように囁かれたシェイクの声が耳に全て届き終わらぬうちに、ユダを囲んでいたKVの何機かは放電する装甲を煌めかせながら、何十メートルも先へ弾き飛ばされていた。
***
「口だけは一人前でしたね」
場面は戻り、1番発電所付近。こちらでは既に、金色のタロスの手にかかり戦闘力を失ったKVが相次いでいた。
「ちっ、他のタロスどもとは格が違うと言うわけか」
誰かが呟く。確かに、ドリスの操るタロスの戦闘力は桁が違う。それは機体自身の性能に加え、ドリス本人の能力にも起因する部分があったからではあろうが。
しかし。
「ドリス様、防御網が‥‥突破‥‥され――」
「?」
前方で大きな爆音が響いた。そして、彼女の目の前に現れたのは‥‥
「本当に‥‥役に立たない者達ですね‥‥」
美しい顔を歪め、怒るドリス。そこでは、彼女とシェイクの用意した精鋭部隊の前線を突破した第2波が、ドリスへと迫っていたのだ。
「出てきなさい、そこにいるんでしょう。次に殺すのはあなた方です」
「‥‥さすが新鋭機ね、探知能力にも長けているといったところかしら。でも‥‥私達を甘く見ないことね。ファルル・キーリアの戦術、その身に刻み込みなさい!」
かくして、第2フェイズの戦局は最終局面へと移行する。
遠方でドリスに最後の猛攻が行われる同時刻。ユダの前に立ちはだかったのは、ファルルの雪風隊であった。
先の見えぬ消耗戦の先に。遂に勝敗を左右する引き金が引かれる。
●激光の彼方
「完璧なんざあり得ねぇ‥‥有人機だからこそ、機はありやがるはず、です」
「この‥‥!」
タロス。それは、言わば高い戦闘力と、長期戦に耐え得る性能、そして量産化の実現と、ある種の開発兵器としての結晶体であったのかもしれない。
しかし、それでも数で押され始めればその機能にも限界が見えていた。
「私は‥‥シェイク様に。こんなところで‥‥」
歯ぎしりとともに、自らの額から流れた血に激昂しながら近接武器を振るうドリス。しかし、それをシーヴ・フェルセン(ga5638)は雪村で薙ぎ払う。
「まだ‥だぁ!」
次は遠距離用兵器のギミック解放。刹那、近接してタロスを囲んでいたKVは吹き飛ばされる。が、
「君には分かる? これが、幾重にも重りなった人の想いの重さって奴だよ!」
怒涛の追撃。その波は止まらなかった。一瞬で数機を屠ったドリスだが、for Answerの蒼河 拓人(gb2873)はそれらの機体と交差しつつ想いを込めた一撃を放つ。
「ぐっ」
揺らぐタロス。気付けば、その左腕は既に機能を停止してるではないか。
「動きなさい、動きなさい!」
叫ぶドリス、最早今の彼女に普段の美はない。
そして‥‥
「待たせたな。タロスと戦闘中の友軍機へ。アクガンからの激辛差し入れだ」
「あ〜、なんかあの発電所邪魔だな。まあ良いや、アレごと撃つぜ」
「例えタロスといえど、この一撃は軽くありませんよ?」
ドリス向けて飛び込んできた最後の波は、夜十字・信人(ga8235)率いるアクティブ・ガンナーの波状攻撃――
***
光が見えた。大きな、とても大きな光だ。
「シェイク様、シェイク様、シェイク様ぁ!」
その光に呑みこまれる金色が1つ。そして、そこには土煙とともに崩壊していく発電所があった。
「なっ、ユダの電力が‥‥まさか‥‥ドリス!?」
「ユダの動きが止まった? どうやら、作戦は成功したようですね」
そして、そこから離れた雪風隊の月神陽子(ga5549)達にもその光は届く。それは同時に、圧倒的な力で今まで戦っていた目の前のユダが、機能を停止する瞬間でもあった。
如何に強固な城壁を以ってしても、陥落し得ぬ城などは存在しない。
小さな力でも良い。それらが集まれば、難攻不落の城とて落とせるはずだから。例えその城が、重武装要塞都市・瀋陽とて。
かくして、なおも降り止まぬ弾丸の雨にうたれ、盤面は最終局面へと移行し始める――
<執筆 : 羽月 渚 >
<監修 : 音無奏 >
<文責 : クラウドゲームス株式会社>
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