シェイド討伐戦
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<報告書は前編:後編から成る>

ロサンゼルス東部会戦  制海権確保  サンディエゴ解放  シェイド討伐戦


【サンディエゴ解放】

○西部・攻防
 サンディエゴ国際空港(略称SAN)の管制塔に、西海岸から上陸したバグア部隊の発見報告が飛び交う。
 アキラ・H・デスペアの策に過剰反応した結果、SANは挟撃を受ける事と成った。
 サンディエゴ西部には高層建築物は少ない。管制塔に立ち並んだ屋根から、REX−CANNON(略称RC)の二門の砲身が突き出していた。
「あの作戦も結局決め手にはならなかったと、思わせないといけないよね」
 諫早 清見(ga4915)は接近するRCの足音を聞きながら、遼機と共に廃材を積み上げていた。
 【イエローマフラー隊】は、前回のサンディエゴ解放戦で倒壊した家屋を資材と見なし、サンディエゴ西部にバリケードを築く。
 姿を現したRCやゴーレムを前に、潮彩 ろまん(ga3425)が立ちはだかった。
「来たな怪ロボ、怪獣軍団。ここはボク達が一歩も通さないぞっ!」
 急接近するゴーレムにろまんがハンマーボールを叩きつける。ゴーレムが斧で受け止める豪快な金属音を、RCの咆哮が掻き消した。
 RCの大口径プロトン砲がイエローマフラー隊をバリケード諸共に吹き飛ばす。先頭に居たろまんの雷電はバリケードの恩恵を受けられずに損傷を負う。
 即座にバリケードの修復に回るイエローマフラー隊だが、構築作業よりもRCによる破壊のペースの方が速い。足止めが有効であるゴーレムは、既に彼らの前から姿を消していた。
 相性の悪いRCに苦戦するイエローマフラー隊の下に、5機のKVが駆けつける。RCの攻略にのみ狙いを絞った、【I.C.E】小隊の面々だった。
「新型と言えど、所詮雑兵。手品のタネ、この場で明かさせて頂きましょう」
 レイヴァー(gb0805)が3.2cm高分子レーザー砲の照準をRCに合わせる。モニター越しに見えるRCの肌の色は『緑』。
「さて、魔術をご覧に入れましょう」
 レイヴァーの放つレーザー光線を背に、トリストラム(gb0815)のフェイルノートがRCへと迫る。レーザーに焼かれるRCの胸部に、練剣「メアリオン」の光刃が深々と突き刺さった。
 RCの肌が『赤』へと変わる。振るわれたRCの巨爪をトリストラムが軽やかに避わすと、機銃や機弓による物理攻撃がRCへと集中した。
 第2フェイズでもたらされた情報を活用し、【I.C.E】は見事にRCを攻略する。しかし、直後に彼らへと立ちふさがったのはRCとゴーレムの混成部隊だった。
「組織的な進軍‥‥。矢張り指揮官が居るのでしょうか」
 バリケードを修復したイエローマフラー隊の援護射撃が加わり、戦線は膠着状態へと向う。暗号通信士である廻谷 菱(ga4871)は、敵の行動から逸早く指揮官の存在を察知していた。
 その情報をINに送信すると、一人の傭兵がそれに答える。
「やるだけやってみますかっ」
 ヤヨイ・T・カーディル(ga8532)は単身で敵陣に乗り込む。家屋を迂回してゴーレムを避け、ブーストを利用した移動でRCの砲撃を縫い避わす。
 被弾したアンジェリカの肩部が火を噴くが、それでもヤヨイはアキラを探す。機体ダメージが限界を迎えたとき、海岸線に立つ色違いのゴーレムへと辿り着いた。
 KVの無線出力を最大に設定し、叫ぶ。暗号通信士でないヤヨイには平文での情報伝達しか手段が無い。
「指揮官と思わしきゴーレムを発見したよっ! 場所はオーシャンビーチ沿いの桟橋付‥‥きゃぁっ」

 その通信はサンディエゴ西部へと響き渡った。



○南部・封鎖
 メキシコ国境を越え、バグア中米軍が迫る。
 幹線道路を覆い、山々を抜ける大中小のキメラ部隊の数は西部に上陸した部隊の比ではない。敵増援の察知に備えていた【Legions】の面々が見たのは、大規模な中米軍の第一陣だった。
「これは不味いかも知れんのう‥‥!」
 L8・バルバトス(ga7424)が呟く。L45・ヴィネ(ga7285)が敵情報をINに送信すると、Legions各機は抗戦体勢に入った。
 Legionsの眼下では、大手小隊によって主要道路の封鎖が始められていた。【放課後クラブ隊】は放課後別働隊【道草】と共に、オタイ渓谷の北側に潜伏する。直接道路上布陣するのではなく、森に姿を潜め狙撃する作戦だ。
「敵見つけたー! 撃てーっ」
 道路を通ろうとするキメラの軍勢へと、銃弾とミサイルの雨が襲う。愛原 菜緒(ga2853)は掛け声を上げながら、味方の攻撃で負傷した敵を狙い、着実にその数を減らしていく。
「まるで‥‥狩りだな」
 深墨(gb4129)の狙撃で、爬虫類型キメラの頭部が弾け飛ぶ。坂を駆け上る大型の獅子に照準を変え、引鉄を引いた。
 渓谷に屍の山が築かれ、その倍のキメラが押し寄せる。やがて射撃だけでは抑えきれなくなり、負傷する傭兵が現れ始める。
 撤退戦であるにも関わらず、全傭兵部隊の中で最も前に布陣した彼ら。勇敢で、無謀ともとれる作戦のツケは、作戦参加者の大半が、身を持って支払う事となる。
 しかし、彼らは敵部隊の1方面を抑えるに適う戦力と意思を持っていた。それが破られるのは、渓谷に1機のゴーレムが現れた時だった。

 山道で始まった地上戦闘に遅れ、サンディエゴ上空にビッグフィッシュ(略称BF)が到達する。
 如何に地上を硬く守ろうとも、空からの輸送を防げなければ意味は薄い。BF用に兵装を整え、準備を重ねた小隊は【明治剣客浪漫団】のみだった。
「明治剣客浪漫団、突撃! 黒船落としだァッ!!」
「行きますよっ! 力を合わせた明治剣客浪漫団は無敵なんですからっ!」
 ディッツァー・ライ(gb2224)の吶喊に、シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)が連れ添い、ルチア(gb3045)が続く。
 ディッツァーはガトリングによる牽制でBFに接近すると、シンがH-01煙幕銃を発射する。煙幕に紛れ、BFの上部に着くと、一斉にフレア弾を投下した。
 落とす事しか出来ないフレア弾でハッチ等の弱点部分を狙う事は難しく、それが可能なロケット弾系統の武器は、BFに接近するまでにその殆どを使い切っている。ラージフレアの利用によって、致命的な損傷を避けられたものの、1度のトライでBFを撃墜するには至らない。
 即座に戦域を離脱し、同隊員である白雪(gb2228)やイレーヌ・キュヴィエ(gb2882)が仮設した拠点へと弾薬の補給に戻る。航空装備を持った傭兵達が穴埋めにBFへと向うが、耐久力の高いBF相手に、効率的な行動を取れない。
 再びディッツァー達が上空へと舞い上がった時には、エル・デイビッド(gb4145)のレーダーに2つの巨大な光点が増えていた。
「まるで降伏勧告に来た船団のようですね」
 シンの苦悶の声は、空を舞う全ての傭兵の心を代弁していた。



○歩兵・市街戦 
 幹線道路を避けて進軍してきた小型キメラや、BFから降下した大型キメラは、徐々に市街地へと浸透していた。
 空港の北部、退路確保の為に待機していた月浜・如水(gb4789)の前にも、見慣れた獅子型キメラが現れ始める。
「思うようにならないことばっかりだけど、やるこたぁやるさ」
 目の前の敵に刀を振り下ろす。刃に付着した血糊を払う暇も無く、彼女の前に次のキメラが現れる。無線機を通じて周囲の状況を確認する。どうやら戦闘を開始したのは彼女だけでは無い様だった。
 ゲリラ的な戦闘を仕掛けてくるキメラに長時間対応できたのは、スキルの使用を抑え、練力を節約した如水のような傭兵だった。
「怪我をしている人は何処ですか」
 無線を通じた負傷連絡を聞きつけ、【FOOL】のBJ(gb3340)は、相乗りしたAU−KVの後部座席から飛び降りる。
 サイエンティストでありながらも、生死に関わる重傷でなければ練成治療を用いず、治療には救急キットを多用する。
 拠点に戻れば物の数十分で練力を補給できるKVと違い、生身の練力を回復させるには6時間以上の睡眠が必要となる。本当に必要な時に備え練力を温存した彼らの努力は、結果的に多くの命を救う事と成った。

 しかし、一瞬の交差に全練力を注ぎ込んでも侵入を押し止めなければ成らない場所がある。防衛拠点となった、SANだ。
 崩落した民家の影から踊り出た小型キメラを、空港周辺を偵察していた【リンガーベル】の遠見 一夏(gb1872)が発見する。
「‥‥防いでみせるッ!」
 数を増すキメラに向かい、竜の鱗を使用して飛び込む。噛み付いたキメラを引き剥がし、一夏は小銃を乱射した。キメラの一団の注意を引くと、一夏はサイレントキラーの待つ十字路へ、転がるように駆け込んで行く。
 一夏が物陰に飛び込むのを確認し、サイレントキラーを操るヴィー(ga7961)がバルカンを掃射する。誘い込まれたキメラを肉塊へと変え、ホバリングしつつ機首を南方へと向けた彼女の目に、傭兵達の防御網を潜り抜けた大型キメラの姿が映る。
「さて、もう一息。頑張りましょう!」
 サイレントキラーから放たれたホーミングミサイルがキメラへと突き進む。白い煙雲の先で、爆炎の花が咲いた。



○西部・救出
 悲鳴と爆発音で途切れたヤヨイの通信を聞き、敵陣深くへ飛び込む一団があった。【しっ闘士☆特戦隊】だ。
「コレがっ僕のけじめだっ 何も出来なかった僕のっ!」
 バーニングナックルをゴーレムへと叩きつけ、隊長の白虎(ga9191)が吼える。彼に続き、五十峯 紅蓮(gb1649)が、被弾も恐れずに敵機へと肉薄する。
「ただ前に進むのみ!」
 押し付けた420mm大口径滑腔砲の弾丸が、ゴーレムの腹部を塵へと還す。
「あんまり無茶しちゃダメだよ☆」
 隊長のメンタルコンディションを気遣いながら、隊員が突出しないように大泰司 慈海(ga0173)がフォローに回る。小隊が1つの意思に纏まったしっと団の猛攻は、ゴーレムの防衛線を切り開く。
 しかし、兵装のほぼ全てを物理攻撃に固めていた彼らでは、突破できない壁が立ちはだかる。1体のRCに前を遮られ、彼らの突進は押し止められる。
「邪魔だぁっ!」
 渾身の一撃も通じず、RCの鋭い牙が白虎のビーストソウルを襲う。左腕に食いつき、強靭な首を振るうRCによって、14tを超えるKVが宙を舞った。
「総帥っ!」
 慈海が知覚兵器である近接型高分子レーザーガンを構え、白虎を助けようと飛び込む。
 その上を、1機のKVが飛び越えた。
「アキラの所へ行くんだろ? 力になろう」
 須佐 武流(ga1461)のロビンが、試作型練剣「雪村」でRCの首を両断する。空中で体勢を建て直し、白虎が着地する。
 ある種の水と油である武流としっと団。しかし、敵陣の只中にあっては、その区切りは不要だった。
 共闘しオーシャンビーチを目指す7機のKVは、やがて黙々と煙を上げるアンジェリカと、護衛機を侍らせた、エース仕様のゴーレムへと辿り着く。
「アキラっ!」
 突撃する傭兵達をゴーレムのプロトン砲が迎え撃つ。最初に限界を向かえたのは、最前線で戦いつづけた白虎のビーストソウルだった。射撃を受けた胸部が爆発し、白虎は機外へと脱出した。
 一団と離れ、慈海は血塗れのヤヨイを回収する。白虎の機を乗り越え、アキラへと殺到する傭兵達は、護衛機と薙ぎ倒し、アキラへと肉薄した。
 紅蓮のドミネイターを避けたエース仕様ゴーレムの肩に、武流の雪村が食い込む。確かな手応えを感じた瞬間に、武流のロビンは砂浜まで吹き飛ばされる。
「やれやれ。まさかこんなに短時間で此処まで辿り着くとは思いませんでした」
 紅蓮のゼカリアの頭部をプロトン砲で吹き飛ばし、アキラのゴーレムは大きく跳躍する。
「今回は此処までにしておきましょう。出来るなら、次は貴方がたの頭が茹っていない時に‥‥」
 海面すれすれを飛行するゴーレムの足元に、水中用ワームの影が浮かび上がる。ワームの上部へと着地し、アキラは太平洋へとその姿を消した。



○南部・敵エース
 州間道5号線を封鎖していたガーデンの各隊は、徐々にその防衛位置を北上させていた。
 決死の覚悟で進軍を押し止めていた彼らだったが、BFから降下された敵キメラに挟撃を受け、戦線を維持できなくなっていたのだ。
「もっと、引きつけて‥‥全機、撃て!!」
 【ガーデン・ルピナス隊】のルノア・アラバスター(gb5133)が砲撃の指示を出す。タイミングを合わせた弾雨が、道路上のゴーレムを吹き飛ばす。
「突撃がガーデンの本懐、底力を見せてやるぜっ」
 砲撃に合わせ突撃する緋沼 京夜(ga6138)以下4名。だが、後退を始めた状況では、深追いはできない。敵陣容を荒らし、直ぐに煙幕を発射して後退する。
「いいかっ、前だけ見てんじゃねーぞ!!」
 若葉【弐】のダグラス・コール(ga3315)が平文で周辺機に通信を送る。彼に送られてきた情報は、喜ばしい内容ではない。
 撤退するガーデン各隊と合流する形となった若葉【弐】は、共闘して味方部隊の撤退時間を稼いでいた。
「決して孤立しないで! 混乱している敵機を撃破して下さい!」
 隊の先頭に立ちながら、井出 一真(ga6977)が指示を出す。背面から一真を狙ったキメラが、守原有希(ga8582)の銃弾に撃たれてダンスを踊る。弾倉を交換し、再び前方へと注意を戻す。眼前のキメラは、その数を減じてはいなかった。


「優勢のようだな」
 5号線を埋めるキメラの奥で、エリーゼ・ギルマンは部隊の総指揮を取っていた。
「はい。グローリーグリムは市街地へ突入しました。上空の傭兵部隊にはエヴァ・ハイレシスが当っています」
 傍らのガーランドはエリーゼに応えながら、鹵獲KV”妲己”を前に出し、FRを守るようにプロトン砲を構える。
「よし‥‥見つけた‥‥っ!」
 キメラの大隊を大きく迂回し、【Cadenza】はエリーゼの元へと辿り着いていた。テトラ・ヴォルケン(ga8309)は一旦身を隠し、鋼 蒼志(ga0165)の隊長機を待つ。
「前と同じ包囲戦術――まぁ、それを何度も使う程馬鹿ではないつもりだがな」
 テトラに追いついた蒼志は、カラーリングを自機と揃えたアズメリア・カンス(ga8233)と共にエリーゼの前に姿を晒す。前フェイズで大ダメージを与えたと判断した蒼志達は、機体でエリーゼを挑発する事で眼前におびき出そうと計画した。
 しかし、それは大きな誤りであった。ダメージを受けたのはFRを庇った妲己であり、エリーゼは殆ど傷を負っていない。つまり、挑発に乗る理由は欠片も無いのだ。
 蒼志の姿を横目で見て、エリーゼはゴーレムをCadenzaの対応に当らせる。指揮官狙いに失敗した蒼志達は、敵陣の只中からの後退を強いられた。


 蒼志達が撤退を開始する少し前、一人の女が我慢の限界に達しようとしていた。小隊【HB】の赤崎羽矢子(gb2140)である。
 【シャスール・ド・リス】と共闘し、【HB】はエヴァ・ハイレシスに狙いを絞っていた。友軍の撤退まで戦力を温存し、地上で待機していた彼女達。その作戦は、エヴァによる空の蹂躙を許していた。
「ふふ‥‥。他愛無いのね」
 損傷のためか、エヴァのFRは光学迷彩を使っていない。姿を晒したエヴァと悪魔型キメラ”アルシエル”によって、友軍兵が次々に撃墜されていく。砕けそうな程に奥歯を噛み締めた時、羽矢子の元に前線部隊が撤退を始めた、という情報が舞い込んだ。
「狂おしいほど相手を想う。‥‥まるで恋だね」
 深呼吸の後、呟いた羽矢子の表情は冷静を取り戻していた。エヴァを地上へと引き寄せるため、FRへと接近し散発的な攻撃を行う。
「あら、あの時のKVじゃない。また遊びにきたの?」
(食いついた!)
 ブーストによって羽矢子のシュテルンが加速する。だが、同時にFRが赤く輝く。
 シュテルンの右翼をFRのプロトン砲が撃ち貫く。失速したシュテルンにアルシエルが襲い掛かった。
「ま、偶にはこれもアリさ」
 アルシエルの下方から、藤堂 紅葉(ga8964)のR−01が急接近する。エースへの不意打ちを予定していた紅葉だったが、ミサイルの狙いをアルシエルにあわせる。
 アルシエルにとっては細やかな一撃。だが、羽矢子のシュテルンにとって、逃げ切るに足る時間を作りだした。
 射撃の直後にブーストし、撤退する紅葉のR−01を、エヴァは冷やかな目で見つめる。
「邪魔してくれて‥‥まぁいいわ」
 紅葉を1体のアルシエルに任せ、エヴァは降下を始めた羽矢子の機体を追う。エヴァが高度を下げたとき、羽矢子はシュテルンを空中停止しさせ、着陸態勢を取っていた。
 隙だらけのシュテルンのエンジンを、2条の光線が打ち抜く。墜落したシュテルンに止めを刺そうと大地に降りる。
 誘導は、成功した。
「悪いが蠍座の心臓(アンタレス)を取らせてもらうぞ」
 埋伏していた【HB】のクロスフィールド(ga7029)が、スナイパーライフルG-03でFRのコクピットを狙う。同時に集中攻撃を開始する【HB】とシャスール・ド・リスの傭兵達。コクピットへの一撃をどうにか回避したエヴァは、クロスフィールドにアルシエルを向わせる。
「さて、蠍座の心臓を撃ち抜く為にも、その周りの星から削るとしようか」
「遠くの大事な人や皆がいるから僕ここまで戦える! わかな粒子砲ファイナル!」
 天龍寺・修羅(ga8894)は、クロスフィールドへ向ったアルシエルを狙い射つ。
 高威力を誇る水理 和奏(ga1500)のM−12帯電粒子加速砲が、FRの装甲を殺ぎ落とす。射撃と同時にFRの背後へと回り、和奏は相手の逃走に備えた。
「憂いをなくさせてもらう」
「忌々しい!」
 Cerberus(ga8178)がFRへと詰め寄り、至近距離でラージフレア・鬼火を放つ。交差するように突き出されたFRの砲身が彼を捕え、密着状態で放たれたプロトン砲がアヌビスを貫いた。
 炎上するアヌビスの影から、クラーク・エアハルト(ga4961)が歩み出る。
「もう逃さない‥‥決着といこうか? ここで散れ、蠍座!」
「なっ‥‥」
 試作剣「雪村」が袈裟掛けに弧を描き、光刃がFRを通り抜けた。
「やった‥‥?」
 撃墜されたシュテルンから抜け出し、民家の壁にもたれながら、羽矢子がFRを見上げる。左肩から起こった小爆発は、雪村の軌跡に沿って広がり、やがてFRが膝を着いた。
「まだだよ」
 FRを仕留めたところで、戦闘が終わるわけではない。和奏はM−12を構えたまま、エヴァの出現に備える。
「よくも‥‥」
 エヴァの声が周囲に響き、FRのコクピットカバーが弾け飛ぶ。弾丸のように飛び出したエヴァは、そのまま地面のアスファルトを突き破った。
「しまった、下水道!?」
 和奏がM−12を大地へと向ける。しかし、もはやエヴァの姿を捉える事は出来なかった。
 FRの爆発が規模を増し、熱風が羽矢子の頬を撫でる。
「くそっ!」
 熱も、傷の痛みも忘れ、羽矢子は拳を壁に叩きつけた。


 グローリーグリムを狙った包囲網は三つ。
 【Gargoyle】、【アーク・トゥルス】、そして突撃機動小隊【魔弾】。最初にグリムのゴーレムを発見したのは、【魔弾】のロッテ・ヴァステル(ga0066)だった。
「苦労したわ、本当に。‥‥今度こそ喰らって墜ちなさい、グローリーグリム!」
「何度やっても同じじゃねぇのか? 代わり映えしねぇと飽きちまうぜ」
 またお前等かと言ったグリムの声に、ロッテは頬の端を上げる。【魔弾】が用意した戦法は、今までの魔弾の射手に、近接による直接攻撃を加えたものだった。
「3度目、今回も付き合って貰うぞ。そして落ちろ! 魔弾に貫かれてな!」
「ほう! そうでなくちゃいけネェ!」
 狙撃による波状攻撃の合間を縫って、月影・透夜(ga1806)がロッテと共に強襲する。グリムは満面の笑みで二人の攻撃を待ち構える。
 ブーストを用いた突進からの斬撃、その最中にロッテは急激に身を沈める。負荷を覚悟したその機動に、アヌビスの膝関節が悲鳴を上げる。甲斐あってか、ゴーレムの振るう巨大な斧は空を切り、足元を狙った一撃はゴーレムに傷を負わせる。
 続いた透夜の上下からの攻撃を、グリムはKVにゴーレムをぶちかまして弾き返す。立て直す姿勢のまま振るった斧が、ロッテのアヌビスの足を叩き切った。
 これまで殆ど損傷を負わなかったグリムのゴーレムは、最良のコンディションである。二人を返り討ちにし、射撃援護を続ける【魔弾】のメンバーへと標的を変える。
 そこに、更に罠を仕掛けていたのは【アーク・トゥルス】だった。寅、卯、白、巳、黒のコールサインを刻んだ5機のKVが、射手達の前に立ちはだかる。
「卑怯と言うな‥‥呪うなら少し足りなかったその脳を呪いたまえ」
 ゼカリアを駆るヴィンセント・ライザス(gb2625)がグリムへと言い放つ。だが、グリムが返したのは余裕の笑みだった。
「呪うならお前等のノロさだろ‥‥。チンタラやってるから、俺の楽しみが減っちまったじゃねぇか」
「何?」
 問い返すヴィンセントの目前に、大量のゴーレムが姿を現す。バグア中米軍の増援部隊が、サンディエゴに到着したのだ。
 同時に、周囲の暗号通信士から無情な通知がもたらされる。

 SANの放棄である。


○撤退戦
 SANの放棄が決定し、傭兵達に残された退路は、陸路による北上のみとなった。
 後方支援として働いていた【ハーベスター】が活動内容を撤退支援へと切り替える。
「‥‥負傷者の回収、急いでください。ここは私が支えます」
 シエラ(ga3258)は想定していたルートと、現在の戦況を照らし合わせる。南部からはゴーレムクラスの強力な敵兵が入り込んでいる。西部は早いタイミングでアキラを撤退させたため、その侵攻を防ぎきっていた。
「大手部隊は集合して、5号線での撤退を行うようです」
 藤枝 真一(ga0779)が飛び交う情報から、各小隊の退路を拾い上げる。
「判りました。私達も5号線で活動した方が良さそうですね」
 シエラが指示を出すと、隊員達が一斉にスモークを炊く。
「リッジ舗装隊のご出発であります!」
 ロイ・キューブリック(ga4439)と真田 音夢(ga8265)のリッジウェイが、ドーザーブレードを構え隊の先陣を切る。建築物を利用した傭兵達の戦術や、バグア・傭兵の流れ弾によって、道路上には数多くの障害物が散らばっている。
 退路が絞られている以上、一箇所での遅れが全体へと伝播する。通常車両やAUKVを用いた救助・撤退活動が行われる中で、彼らの行動の価値は非常に高かった。
 2台のリッジウェイが瓦礫やバリケードの残骸を蹴散らし、襲いくるキメラを佐竹 優理(ga4607)のディスタンが迎撃する。
 彼らが守り抜いた道路が、混濁に呑まれたサンディエゴ南部から生還する、太く強固な蜘蛛の糸となったのだった。

 空港破棄の連絡を受けながらも、最後まで市街地で活動を続ける者達が居た。
 藍澤 拓海(gb7567)は市街地に留り、周囲の状況を無線で流し続ける。水瀬 深夏(gb2048)は、AU−KVで負傷者の救助を続けていた。
「誰か! 誰か居ないの!?」
 無線で呼びかける拓海の声に、深夏はバイクの進路を変える。深夏が拓海の元へ到着した時、彼は気を失ったハイア・フォールス(ga4614)を肩に担いでいた。彼は逃げ遅れた傭兵を救うため、囮になってキメラに飛び込み、傷を負っていた。
「この人をバイクに乗せてくれないかな、担いで運んでたんじゃ間に合わないんだ」
 深夏が承諾し、バイクから降りた時、周囲に多数のキメラが現れる。
「くそ‥‥。拙いな」
 AU−KVを纏い武器を構える深夏に、鳴り響くクラクションが聞こえてきた。
「OK、見えた‥‥っと、先客。おっちまでキメラ引っ張るから歓迎宜しく!」
 【Noise】の空閑 ハバキ(ga5172)が車の窓からショットガンを発砲し、全力で車をバックさせる。
 ハバキを追うキメラに向けて、交差点から現れたOZのサイレントキラーがC−0220ミサイル弾を放つ。広範囲に巻かれた弾頭は、道路ごとキメラの群を吹き飛ばした。
「助かった‥‥」
 拓海はハイアを担ぎなおすと、ハバキのジーザリオまで走る。
「君達で最後じゃないかな。この辺はもう危ないし、一緒に逃げよ」
 ハバキの提案を断る理由も無く、拓海はハイアを抱えたままジーザリオに乗り込む。
「あんたもしっかりついて来いよ! モタついてっと一緒に吹き飛ばしちまうぜ?」
 OZの声にサムアップで応え、深夏はAU−KVに跨る。
「ゆっきのーん。撤退するよー。援護お願いね」
 ハバキの声に応えるように超低空を1台のワイバーンが駆け抜ける。
 死地とは思えない軽さを保ったまま、最後の傭兵達はサンディエゴの町を後にするのだった。




 かくして、サンディエゴでの攻防戦は集結する。
 様々な思いを孕んだ市街戦は、結果として陽動としての価値だけを発揮した。
 故郷の奪還を願った者、メキシコへの足がかりを求めた者、戦い傷付いた彼らは、等しくロサンゼルスを目指す。
「西海岸‥‥かならず戻ってきますっ!」
 AU−KVを駆るヨグ=ニグラス(gb1949)が、遠ざかる街並を振り返り、呟く。
 その小さな声は、赤砂の大地へと吸い込まれていった。

〜了〜

<担当 : 鴨山 賢次 >

<監修 : 音無奏 >
<文責 : クラウドゲームス株式会社>


【シェイド討伐戦】

●黒翼と紅翼

 ロサンゼルス上空。
 太陽が中天に座したその時、上空に展開する無数のKVが急速に接近する2機のアンノウンを捉えた。
 先の宣言から考えれば、そのアンノウンはエミタが駆るシェイド、小野塚のステアー以外にはありえない。
 共通情報網を通じてもたらされたその情報が、地上、上空を問わず展開する傭兵達に緊張をもたらした。先のフェイズでダメージを与える事に成功したとはいえ、相手の戦闘能力がこちらを遥かに上回っているのは、今までの交戦結果から分かりきっている事だからだ。

 猛烈な速度によってロサンゼルス市街上空へと突入したシェイドを、傭兵側から放たれた無数の砲火が出迎える。
 最初の攻撃を加えたものが誰なのか、それすらも分からない程濃密な火線を最小限の動きで見切り、適確に反撃を加えていくシェイド。
「絶望の闇が深くなるほど希望は輝き、人は光を求めるものよ!」
 最初に肉薄したのは真紅のフィールドを纏い、宙を奔るフェニックス。そのコクピットでラウラ・ブレイク(gb1395)は目前のシェイド目掛けて機体のスロットルを一気に最大まで叩き込む。
 両肩の偏向ノズルさえも用い、その腕に携えられた剣をシェイドへと振り抜く。
 神速と言っていい速度で迫る斬撃。
 弾ける金属音。
 瞬時の反応を持って、エミタはその攻撃をブレードを盾として用い、防ぐ。
 刹那、フェニックスの剣を握る腕とは逆の腕から光が迸り、振りぬかれた光の刃がシェイドの装甲を灼く。
「そう、それでいいのです。もっと強くなりなさい」
 口元に浮かべた笑みを深くしながら、突き出された刃がフェニックスの腰を捉え上下に分断する。コクピットからラウラが脱出した数瞬後、分かたれた機体は火球となって爆砕する。
 その戦いの間も、弾幕は雨霰となってシェイドとその僚機であるステアーへと降り注ぐ。
 僅か2機に対して、対応に動いているKVは悠に300機を越える。
 当然ながら味方となるKVへの誤射、流れ弾も頻発するがそれだけの戦力を用いないと、この2機を倒す事が出来ない。

 ビルの隙間を縫うように飛び回るシェイドに対して、【西研】のメンバーが動いた。
 今までの連携技ではなく、新たに編み出した連携を実施する為だ。
「GSAの進化した姿‥‥お見せします」
 音影 一葉(ga9077)の声と共に、展開したイビルアイズのロックオンキャンセラーが起動。
 シェイドを中心に微弱ながら重力波を乱れさせ、照準器に狂いを生じさせる。
 エミタの技量はその乱れをものともしないが、攻撃の機会を僅かでも得る為に動く事は無駄ではない。
 同時にブースト加速で接近した音影機が、至近距離からI−01「ドゥオーモ」を発射する。ミサイルコンテナから100発ものミサイルがステアー目掛けて煙の尾を引きながら飛翔。
 四方八方から飛翔し、迫るミサイルの機動を見切り、或いは近接防御用のフェザー砲の弾幕で迎撃。
 しかしながら、その全てを回避する事はあたわず、シェイドの装甲表面で放電が生じ、フォースフィールドを貫いた若干の放電が装甲に傷を付ける。
「数百発のミサイルの雨、お見舞いしましょう。西研、GSB、起動!」
 音影の機体に続き、国谷 真波(ga2331)の声と共に【西研】所属機からミサイルとG放電装置がシェイドに向けられて放たれた。 
 続いて【西研】所属機がG放電装置を順に起動、ミサイルとG放電装置の多重攻撃。
 並のゴーレムやワームでは一瞬で蒸発するような多重攻撃を前にしながら、シェイドはその攻撃のほとんどを回避する。
「ようやく、新しい手を考えたようですね。技術力だけでなく、貴方達人類には戦闘能力の面でも進化して頂かねば困るのですよ‥‥しかし、これほど楽しいと思える戦いは久しぶりです」
「進化も何も知った事じゃねぇぞ。良い女と良い酒の為に、お前はココで墜ちろ」
 巽源十朗(gb1508)が放った追撃の一撃を回避し、GSBの僅かな間隙を突きエミタはトリガーを引く。
 シェイドを中心に放たれた無数の光条が、【西研】の各機を一撃の元に叩き落す。
 耐え抜いた機体も、サポートに徹していた小野塚の駆るステアーの追撃を受け、あるものは火球へと変じ、あるものは煙を噴き上げながら地面へと墜落していく。
 【西研】が被害により、後退すると続いて空戦機動研究班ベンヌ所属機がシェイドへと果敢な攻撃を開始した。
「エミタ。テメェも意思を持つ生命なら、クセや好みの一つくらいあるはずだ!」
 テト・シュタイナー(gb5138)、エミタのクセとなる機動を見切るべく、記録映像や今まで見てきた動きを脳内で再構成する。
 機動のクセまでは見切る事は出来ないものの、彼女が「策」ではなく、現時点では己の技術やシェイドの性能といった「力技」による戦いをどちらかといえば好んでいるように感じられた。
 そういった意味では、彼女に宿るヨリシロは「指揮官」というよりは「戦士」に近いのかもしれない。
「それじゃ‥‥限界に挑戦と行きますか!」
 シェイドから放たれた光条を辛うじて回避したメティス・ステンノー(ga8243)。回避を最優先したが故に避ける事が出来たものの、追撃として放たれた光条を回避する事は出来なかった。
 墜落していく機体からメティスが脱出したのを横目で確認して、鹿島 綾(gb4549)が突っ込む。
「お前は奴を倒す為に造られた。ならば今こそ‥‥その本懐を遂げろ!!」
 愛機であるディアブロに向けて呼びかけながら、素早くシェイドに照準を合わせ、パンテオンのトリガーを引く。
 コンテナから射出される100発にも及ぶミサイルに続くように鹿嶋は更に機体を加速させる。
 シェイドがその迎撃に放った光条が鹿島の機体を貫き、煙を噴くがその一撃は致命傷には至らない。揺れるコクピットの中、至近距離にシェイドを捉えた鹿島がM−12強化型帯電粒子加速砲のトリガーを引いた。
 翼下に取り付けらた大型砲の砲口から光が迸り、シェイドの機体をその光芒で呑み込む。
「なるほど、確かに貴方達は強い‥‥だからこそ、面白い」
 瞬間、鹿島の機体はその一撃に装甲表面を焼かれたシェイドのブレードに切り裂かれ、ワンテンポ遅れて爆発四散する。

 
 他方、ステアーに向けての攻撃もまた、幾度となく行われている。
 当初はシェイドへの支援に徹していたステアーだが、度重なる攻撃を前に徐々にではあるが確実に分断され始めていた。
 傭兵側がシェイドとステアーの対応班を分けた事がその原因である。
 更に、徐々にではあるが分断されつつある事は、ステアーを駆る小野塚・愛子にもその原因がある。
 エミタに対して恩を売る事を目的として、リリアからの指示を元にその僚機としての展開をしているが、別段シェイドの援護に躍起になる必要は無いという無意識の心理だ。
 最もエミタに対してあまりに離れすぎる訳にもいかない為、リリアの指示通り自機が支援を行える位置に居ない事に気づく度に近くへと戻ってはいるのだが。
「ミサイル誘導システムON‥‥目標ロック完了!ド派手にブチかますぜッ!!」
 ノビル・ラグ(ga3704)がロングボウの機体特殊能力を起動し、K−02をステアーへと向けて放つ。
 大量のミサイルがステアーを捉え、炸裂する。
「つりはいらない‥‥地獄の底まで持っていけ!」
 マイクロミサイルの爆風に囲まれたステアーに向け、八神零(ga7992)がオメガレイを連射する。
 何よりも当てる事を意識した攻撃。
 本来なら容易に回避できた攻撃も、周囲で炸裂する爆発の影響かマトモに直撃を受ける。
「‥‥くっ」
 その攻撃に小野塚は軽く唇を噛みながら、計器に視線を走らせる。ダメージは予想よりは軽いものの、そろそろ100人を越える傭兵を相手にするには分が悪い状況だ。
 煙幕の有効範囲を付きぬけ、集中する弾幕を慣性機動を最大限に駆使して回避しながら、戦域を離脱するべきか小野塚は軽く思案する。
 ただ、シェイドを置いて先に逃げる事は、リリアの指示に逆らう事になる。即座に離脱の意思を放棄し、シェイドの支援へと動こうとした小野塚の目に1機のKVが映った。
 天衝本隊に所属する赤宮 リア(ga9958)が駆るアンジェリカである。
 戦闘開始直後はカバーで隠していたリリアのイラストをペイントした機体は、小野塚に対しての挑発だ。
 それを頭では理解しながらも、小野塚の感情は一気に沸点へと達した。もはやシェイドの支援など頭の外である。
 スロットルを一気に全開にし、超高速をもって赤宮機へと接近。直線的な動きに火線が集中するが、それを強引に突き破る。
「小野塚愛子‥‥貴方の弱点は、その弱い心ですっ!!」
 ステアーが食らいつい居てきた事を確認し、また速度差からブーストでも逃げ切るのを不可能と判断した赤宮が煙幕を展開する。
 その煙幕に頭から突っ込みながら、小野塚は重力センサーに視線を向け、大まかな場所を判断すると、その方向へと全砲門を開く。
 怒りに身を任せた砲撃は、大半が煙幕による照準のブレにより当たらないが、幾つかの光条が赤宮の機体を貫く。
 効率面を考えれば無駄撃ちにも程があるが、それを判断するだけの理性が小野塚には残っていなかった。
「そろそろ、その機体も限界です。下がりなさい」
「‥‥くっ」 
 エミタからの指示に、理性を取り戻した小野塚が機体状況を示す表示に目を向ければ、確かにそのダメージはかなりのものになっていた。
 強引に弾幕を突破したが故に生じた損害である。

●12番目の使徒
 ロサンゼルス中央でシェイドとステアーを相手にした激しい戦闘が繰り広げられる中、海上からの増援を警戒する傭兵達の元に全体情報網を通して、制海権維持の為に出撃した部隊が海上からロサンゼルスへ向かっていた敵部隊を全滅させたことを告げる。
 だが、安堵も束の間。南方から接近する敵ワーム編隊を赤熱鉄の轍(ga9665)が知らせる。
「ま、頑張ってみるよ」
 敵発見を報じた赤熱鉄のフェオ・テルミット(gb3255)は小隊員を率いて、そのまま敵編隊に向けて突入。交戦状態に入った。
 バグア編隊の大半は小型〜大型のヘルメットワーム(HW)が数十機、本星型ワームも少数ながら含まれている。だが、フェオ達が真っ先に狙ったのはキューブワーム(CW)である。
「強敵と戦う仲間の為にも、ここで落とさせて貰おうか」 
 駆け付けたGae Buidhe率いる榊兵衛(ga0388)の機体から、CWが減って多少はクリアになった空に向けて500発のミサイルが二度、斉射された。
 雲霞の如く飛翔したマイクロミサイルが標的と定めたワームへと喰らいつく様は壮観の一言である。すべてが命中したわけではないが、敵の進路を阻む圧力としては十分だ。
「最早ロートルの部類に入りつつあるこの機体ですが‥‥まだまだこれからです!」
 グリフィンを率いるがレイアーティ(ga7618)が叫び、ディアブロを編隊に突入させる。たちまち乱戦になれば、そのレイアーティの後方にHWが迫る。
 だが、そのHWを同じグリフィンの比企岩十郎(ga4886)の岩龍が叩き落とす。
「電子戦機だからと近づくと、火傷するぞ?」
「ありがとうございます!」
 比企のフォローに、レイアーティの感謝の言葉。
 乱戦の中でバグア機の編隊が地上への降下をはかる。市街地へと逃げ込む腹だ。
「‥‥ここを通す訳にはいかないわね。墜ちて頂戴」
 だが、その動きを読み、警戒していた小鳥遊神楽(ga3319)が降下を狙い、高度を下げるHWを撃ち落とし、榊 刑部(ga7524)が被弾して煙を噴くHWを擦れ違いざまの剣翼の一撃で仕留める。
 降下を図るバグアとそれを阻止しようという傭兵達の戦いの結果、徐々に両軍が高度を下げていた。
 その時であった。彼らの上方で照明弾が打ち上げられる。直接気づいた者は少ないだろう。
「シェイド撃墜後の隙を狙って、噂の新型が隠れていると思ったんですが‥‥いました! 上です! 編隊に紛れていたんです!」
 だが、続けて無線機から聞こえてきたユダ発見の報に一帯の傭兵達は顔をあげ、照明弾を確認した。
 この空域で唯一ユダだけを警戒し続けていた須磨井 礼二(gb2034)がユダの光学迷彩を見破ったのだ。中空に浮かぶ不自然なペイント弾の着弾跡、それがユダである。
「くっ、新型ですか?」
 ゼフィル・ラングレン(ga6674)は損傷機を援護する為に戦場を俯瞰する位置、すなわちユダと同じ高度にいた。ペイント弾の着弾跡が高速で迫ってくる。シュールな光景に反応が遅れた。
 ユダが光学迷彩を解除する。ゼフィルの眼はどことなくカブトムシを思わせるデザインの紫色の機体。
 ユダから放たれた光条がゼフィルのR-01を貫いた。
 邪魔だと言わんばかりに。
 ユダが加速する。ユダをあらかじめ警戒していたグリフィンと赤熱鉄が目前のHWを無視して即座に追撃をかける。


●紅の悪鬼
 機体の損傷、エミタという上位者からの指示もあり、ステアーがその翼を翻した瞬間、無線越しに新たな挑発が届く。
「もう逃げるのか? 小野塚。全くリリアって奴もこんな負け犬見捨てればいいのに‥‥あ、リリアって馬鹿なのか!」
「‥‥今、何と言いましたか?」
「え、何か負け犬が吠えてるし。悔しかったら逃げずにかかって来いよ!」
 霧島 亜夜(ga3511)が損傷を受けたステアーに向かって、発した挑発。
「相手をする必要はありません、さっさと下がりなさい」
 挑発には乗らないよう、指示するエミタだったが、小野塚は既にその声を聞いては居なかった。
 霧島も効果を確認する前にウーフーを反転させる。少しでも味方の多い方へ、少しでもシェイドから遠くへ。
「リリア様を侮辱する事は、万死に値する!」
 憎しみに満ちた声が霧島の耳をうつ。背後から迫るプレッシャー。
(かかった!)
 霧島は自分の挑発が敵を引きずり出したことを確信する。
 直後、霧島の駆るウーフーに向かって、背後からステアーの一撃が叩き込まれる。
「うわあああっ!」
 大破し、コントロールを失ったウーフーが地上へと落下していく。
 だが、霧島も小野塚もまだ終わったとは思っていない。
「緋閃、少しでも長く、少しでも遠くへ‥‥あいつを引きずり出すんだ!」
「まだだ! こんな程度で終わらない!」
 制御困難な愛機を叱咤し、必死に飛行を続けようとする霧島と、それを執拗に追撃しようとする小野塚。


●後方支援者達
 後方に展開する傭兵達にとっての戦いは、戦闘開始直後ではなく暫く経過してから始まった。
 通信によって把握した撃墜された機体の元へとリッジウェイを駆り、救助へと動くもの。
 補給、修理の為に空港へと帰還したKVに応急措置や弾薬、燃料の補給を行うもの。
 前線とは異なり、命の危険は然程でも無いが、補給は今回の作戦に関わらず戦争の勝敗を握り、前線傭兵の命を支えるのも彼等の役割となり、非常に重要な部位である。

「腕は期待されても困るが‥‥やれない訳じゃないからな」
「とにかく飛べるようにするのが最優先だ」
 正規軍整備員と共に、損傷を受けたKVに簡単な応急処置を施す黒崎・刃(ga8253)。
 本来なら本格的な整備補修作業を行い万全な状態に戻してから、再出撃を許可したい所ではあったが、そうもいかない。
「よし、これでいけるはずだ」
 メンテナンスハッチを締め、黒崎と整備員は機体を離れ、次の機体へと向かう。
 黒崎の背後では、応急措置を終えた機体のエンジンに再度火が入れられ、滑走路へと移動を開始した。

 そうした実際的な支援者の中に混じって、補給物資の流れをチェックし、物資が滞りなく各空港へと届けられているか確認している傭兵も居た。
「ここが正念場だ。前線が息切れしないためにも補給の管理を徹底しろ」
 セレノア・キューベル(ga5463)が、補給物資をリストを見つめながら、補給に戻る航空機を捌いていく。
 無論、一人でそれら全てを賄えるわけではなく、何人もの傭兵が彼女の支援に動いていた。
「取りに来てもらっても大丈夫でしょうか?」
 結城 有珠(gb7842)が要求された物資の在庫のリストを確認し、正規軍の輸送部隊へと、余剰物資の移送を依頼する。
 こうした輸送任務には現状のKVの殆どが向いていない為、こうした物資の移送は軍が主軸となっており、その補給部隊を護衛する傭兵もそれなりの数が居た。
 
 空港や仮設基地で動くものだけでなく、救助活動を主とする傭兵達は多い。
 救助部隊は後方支援の中で最も前線に近づく為危険も大きいが、リッジウェイやAU−KVなど機動力に優れた者が動いていた。
「怪我は浅い! 大丈夫、すぐに助けるから!」
 カンパネラ救助隊の東雲・智弥(gb2833)が撃墜されて重傷を負った傭兵に応急手当を施してからリッジウェイへと移送する。
 リッジウェイの兵員輸送室には今救助した人以外にも、それなりの人数が詰め込まれている。
 これ以上を兵員輸送室に載せるのは難しいと判断した東雲は、後方の仮設基地へと負傷者を搬送する。
「KVが墜とされるのは、気にくわないわね」
 搬送した先でも、専門の医師以外にも多くの傭兵が治療行為に奔走していた。
 オリビア・ゾディアック(gb2662)が回収してきた重傷の傭兵に練成治療を施し、額に浮いた汗をぬぐう。
 そうした医療行為に携わる傭兵の衣服は殆どが血にぬれていた。
 本来、雑菌の感染を抑える為にそうした衣服は洗うべきなのだが、そうも言っていられないのが前線に設置された野戦病院という場所である。
 1分1秒を争う重傷者を最優先に治療を施していくが、逆に重傷ではあるが放置していても死なないような傭兵は後回しである。
 戦場における治療においては優先順位がある。
 それを過去幾度も死線を潜り抜けた傭兵は理解している。
 とはいえ、治療に携わる人間達にとっては、苦痛を与え続ける事にならざるを得ない事態に焦慮を隠せない。
 彼等の多くが、負傷者を量産する戦闘がなるべく早く終わって欲しいと願っていた。
 
 撃墜された機体の情報を判断して救助部隊へと場所を通達する羽曳野ハツ子(ga4729)。
 現状届いている情報では、シェイド、ステアー周辺ではかなりの数の傭兵が撃墜されているが、増援として飛来するHWを阻止する傭兵側にはそれほど大きな損害は出ていないようだ。
 そうした情報を共通情報網から把握していた羽曳野機に緊急を告げる通信が、増援阻止に動いている傭兵から入る。
 ユダ出現の報告である。

●落ちる紅
 戦闘不能になって落ちていくウーフーと、執拗に追撃を仕掛けようとするステアーの間に割り込んだのは、オルタネイティブの狐月 銀子(gb2552)である。
「倒しに来たんじゃない‥‥動きを止めに来たのよ、ステアー!」
 オーバーブーストを起動し、真紅のフィールドに身を包んだフェニックスが接近する。狐月はフェニックスの姿勢を両肩の推力偏向ノズルを駆使し保ちながら、まるで掴みかかるかのようにステアーに立ちはだかる。
「邪魔をするな!」
 邪魔をされ、激昂した小野塚はステアーを変形させて狐月を薙ぎ払おうとする。
 が、間合いにステアーが入った瞬間、フェニックスが携えた機槍グングニルが繰り出される。
「くっ!?」
 反射的に防御に入る小野塚だが、予想した動きとは異なる行動に対応がワンテンポ遅れる。
 穂先が装甲を抉り、注入された液体燃料に着火。猛烈な爆発がステアーを揺さぶる。
 追撃を仕掛けられる前に仕留め様と、機体のブレードを振り抜こうとした瞬間、ステアーの周囲を濃密な煙幕が包み込んだ。
 理想的な一撃離脱。
 同時に上空からオルタネイティブによる追撃。
 その衝撃に推力を落とし、地表へと降下したステアーを待ち構える機体があった。
 狐月同様、オルタネイティブに属する蒼河 拓人(gb2873)のミカガミである。
「人が磨き上げて来た刃‥‥見せてあげようか!」
 ミカガミの両の腕から光の刃が伸び、ステアーへ向けて振り下ろされる。辛うじて一撃は機体を傾ける事で回避したステアーだが、強引な回避起動によるものか、あるいは損傷の為か僅かにバランスを崩す。
 その隙を蒼河は見逃さず、腕に構えた雪村を起動する。
「この時を待っていた‥‥その翼、頂くよ!」
 迸る高圧縮レーザーがステアーの損傷部に伸び、その中枢機構に致命的損傷を与える。
 大破したステアーが大地に沈む。
「やった‥‥のか?」
 機能を喪失し沈黙するステアーに攻撃の手を止め、安堵の吐息を漏らす傭兵達。
「‥‥こちら‥‥赤熱‥‥新‥機‥‥ユダに‥‥突破された。現在、追跡中だが‥‥速い! 交戦にそ‥‥え‥‥」
 無線機から流れたユダ出現の報告に一気に緊張を取り戻す。
 ユダを警戒をしていたリャーン・アンドレセン(ga5248)は即座に天衝隊員達に警戒を呼び掛け、隊長の判断を仰ぐ。だが、それでは速さが足りなかった。
「来たぞっ!」
 誰かが叫んだ次の瞬間、超高速で戦域に突入してきたユダがステアーの真上を飛びぬける。するとステアーの機体がユダに引きつけられるようにして浮き上がる。
 ユダはステアーを牽引するようにして、そのまま戦域を飛び去っていく。
 追撃をかける傭兵達の機体がが上空を通過したのは、やや遅れてのことである。

●悪夢の失墜
 ステアーが撃墜された頃、シェイドを巡る戦いも終盤を迎えていた。
「この一太刀に全てを込めて‥‥シェイドを!」
 月狼 朱雀七星宿に所属する如月・由梨(ga1805)が大地を滑るように移動しながら接近するシェイドに向け、機刀「獅子王」を振りぬく。
 その刃を受け止め、受け流すシェイドに対して、ディアブロの特殊能力を起動し、更なる斬撃を入れる。
 幾度も振るわれる鋭い斬撃の一つがシェイドを捉え、その装甲を引き裂いた瞬間、試作剣「雪村」を起動し、その僅かに出来た装甲の亀裂を狙い如月が光刃を振るう。
「流石に、そこまでうけるわけにはいきません」
 エミタは光刃を握るディアブロの腕を斬り落とし、追撃として上段からの斬撃を見舞う。
 機能を停止し沈黙する如月機に続いて、建物の影に隠れていたAstraeaの前園・タクヤ(gb5676)がシェイドの背後から迫る。
「待伏せ不意打ちは事前準備しっかりと、ってね」
 その攻撃を予期していたかのように、180度反転しながら放たれた光条が前園の機体を貫く。
「シェイド! 夜の影は掃われる刻が来た! 夜明けの象徴に倒れろ!」
 集中攻撃をものともしないシェイドに対し、レティ・クリムゾン(ga8679)率いるTitaniaの面々が連携攻撃を仕掛ける。
 Titaniaが狙ったのはシェイドの間接部。装甲が比較的薄くなる部位であるが、そうした部位を狙った攻撃は命中させる事が難しい。
 楓姫(gb0349)が放ったスナイパーライフルの一撃をブレードで跳ね飛ばす。
「これで終わりにしてやらぁっ!!」
 その僅かの隙を突き、ブーストで接近した砕牙 九郎(ga7366)がデアボリングコレダーを起動する。
 電極の間を高圧の電流が走りスパークを上げる拳を砕牙は迷う事無くシェイドの胴体に向けて叩き込んだ。接触と同時に高圧の電流がシェイドの装甲のみならず内部機構を焼いていく。
「これは‥‥面白い武器です、しかし、その程度なら、まだまだといったところですね」
 シェイドはブレードの一撃を持って砕牙の機体を斬り捨てる。
「ゼカリアの威力を見せてやるのである」
 砕牙の機体からシェイドが充分離れた瞬間、美黒・改(gb6829)の操るゼカリアの主砲が火を噴いた。
 徹甲散弾はスプレーのようにシェイドの機体を覆い、その装甲表面に損傷を負わせる。
「くっ! ‥‥今までであれば、とうに撤退していますが‥‥」
 エミタはコクピットに灯るいくつものアラートを見ながら、ここまで戦い続けるのはいつ以来だろうかという思いがよぎる。
 彼女が乗るシェイドがここまで損傷を与えられたのは、地球ではかつてなかったことだ。
「悪夢はもう終わりです!」
 朝河 ヒカリ(gb2289)が叫ぶ。傷ついたシェイドの姿はもはや悪夢の象徴というほどには遠い。
 シェイドはすでに手が届く存在なのだ。シェイドに攻撃を仕掛け続ける傭兵達は確信する。
 夕凪 沙良(ga3920)のディスタンが迫る。
「私と貴女‥‥どちらの反応速度が上でしょうね‥‥」
「試してみますか? 悪夢が終わったというなら、次は現実を見せてあげましょう。戦士としての格の差を!」
 夕凪の言葉に応じるエミタ。不規則な機動を描きながらディフェンダーを携えて迫る夕凪の機体に向けて、エミタは半ば無造作とも取れる動きで機体を進ませる。
 交錯の刹那、両者の間を紫色の機体が飛びぬけていく。
「貴方は指揮官なのですから、只の戦士に戻られては困ります。撤退してください。私はこれ以上援護することはできませんよ」
 地上の一騎打ちに割り込む超低空飛行から、今度は一気に高空へと急上昇していくユダ。追撃の傭兵達が一時的に追い付いて攻撃を仕掛ける。ユダは再び加速して追撃を振り切る。
 だが、外からの乱入者ユダにシェイド包囲網は混乱をきたした。特に綻びが大きいのは組織化された小隊に判断を委ねすぎて駒のように動いていた傭兵たちだった。連携と駒になることは別物である。
「‥‥リリアですか、折角久々に全力での戦いを楽しんでいたというに、無粋な」
 だが、リリアが入れた横槍で撤退の名目が出来た。そう判断したエミタは撤退を了承する。
「バグアの側から無粋な邪魔が入ったことは詫びましょう。残念ですが、この続きは別の機会にとっておくことにしましょう」
 戦場に居合わせた傭兵達に宣言すると、ユダともに包囲網の綻びをついて撤退するのであった。


<担当 : 左月一車 >

<監修 : 音無奏 >
<判定・文責 : クラウドゲームス株式会社>

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