バレンタイン中止のお知らせ
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2月19日の報告

<報告書は前編:後編から成る>

【図書館】

●カオスの入り口
 図書館で行われる『祭り』は、壮絶なものだ。事故を防ぐ為か、一応兵舎には『お知らせ』が張り出されていたのだが。
「返却されないと利用に制限? うはぁ‥‥」
 旭(ga6764)の元に届いた、一通の手紙。それは、延滞期限の日付を示すものだ。間の悪い事に、今日までと書いてある。30分後、バトルブック片手に図書館へ突撃する旭の姿があった。
「さぁっ、今回も酷い事になってまいりました。戦況はどうでしょうか? 解説のレベッカさん!」
 底では既に、中止派賛成派が多数押し寄せての騒ぎになっていた。しかも島津 影虎(gb4930)ってば、引き続き実況席を設けてレポート中。隣のレベッカ・マーエン(gb4204)が、傭兵戦力の分析と称して、解説を始めていた。
「うむ。どうやらジャマーの数は拮抗しているようだな。中々面白い勝負になりそうだ」
 それによると、おおむね半々に分かれたらしい。中立派もかなりいるはずだが、その割には、暴れている子も多数いた。
「バレンタインなんてバレンタインなんてバレンタインなんてぇぇぇぇっ!!」
 中立派のはずの伊流奈(ga3880)、そんな事を狂った様に叫びながら、本棚の本を手当たり次第に投げつけている。そんな暴れっぷりの手前では、何故か屋台があちこちに並んでいた。
「お茶はいかがですか〜♪」
 猫屋敷 猫(gb4526)が、持ち込んだコタツに、茶をはこんでいる。茶受けは、如月(ga4636)が持ってきたお寿司やフルーツ、焼きおにぎりなどの軽食だ。
「見物まで巻き込んでくれるなよ‥‥?」
 そのお茶と軽食を受け取りながら、ルイス・ウェイン(ga6973)は、本棚の上に陣取っている。その下には、何故か有名人の著書が並んでいた。
「こんな本まであるんだー」
 その本棚にあった本を取り出す羽音 ミク(gb4171)。タイトルには『華麗なる我が半生』だの、『○○歳からの化粧講座』だの、変わり種の本だが、カプロイア文庫なんで、入れてあるのだろう。
「え、え、え‥‥こ、来ないでぇっ!?」
 だが、観客が本とお茶と軽食片手に観戦に望む中、図書館では、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていた。
 運び込まれたチョコレートを入れた箱はどこにあるのだろう?
 よくわからないまま巻き込まれてしまった周藤 惠(gb2118)が持っていた。渡されたチョコを狙う輩に追い掛け回されて、全力疾走で逃げ回っている。
「よし、こっちにおいでっ。あたしの歌を聞かせてあげるっ!」
 恵が逃げ込んだのは、『ゲリラライブ』と書かれたお立ち台の辺りだ。そこでは、推進派の常夜ケイ(ga4803)がマイク片手に文化ルチャーな歌を歌っている。一曲歌い終わったところで『おひねりギブミー』と、相棒のキャル・キャニオン(ga4952)が持ったザルに、チョコを入れさせていた。
「それ、どうするんですか?」
「うん、恵まれない子供に寄付するのよーん」
 中止派の大義名分を奪うべくキャルが声高に宣言していたんで、恵はそれにチョコを押し付け、群集の中にまぎれるようにして逃げた。
 チョコを手にしたキャルを追いかけようとした中止派に、御坂 美緒(ga0466)が立ちはだかる。
「ここから一歩も引きませんよ♪ 恋の戦いに諦めの文字はないのです♪」
 そう言って、美緒がぱっと開いた本。それには、ピンクの丸文字で『恋に効くおまじない!』なんぞと書かれている。恥ずかしげもなくそれを朗読し始める美緒さん。耳を洗脳されたのか、中止派の何人かが医務室送りになった。
「ふふ、そう言う事ならこっちにも‥‥」
 触発されたらしく、対抗するようにペルツェロート・M(ga0657)がトランシーバーを持ち出し、若人のピンクの脳味噌を刺激する音声が垂れ流す。
「そ、そんなトコ、あ、だ、ダメです‥‥いけませんのです‥‥!」
 ペルツェロートの恋人とえっちなことをしているような音声に、ふらふらと引き寄せられる中止派の若い傭兵達。だが、そこに現れたものは!
「恵まれない独り身諸君、君達の欲しい物を纏めてプレゼントだ!」
 全身にチョコを塗りたくった、イスク・メーベルナッハ(ga4826)だ。しかもそのまま、タックルを仕掛けてくる。
「チョコと彼女を纏めてプレゼントだよ」
 そう言って、ダウンさせた中止派に馬乗りになり、チョコを塗った身体を強引に舐めさせようとしている。なんとか被害を逃れた何人かが、置かれていたチョコレートの箱に手を伸ばしたところ。
「かかったわね!それは‥‥ニセモノよ!」
 箱の影に隠れていたシャロン・エイヴァリー(ga1843)がびしぃっと指を突きつけている。既に開いちゃった箱には、図書館で借りた「恋人を作る」ハウツー本が入っており、独り身の中止派に追加ダメージを与えていた。
「はっはっは。チョコは頂いたわっ」
 その間に、フィオナ・シュトリエ(gb0790)が、持ち込んだ麻袋にチョコをかき集め、ダミーのチョコレート(オモチャ)をばら撒きながら、逃走中。追いかけようとする中止派の目の前を、「このベビーカーには赤ちゃんが乗っています。触らないで下さい」と書かれた、真っ黒な乳母車が不吉に通り過ぎた。押しているのは、やっぱり真っ黒な衣装を身につけた葉月 郁奈(ga9065)だ。
「騙されないで下さい。先頃プリネア国の王女殿下が出された依頼、推進派の皆さんはご存知ですか?___幼い双子の能力者が、祖国の子供達にチョコを届けて欲しいと自分のお年玉を差し出したそうですよ?」
 だが、そんな事では中止派はひるまない。その1人である張央(ga8054)が、俳優張りの演技で持って訴える。
「いくら中止を叫んだところで、今年のバレンタインデーはもう終わっているじゃない!」
 身も蓋もないセリフで反論する羽曳野ハツ子(ga4729)。「な、なんだってー」と背後に稲光を落とす中止派。だが、その直後、沈黙を一本の電話ベルが引き裂いた。
「おーい、大変だ! この横には、爆弾が仕掛けられてるらしいですよ!」
 そこへ、アヤカ・ステラマリス(ga8848)が、電話機を片手にそう訴えた。しかもその直後、手にしていたチョコレートを捕り落とし、ばったりと倒れてしまう。
「つまりこれは、危険な爆発物入りチョコなんですね!」
 電話を受け取ったのは、マリア・ベースハート(ga7273)だ。腕にカンパネラスポーツと腕章をつけたマリアがかけつけ、呻くアヤカを見て救急車を要請している。
「ほら危険なんだから下がってー!」
 推進派を立ち退かせシャッターを切りまくるマリア。ついでに、危険物は自ら撤去だ。
「おっと事件だ。みんなそこを動くな」
 便乗したキラ・ミルスキー(ga7275)が、風紀部のお仕事とばかりに、立ち入り禁止のテープを張り、現場検証の要請をしていた。
「これは証拠品として押収します」
 それを受けた風紀部鑑識課のノーラ・シャンソン(ga7276)が、研究所送りにするとばかりに、チョコを取り上げてしまう。だが、ノーラがそれを運ぼうとした直後、足元の何かにつるっと滑って尻餅をついてしまう。
「この先足元注意‥‥‥‥顔面もね?」
 にこやかにそう言うのは、輸送路にチョコボール色のパチンコ玉をばら撒き、その上を板に乗ってスケボー気分で通過して言ったシェスチ(ga7729)である。あろう事か、中止派をすれ違い様にフルスイングで片付けていたり。
 状況は再び混沌空間へと逆戻りしていた。そのパチンコ玉に後押しされるようにして、琴乃宮 奏(gb1873)と風雪 時雨(gb3678)が、AUKVをバイク形態にして乱入する。
「バレンタインは女の子の大切なイベントなのですよ〜」
 まぁ、周囲にいるのは、能力者だらけなので、多少跳ね飛ばした所で、3日も寮で寝てれば全快だろうと、容赦のない奏。まあ、後で危険行為だったとお説教されたのだが‥‥。
「轢かれたくない方は退いてくださいね」
 そう言いながら、風雪も容赦なくチョコレート・ロードを爆走している。
「かたじけのうござる。だがここはひけないでござるよー!」
 そこへ立ちはだかるルクシーレ(ga2830)。ちょんまげかつらに巨大ハリセンと、カンペキないでたちで持って仁王立ち。
 だが走ってるバイクにぶつかっていけばどうなるか。
「無念なりーーーーー!」
 吹っ飛ばされてあさっての方向に転がるルクシーレを見れば一目瞭然と言う奴だ。
「大変なカオスになってまいりました。図書館はこのままトラップの迷宮になってしまうのでしょうか。一旦CMです」
 既に両陣営がごった煮になっていて、各陣営は相棒を探すのさえ困難な状況だ。そんな中、大曽根千種(ga6743)は、仕切り直しをするように、カメラに向かってそう言うのだった。

●カオスのラビリンス
 CMがあけると、カオス度はさらに進行し、図書館には、罠のラビリンスが出来上がっていた。その中を、朝比奈・るみ(gb2764)が、AUKVでカンパネラスポーツのコピー号外を配りまくっている。それには大きな見出しで「図書館に予告電話。チョコレートに危険。食中毒‥‥」と書かれていた。ついでに屍のごときぶっ倒れている学生達の写真まで写っているが、裏を返せば小さく『か?』なんぞと添付されていた。
「げに恐ろしきは人の性ですわね‥‥」
 ぼそりとそう言って、図書館常備のちらしをロビーの真ん中にばら撒く紫鳳院 風霞(gb4262)。だが、その時だった。
 本棚の上にたたずむ三人の戦士。中止派狙いにみせかけてターゲットは推進派のようだ。
「秘蜜戦隊「御恋者」参上!そうは問屋ヤッ」
 飛び降りざまの攻撃が風霞を直撃し、チラシの海へと沈めていた。
 見れば、ミリセント・ウイレム(ga7177)が、ライサ・フォッシュ(ga7179)をイエローに、ニナ・ライト(ga7178)をピンクにして、推進派とテロリストを一緒くたにどつきまわしはじめる。
「いいわね? いきますわよ!」
 ニナがそう言って、掛け声と共に、チリソース瓶を周囲へと投げる。おかげで、さらに混沌が加速してしまった。本棚の上で、全体を監視していた遠倉 雨音(gb0338)が、三人へペイント弾を仕込んだエアガンを狙い定めながら、こう呟く。
「今イベントの混沌を体現しているかのようですね、此処での戦闘は‥‥」
 ばしゅうっと撃った弾丸を皮切りに、同じ『棘』メンバーが、中止派に襲い掛かる。もはや誰がジャマーで誰がポインターなのかもわからないが、みんな片付けてしまえば良い話だ。
「よぉし、ヒーター起動! 床は掃除しておいたから、転がっても安心だ!」
 そこへ、織部 ジェット(gb3834)が、すっごく滑るワックスで掃除していた床で、仕込んだチョコレートが融けるよう、ヒーターを起動させる。つるつるした油で、ばたばたと倒れる賛成派の女子。
「おっしゃ、そこのカノジョ、床で愛を語ろうぜ」
 それを好機と見たのか、今度はエルガ・グラハム(ga4953)が押し倒した。耳たぶに息を吐きかけ、愛の言葉をささやく。が、はたから見るとエロゲーすぎて仕方がない光景に、後ろからメアリー・エッセンバル(ga0194)のプランターがげっしょんと盛大な音を立てて落ちてきた。
「油断もすきもない‥‥」
 視界を奪われ、むぐぐと呻くグラハムを、麻縄で簀巻きにするメアリー。だが、直後、その頭上に、投網が大量に落ちてきた。
「メアリーさん。申し訳ありませんが貴方達には魚になってもらいます」
 にこやかな笑顔で持って、取り付けられたウィンチを引き上げる月神陽子(ga5549)。そのまま、地引網のようにずりずりと中止派陣地へと引きずり込んで行く。そして直後、メアリーは額にマグロシールを張られてしまった。
「みなさぁん、争いはやめて、寝返りませんかー」
 そう呼びかけるミリート・ファミリス(ga8694)が、メガホンを手に声をかけているが、いる場所は搬入用通路。聞いちゃいねぇ。
「速攻で、どいてもらうぞ?」
 榊 紫苑(ga8258)がそう言って、煙幕を炊いたのを皮切りに、その足元に水やら油やらが転がされる。【H】と腕章を掲げた一団が、雪崩を打つように、次々と液体をばら撒き始めた。リオン=ヴァルツァー(ga8388)が床に粘着剤を設置し、ドッグ・ラブラード(gb2486)の運んだワックスの一斗缶が、つるりと滑って盛大に降り注ぐ。洗うと証して依神 隼瀬(gb2747)の持ってきた石鹸水がその上に覆いかぶさり、つるっと滑った中止派はロッド・レイ・ビクシア(ga7744)の持ってきたオイル缶が直撃。さらに便乗したしっと団以外の推進派、野良 希雪(ga4401)が、何故かコーヒー牛乳をばら撒き、突進した所に、群咲(ga9968)が、ダンボールハリセン二刀流で、のたうった床に沈めていた。
 好機とばかりに、賛成派も中止派も堰を切ったようにチョコを確保しに向かう。
「御遊びでも何でもいい。決着といこう」
 南雲 莞爾(ga4272)がそう言って、ハリセンとエアーソフト剣を巧みに使い分けつつ、混沌の中に、照明弾を打ち込む。図書館の錯綜とした地形を巧みに利用した南雲、5人を戦闘不能に追い込んでいた。
「なんですと、こんな簡単なトラップに引っかかるとは‥‥」
 続く順位だったらしいシヴァー・JS(gb1398)が、籠の下に設置したチョコを狙い、引っかかっていた中止派に驚きを隠せないでいる。じたばたとチョコを抱えたまま話そうとしない中止派に、リーファ(ga8282)横から抱きついていく。
「チョコほしいよぉ〜、リーファにもチョコちょーだーい!」
 にじりよるリーファ、自身の胸とか太股とかを相手の身体に擦り付けている。相手がその色仕掛けに油断した所で、その手にしたチョコを奪い取っていた。
「我が愛しき二人の邪魔をさせはしない・・・・!! 悪く思うなよ」
 一方では、漸 王零(ga2930)が、他の中止派に見せ付けるようにして、王憐華(ga4039)赤宮リア(ga9958)の周囲に目を光らせている。時々ほっぺにちゅーした効果で、中止派が何人か医務室送りになった。
「敵の数が多い? …つまり、撃墜数を稼げるってことよね?」
 そんな状況の中、ニヤリ笑ってみせる赤崎羽矢子(gb2140)。
「数が有利になるステージじゃないってことを思い知らせてあげようじゃない?」
 しっと団【H】の一員でもある羽矢子。そう言うと、混沌たる状況を利用し、敵に取り囲まれないようにタイミングを計って物陰からの襲撃を敢行していた。仲間の協力もあり、かなりの数に成功したようだ。
「まだ、終われないだろ」
 星名 煌(gb3846)が罠を仕掛けて回っている。
「背中は任せてる…だから、今回は攻めさせてもらう」
「バレンタインに興味は無いが‥‥負けるのは趣味ではないしな」
 その罠をかいくぐった者達に、今度はフォビア(ga6553)が、相棒のアンジェリナ(ga6940)と共に、チョコ&唐辛子パウダー配合水入りの水鉄砲を浴びせかけていた。目潰しを位、本棚に近づこうとした相手を、アンジェリナがハリセン2本でひっぱたき、頭上や本棚の影に潜む賛成派には、本を投げつけ確かめる。お互いに死角を確かめ合いながら、背中を合わせ、攻守を転じる二人は、着実にポイントを稼いでいた。
「こんな茶番は早く終らせたいんだ!相手になってやるから正々堂々かかって来い!」
 よくわかんない悪臭が漂う様になっちゃった図書館の床。その上を、これまた粘着質の水音蹴立てて、長女の鳳 螺旋(gb3267)、次女の鳳由羅(gb4323)と共に乱入する鳳覚羅(gb3095)。
「いいだろう。小細工抜きでやってやる!」
 挑発にのったのは、ブレイズ・カーディナル(ga1851)だ。どんっと仁王立ちになり、覚羅の攻撃を受け止める‥‥筈だったのだが。
「君達には恨みはないんだけどこれも仕事なんだ‥‥悪く思わないでね」
 微笑と共に投げかけられたのは、複数の投網。
「くっ‥‥燃え、尽きた‥‥ぜ」
 その投網に押しつぶされるようにして、ばったりと倒れるブレイズ。その背中を、今度は子供達の写真を、まるで裁判に勝ったかのように掲げたエルフリーデ・ローリー(gb3060)が踏みつけて行った。しかも、その後ろには【子供愛】と書かれた鉢巻を装備し、大き目のリアカーにチョコを抱えた響 愛華(ga4681)と綾嶺・桜(ga3143)が通り過ぎていく。同じ中止派にも関わらず、容赦はしてくれないようだ!
「今です。狙ってください!」
 しっと団工作部隊『H』の神無月 紫翠(ga0243)が、追ってくる賛成派の足元に、粘着剤入りペイント弾を乱射する。身動きできなくなった女性に、ルーイ(gb4716)の魔の手が忍び寄った。
「おぜうさん。君のその恋人への愛を、世界中の子供たちに少しでも分けてあげる事は出来ないかな?」
「あらありがとう。でもあたし、今彼氏募集中なのよねー」
 が、相手が悪かった。賛成派の熊谷真帆(ga3826)は、そう答えると、意地悪くと笑って、足払いをかける。押し倒した格好となったところで、無理やりちゅーを奪っていた。
「えぇい、何か腹立つっ。そういうのはよそでやれっ!」
 思わず即席カップルが出来上がりかけたそれに、きしゃああっと吼えたゼロ・フジワラ(ga4665)、バカップルは俺がやる! とばかりに、真帆へと近づいた。だが、その正面に、今度は百瀬 香澄(ga4089)の唐辛子入りチョコレートパイが炸裂する。
「あらごめんなさい。女の子に手を出させないのが、あたしのジャスティスだから☆」
 意味が違うと思ったのは、沈んだゼロだけではないに違いない。

●出口なき闘争
 迷宮は果てしなく続く。元々、状況の補正がかからない状態だ。だが、そんな中でも、状況をしっかり把握しようと努める者達がいた。
「さて、どうしましょうか‥‥」
 あちこちに設置されたちゃぶ台で、水葉・優樹(ga8184)が、そう呟く。他の所はかなり中止派が不利なようだが、図書館では相変わらずイーブンだ。そこへ、劉黄 柚威(ga0294)が、急須から大量に置かれた湯のみへ、熱々の緑茶を注ぎ込む。
「そんなに焦ってないで、一杯どうだ?」
「あら、ありがとう」
 そう言って受け取る優樹。それが、柚威の張ったトラップだと、まぁぁったく気付かず、そのまま観客と化している。
「御用とお急ぎで無い方はちょいと耳を拝借、これが新感覚大阪名物!」
 そのトラップを逆に利用する三島玲奈(ga3848)。ちゃぶ台行列の前に、机を並べ、その上で『恋人との恋愛成就する新しい食べ方』なる講座を開いている。チョコ輸送路を予想して設置されたその机の周りには、観客が大勢集まってしまい、身動きが取れない状況になっていた。
「ああんもう、せっかく、調べ物をしていたのにー」
 その人ごみのせいで、中止派に間違えられちゃった藤河・小春(gb4801)、ぽふぽふとふくれっつらで、その場にいた賛成派と思しきカップルを、ハリセンでシバいている。
「シブトイじゃねぇか中止派。ならば、俺様の愛を食らって撃沈しろ! 俺様の愛が真っ赤に燃える! 必殺・チョコフォンデュフィンガー!」
 業を煮やしたテト・シュタイナー(gb5138)が、その中止派勢力に、チョコまみれの手を無理やり突っ込んだ。むにゅ、と口に当たる感触がする。
「はむはむはむはむ‥‥」
 が、かかったのは琥金(gb4314)。よっぽどお腹をすかせたらしいはらぺこふぇんさーさんは、一心不乱にチョコに食らい付いている。そして、一通りぺろぺろと舐め終わると、飢えた野獣のよーに、チョコへと向かって行った。
「だーかーらー。これは駄目だっつーの」
 運べと言われて、チョコの箱を運んでいた金 海雲(ga8535)が、対処に困って、中止派冴城 アスカ(gb4188)の所へ逃げ込む。
「いくぞ‥‥3・2・1、チェストォォォォォォ!!!」
 海雲からそれを受け取ったアスカは、付いてきた賛成派の皆様に、発煙筒を投げつけていた。合図と共に、ウラキ(gb4922)が、持ってきた箱を引っ張ると、中から噴出すのは、冷め切った特濃ココア。服に付いたが最後、洗濯屋持っていかないと取れないって言う厄介なシロモノである。
「ホントは愛し合いたいんでしょ?なら今はボクと愛し合おうよ‥‥♪」
 中にはレイチェル・レッドレイ(gb2739)のよーに、ココアまみれになりながらも、服を脱ぎ、誘惑に走ると言う奴もいたが、たいていはリタイアだ。
「なんの。パーティはこれからですよ!」
 賛成派も負けてはいない。砕牙九郎(ga7366)が、ケツにココアをつけながらも引っ張ってきた中止派に、鹿嶋 悠(gb1333)が、紙テープの代わりに納豆を詰め込んだクラッカーを浴びせかけている。怯んだ中止派をメルスン(gb4607)が、どこかから拾ってきたバット型チョコレートで、粉砕していた。そんなメルスンの前に立ちふさがるは、道化師(gb4975)。
「我はチョコレート魔人‥‥子供たちの笑顔のための存在。私利私欲のためにチョコレートを貪る者たちよ、そんなにチョコが欲しいのならば我を食らってみよ!」
 腕だけじゃなく、全身にチョコをぬたくった彼が、メルスンににじり寄る。それをかばうように乱入するサンディ(gb4343)。
「あなた達の今の姿を見て、親はどう思いますか? どうしても行くなら、私を倒してから行きなさい!」
「はーい☆」
 楽しそうな声がして、サンディの頭に、布の感触が振って来る。ちょうどよくあった鏡を見てみれば、専用ブリーフ3年目を被った自分の姿。
「男の子だったら、さらに剥いてたんだけどねー☆」
 犯人は弓亜 石榴(ga0468)。本棚を利用して、にじり寄ってきたらしい。悲鳴を上げて倒れるサンディ。精神的ショックと言う奴だ。
「そんなやからは燃えてしまえっ。LOVE IS ふぁいやー!」
 形勢は中止派がわずかながらに押しつつあった。推進派のk(ga9027)が、ライター片手に油だらけになった床ににじり寄る。だがその直後、振ってきたのは、サヴィーネ=シュルツ(ga7445)のごっついハリセン。
「文化の大事さを理解しない愚か者共が‥‥」
 蔵書が燃えたらどうするんだ! とばかりに、ライターを片付けようとする。
「じゃあこれでいいよね。必殺カメムシ攻撃ー!」
 七海 鉄斎(ga5260)が、くさい匂いのするカメムシを、サヴィーネの鼻先に突きつける。強烈な匂いに、彼女が一歩後ずさりし、本棚に置いてあったチョコレートを、うっかり落としてしまう。
「うし、引っかかったな」
 直後、横からぶっとい丸太がドツいた。床に沈むサヴィーネに、丸太の罠を仕掛けた月村・心(ga8293)がぼそりと呟く。気付けば彼の罠は、賛成中止双方に被害を与えていた。
「ああ、遅かったですか。いやそこにあるチョコは、輸送時の襲撃に備え用意していた偽物を配置していました。急いで取り替えますので開始までしばしお待ちください」
 と、割り込んできたのはUPCの制服を着用した霧島 亜夜(ga3511)で、チョコレートの箱を悠然と引き取っていく。亜夜が実は中止派だとわかったのは、チョコが消えた後の事だった。

 そして。
「祭りの後‥‥それはなんという”侘び”を感じる。‥‥後始末は大変ですが」
 ランドルフ・カーター(ga3888)が、そう言いながら、散らばった残骸を片付けている。手持ちのチョコは、リーフ・ハイエラ嬢に譲り、今はカオスとなった図書館を、元に戻している作業の真っ最中だ。
「まったくもう! 陣取りだけで図書館の中がめちゃくちゃですわっ」
 ノーマ・ビブリオ(gb4948)が、放置されている罠を撤去していく。中立派として観戦していた面々が、祭りの後始末に借り出されていた。
「‥‥‥‥はぁ〜‥‥ふ。ふふふふっ。ちゃ〜んと後ほど♪」
 楓華(ga4514)が、設置した人の名前とIDを、しっかり記録に残している。片付けに参加した人は消していくが、こなかった奴の欄には『お仕置き』と書かれていた。
「やはりそういうことですか‥‥」
 その片付けの時間を利用して、地下3階に下りてきた深夜。その目の前には、チョコレートの香りもかぐわしいカプロイア伯の像がある。そこには、ロッタの字でこう書かれていた。
『ホワイトデー用品のお求めは、是非ULTへお越しください』
 つまり、これはULTの宣伝活動だったんだ! と、そう結論付ける深夜。
「あとで説教だな。まったく、本は投げるものではないと言うのに‥‥」
 はた迷惑なプロモーションに、白鐘剣一郎(ga0184)が、本を片付けながら、そうぶちぶち。しかし、ロッタは結局捕まらなかった。
「あー、すまん。本を借りたいのだが?」
 御巫 雫(ga8942)が持ってきた本の表紙には、一見すると茶色いチョコレートのようなものが踊っている。この騒ぎの中、真剣に本を漁っていたようだ。
「美味そうだな。後で俺にも作ってくれ。あ、伯爵のおねーさーん。プリンよろしくー」
 面倒くさくなって、外の『カプロイア伯のお屋敷』とか言う喫茶室でだべっていたジングルス・メル(gb1062)は、プリンを要求しつつ、煙草をぷかぷか中。どうやら、タイトルに『LHゲテモノ料理図鑑』と書いてあるのには、まったく気付いていないようだった。
 
 こうして、図書館では、互いのジャマーが盛大に玉砕した挙句、中止派のポインターの生き残りが推進派のそれをわずかに上回り、中止陣営の勝利となった。だが、この盛大なトラップの密林では、倒れた戦士達に奇妙な笑みさえ浮かべている奴が多く、邪教の儀式が済んだ後のような光景が長く人々の記憶に残ったと言う。


<担当 : 姫野 里美>

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