北アフリカ進攻作戦
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北アフリカ進攻作戦 第2フェイズ統合情報


(ヴァルキリー級一番艦 ブリュンヒルデ)

●勝利の報告
『そうか、作戦は成功したか。おめでとう、ツォイコフ大佐』
 ピエトロ・バリウス中将は音声のみでそう告げた。おそらくは数箇所の中継地点を経由しての連絡なのだろう。彼の挑発は図に当たり、バグアは仕掛けられたゲームの枠内で行動せざるを得なくなっている。ゼオン・ジハイドはおそるべき戦士であったが、隠れ鬼が得意と言うわけではなかった。そして、バリウスと揮下の将兵はといえば、10年に渡ってアフリカで戦い、生き延びた経歴の持ち主なのだ。
「は。ドーム要塞は陥落。敵の守将は中枢にて傭兵に討ち取られたとの事です」
 一息ついてから。
「本艦はこれより、ジブラルタルへ向かいます」
『ならん。チュニジアとジブラルタル、どちらか一箇所で構わんという作戦だったはずだ』
 声を立てずにバリウスは笑う。もう時間稼ぎの必要はない。いかにバグアが歯噛みしようと、チュニジアの海岸沿いの失地は容易には取り返せまい。もとより、ミカエルとブリュンヒルデ、そしてバリウス自身という目立つ囮の影、チュニジアこそが本命だった。
「しかし」
『ブラットに、欧州経由で貴君の下へ向かうように伝えよ。合流後は彼の指揮に従え。以上だ』
 ブン、と素っ気の無い音と共に回線が途絶する。ユニヴァースナイト艦上のミハイル・ツォイコフ大佐は、もはや言葉の伝わる先の無いマイクを、睨んでいた。


●ツォイコフの演説
『私はミハイル・ツォイコフ大佐だ。ドーム要塞『α』攻略に尽力した軍、並びに傭兵諸君に告ぐ』
 ツォイコフの声が、朗々と晴れた空に響く。
『ジブラルタルの、ピエトロ・バリウス中将より命じられた今後の指針は、この場にて待機する事だ。現在、北米よりハインリッヒ・ブラット准将とユニヴァースナイト弐番艦が向かっている。彼と合流し、チュニジアの上陸地点の仮設基地を守備する事が、本艦に与えられた任務である』
 聴衆が、ざわついた。眼下には、煙を上げるドームがある。根拠地を失ったバグアは、エジプトのある東と南方の砂漠へと引いていった。チュニジアには正規軍の部隊が続々と上陸しており、仮設基地も前二文字を取っても構わない程度まで整備されつつある。
 ――そして、ジブラルタルでは友軍が死闘を繰り広げていると、皆が知っていた。ツォイコフは、再び口を開く。
『‥‥私は、軍人としてロシアと欧州で戦ってきた。多くの戦友を得、失ってきたが、その中でピエトロ・バリウスほどいけ好かない男は居ないと考えている。前線の兵の事を考えず、血も涙も無い悪魔のような男だ』
 ツォイコフは、嘆かわしげに言葉を切った。罵倒表現に関しては世界中で最も多彩と言われるロシア語を母語とする身にとっては、公用語の貧困さは犯罪的とも思えるのだろう。
『私は彼を嫌いだし、今後とも好きになる事はないだろう。だが、彼はこの世界に必要だ』
 その言葉がまだ宙にあるうちに、ツォイコフは宣誓をするかの如く片手を挙げた。
『以上の理由で、私ことミハイル・ツォイコフ大佐は、ピエトロ・バリウス中将の命令を完全に理解し、その上で遂行を拒否する』

 数秒、チュニジアの空と陸を静寂が覆う。それを割いたのは、静寂を作り出したのと同じ太く鋭い声だった。
『独立指揮官としての権限に置いて、私は本艦ユニヴァースナイトを徴発し、ジブラルタルへ向かうものとする。着いて来いと命令はしない。ただ、依頼するのみだ。私の尊敬する男を救うために、力を貸して頂きたい』
 淡々と、それでいて語りかけるようにツォイコフは言葉を継ぐ。
『ジブラルタルの戦況は好ましくはない。敵は優勢で、何も出来ないかもしれない。しかし‥‥、む? 何事か』
 彼は不意に三半規管を襲った違和感に首を振った。この感覚は、まるで‥‥。
「回頭しています」
 こともなげに、操舵手が返答する。
『何だと?』
 まだマイクが入ったままなのに気づかず、ツォイコフは問い返した。操舵手は正面から目を、操作盤から手を放さずに器用に肩を竦める。彼はイギリス人だった。
「理由。1、ジブラルタルが西にあるからです。2、艦長の大層な演説が終わるのを待つのが時間の無駄だからです」
 回頭をほぼ終えた巨艦の前に、白い小さな船の船尾が見える。『ブリュンヒルデ』だ。
『ブリュンヒルデ、先行します』
 艦長のマウル・ロベル少佐の声と共に、その姿が西の空をさして動き出す。さしたる損傷は受けていないようだが、無傷ではないはずだ。
「‥‥諸君の信任に感謝する」
 何を言うべきか思いつかず、ツォイコフはそう言って艦長席に腰を下ろした。


●ヘラクレスの砲台跡
「‥‥アナートリィ中‥‥いえ、ドクター・アナートリィです」
 生真面目に言い直す青年へ、見張りの軍人がニヤッと笑い返す。この絶望的な戦場に志願して残ったのは彼だけではない。軍人らしく見えない細面の青年は、技術者の役割を割り当てられたのだろう。
「急げよ」
 見張りに頷き、青年は足早に先へ進んだ。バグアの大型兵器のあった場所を出入りする技術者風の男は他にも多い。観察している者がいたとしても、それが伝令役の軍人であるとは、想像もしないだろう。彼らが大事そうに運び込んでいる機材が、爆薬に類する物である事も。バリウスが隠れていたのは、第一フェイズでバグアから奪取した『ヘラクレスの砲台』地下だった。
「G4が手に入らなかったのは残念だ」
 表情も変えずに言う中将に、初老の参謀が同意するように頷く。彼以外の司令部の面々は、ダミーの『ピエトロ・バリウス』として外部で作戦指揮をとっているはずだ。正確に幾人が生き残っているかはわからない。この砲台が爆破された後は、各個の判断で生存の為に行動するように命令が下されていた。 「幾人が、命令を守るかは分らんが‥‥」
 そして、守ろうとしても絶望的だが、とバリウスは思う。しかし、あの地獄を生き延びた彼の部下の幾人かは、今回も逃げ延びるだろう。そして、その幾人かが伝えるだろう。彼らの戦いを。


●北米の思惑
「バリウス中将の指示は了解した」
 大西洋上、ユニヴァースナイト弐番艦のハインリッヒ・ブラットはツォイコフの伝言にそう答えた。そうしてから、細めた鋭い目でツォイコフを見る。 「君の元へ向かえ、という指示だったな。では、そう言う事だ」
 通信を切ってから、しばらく。彼は意を決したように、通信兵を呼ぶ。北米は夜明け前だ。ヴェレッタ・オリム中将へ繋ぐようにと指示された兵士は、普段よりも緊張した様子で任を遂行した。
『私を何だと思っているのだ、ハインリッヒ』
 呼び出されたオリムは、やや機嫌を損ねた様子で言う。たたき起こされたらしく衣装はぱりっとしていなかったが、化粧に一分の隙も無いのが彼女らしかった。
『傭兵への報酬の配慮と、軍規違反のツォイコフの弁護だと? 誰も彼も、厄介ごとを持ち込んでくれる』
「は‥‥?」
 むすっとした様子で、オリムは数分前、同様の用件でマウル・ロベル少佐から要請を受けたばかりだと答えた。
「では‥‥」
『要求については善処する』
 ブラットの予想に反して、オリムは短くそう告げる。意外そうな顔をしていたのだろう。オリムは溜息をついてから言葉を継いだ。
『バリウスが死に、ツォイコフが壱番艦から外されれば、貴君が欧州に取られるだろう。北米の戦力バランスが崩れる事は看過しがたい』
 死んでも良い、等と単純に考えるのは軍人としては無能だ。バリウスとてただ死のうと思ったわけではなく、自分達の存命とそれ以外を秤に掛けた結果だろう。失われる物が大きすぎる、と彼は判断したのだろう。
『その評価を、覆してやれ。私はもう一眠りする』
「は」
 ブラットが頷くのを待って、通信は切れた。彼は北米に居る女性が、言葉どおりにベッドに戻るような事は無いと知っている。おそらく、誰にとっても今日は長い一日になるだろう。



追加情報15 第3フェイズ選択肢詳細
追加情報13 第2フェイズ・ジブラルタル方面※5月20日追加

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