己丑北伐
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11月10日の報告

<報告書は前編:後編から成る>

瀋陽解放作戦  工作部隊潜入  カメル陽動作戦  グレプカ破壊作戦


【瀋陽地上戦闘】

●瀋陽(シェンヤン)
 鉄筋コンクリート製のビルが、爆音と共に崩れ落ちた。
 UPCが橋頭堡を築いた遼東方面からの侵攻を想定して、城塞都市瀋陽の第一、第二城門付近には、多数のバグア戦力が展開していた。UPCの軍勢を確認した敵軍は、長距離砲を展開。対する人類側も激しい砲撃を加える。
 砲撃を頭上に見上げながら進む傭兵達。
 彼等が到着する頃には、蘇家屯区――つまり瀋陽長城第一、第二門正面に広がるその都市区画は、今目の前で瓦礫の山と化した所だった。
 フォース・フィールドによって致命的ダメージを免れた各砲座が、その砲口を開いた。
「槍皇より月狼各機! 城門を穿つぞ、得物を喰らい尽くそうぜぇ!」
 宗太郎=シルエイト(ga4261)の指揮の下、月狼各小隊が一斉に動く。
 彼等は新鋭KVを中心に前衛を押し立て、長城へと接近する。
「第壱師団『銀弾』、砲撃開始」
 宗太郎が仲間の配置を確認しつつ、指示を下す。ソウィル・ティワーズ(gb7878)やゴルディノス・カローネ(ga5018)といった傭兵達の駆るゼカリアは、敵城門一帯を射程圏内に収めて停車し、全長を優に超える長大な砲を車体に展開する。
「さて‥‥壊されたい奴から前に出なさいッ!」
 ソウィルが笑顔と共に指へ力を込める。
 砲弾が、城門周辺へ降り注いだ。
 対する長城側も、射線より砲撃地点を割り出し、トーチカによって砲撃を加える。とはいえ、KV側には移動手段がある。反撃が予想される頃には場所を移動しておき、再び支援要請に応じて「邪魔ッけ」そうな奴から順番に撃破していった。
「地殻計測機設置完了‥‥反応なし」
 AliceDoll所属、忌瀬 叶(gb0395)が通信機に向かって呟く。
「こちらでも確認できません。アースクエイクの姿は見えません」
 続けて報告を上げる、月狼「聖樹」の隊長、草薙・樹(gb7312)。他にも数名の傭兵達が地殻変動計測器よりの情報を発信する。一部の傭兵は、敵戦力にアースクエイクが含まれていなかったが為に、これらの備えが無駄となってしまった印象も持ったが、『敵がいない事を知っている』のは、戦場において小さくないアドバンテージをもたらす。
「了解! 足元への注意は必要無い訳ですね」
 イヤホンマイクが振動に揺れる。前進を続けるヘルヘブンのコックピット、アルティ・ノールハイム(gb9565)は応答して、【L】より伝わる情報へ眼を通した。バグア軍の主力は従来機。新型の姿が見えぬ今は、敵機の破壊に専念すべきだった。
 メトロニウムハルバードを掲げるめるヘブン。
「‥‥突破します!」
 突出を警戒しつつ、戦闘を開始するアルティ。彼のメルヘブンはハルバードを振るい、飛び掛るキメラを一閃に切り裂いた。
 敵は強力な迎撃体勢を整えて彼等を出迎えたが、しかし、戦力に不足があるのか、あるいはUPC側の布陣が強力なのか。数の優勢を質へ転化して、彼等は、一進ずつ、確実に戦線を押し上げていった。


●航空優勢
「来る‥‥各機展開!」
 篠森 大和(gb2064)の指示が飛ぶ。
 最も早く動いたのは彼等若葉【壱】小隊や、「八十六」といった小隊だった。蘇家屯区上空が、ミサイルとKVの入り混じった飛行機雲に彩られる。
「う〜、数が多いな〜」
 スターゲイト隊後尾を飛ぶミント(ga6290)の岩龍。電子戦機である岩龍を援護するように展開するスターゲイト各機だが、ミント機が小隊支援の要と見たのか、多数のヘルメットワームが編隊を組み、襲い掛かる。
 多数の敵をさばききれず、ミント機の尾翼を蒸発させるプロトン粒子。
 友軍の安全の為に一個小隊がやや後退すれば、敵は、続けて単騎で飛ぶ傭兵達を狙う。
「邪魔しないでよっ」
 装甲版が弾け跳ぶ音に、愛梨(gb5765)は急制動を掛ける。
 だが避けきれず、エンジンを貫くレーザーバルカン。第二撃を放ったのはまた別の機だ。その連携と素早い動きは、ともすると機械より効率的に傭兵達を屠らんとする。
 片肺で飛べなくは無いが、流石に戦闘は無理だ。
 彼女はシラヌイ共々身を翻し、後退を試みる。
「行くよ、イービルアイズ!」
 苦戦を見て取ったのか、近隣を飛んでいた鷹崎 空音(ga7068)のイビルアイズが加速する。搭載されたロックオンキャンセラーが敵編隊に乱れを生じさせるや、UK−10AAMがヘルメットワームを爆炎で吹き飛ばす。
 あくまで援護に徹しての介入だったが、続く一撃を警戒した敵部隊には動揺が走った。逃げ回る空音機を追い払おうとした僅かな隙を狙い、体勢を立て直した傭兵側が直ちに反撃へ転ずる。
「重装備のワームを優先的に。頭上はこっちで押さえますよ」
 ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)の指示に従い、広く展開する月狼第弐師団。離脱を試みる敵機を確実に撃破してゆくが、同隊員の鹿内 靖(gb9110)より、アグリッパの予測効果範囲に接近し過ぎているとの報告を受け、やむなく距離を取る。
 アグリッパの所在は未だ不明ながら、城壁に設置されているとすれば、城壁より1〜2km以内はアグリッパの効果範囲内である可能性が高い。
(一進一退か‥‥)
 シベリアでも散々苦労した防空システムだ。無闇に突っ込むような真似はしない。
 とはいえ、それは敵も同じ。そもそも航空優勢を得るのは陸上戦力を爆撃して漸減する為で、アグリッパの勢力圏内に留まっていては、その目的が果たせない。他の空域からの増援を加えるが早いか、バグアは再度、傭兵達を撃退せんと試みた。


「アークバード各機、密集し過ぎず、離れ過ぎず、な」
「お気をつけて‥‥」
 アルヴァイム(ga5051)の通信に応じる里見・さやか(ga0153)。
 ただ一機で大きく突出するアルヴァイムは、プロトン砲による攻撃をかわしつつ、敵編隊の先頭を飛ぶ本星型ヘルメットワームを狙ってDR-2荷電粒子砲を狙い定め、躊躇無く引き金を引いた。
 空を焼き奔る光芒。
 寸での処でかわす本星型。その攻撃に巻き込まれ、後続のヘルメットワームが光りに飲み込まれた。
「まだだ」
『くっ、ちょこまかと‥‥』
 なおも息つく暇無く攻撃を浴びせるアルヴァイムの動きに、敵の編隊が大きく散開する。彼のディスタンを半包囲するように展開し、一斉に攻撃を浴びせる。素早く回避行動を取るディスタンの主翼を、ミサイルの爆炎が煽った。
 逃げるアルヴァイムを追い、敵は、包囲の幅を狭めんと距離を詰めてゆく。
 無人機にはできぬ、素早く果敢な編隊機動だ。
 が――
「ならば、それは俺が切らせてもらう!」
 雨の如く降り注ぐ、ファランクスの弾幕。
 その弾幕に気を取られ、動きを阻害された一瞬に、もう一機のディスタンが真一文字に駆け抜けた。雑賀 幸輔(ga6073)の機だった。彼の接近に気付いた頃には、もう遅い。
 重力に乗って加速するディスタンが、ソードウィングを敵上部に叩き付ける。
 激しい振動が両者を襲う。
 閃光が光り輝く。
 幸輔が離脱した直後に放たれた、友軍よりのミサイルだった。数機よりの一斉攻撃を受け、遂に炎を吹き上げる本星型ヘルメットワーム。
「ギース各機、爆装した機体は見当たらない。眼前の敵を叩け」
 続いて包囲外周より雪崩れ込むリン=アスターナ(ga4615)ら、アークバード・ギース分隊。無論、残されたヘルメットワームにしても、指揮統率の途絶えた無人機のようにぼんやりなどしていない。数の不利を軽減する為に乱戦に持ち込もうとするが、寸での差で傭兵達がより果断だった。
「そうはいかねぇぜ」
 ノーヴィ・ロジーナの放った150mm徹甲弾が、敵機の機首を叩き潰した。ロジーナを駆るテルウィ・アルヴァード(ga9122)に続き、月狼「黄昏」が一挙に集結する。一撃離脱的に散開と集結を繰り返すその動きに翻弄され、爆散。墜落するヘルメットワーム。
 戦場における「機」を感じ取れるか否かは、表面的能力とは無関係だ。
 勘と経験がものを言う。
 そして、少なくともその面においては、多くの傭兵達が一枚上手だった。


●タロス
 タロスの一角で、片目のパイロットがヘルメットを被る。
『拾われた恩などと青臭い事は言わない。出世への道と思え。生き残って手柄を立てろ。全機、出撃!』
 青銅色の土偶がふわりと浮かび上がる。
 浮かび上がった土偶は横一列に戦列を組み、瓦礫の中を突き進む。
『出たよ。タロス‥‥』
 リリー・W・オオトリ(gb2834)の報告が、380戦術戦闘飛行隊へもたらされた。と同時に、敵新型の出現を今や遅しと待ち構えていた傭兵達に緊張が走った。
 SteelyWindに所属するKVが武器を手に牽制射撃をしかける。
 おそらく、展開するタロスの多くは有人機だ。となれば。どこかに指揮官と呼ぶべき機が存在すると考えるのは合理的判断である。のだが――
「‥‥幾ら何でも露骨すぎるだろ」
 八幡 九重(gb1574)は無表情に呟き、ロックオンキャンセラーを起動させる。
 青銅色のタロスの中、一際目立つのは赤銅色のタロス。
 一瞬、何かのブラフではないかとすら思えるそのタロスだが、素早い動きで接近するKVを翻弄しながらも次から次へと大打撃を与え、小集団の中心として機動する様を見るに、指揮官機か否かはともかく、タロスの中には一段と強力な機があると見て間違いない。
 友軍からの報に接するテンタコルス隊の面々は、思わず苦笑を浮かべた。
「とにかく、砲座周辺から引き剥がすでありますよ!」
 美海(ga7630)のビーストソウルが2基の知覚兵器を構え、連射する。所属隊員もまた距離を保ったまま銃撃戦を仕掛ける。タロスの攻撃を遮蔽物に避けながらも、タロス以外からの反撃はマトモに取り合わなかった。
 テンタコルス海兵隊やフェアリー・チェスの動きに、引き寄せられるようにして動くタロス。
「あっちで頑張ってる皆の分まで頑張らないとねぇ」
 ラーズグリーズ隊、冴城 アスカ(gb4188)は誰にともなく告げ、神楽 菖蒲(gb8448)機の隣へ、自身のシュテルンを並べる。掲げたヘビーガトリングが猛烈な弾丸を吐き出した。戦闘のタロスが身構える間もなく、その機体に弾丸の雨を浴びる。
 破壊され、露出した内部構造が、弾丸を浴びる端から次々に再生し、傷口を防がんとする。無論、ガトリングの連射力を上回る程の回復速度ではないにせよ、長期戦に持ち込まれれば、先に息切れを起こすのがどちらかは解りきっている。
 虚しい空回り音が響いた。
 猛烈な勢いで弾丸を吐き出すガトリングガンだが、それは10秒ともたずに弾を消費してしまうという意味でもある。
「まだまだ」
 ヘビーガトリングをその場で手放し、ガンランスを掲げて加速するシュテルン。既に損傷しているタロスへと最大速度で接近する。
 友軍の援護の中、彼我距離を示す計測値は物凄い勢いで数値を変えていく。装甲を破壊されたその脇腹に突き立てられれば、確実に撃破できるその一撃。しかし最大の問題は、相手が有人機だった事だ。
 そしてそれは、個々人の戦闘力にだけ影響するものではない。
「アスカ、下がって!」
 菖蒲の言葉にハッとなる。
「ちっ」
 思わず舌打つ。
 背中を守っていた菖蒲も、振り向き、アスカ機後方でスナイパーライフルを掲げ、弾丸を放った。その一発が直撃し、動きを止める第二のタロス。
 先のタロスも、己の損傷部を庇いながら、アスカへ向けてフェザー砲より光りを放つ。そのまま後退せんとも試みたが、それはCadenzaの時枝・悠(ga8810)が阻止した。
 友軍がミサイルによってタロスの後退を阻んだ瞬間、彼女は爆炎も消えやらぬその場に突貫し、ビームコーティングアックスを下段に据えた。発動するパニッシュメント・フォースがSESを最大出力で稼動させる。
 空へ向けて掬い上げるような一閃。
 光りの刃が、タロスの胴体部、生体部分を吹き飛ばした。
「数の足し位にはならねばな」
 小さく告げ、再びアックスを構える時枝。
 しかし先のひと時、敵は、確かにアスカだけを狙って攻撃を加えんとしていた。
 相手は有人機が戦闘の中心となっている。同じ人間同士であるならば、傭兵達が狙った作戦は、奇策でもない限り、敵も狙っている可能性があると考えたほうが良いらしかった。
「頑丈な‥‥!」
 再生する敵への対応は昔から決まっている、とは鈴葉・シロウ(ga4772)の言。
 ガーデン・ガーベラ隊は、友軍の引き込んだタロスに対し、激しい攻撃を加えていた。
 だが、ラーズグリーズに対してもそうであったように、傭兵達の攻撃にさらされる中にあっても敵は、小隊単位での編成を崩さず、傭兵達と全く同じように、小隊の一角を集中攻撃し始める。
「きゃあ!?」
 天地 明日美(gb2400)のロジーナを穿つ、荷電粒子砲の光流。
 ロジーナの巨体がぐらりと揺れた。
「それ以上は無理よ、退がりな!」
 ゼガリアが車体を軋ませて方向転換する。壬影(ga8457)が素早くトリガーに力をこめると、42サンチ砲が爆音を轟かす。最後の反撃を試みていたタロスが、木っ端微塵に吹き飛ぶ。
 ガーベラが試みた【蜜柑】作戦は、その目的を達成していた。
 だが、それは、友軍の後退と引き換えの戦果だった。
 撃破や戦死こそ免れているものの、タロスよりの集中攻撃により、タロスを一機を潰せばこちらも一機退却に追い込まれる――完全な消耗戦だ。


●第七門
 西南方面のUPC軍が、大きな損害を出しつつも確実に前進を続けていた頃、その他の門は静かなものだった。そしてその静けさは、極一部の門にとっては、嵐の前の静けさ以外の何ものでもなかった。
 突如、第七門周辺に爆炎が立ち上る。
 爆音と前後して、無人の荒野、瓦礫の荒野を突き進み、高速道路を一直線に突っ走るKV部隊。オルタネイティブ各機が、未だ爆炎収まらぬ第七門へと殺到した。
「アルケオプテリクスの損害、思ったより大きいみたいだな‥‥」
 上空からの報告に、ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)は可愛らしい顔で渋い表情を作った。やはり、病巣となるのは城門付近に多数設置された固定対空砲。奇襲的に爆撃を敢行したとはいえ、担当小隊たるアルケオプテリクスの被害が大きいのも已む無い事。
 であれば。
 第二次爆撃が始まる前に、可能な限りの敵を黙らせるしかない。
「目立てば勝ち――解りやすいじゃない?」
 赤々と燃え上がる炎をモニタ越しに見詰め、狐月 銀子(gb2552)が口端を持ち上げた。ヘルへヴンの機体からせり上がるライフルが、近寄るキメラを片っ端から撃ち抜く。たまらないのはバグアの側だ。
 いくら警戒していたとはいえ、ここまで大胆に迂回攻撃を仕掛けてくるとは思わなかったのだろう。
 空陸よりの絶え間ない攻撃に、纏まった反抗戦力を集結させる前に確固撃破され、それらが集まる頃には、上空よりの第二派が首をもたげていた。編隊中央、正面を進むのはフェイト・グラスベル(gb5417)のロングボウ。
「ターゲットロック、全弾一斉射ッ!」
 K-02のコンテナが、開放と同時に花火のように盛大な火を吹いた。
「目標、補則‥‥新型略起動、発射する!」
 中央による攻撃後、やや時間を置いての左右両翼。凶羽・月姫(ga4717)は機を走らせ、ロケットランチャー発射管を開いた。低空からも徹底的な爆撃を加え、あとは一目散に離脱する。
 城壁に設置された無数の迎撃砲は、飛来するミサイルやロケット弾へ徹甲弾をばら撒くも、完全にオーバーワーク。バカバカしいまでのミサイルの嵐を処理し切れない。
 オルタネイティブを中心とする第二派の傭兵達も、第七門をやりたい放題に攻撃して後退に転じ、挙句、トドメとばかりに長距離砲を炸裂させた。第三派、三台のゼカリアを中心とする、S−GUNNERSと援護に廻るアクティブ・ガンナーの連合部隊だ。
『直撃‥‥やったね‥‥』
「うん‥‥壊すのは‥‥得意‥‥」
 アクティブ・ガンナー所属、忌咲(ga3867)よりの通信を受けて、フィー(gb6429)はにっこりと微笑んだ。
「‥‥」
「‥‥」
 傍目十代前半にしか見えない少女二人はひとしきりにこにこと笑みを投げ掛けつつ、かといって言葉を交わすでもなく、ただ黙々と42サンチ砲を叩き込む。
 敵が混乱から立ち直る前に、最大限の打撃を与える――それが奇襲のセオリーだ。
 そのセオリーにどこまでも忠実に、ただひたすらに、黙々と。


●奇襲
 第七門での爆煙と同時に、第二門でもまた、火の手が上がっていた。
「重たかったですけど‥‥持ってきて‥‥良かったですね‥‥」
 城壁に展開する砲座が唸り声をあげる。ミサイルや流弾の五月雨撃ちの中、ゲソレンジャーのユナユナ(ga8508)は、愛機アルバトロスと共に急速後退を掛ける。遠く第二門では、メトロニウム合金製の巨大な隔壁が悲鳴と共にひしゃげる。
 彼等ゲソレンジャーを中心とする一部の傭兵達は、密かに河を上り、奇襲の機会を窺っていたのだ。
 何故かは知らない。ただ、バグア軍の川沿いに対する監視は、驚くほど手薄だったのは事実だ。
 機動戦力の多くが最前線へ出張っていた事もあって、彼等は上陸後一路門を目指し、砲座よりの迎撃にさらされながら爆弾やフレア弾をばら撒くように設置。一斉に爆破した。フォース・フィールド相手なら大した意味の無いその攻撃も、標的が都市建造物とあれば話は別だ。
「大城壁‥‥よくこんなものを作ったものだね」
 シュテルンが、上空より接近する。その動きを察知した瀋陽死側はアグリッパを可動させる。今給黎 伽織(gb5215)を襲う誘導レーザーの奇怪な機動。避けても避けても繰り返し後を追うミサイルの爆発に煽られ、機体が揺れる。
 それでもなお、離脱する瞬間に放たれるミサイル「パンテオン」百発近いミサイルが空を舞い、アグリッパへと殺到する。
 直撃の瞬間、アグリッパの索敵機能が崩れた。
 陸上より駆け寄るミカガミ。
「連剣二刃‥‥君は邪魔だから消えてもらうよ」
 蒼河 拓人(gb2873)だ。管制を友軍に任せ、ミカガミもろとも、体当たりするかのうような勢いで刃を突き立てる。ミサイルに剥ぎ取られた装甲版の隙間目掛け、深々と突き刺さり、練力の刃を炸裂させる。
 爆ぜるアグリッパ。
 が、一刀の元に切り払う拓人のミカガミを、何者かが撃ち抜いた。
「駆動系をやられた‥‥?」
 止むを得ず、ミカガミを投棄して脱出する。
 敵中においては、どこから攻撃が飛んでくるか解らない。おそらくは攻撃の犯人であろう。拓人の脱出したミカガミにレックスカノンが噛み付いていた。飛び散る破片。常人ならば死すら覚悟する破片の中を、素早く潜り抜けて走る。
 その背後を見やって、中型、小型のキメラが襲い来る。
 多勢に無勢。
 何より生身で戦う事まで考慮していた訳ではない。そもそも幾ら能力者といえど、武器がなければいかんともしがたい。おそらくはこれらキメラも、脱出者を始末する為のものであったのだろうが――
「―――Are You Ready to Battle!?」
 刃が走った。キメラの首が叩き割られ、パッと鮮血が噴出す。
 ポニーテールと外套をはためかせ、円閃と共に舞う咲坂 八葉(gb4740)。敵の攻撃を瓦礫で避けつつ、あっという間に数匹を始末する。
「早くこちらへ!」
 コックピットから身を乗り出し、柊 理(ga8731)が声を張り上げた。
 通信から撃墜を確認し、即座に展開する機動小隊『修羅の風』。咲坂は手を振り、再び瓦礫の山へ戻って行く。礼言う暇も無しに去る彼女の背を眺めつつ、拓人は予備席に座る。彼を回収するや、柊は早々に前線を離脱した。


「‥‥動いた!」
 短距離ショルダーキャノンを放つ、夕凪 沙良(ga3920)のディスタン。フェニックスの四機は一機に対して攻撃を集中して反撃を牽制しながらも、砲座の支援を受け辛い、友軍の多い戦場へと移動する。目新しい戦術も狙わず、過去の経験を頼りに。
「援護します、当たらないで下さいよ」
 高原 リチャード(gb1360)がS−01にスナイパーライフルを掲げさせる。
 放たれし弾丸は、シラヌイ――日ノ本・菊花(gb8806)の肩先を掠めて飛び、最前列でブレードを掲げるゴーレム、その肘に直撃する。腕から取り落とされるブレード。
「不知火、日ノ本・菊花、参ります!」
 その直後、機刀「陽光」と練機刀「月光」が刹那に奔った。
 砕ける金属の、けたたましい金切り声。ゴーレムはその胴を一瞬に寸断され、スパークを発しながらぐらりと転倒する。これで五機め。月光はともかく、陽光は既に刃が欠けつつある。
 おそらくは、まだいける――奥歯をかみ締める菊花。友軍の援護をうけつつ、あるいはトドメを刺し損ねた機を狙って、再びシラヌイを走らせる。
(戦慣れ‥‥あそこまで、積極的に動けるものなのかしら?)
 心の中で呟く。
 が、彼女、ヒルダ・エーベルスト(gb9489)は自分自身が初出撃であるが故に思うところがあっても、彼女と菊花の間に、大きな経験の差は無かった。つまりそれは、役割と戦い方の違いだ。
 ヒルダは、ヘルへヴンを姿勢低く前進させ、機体を瓦礫に隠し、ショルダーキャノンだけを出して攻撃を加える等している。
 Fm−Revよりの放送を隣に、瓦礫を障害物にしつつ、確実に前進する。通信より聞こえてくるのは、タロスの撃墜報告から、ゼカリアを活かした小隊が多い等のちょっとした話題まで。
 ゼカリアが目立つ理由のおそらくは、固定陣地への砲撃戦を想定して投入した小隊が多い為であろう。
「まさに中世の城攻めってか!」
 凪見恭(ga7582)がバイパーを駆り、眼前の敵目掛けて飛びかかった。ストライクシールドで敵の攻撃を防ぎつつ叩き伏せ、返す刃でリッターシュピースを突き刺す。
「まったくね!」
 ミカガミが、その腕でトンファーを唸らせ、キメラを殴り飛ばす。
 月明里 光輝(gb8936)は素早く周囲の状況を確認し、次から次へと襲い掛かるキメラやゴーレムと対峙する。ルーイ(gb4716)率いる、スタートライン陸戦隊は、同空戦隊に同調して前進し、対空砲座へと手を掛ける。
『AF01より各機へ‥‥最後の一押しです』
 御崎緋音(ga8646)の言葉が、通信機より響いた。
 アグリッパは、既にその片方が掛け、敵戦力にも大幅な穴が生じている。彼等は、上空の残党やキメラを掃討しつつ、直ちに前進する。既に、第二門は隔壁としての機能を失いつつあった。
「爆撃‥‥? 了解した。後退する」
 ルノア・アラバスター(gb5133)の言葉に答えて、藤村 瑠亥(ga3862)が機を起こす。
 シュテルンは最後の駄賃とばかりにミサイルを放ち、隔壁より離れる。直後だ。城門一帯を気化燃料の燃える臭いが覆う。
「今日こそ瀋陽から出て行ってもらいます」
 隊長である御崎の機に続き、数機の爆撃機が城門最上部を狙う。フレア弾やロケット弾をばら撒くようにして投下すると、断続的に閃光がきらめく。噴煙があがる。隔壁は音を立てて崩れ、長城の一角が遂に崩れ落ちた。


●突破
『‥‥門が抜かれたか』
 何機か存在する赤銅色のタロス。
 そのうちの一機が、崩れ落ちる第弐門を眺め、呟く。機体の様子を考えれば、そろそろ引き際かもしれない。一度退却し、市街地で再びの――そこには、逡巡があった。何よりそのパイロットは、戦場に置いて別の事に機を取られていた。
 突然の警告音に、パイロットが振り返る。
 そこには、全速力で加速する岩龍。シーヴ・フェルセン(ga5638)駆る、『鋼龍』だ。
 今頃気付いたタロスは慌てて回避機動を取るが、鈍い。既に避けられる距離ではない。試作機槍「アテナ」がその脇腹に潜り込み、背中を引き裂いて突き抜ける。
「伊達に『鋼龍』と呼ばれちゃいねぇです!」
 スラスターライフルによる牽制も、雪村によるトドメも、不要だった。
 確かに有人機の方が優れている場合もある。だが、『油断』もまた有人機特有の反応だ。機械であれば、戦場のど真ん中で崩れる門を眺めている、等というバカな事はしない。
 それに、倒せぬ相手ではない。
 その事実は多くの傭兵達にとり、一連の戦闘を経た事で実感として腑に落ちた。
 対するバグア側にとっても、それは同じだった。
 タロスは隊列を組みなおすと、傭兵達を牽制しつつ城門の中へと引き下がっていく。無駄な損耗を避けて戦力を立て直す為だろう。正面から戦うだけでは数の不利を覆せぬ以上、それなりの準備というものが必要だ。


 FM−Revから漏れる歓声。
 それも、中国語が中心の、その聞きなれぬ歓声。交換用の整備部品をチェック中だったセレノア・キューベル(ga5463)は、ラジオに眼を向ける。
 前線から聞こえる歓声はレールズ(ga5293)のKVが、門突破の証に、五星紅旗を城門の一角に掲げたからだった。その事を知らぬセレノアは、暫し不思議そうな顔でラジオに耳を傾けていた。  

<担当 : 御神楽 >

<監修 : 音 無 奏 >
<文責・判定 : クラウドゲームス株式会社>


【工作部隊潜入】

●突入開始・城壁破壊
 作戦の第一陣はKVによって城壁への接近を試みることであった。
 古城市鎮という地名の町が城壁のすぐ外側にあり、進軍してきた部隊はこの建物群に隠れて、ギリギリまで城壁に接近することに成功する。
「今です。突撃っ!」
 スター☆ライズのクリス・マニングス(ga9448)が電子戦機で状況を把握し続けながら突撃の合図を出す。合図を聞くや、傭兵は決意とともに城壁への突撃を開始しした。
 天気は快晴。土ぼこりが舞う中、半ば朽ちた城壁へと傭兵たちは向かう。

『きおったぞ無能なる人類どもが!』
 城壁の最上部に展開される高速道路のような箇所から、レックスキャノンやタートルワームという移動砲台が城壁の壁の中に設置された大砲や機関銃と共に辛らつな射撃をぶつける。

 それらの弾幕をかいくぐりながら、傭兵たちは城壁へと向かった。リッジウェイ乗りは自機に歩兵部隊を搭載し前線を目指す。
「竜脈システム起動。情報網の維持を行う! ‥‥竜装騎兵に片思いの人が居るんでね、絶対に護って見せる。行くぞ、アーシュ」
 ドニー・レイド(gb4089)は情報網システム流脈の起動を行う。その顔は思い人を護るという決意にあふれていた。
「そうですね。でしたら護り切らねばなりませんね‥‥」
 冷静な表情でアーシュ・オブライエン(gb5460)が言う。盾を構えつつ、接近する敵に対しバルカンで豪雨のように弾を撃って牽制を加え、ドニーをはじめとした情報管制員を護衛する。アーシュにも大切な仲間を護らねばと言う決意が伺える。

 城壁の外に展開しているバグア軍がおらず、城壁にとりつけば城壁の武装は足元を狙いづらいという状況のため城壁の突破は簡単に思えた。だがそのとき青銅の巨人、タロスが城壁に取り付いた傭兵の背後にふわりと舞い降りた。その挙動から有人機であろうことがわかる。
「カララク、久志、タロスどもを撃退するよ」
 冥姫=虚鐘=黒呂亜守(ga4859)が味方のカララク(gb1394)、狭間 久志(ga9021)と共に遊撃部隊として真っ先にこの新しい脅威に向かう。
 味方の管制情報と本隊の火力支援範囲を確認しつつ、敵陣に切り込み単機突出する久志。それにタロスが群がろうとするが無論仲間がそうはさせない。
「味方の支援を追い風にして‥‥行くぞ!! 迸れ紫電っ!!」
 恐怖は感じないと言えば嘘になるが、味方の支援があるから平気だ。そう自分に思い込ませる。
 それを援護するように爪でタロスを掴み放り投げる冥姫。タロスは放物線を描き地面に激突。だがすぐに立ち上がり歩兵たちに向かって歩き出す。
「悪いが、新型であろうと容赦は出来ぬ。行け、カララク」
「ああ、守る為の覚悟はできている。行くぞ」
 突破を図るタロスを相手に爪で敵を掴み突破を阻止するカララク。そしてタロスが距離をおくため空に飛び上がると、垂直離陸で追いかけ牽制がわりにミサイルを放つ。 そして空戦部隊にタロスを任せてカララクは再び地上に戻る。
 それらはタロスの脅威を除きつつ、歩兵部隊の進軍に寄与しつつあった。

 ヒューイ・焔(ga8434)をはじめとした戦術部隊『渡鴉』もタロスへの対策をしっかりと取り、連携でこれをつぶしていく。
「あれが敵の新型機か‥‥どの程度のものか試させてもらおうかね」
 ヒューイが呟く。そのとき、
「連携、五月雨!」
 隊長の御影・朔夜(ga0240)の指示の下、高命中兵装の連続攻撃から高火力兵装の一斉攻撃と言う対タロス用連携攻撃が発動された。
「外見的な弱点は見えてない‥‥なら、内部に鉛弾ぶち込んでやるだけよ!」
 鷹代 由稀(ga1601)は砲弾の着弾を一点に集中させて装甲貫通を狙う。
「散らばるな、孤立したら狙い撃ちにされるぞ!」
 ジーン・ロスヴァイセ(ga4903)が叫ぶ。タロスの数は少なくない。確固撃破するつもりがされるわけにはいかなかった。
「いまだ、行け、ファルロス(ga3559)!」
 ジーンが仲間に突入のタイミングを知らせる。
「月光よ、煌け!」
 月光を振るいながらタロスの装甲をえぐる。ファルロスは確かな手ごたえを感じていた。タロスの生体部分に大きなダメージを与える。
「巨人共め‥‥絶対に容赦はせんぞ‥‥!」
 崎森 玲於奈(ga2010)が叫びながら斧でタロスを断ち切る。玲於奈の目には回復力をなくし、三枚におろされたタロスの姿が映った。

 ファルル・キーリア(ga4815)指揮する雪風も対タロスへの連携をしっかりととりこれに対応していく。
『怖気ついたの? 所詮はバグアに降った腰抜けどもね!』
 ファルルは通信で強化人間と思われるタロスのパイロットたちを挑発する。ファルルにとって強化人間などバグアに尻尾を振った裏切り者に過ぎない。徹底的に侮蔑の色をこめて挑発する。
(『わからぬかな、高みを目指すことをやめてしまった存在がいかにおろかであるかということを!』)
 これに対しタロスはハルバードを音速で振るい、武器で受け止めたファルルを弾き飛ばすが、アユム=F=ヴァイマル(gb9222)がガトリングで弾幕を張り、ザインフラウ(gb9550)も連装機関砲を用いて弾幕を張る。弾幕にさえぎられたタロスは前に進めない。
「戦場まで来たのは流れです‥‥しかし、戦っているのは自分の意思です!」
 アユムが豪雨のごとき弾幕を張りながら叫ぶ。とにかく足止めが必要だ。そう考えてアユムは弾幕を張り続ける。
「初陣とはいえ、負けはしない!」
 ザインフラウも足止めを目的に機関砲の弾丸を降らす。初めての戦いで緊張していたが同時に高揚もしていた。硝煙の匂いに反応し脳内物質を分泌させる。
「舞闘アイドルの真価、見せてあげるよっ!」
 雪村 風華(ga4900)がその言葉のとおり舞うように斬り合い、タロスの生体部分を破壊する。タロスがビクビクと震える。
「うふふ、止めですわ。私達を敵に回した事を煉獄で後悔なさいませ!」
 カタリーナ・フィリオ(gb6086)はツインブレイドでタロスに止めを刺す。タロスの活動が急激に停止していくのがわかる。
「人の矜持捨てし愚か者達よ、この夜叉姫を恐れぬならば、かかって来なさい!」
 月神陽子(ga5549)はソニックフォン・ブラスターで広域に増幅した名乗りと挑発を繰り返す。ひたすら目立つ事で自分達に敵を集中させ、足止めにより潜入部隊へ向かう敵を減らすと言う作戦だ。
『月神陽子、そしてファルルはここにいるわ。功が欲しくばかかってきなさい!』
 ファルルが挑発を繰り返す。接近するタロスをソニックブレードで討ち取り、また、仲間の援護に合わせて舞い踊る。
 だがそれが災いしてタロスの攻撃を受け、重傷を負ってしまう。
「ファルル!」
 陽子が叫ぶ。その声には心配の色がにじむ。
「大丈夫、何とか生きてる‥‥」
 苦しそうな声ながらも、ファルルは生存を伝えた。
 そして飯島 修司(ga7951)がそんな犠牲の下に生まれた隙を逃がさない。挑発を繰り返すファルルと陽子の機体を餌に、「釣られた」敵に最大火力を短時間で叩き込む。それらの一連の攻撃で数体のタロスを倒すことに成功した。
「ファルル! また敵が来る!」
 傷ついたファルルの機体を狙ってタロスが攻めてくる。それを陽子が警告する。
 が、そこにギンヌンガガプのハルトマン(ga6603)が割って入る。
「ぐうっ!」
 この攻撃でハルトマン自体も重傷を負うがなんとかファルルの命を護ることには成功した。
「大丈夫か‥‥」
「あなたこそ。私のために‥‥」
「なに。いいって事よ‥‥」
 こうして負傷者を抱えた雪風とギンヌンガガプは撤退を開始した。それでも、倒したタロスの数と比べれば十分お釣りは来る戦果である。

 そして中でも特別な働きをしたのがシャーリィ・アッシュ(gb1884)率いるK.o.t.R.T.だった。
「幻霧発生装置発動!」
 シャーリィは幻霧を発生させ敵に歩兵配置を誤認させるようにすると自らタロスに切り込んだ。
 アキ・ミスティリア(gb1811)は味方から情報を得てそれを部隊内に発信する。
「タロス、15時の方角に数3です。皆さん、お願いします」
「了解! 歩兵部隊への接近を許すか!」
 フラウ(gb4316)がミサイルで敵を攻撃する。ミサイルは複雑な機動を描いて飛ぶとタロスへと命中し外部装甲をはがす。
「行くわよ『軍茶利』」
 加賀・忍(gb7519)は愛機の名を呼ぶと味方の波状攻撃に合わせて機斧を叩きつけ切り崩し、破損部分に剣を滑り込ませる。それによってタロスの生体部分が抉り取られる。
 フローラ・シュトリエ(gb6204)も仲間の機体に間違って撃たれたりしないようにしながら波状攻撃にあわせ斧で攻撃する。
「サポートは任せてね!」
 フローラの斧はタロスの生体部分を確実に破損させていく。タロスの回復力が見る見る落ちていく。タロスを打ち倒すのもまもなくかと思われた。
 そんな中でもタロスの反撃は苛烈を極める。ハルバードが激しく振るわれ、空気を切り裂く音と同時に忍とフローラの機体に突き刺さる。
「忍! フローラ!」
 シャーリィの悲鳴が響く。
「大丈夫。それより攻撃を‥‥」
 口の中に血の味を感じながらも、忍が通信で仲間に無事を知らせる。
「フローラは大丈夫?」
「問題ないです。それよりも攻撃の手を緩めないで」
「わかったわ。みんな、攻撃続行よ!」
「了解。目標補足‥‥一撃‥‥必倒!」
 セフィリア・アッシュ(gb2541)はランスチャージを繰り返し、タロスを文字通り蜂の巣にする。そしてそれは確実にタロスの回復力を奪い――
「行こうか、紅弁慶。共に在る仲間を、護る為に‥‥」
 柳凪 蓮夢(gb8883)は愛機に語りかけると、仲間の攻撃で弱ったタロスを白雪で確実に仕留める。派手に崩壊するタロス。その様は仲間には高揚を、敵には恐怖と怒りを与えていた。
 そんな風にK.o.t.R.T.が派手に暴れることによって歩兵から注意を逸らし、歩兵部隊の被害を抑えることに繋がった。

 一方空ではスター☆ライズの烏丸 八咫(gb2661)と沖田 神楽(gb4254)は飛行形態をとり主にキューブ・ワームを撃破して回った。
 今回戦場に出ているキューブ・ワームの数はそれほど多くないが、やはりジャミングはうっとうしい存在だ。主兵装と副兵装を使い分け、キューブワームを潰しに潰して回る。
「どこまで出来ますかね?」
 八咫が問いながら砲撃すると、神楽は、
「やれるところまでやるしかないんじゃない? んじゃ、やりますかね」
 と答えながら砲撃する。
「そうですね。やれるところまでやりましょうか」
 八咫がそう言うと神楽は嬉しそうに笑った。
 おなじスター☆ライズの露霧(ga9675)やクリス・マニングス(ga9448)も八咫と神楽の補給のタイミングにあわせてキューブワームの撃墜を試みる。
 そして二度目の補給が終わって再度飛び立った八咫と神楽の攻撃ですべてのキューブワームを撃墜できた。これによってバグアのジャミングはなくなったのだった。

 その一方で【戦闘】担当の能力者たちは生身の歩兵部隊の護衛をしたり、城壁に攻撃を仕掛けて穴を開けようとしていた。
 犬彦・綬陀矢(gb4825)などもその一人で、ツルハシとハンマーで敵機を相手にする傍ら、城壁に攻撃を仕掛ける。敵機と城壁を同時に相手にするので綬陀矢は忙しさで目が回りそうだった。
 加賀 環(gb8938)もハンマーで城壁の破壊を試みていた。上空や城壁から狙われる恐怖と戦いながらも、環は必死にハンマーを振るい城壁を破壊していく。
 そんな中でも歩兵部隊にタロスが接近することはあった。
 そんなときに四条 灰音(gb0670)が味方に精鋭機対応班を呼ぶように伝達すると、タロスの攻撃を一身に受ける。灰音の機体にはタロスのハルバードが何本も突き刺さり周囲の味方に灰音の無事を心配させる。だが、
「ここは防ぎます‥‥行って下さい」
 歩兵部隊にそう告げながらも灰音はタロスと戦い、その場を死守する。
 主兵装と副兵装を駆使しながらタロスに対処するが
(「やはり一機では持たないの?」)
 灰音がそう思ったとき精鋭機対応部隊が駆けつけてきた。
 そして精鋭機対応部隊が駆けつけたころには灰音の機体はぼろぼろになり灰音自体も重傷を負っていたが、その後の味方の迅速な救出活動と精鋭機対応部隊の活躍のおかげで何とか生きながらえることはできた。
 そして城壁に開いた穴から、生身の傭兵たちの突入が始まる。
 
●内部突入
 城壁に開いた穴に傭兵たちが突入した直後、能力者の聴覚を無数の炸裂音が襲う。
「っ、強化人間?!」
 吐き棄てるように藤宮 恵波(gb8103)が言葉を放つと、その返答とばかりに彼の背後の壁が轟音とともに破壊される。
「冷静になれ! キメラに注意を散らされるな、強化人間の位置関係を正確に把握しろ!」
 闇雲に突撃してくるキメラなど煩わしいだけだと朱翼 赤翡翠(gb9517)は拳で敵を1匹弾き飛ばすと、壁が壊れた衝撃で倒れた黄翼 高麗鶯(gb9494)を助けおこす。
「‥‥幸運のコインの護りあれ」
 赤翡翠は昂ぶった気持ちをおちつかせるためにそう言葉を紡ぐと、精神を五感に集中させる。
 狭い通路などで待ち伏せされて銃撃を不用意にくらえば、能力者といえどもひとたまりもない。
 連携【暴竜】は機動力を生かして動脈に当たる広い通路での展開は早かったものの、細い通路で立て篭もる強化人間に手を焼く。
 それを打破したのが隠し通路探索を行った部隊と傭兵たち。そして敵の中級指揮官を捜しては打倒すると言う戦術を繰り返していたエリザ(gb3560)たち歩兵小隊ゾルダートだった。ゾルダートのとった戦術は現場の指揮を混乱させると言う点について戦局の転換に大きく寄与したのだった。
 マーズドライヴのシルバーラッシュ(gb1998)と鯨井レム(gb2666)はバグアがそれを活用するとすれば、やはり出撃ポイントのひとつにするのではないかと予測した。無闇に城壁に近付かず、敵がどう動いているのかを観測することに専念し、その出所を突き止めることに成功したのだ。そして得た情報は地図に記載して利用時に備える。
 まさに、レムの「無駄に動く必要は無い、大切なのは流れを読むことだ」と言う言葉のとおりになったと言うわけだ。
 自由な風達の風見圭一(gb5860)も別口で隠し通路を発見し、閃光手榴弾を投げ込んでから侵入する。
「お前ら、準備はいいな? 潜入開始だ!」
 圭一がそう言うと「ほらほらみんな、油断しちゃだめよ」と風見崩霞(gb9479)が練成強化で皆の武器を強化する。それは崩霞なりの心配の表れともとれた。
「ふふふ〜、わかったよにいさま。静かに敵を倒せばいいんだね〜」
 閃光の中から現れた風見霊華(gb6406)は弱体化したキメラたちを流れるように切り付け、首を落としていく。
「堅牢な相手ほど内部がもろいものじゃ」
 風見雪花(gb6478)は剣を持っているAU−KVの腕をスパークさせ、攻撃力を高める。そして剣でキメラたちを千切るように斬り付けると派手に返り血を浴びる。そうして奥に侵入して内部施設を破壊して回る。
 一方独自に行動する傭兵たちも【C&D】連携で隠し通路を探して突入した。ミニャ(gb8136)やシェンガ・リベル(gb8151)達も他の単独行動者と一緒に少人数で秘密通路を捜索し、見つけ次第スキルを使ってひっそりと奥深くへ潜入する。そして火器管制塔や警備室を破壊して突入班と合流したのだった。
 これによって立て篭もるバグアを挟撃することに成功した能力者たちは、突入ポイント周辺の防衛火器の多数を沈黙させることにも成功する。
 ことに活躍したのが水無月 湧輝(gb4056)で、効率化を図るため通信機能を持つ物の破壊を優先して行い、結果として敵の指揮系統を混乱させることに成功した。
「‥‥連絡手段を先に潰しておこう。敵が増えると‥‥目的達成が難しくなるからな」
 その言葉通り敵の増援もほとんどなく突入班と合流し、城門内部の制圧に成功したのである。
 だがその【C&D】成功の影に、派手に陽動で暴れまわったものたちのことも忘れてはならない。
 なるべく派手に戦闘して敵の目を引きつけた霧島 黎人(ga7796)やUPCの部隊の所で単独行動者と協力して潜入班の事がばれないように可能な限り暴れたフィネ(gb8640)にラシュカ・ファエッド(gb9485)と咲羽(gb8618)。
 主に他の単独行動者の援護に回った穂積 梓(gb8859)に練成治療や練成強化で援護して回った真山 亮(gb7624)。
 式守 桜花(gb8315)と澄川 雫(gb7970)と協力して戦闘した和泉 沙羅。
 望月 神無(gb1710)と共に神無の前衛役として戦ったHERMIT(gb1725)。
 東雲 凪(gb5917)、望月 藍那(gb6612)と共に戦闘したレベッカ・リード(gb9530)。
 小隊に所属しないながらも巧みな連携で派手に城門や城壁で戦闘し、敵の目を隠し通路から引き離した彼らの功績を語ることなくして【C&D】の成功は語れないといっても良い。
 そして何より【C&D】連携を提示したリンガーベルの隊長、紫藤 望(gb2057)の功績を忘れるわけにはいかないだろう。城壁突入班と通路潜入班の効果的な相互援護連携は彼女の提案なしには生まれ得なかった。
 そんなリンガーベルは18名もの小隊規模で隠し通路探索を行い、罠の解除、潜入、索的、戦闘、退路確保などそれぞれに分担を決めながら効率的に隠し通路とそこからつながる敵施設を制圧し、【暴竜】と共に城門8から城門9までの動脈に当たる通路の制圧に成功させる。
 城門8は戦力の不足により制圧には至らず、城門9も東側の防衛機構に対して内部からの無力化を成功させるも、城門の制圧には至らなかった。だが、門を開けることはできなかったが、動脈に当たる通路を制圧して「工作部隊潜入ポイント」付近の防衛火器を多数を無力化したことで、第2フェイズではこの地点から歩兵単独での瀋陽市街地への潜入が可能になった。
 ヨグ=ニグラス(gb1949)は撤退時にバグア強化兵のスーツを遺体ごと接収する。研究にでも使おうと言う腹なのだろう。
「これも僕達がさらに強くなるためですっ!」

●橋頭堡
 一方城壁外部ではKV対タロス、そして砲台役のタートルワーム・レックスキャノンとの戦いが続いていた。
 トライデントのアーシェラ・シフォン(ga8854)とフィル・ローランド(ga8855)もタロスと戦う一部だった。
 アーシェラはフィルと連携しながら、味方の狙撃により動きを止めたタロスを狙い、近接武器で攻撃を仕掛ける。
「支援は任せてください、これぐらいしか出来ませんから」
 伊吹 京也(gb4347)はロックオンキャンセラーを使いタロスの行動を阻害する。
 重力波レーダーの照準が僅かに狂い、挙動を乱すタロス。そしてそんな隙を見逃すような能力者たちではない。
「させません」
「少しはいいとこ見せねえとな」
 アーシェラとフィルの、片方が敵の注意を引く間にもう片方が側背をとり、味方の支援を有効する。
 絶え間ない牽制により、僅かな挙動のずれを修正する時間を与えられないタロスは徐々にその被害を大きくしていったが、ならばとハルバードを取り出し、『目視』している敵めがけて突進を開始する。
「‥‥っ! いてぇじゃないか!」
 フィルが搭乗するディアブロの右腕が赤い飴細工のように簡単に切り落とされる。どちらかといえばあてずっぽうな、力任せの一撃であったが、力押しは時にいかなる連携も突き破る。
「敵の動きは単調なものです。火力を集中してください。確実に仕留めます」
 ガーデン・フリージアからタロスの情報を得たガーデン・バーベナ隊のセラ・インフィールド(ga1889)が小隊を指揮しながら、イノシシのように突進するタロスへ火力を集中させる。
 タロスは火線も気にならぬと再度の突撃を試みたが、やがてその被害の大きさに気付き、戦場から後退していった。

 ガーデン・アイリスは隊長の神撫(gb0167)の指示で、脅威になるレックスキャノンやタートルワームから順番に攻撃していく。
「アイリス各機へ。友のための道を造る。全機索敵を怠るな!」
『応!』
 砲台ワームは足元に寄ってしまえば弱い。それを突いて接近戦で一機ずつ確実にしとめていく。
 そうして、工作部隊潜入ポイントに橋頭堡が築かれていく。

 橋頭堡の建設にはアクアリウムが果たした役割が大きかった。
 エメラルド・イーグル(ga8650)は「敵と戦うばかりがKVの仕事ではありません」と言い、KVを重機代わりとし橋頭堡としての体裁を整える。外部からの攻撃に備えるのは勿論、罠の類を除去することも忘れずにおこなった。その結果橋頭堡の建築に際して敵のトラップに引っかかるような真似はしなかったのである。
 アグレアーブル(ga0095)は各種の情報を元に橋頭堡を射程圏に入れる敵火砲を逐次破壊していく。
「橋頭堡は落とさせない!」
 アグレアーブルはレックスキャノンやタートルワームも相手にし、傷を負いながらも確実に橋頭堡の防衛に専念していった。
 また、鯨井起太(ga0984)はリチャード中佐との交渉役として行動を行い、軍に橋頭堡構築の協力を申し出る。
「KVを活用した土木作業や警護活動は傭兵に任せてください。その代わり細やかな兵站業務は軍にお願いしたいのです」
「わかった。そのように取り計らおう」
 それは成功し、兵站業務を軍に任せることになったため、傭兵たちは橋頭堡の構築のためのKVを使った土木作業やその護衛作業に専念することができるようになったのである。
 無所属のハンニバル・フィーベル(gb7683)もUPCから必要な資材を受け取るとリッジウェイのコンテナ上部に積載して移動する。そして城壁にあけられた突入口の周囲に他の傭兵や小隊と協力して、KVで橋頭堡を構築する作業に尽力した。
「お母ちゃんのためならえんやこーらってね」
 ハンニバルが掛け声をかけながらリッジウェイを動かしていく。そうして橋頭堡は着々と構築されていった。

 そして橋頭堡防衛に尽力したのが九条院つばめ(ga6530)率いるガーデン・フリージアだった。
 最初に歩兵輸送部隊として活躍した彼らは、歩兵部隊が突入し終えるとそのまま向きを変え軍のリッジウェイの護衛と橋頭堡構築の防衛にあたったのだ。
「狙い撃ちだっ!」
 ゲシュペンスト(ga5579)は支援砲台役を勤める。敵の敵を足止めしてから狙い撃ちをすると言う方法で橋頭堡や軍のリッジウェイを狙う敵に対処していく。やがてタートルワームやレックスキャノンも確実に数を減らしていき、まもなく全滅しようとしていた。
「させない!」
 天原大地(gb5927)は援護射撃をしていた梶原 暁彦(ga5332)とゲシュペンスト、及び後衛で策敵・情報管制に従事している北柴 航三郎(ga4410)を自らの機体を盾として護衛し、敵の射線上から彼らをかばう。機体の破損はひどいが、稼動できないほどではない。
「くっ‥‥きっついなー」
 大地はめげそうになりながらも自らを盾とするのをやめない。
 こうして多くのものの献身的な努力があって橋頭堡は完成し、次への足がかりとなったのである。
 そして部隊は第2フェイズへと続く。そこで彼らを待っているものは何か? それを知るものはまだ誰もいない‥‥

<担当 : 碧風凛音 >


<監修 : 音 無 奏 >
<文責・判定 : クラウドゲームス株式会社>

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