バレンタイン強襲戦
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第2フェイズ統合情報

■第3フェイズ オープニング本文

●グリーンランド・ドーム
 傭兵達の手で守り抜かれたドーム前には、確保された慣性制御装置が並んでいる。その数、16。中には大型HWから取り外された、ややサイズの大きな物が2つ含まれている。攻勢に回っていた敵の主力は引き上げたが、統制の無いキメラなどの襲撃が間断なく続く中、ゴットホープからの補給物資の受領にも成功した。空中投下された対衝撃コンテナの中身は弾薬、衣料品と医療品、それに暖める事の出来る糧食だ。飲み物が紅茶なのは担当者の主義だろう。
「参番艦の回収車両は期待できませんか」
 交代で煙があがる薄暗い空を見上げて、ウィリアム・シュナイプは端正な顔を曇らせた。北米経由で伝わった報告によれば、氷上基地の破壊は成功したものの参番艦も少なくない損害を受けたらしい。予定では西の海岸に到着して迎えの友軍を進発させている筈の時刻だが、いまだその様子は無かった。
「予定が変わってしまうことはよくある事です。臨機応変に、行きましょう」
 こんな時にも笑う聖那の隣に、ティグレスの姿はまだ無い。心配ではないのか、と問おうとしてウィリアムは口をつぐんだ。今、自分が為すべきは同情ではなく、あの冷静な副会長の代わりを務める事だ。
「何か、いい事を思いついたんじゃない? そんな顔をしています」
 クスッと聖那が笑った。咳払いをひとつして、ウィリアムは口を開く。
「こうなっては、一刻も早く移動を開始した方がいい。中型ワームの装置だけならKVで運搬可能かもしれません」
 大型ワームから取り外した装置は、ホワイトバレィからドームまでの短距離ならばまだしも、この後20kmを運ぶのは難しそうだった。何らかの手段が思いつけばともかく、現状では放棄するしかない。
「そうですわね。では、住民の皆さんには状況を正直に説明し、希望する方だけ御連れしましょう。今回は、安全を保障できません」
 彼女の言葉に、ウィリアムは意外さを感じた。どんな時でも大丈夫と楽観するように見せていた少女が、現実論を口にする意味。
「‥‥雪の無い時期に使っていたらしいバスがドームにあったそうです。動く状態のものは6台」
「日本で言う観光バスのような物ですわね? 座席が4列、ですか」
 何人乗れそうか数えだした聖那を制して、ウィリアムは報告を続ける。
「詰めれば40人は乗れます。足は速く無いが、全員連れての移動は可能です」
 チューレ基地の敵が、彼らをそのまま見過ごしてくれる筈は無い。移動中を襲われるのは必定だ。
「敵の主力が来る方向は限られています。せっかく合流しましたが、ここは分けて当たりましょうね」
 北側に先発し、チューレに向かって5km進んだ地点で防衛線を敷く部隊が、1つ。
「例のハーモニウムは、地下洞窟を使って来る可能性もありますね」
「出口の爆破は‥‥、数を考えれば困難ですか。遮断任務への志願者を募ります」
 ウィリアムの声に、聖那は頷いた。それに遅れて海岸を西へ向かう部隊が1つ。こちらにも当然、護衛が必要となるだろう。
「何としても回収地点へ辿り着いて、そこで参番艦を待ちましょう」

 現地に残ると決断した者はドームにいた一般人のおよそ半数の79名。それ以外の107名は彼らとの同行を希望した。いずれの選択も、勇気あるものと言うべきだろう。


●新たなる来訪者
「ゼオン・ジハイドのリノだ。出迎えご苦労」
 衛星軌道から降り立った客人の挨拶は、ぞんざいな物だった。しかし、そのぞんざいさにむっとしたのは甲斐・蓮斗のみだ。中央に立つ佐渡京太郎は眉一つ動かさず、逆に立つ小柄な影の表情は仮面に隠されて見えない。あるいは、その三人ともがバグアではない故に、ゼオン・ジハイドの名にも感じるものが無いのだろうか。
「長旅お疲れ様でした」
 そんな三人を顔をしかめつつ、イェスペリは無けなしの忠義心を発動させる。周囲に後先考えない輩が多いため、上の連中には頭を下げるしかなかった。彼らの四者四様の反応を気にとめた様子も無く、リノは壁際においてあった机にひょいっと腰掛ける。
「‥‥サンバンカンと言ったか。一番では無いのだな」
 現状の報告を一瞥し、少女は不満そうに鼻を鳴らした。実際、不満はあるだろう。出撃こそ許されたが、彼女自身の自由になるのは身体一つというありさまなのだ。機体も借りなければならない。
「ブライトン様が御作りになったシェイドという兵器があるらしいな。借りるぞ、キョータロー」
 好きにすればいいと言うように肩を竦める佐渡・京太郎に、甲斐・蓮斗が首を傾げる。
「いいの? あんなあっさり」
「構いませんよ。それに、そううまく行くかどうか‥‥」
 歩き去る少女を一瞥して、京太郎は微笑した。その腕に蓮斗が飛びつく。
「フフッ、じゃあ久しぶりに兄様と一緒だ!」
「そうですね。たまには運動も悪くないでしょう。面白い子がいれば、連れ帰ってもいいですしね‥‥」
 リノへ機体を預けた京太郎も、そのまま遊んでいるつもりは無いらしい。ホワイトバレィに篭る敵へ、襲撃をかける心積もりのようだ。スキップしながら青年の後ろを行く蓮斗が、出口の所で振り返った。
「‥‥お前たち、ちゃんとやれよ」
「はい」
 小柄な仮面が、頷く。声を聞かなければ、彼女の衣装が男装だとは分からないかもしれない。ハーモニウムの中で、唯一この場にいた少女が彼らのリーダーなのだろうか。
「貴様が南に回るなら、参番艦は俺が頂くぞ」
 佐渡へ向かって確認をするように、イェスペリは叫ぶ。それは奪うなという彼の意思表示でもあった。仮面がちらりと男を見る。自分の不在中に奇襲を受けた事に、男は怒りを覚えていたはずだが。
「‥‥噂に聞くゼオン・ジハイドの手並み、見てみたいものだ」
 少女の視線にニヤッと笑いかえす様子は、ようやく今までの彼らしいものになっていた。


●参番艦の燕と鷲
「報告。第一機関部は出力80%にて安定。第二機関部は復旧の目処が立ちません」
 敬礼を略してそういう部下の声に、参番艦の艦長である沖田は静かに眼を閉じた。カメルで受けた傷の癒えぬ間の激戦は、この艦に再び深手を負わせている。しかし、これはまだ道半ばなのだ。
「北西航路に入る前に浮上。航行しつつ修復作業に入れ」
「しかし‥‥」
 部下は僅かに逡巡した。氷上基地は氷海の藻屑と化したが、この艦の行く手にはまだチューレがある。敵の庭先での浮上が危険極まるのは言うまでも無い。だが。
「‥‥これ以上の遅れは許されん」
 老軍人は、静かに戦略図の一点を見据えていた。若き学生たち、そして傭兵達が彼らを信じて待つ、極寒の地を。掛け替えの無いというべき物が、もしもこの世界にあるのならば、それはこの艦ではない。
「はっ」
 部下は、その横顔に敬礼を捧げて踵を返した。

 奮闘を続ける参番艦だが、孤軍というわけではない。欧州軍はロシアにて側面攻撃の構えを見せ、北米でも新たな作戦行動が企図されている。今は何よりもありがたい援軍もまた、この艦へ向かっていた。
「‥‥この寒さはたまらんねぇ、全く」
 氷山を遠くに眺めて、ズウィーク・デラード軍曹は両手を擦る。厚い手袋越しでは気休めにもならなかった。この寒さの中、彼が甲板に上がってきたのには、理由がある。その理由は、もうすぐ見えるはずだ。そう、まずは独特なエンジン音が聞こえる。
『寒いのは当たり前だ。そんなの気合いで何とかしろ、ズウィーク』
 意外と雑音も無く、クリアな声が耳に届いた。アジアに回って、もう顔を合わせることも無いかと思っていた相手の声だ。
「着艦、しくじるんじゃねぇぞ。ジェームズ」
『誰に言ってんだ。そっちこそ足を引っ張るなよ』
 ちょっとしたジョークに、むっとするのも昔と変わらない。デラードはようやく見えてきた不死鳥の鋭いシルエットに、軽く片手を挙げた。それに続く巨大な翼に、目を見張る。
「何だ、それは」
『ドロームの新型さ。北米名物、実戦での売込みって奴だな。中遠距離砲撃の援護で、俺たちの肉弾戦も更に楽になるぜ!』
 パイロットが最も気を張ると言う着陸の瞬間まで、ジェームズはいつもの調子だった。
「‥‥」
 着艦するスピリットゴースト隊を、ティグレスは鋭い目で見ている。包帯から片手を抜いて、確かめるように拳を作った。
「動けない事は、無いか」
 グリーンランドに取り残された戦友の救助のために、この場にいる傭兵も正規軍以上に多い。なぜならば、あそこにいるのは。
「‥‥仲間、だからな」
 青ざめた唇から零れた声は、極地の風に流れて消えた。




追加情報9 第2フェイズ・功績点※2/25追加

追加情報9 第2フェイズ・負傷者一覧
追加情報10 第3フェイズ作戦概要

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