極東ロシア戦線
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4月3日の報告

<報告書は前編:後編から成る>

ユニヴァースナイト護衛  陸軍支援  ヤクーツク防衛  ラインホールド攻撃


【ユニヴァースナイト護衛】

 ロシアからさらに北。
 ちょうど、北極海上空に当たる空域を飛行する巨大な『船』があった。そう、ユニヴァース・ナイトである。北米大陸を旅立ったUKは一路、艦長の祖国でもあるロシアへ向けて航行していた。
「速度、オールグリーン。第三種警戒態勢を維持」
 運用の補佐として乗り込んだセレノア・キューベル(ga5463)が、定期報告を口にする。そんなUKの眼下には曇天の雲。分厚く垂れ込めたその雲の下には今頃ブリザードが吹き荒れているだろうが、空の上には太陽が輝いている。
「このまま、何も起こらないとは思えないな‥‥」
 誰ともなしにそう呟くは、ミハイル・ツォイコフ。この艦の指揮を任されている御仁である。今はまだ順調に航行を続けられているが、それはあくまでも『嵐の前の静けさ』に過ぎないことを、彼はよく知っていた。

 その証拠に――直後、穏やかだった空がにわかに翳り始める。高度を下げたわけではないのだが、足元の雲がせりあがってきているのである。
『こちらTACネーム・ブービー。護衛任務についた。よろしく頼む』
 せり上がる雲を迎撃するかのように――単機だと思われたUKの周囲に、次々と飛行形態となったKVが現れる。その1人、ルクシーレ(ga2830)は、ついこの間まで、ロシアの欧州側戦線での戦いに参加していたところだとのこと。従軍の疲れはまだ身体の芯には残っているが、旅は道連れ、世は情け。袖摺り合うも他生の縁と言うことで、護衛任務に付いたらしい。
「ずいぶんと騒がしいな」
「はっ。バグア軍の攻撃を警戒してとの事だそうです」
 艦長の耳にも届く、艦内外を問わない傭兵の姿。
 ルクシーレだけではない。今やUKには、数多くの傭兵達が搭乗していた。巨大な『船』は、彼らを収容してもまだ余りある。その周囲を、ルクシーレのような飛行組が取り囲み、一大隊と言った表情を見せていた。
 そこへ‥‥雲を湧き上がらせていた犯人が姿を見せる。小型中型色々あるが、全て飛行タイプだ。
 その姿はまさに「勇壮」なる言葉が似合うほど重工であり、機体は船と共に悠々と航行していく。

「総員、スクランブル! 一機たりとも近づけるな」
 だが、作戦の目的を考えればそんな時間が長続きしないことなど明らか。
 レーダーがかすかに震える敵影を確認すると、内部の能力者は望遠鏡による目視という極めて原始的な方法で敵影を確認し、データとリンクさせていく。
「データリンク良好。ターゲットの情報を送ります」
 特務部隊:零小隊の篠崎 公司(ga2413)が、敵のデータを情報網から引っ張りだし、脅威度の高い敵順にナンバリングを行う。それが送られると同時に、UKのハッチが開き、中から次々と発進するKV達。
「出来るだけ遠距離から狙ってください。上から集中的にね」
 穏やかな口調でそう指示する彼。と、同じ部隊に属する面々が、それぞれの武器を持って、ワームの群へと向かうスピードを上げる。
「もう少し改造した状態で参加したいのですが、お金も時間もないですしね。報奨金に期待しましょう」
 あまり予算に余裕のないらしい緑川 めぐみ(ga8223)が、そう言いながらG放電を開放していた。派手な雷撃が、目の前にいた小型HWを飲み込む。その光をまるでスタート・ピストルにするように、戦場へ一陣の風が吹きぬけた。
「一気に殲滅せよ! こんな奴ら相手に足止めをくらうな!」
 傭兵たちの勇ましい声が無線機を通して響き渡る中、空には色とりどりの光と爆音が響き、ヘルメットワームが次々と大地に落下していく。
「‥‥?」
 何かがおかしい。そう思った高城 凶也(ga5654)が、照明銃を撃ち放つ。僅かに広がった視界の先に容貌を見せたのは、光の中に大きく黒い点を落とす、バグアの大軍だった。
「現れたか‥‥。各機、迎撃に移れ!」
 中佐の怒号が飛ぶ。そしてその声が終わるのを待つまでもなく、HWの射撃がUKを掠める。
 程なくして天空そのものを紫に染め上げるレーザーの束。‥‥視界が限られている中で超高速戦闘が行なわれば、互いの間合いなど一瞬で消滅する。
「ひっ‥‥こ、こっちにこないでー!?」
 瞬く間に戦場を埋め尽くした光線の渦に、悲鳴じみた声を上げる桜 咲希(gb5515)。
 だがその攻撃は、HWの進行方向と思しき場所にバルカンを打ち込み、ブリューナクをお見舞いするという作戦の内。言うほどパニクってはいないようだ。
「俺の世話になってる所は誰かの為に頑張るお人好しが多くてな、自分の事は二の次なのよ、だから俺があいつらを守る‥‥」
 そこへ、スコール・ライオネル(ga0026)が割って入る。そのまま、地上近くまで引き降ろすように、高度を下げていくスコール。自身のミカガミは、陸戦特化だったから。追いかけていこうとするHW。その背中を、人型にチェンジした月詠風華のガディ・ストライデント(ga8437)が、ガトリングとグレネードランチャーで追いかける。
『月詠風華に告ぐ‥‥各個散開。動ける限り守り尽くすぞ』
__それだけ言って通信を切り、降下していくガディ。残った隊員が、全員でUKを囲むように展開していた。
「にゃにゃい〜んばすた〜〜〜〜っ! 墜ちろニャ〜〜〜〜!!!」
 その囲みを援護するように、フルーツバスケットαのアヤカ(ga4624)が、エネルギー集積砲を放つ。弾幕を潜り抜けた飛行型キメラは、同じ部隊の翡翠(gb4233)が掃討していた。
「敵はまとまってきてるから、気をつけるのじゃー」
 アヤカの側を離れないようにしながら、そう情報網に報告する翡翠。
 わざわざ対策のために準備されたものだろうか――HW達はひと際巨大な砲身をUKに向けてきていた。砲身やHWの周囲を護衛のMRが囲い、HWからはプロトン砲が真横に降り注ぐ雨の如く放たれ続ける。
 だが、ここで引き下がるわけにはいかない。UKが砲撃を受ける前に、状況を打開する必要がある。
「悪いけど、ここで引き返してもらうよ!」
 お帰りを願う部隊の1つ、ファフニール。その1人である獅穏 カイト(gb3366)が、同じ部隊の面々と共に、取り巻くキメラの群へ向けて、バルカンを掃射する。射線をクロスさせるように解き放たれた弾丸は、キメラを的確に落とし、エースのポイントを稼いでいた。
 その間に、距離を稼ごうとするUK。その花道を飾るべくIMPの歌声が響き始めた。
「さあ、ユニヴァースナイトの花道を飾るとしましょう」
 大和・美月姫(ga8994)がそう言いながら、通信機に曲を流したのだ。直後、各員からレーザーが撃ち込まれ――さながら天空をステージにするかごとく、青白いシューティングスターがHWへと降り注いだ。
「目標に対し、集中攻撃をカウント3で開始します。各員攻撃体勢」
 その隙間を縫うようにして、緋霧 絢(ga3668)が淡々とバルカンを発射する。いや、緋霧の役目はそれだけではない。護衛のMRに対応するためにとコクピットに取り付けられたマイクから、大音声が周囲に響き渡る。その声に乗るようにして、オラトリオ隊の各機が陣形戦闘を開始する。
「帰ったらパインケーキを焼くね♪」
 だから絶対帰ろう。と、弓亜 石榴(ga0468)が心配そうに言っていた直後、異変は起きた。
 それまでバラバラに攻撃していたワーム達が、急に規律だった攻撃を仕掛けてきたのだ。
「指揮官がいるな‥‥。傭兵ども、油断するなよ!」
 傭兵達が構築した通信網に、中佐の怒号が響く。
「お姉ちゃん、横方向に敵機だよ! 次から次へと団体さんでお出ましの中に、動きの違うワームがいる!」
「OKかなめっ。いくわよ!」
 銀色の月に祈りをに属する月森かなめ(gb4216)が、妹の月森円(gb3583)の指示を受けながら、部隊をそちらの方へと動かせる。
 他の面々と共に激戦へ赴き、数キロの空間を僅かな時間で通り過ぎれば‥‥凡そ金属質とは違う、青白い機体が彼女たちの眼前にうつりこむ。
『‥‥ナンバー230〜270までは右3マス。メイズリフレクターはその場を保守しろ。』
「弾幕を張れ! この機体の接近を許すな!」
 その指示に従い、群がってくるワームを分断するように、天衝遊撃隊が食って掛かる。五大湖解放戦、ユニヴァースナイトをステアーが撃墜したことを忘れたわけではない。
「あかいつきもばぐあのすべてもおちてしまえばいい。てきのすべてがきえればわたしはじゆう。だからこわれてくずれてきえてしまえ。なにもなかったあのころのように」
 NORUN(ga5405)の目には、指揮官機等うつってはいない。あるのはただ、バグアへの憎しみだけ。
「危なっかしいわねぇ。みんなを支える大事な仕事! やり遂げるわよ♪」
 色っぽくそう言ったナレイン・フェルド(ga0506)、アジュール・ロザの仲間と共に、抜けてきた大型火器搭載のワームに挑みかかる。その大型ワームが狙っているのは補給部隊。率いる隊を守ろうと、二度三度とスナイパーライフルが火を吹き、大型ワームを退けている。
 だが、それでも抜けるワームもキメラも多い。それらはひと塊になって、UKの甲板部分へと迫る。
「遊撃隊各機、甲板でお出迎えしろ! 中佐、すみませんが高度を下げてください!」
 重症を押してまで参加していた暁・N・リトヴァク(ga6931)が、艦内から遊撃隊への指示を飛ばしている。その情報は同じく天衝の――本隊に属する葵 コハル(ga3897)によって、専用通信網に伝えられた。
「最新鋭機を発見した場合は、速やかにUKへ連絡。ダメージの多い機体は、南側の防衛へ回って下さい」
 引くなら、そこへ。設置したカメラでモニタリング出来る場所を、彼女は指示していた。
 少しでも暖かい場所へ。
 そこには、回収用のドクターへリが待機している。

「ゲソレンジャー出ッ動〜♪ ゲソの如く絡みついて一人残らず救出だよッ!」
 ヘリを操縦しているのはミヅキ・ミナセ(ga8502)率いるゲソレンジャーの面々だ。放り出されたパイロット達の上から、ウィンチを伸ばしつつ、隊員達にびしりと指示を飛ばす。だが、闘う力というには程遠い機体。それを守るのはG.B.Hの面々だ。
「アレックス、行こう。後方支援も大事なお仕事だよ」
「G.B.H】の初仕事だ。気合入れていこうぜ!」
 トリシア・トールズソン(gb4346)は艦載機ヘリの後方から、敵機の位置を僚機や艦載ヘリに伝える。気合の籠っている声を上げた同じ部隊のアレックス(gb3735)が大好きらしく、笑顔で通信機を握っていた。
 そんな2人を分断しようとするかのように、キメラ達が群がってくる。狙いはヘリだろうか。
「やらせるかよっ!」
 バルカンとミサイルで牽制を加えて足止めをしつつ、幻霧を発生させるアレックス。煙幕装置でヘリを隠し、その間に他の部隊が彼の要請にこたえて、ヘリを誘導していた。
「2時方向、海上に生存者発見!」
 フルーツバスケットβの風間由姫(ga4628)がそう報告してくる。同じ部隊の面々が護衛についていたが、一番近いのはゲソレンジャー達だ。
「極北の海は恐ろしい! 一刻も早く救出せよ、機体内に取り残されていてもだ!!」
 這い寄る秩序(ga4737)がそう言いながら、酸素ボンベを背負い、極寒の海へと飛び込んでいく。目指すは海面に浮かぶ大破中のKVだ。
「引上げ作業に移る。護衛を頼んだ」
 そう言って、安全に引き上げられるよう指示する這い寄る秩序。ワイヤーを引っ掛け、ヘリ上に引き上げた救助者に、同じ部隊の祈良(gb1597)が、笑顔で毛布を渡し、温かい飲み物を差し出していた。
「任せてください。すぐに整備してみせます」
 その間に、大破したKVはエル・20(ga8447)達が修理している。
「KV整備を間近で見るとかなかなかできない経験やからねー、勉強になるんよー」
 碧河 ちどり(gb4954)もまた、AU−KV姿のまま、その作業に参加していた。エルの呼びかけで、数人がかりでKVの修理に取り掛かっている。資材を運び、外装の交換をする。
「頑張らなきゃ‥‥。重傷を治すのは無理そうですけど‥‥!」
 サイエンティストの上杉 怜央(gb5468)が、やはり重症の体を押して、整備や救助に参加している。もっと力があれば‥‥と、悔しそうにしている彼を見て、同じく重症の暁がぽふっと肩を軽く叩いた。
「もう、何度も堕ちてるんだ。ここで凹んでられるか! 出来る事を全力で行う! そうだろう?」
「‥‥そうですよね。‥‥御手伝い頑張ります」
 同じ環境の奴はたくさんいる。自分達だけへこんでいるわけには行かない。
 この次はもっと頑張ろうと硬く心に近いつつ、怜央はサイエンティストとしての自分を信じ、手当てと整備へと戻る。
「しまりすは歌は下手でぃすから、お手伝いするでぃす〜。はうっ!」
 一方では、フルーツバスケットβの縞りす(ga5241)が、UKのよく磨かれた床ですっ転んでいる。べしゃりと鼻を打って泣きべそをかいている彼女に、すかさず近寄ったのは佐渡川 歩(gb4026)。
「ありがとうでぃす」
「いやー、キミみたいな可愛い子が乗ってるなら、あんなおっさんが指揮してても、何にも問題なかったよー」
 助けられて礼を言っているりすを見て、佐渡川の鼻の下がだらしなーくでれんと伸びている。
「んな事言って、さっきまでぶつぶつ言ってたじゃないですか」
「な、なにもいってないでしゅよ」
 言瀬 一文(ga6253)に突っ込まれ、思わずセリフを噛んでしまう佐渡川。それでも、次々と手当てされた彼らは、ネイサン・ブレイク(gb1378)が沸かした生理食塩水の風呂に放り込まれている。
「あなたの武勇伝、聞かせてもらえないかしら?」
 風呂に入りきらないパイロットは、鬼非鬼 ふー(gb3760)が設置したこたつむりに放り込まれていた。意識を失わないように、話し相手が各こたつむりにセッティングされていたが、中には姫川ミュウ(ga4713)のように、未成年者立ち入り禁止な『話し相手』になっているこたつむりや、電源足りずに大量のカイロを放り込んでいるカルル・ローディス(ga6826)みたいなこたつむりも発生していた。かくしてロビーに、こたつむりの群が出来上がる。
 そのこたつむり広場から外へと視線を向ければ、既に第二陣の攻撃が始まっていた。
「ペガサス各機、CWは見つけ次第全員で当たれ。MRは通知の通りの対処だ」
 ペガサス分隊を率いる白鐘剣一郎(ga0184)が、1から順につけたコールサインを持つ隊員達にそう命じている。実際はMRの親機がどこに潜んでいるのかわからないので、CW達に陣形をそろえながらブーストを吹かす。二重鏃の陣形を組み、二列になった彼らは、それぞれの武器でもって、CWを掃討しにかかる。
「天馬は騎士を守護するもの、とは気障ったらしい言い回しですか」
 後衛の斑鳩・八雲(ga8672)が、打ちもらした敵を狙撃しながら、そう言って苦笑している。だが、そんな攻勢も長くは続かなかった。
「後方より急接近してくる機体が!」
 UKの後ろ側で、随伴兵のように飛行し、飛んでくるHWの対応に当たっていたヴィリー・トレーダー(gb3854)が、赤い影を捉えていた。見れば、ペガサス分隊と同じように、雑魚掃討に当たっていたアベル・ナイトロード(gb3992)にも、その赤い影が迫る。
「やはり、恐れていた事態が起きましたわね‥‥。北米の防備は大丈夫なのですか?」
 次々と装甲値をダウンさせていく護衛に、特務部隊:零小隊のジェニー・ライザス(gb4272)が、北米担当に連絡を取ろうとしている。手元の地図は、北極海を中心としたもの。
 KVを使えばすぐと言った距離に北米がある。だがいくらCWを減じても、相手とて忙しいらしく、あまり相手をしてもらえなかった。その間に、赤き影は、視界に捕らえられるまもなく、UKへと迫る。
「火力を集中! 一歩もUKに近づけさせるな!」
 零小隊の隊長でもある緑川 安則(ga0157)が、UKの間に機体を割り込ませながら、そう厳命していた。
「これ以上近づけさせるな! 天衝の到着を信じるんだ!」
 K01で弾幕を展開し、スナイパーライフル、滑空砲、G01ミサイルで各個撃破を狙う。その間に、当の天衝本隊に属する葵 宙華(ga4067)が、まだ闘える面々に呼びかけ、全空域のネームカウントを行い、戦力の収集を始めていた。
「ネームドと機体とを別々にカウントするなんざ、あんたやるねぇ‥‥俺達も頑張らせて貰うとするかっ!!」
 天衝四神隊の鴉神 紅羽(gb4338)が葵にエールを送りながらも、その赤い影に攻撃を食らわせようとする。情報網で、そんな動きをするバグアは数えるほどしかいなかったはずだと、そう思って。
「気をつけて! 増援が来るよ!」
 同じ部隊にいたエレナ・クルック(ga4247)が、陣営を維持しながらそう叫ぶ。
 見れば、雲の一部が渦を撒き、UKへと迫っていた。急速に、そして確実に奪われていく視界。
「まさか‥‥」
『ご名答』
 無線に割り込む低い、女の声。突風に----そして何よりもホワイトアウトした視界にいくつかのKVが防御体制を崩し、敵の射撃に打ち抜かれる。
 確信したエレナは、即座に通信機を握り締める。
「スノーストーム接近中。ステアー、ファームライドもいるようです。警戒してください〜!」
「了解した。撃墜機には回収部隊をまわす。各機、戦力を維持せよ」
 UKの管制室で、情報網『L』を配信していた380戦術戦闘飛行隊の秋月 祐介(ga6378)が、他の部隊へと迫る脅威の存在を伝達する。
 それを受け取ったアルケオプテリクスのメリー・ゴートシープ(ga6723)は、ほか機体が新鋭機と戦う舞台を整えるべく、HWに射撃を打ち込んでいく。

「加奈様も頑張ってる‥‥私だって! これが伯爵様のK2ミサイルアタックです!」
 代わりに現れたのは、シャスール・ド・リスの直江 夢理(gb3361)だ。
 視界がないならば可能性を消してしまえといわんばかりの勢いで、彼女はかけ声と共にミサイルを乱射し、ファームライドがいると思しき場所に、ペイント弾を発射する。
 小さな炸裂音と共に白の景色の中を紅い残像が動き、スノーストームが僅かにその姿を見せる。接近すればその機体は変形姿勢のまま、ユニヴァースナイトへ照準をあわせている。

「大好きな人が側にいると強くなれる‥‥。中佐のおじさんは、絶対守る! わかな粒子砲‥‥ダブル!」
 その行為をさせまいと、水理 和奏(ga1500)が、粒子砲を放つ。
 攻撃は同時、双方より放たれた青白い光は重なり合うことなく交錯し、ユニヴァースナイトとスノーストーム、それぞれの翼を貫く。

「総員、本艦は攻撃を受けている。各員は速やかに本艦護衛範囲内に終結せよ。‥‥敵の動きに惑わされないで。今はUKを前線へ届ける事が最優先よ」
 ラウラ・ブレイク(gb1395)が、動揺の広がりかけた部隊に呼びかけている。
 UKは変わらず天空に浮かんでいた。その周囲には天衝の本隊が陣取り、無数のKVが戦闘を繰り返していた。天衝の狭間 久志(ga9021)が、小隊指示に従いながらも、敵の頭数を減らしているが、相手はUK用の大型火器を搭載しており、そしてステアーも混じった部隊を、中々押し留める事が出来ない。
「く。UKがまずいわ」
 過去、こんな状況になった事を思い出し、ラウラはUKの近くへと旋回してくる。そこへ、真紅の機体が回り込んだ。
『こんな事だろうと思ってはいたけどね。敵はスノウおねえちゃんだけじゃないんだよ』
 赤い影の正体。それはやはりFRだった。ペイント弾を塗られたせいか、光学迷彩は使っていない。だがその分余裕があるのだろう。まるでスノーストームの周囲を舞うように、おおっぴらな攻撃を仕掛けていた。
「やらせない! これがまた落ちるのだけは阻止しなきゃ!」
 直衛についていたミスラ・アステル(ga2134)が盾になる。が、そのせいで被害も甚大になっていた。
「ダンスにはダンスで対抗ってところかな」
 追いかけて落ちたその足元、伏兵あり。そう言ったのは、水中に待機していた紫藤 武(ga9977)だ。その言葉どおり踊るようにして、水面へと浮かび上がる。紫藤の機体は、海面近くまで降下し、KVと格闘戦を繰り広げていたスノーストームの脚にしがみつく。
「よし、よくやった。砲台起動‥‥。雪には暖かいものを‥‥だよ。諸君」
 UNKNOWN(ga4276)が淡々と言い、砲台に灯が点る。その標的は、紫藤機を引き剥がそうと蹴り飛ばしたスノーストーム。
「蹴り飛ばされるのは、君だよ」
 UNKNOWNがそう言った。甲板からツインブーストで加速、スノーストームを砲台前へと突き落とそうと、限界近くまで改造が施されたKVによって正面から激突する。
「若干暖かすぎるがな。帰ったら手製ボルシチをおごってやる。主砲起動! 嵐をぶち破れ!」
 そして中佐の叫び声と共に放たれる主砲。吹雪を突き破るように放たれたその一撃が放たれた後には‥‥砲台の射程を『通り過ぎた』UNKNOWNの機体があった。

「やれやれ、この状況だと、悪い子探しはしなくてもいいかな」
 閃光の後に吹雪が晴れたことを確認すると、ひそかにUK内へ入り込むバグアを警戒していた須磨井 礼二(gb2034)は――格納庫のすぐ外側で笑顔を浮かべながら、そう呟いた。

「ロシア本国まで後30分」
「確認した。祖国を守らなくてはな‥‥」
 艦内では、ゴールが近い事を知らされていた。コクピットからも、ロシアの大地が確認できる。夕暮れの中、うっすらと白く覆われたその地を見て、中佐は暫し考え込んでいた。
「中佐?」
 時間を報告していたアーシュ・オブライエン(gb5460)が怪訝そうに訪ねると、
「すまんが、近くの市場に確認を取ってくれ。ボルシチの材料を400人前程用意できるかとな‥‥」
 程なくして、中佐はそう答えた。北極海で冷えた体に祖国の暖かい食事を振舞うのは、彼なりの戦友へのねぎらいなのだろう。
 こうして数多くの被害者を出し、カメラの回っていないところでも激戦を行いながらも、UKを何とか守りきった傭兵達。彼らが、UPCロシア極東基地へとたどり着いたのは、それから間もなくの事だった。
 だが、油断は出来ない。
 スノーストームの脅威はまだ去ったわけではないのだから。
 

<担当 : 姫野里美>


【陸軍支援】

●拠点ヲ確保セヨ
『情報? のんのん。作戦会議じゃなく、あなたのお耳に送るるゅににんのラジオですよー』
 極寒の大地にお気楽な声が響く。
 かつては平地だった場所に資材が置かれ、【FM−Rev】や【アクアリウム】、【最古&斧小隊】【カンパネラの放課後】などの小隊によってバリケードが構築されれば、補給拠点としての様相があらわになってきた。
「手抜かりの無いよう、きっちり気合入れていくわよ。こんな戦場で持久戦なんてやってられないもの」
 雷電から見える白い景色に、鯨井昼寝(ga0488)は思わずその身を震わせる。
 補給拠点の設営は、ミルヌーイ前線基地とこれから訪れるKV陸戦部隊をつなぐ架け橋として、必須だった。
 だが、そんなことをやすやすと敵が許すはずもなく、設営などさせまいと、トナカイのようなキメラが群れを成して迫ってくる。
「雷電や作業に従事しているものはそのまま。キリがついているのは迎撃体勢を取りなさい!」
『渋滞解消があたしの仕事。さあ忙しくなってきたわ!』
 昼寝の指示を受け、イビルアイズにのったゴールドラッシュ(ga3170)が直ちに動いた。
『極寒の大地に立つ戦う全ての者に言おう! 生き残れ! そして勝ち取ってやろうじゃないか、この寒空の下で栄光を! 勝利を!』
 加勢に向かい、戦いに加わる兵達を早坂恵(ga4882)はエールで鼓舞する。
 寒さを吹き飛ばす熱い声援を受け、戦士達は突き進んだ。
 
●我、敵発見セリ
「地上の敵野戦基地を発見、そちらからのキメラ、ヘルメットワーム部隊の進軍を確認中!」
 進軍する地上部隊の先頭を飛び、空の最前線の状況が【若葉【壱】】の小隊長・篠森あすか(ga0126)より伝えられ、【伝書鳩】を隔て、構築された情報網『L』を通して広がっていく。
 俯瞰する視界から見える敵勢力、ヘルメットワーム達は輸送機を狙うべく、野戦基地から数を揃えて飛んできた。
 白い景色に深い緑が点々と彩られ、春の訪れのようにも見えなくは無い。
『数ばっかり出してくるわね。安心するためにも片付けるわ』
 シャロン・エイヴァリー(ga1843)はナイチンゲール改を駆り、I−01「ドゥオーモ」の照準を敵へと向ける。
 狙いをつけてトリガーを引けば、100発に及ぶミサイルが煙を引き、白く軌道を描きながら敵陣の一部を炎で赤く染めた。
『雪原に、砂嵐を……Simoon全機、発進っ! 進路、ウダーチヌイ!』
 派手に叩き付けた「ドゥオーモ」が開戦の狼煙となり、【空戦部隊Simoon】のリーダーのラシード・アル・ラハル(ga6190)が静かに指揮をとる。
 無所属の傭兵たちにも連携を要請し、情報に耳を傾け戦場を見渡して、戦力が必要な場所を特定して小隊を赴かせる。
 開戦で陸軍を支援するためにも空の敵を一機でも減らすためには協力をしてことにあたるのが一番だ。
 一人一人が弱くても、力を合わせればどんな困難でも切り抜けれる‥‥今までも、そしてこれからも‥‥。
『Simoon6、了解です』
『無所属のウィズだ。協力を行う‥‥私の前では誰一人おとさせはしない』
 キド・レンカ(ga8868)のS−01と、ラシードの声にこたえたウィズ=クラフト(gb4153)のディアブロが、弾幕を切り抜けてきたヘルメットワーム群へと立ち向かった。
 ウランバートル方面に向かおうとして、【榊分隊】もヘルメットワームによる進軍に阻まれる。
 ヘルメットワームから放たれるプロトン砲と、傭兵たちの空対空ミサイルが互いに空を横切り、各所にて爆破を起こした。
 物量による戦いは激しさを増し、【闇使徒逆襲団】なども迎撃に出て、一歩もひかない戦火を共にあげている。
 度重なる大規模を隔て、UPC軍や傭兵達も、ヘルメットワームとの戦い方を覚えはじめていた。
 空が炎と煙で染められる中、輸送機が戦闘の中心を避けるように飛んでくる。
 護衛する小隊らも迎撃に移り、輸送機もまた機銃を持って弾幕を張り出した。
「ロシア技術だロジーナ発進ー!」
 大規模作戦に乗じてロールアウトされた、ロシア・プチロフ社製のKVを操るミリー(gb4427)が、大型ミサイルポッドを放って中型クラスのヘルメットワームへと打撃を与える。
 輸送機の周囲には前線を抜けてきた敵機が集まりだし、戦闘は激しさを増していった。
「負けられません、ミールヌイまで運んでみせます」
 岩龍によるジャミング中和と情報管制を行い、輸送機の進路を指示しながら。輸送機を直衛するステラ・レインウォーター(ga6643)は仲間と共に、迫り来る小型ヘルメットワームをR−P1マシンガンで迎撃する。
 
●騎兵隊進軍ス
「マントの赤は、血の赤。自らの血を流すことを厭わぬ騎士達よ、突き進め! ―という感じでがんばろうね♪」
 スナイパーライフルD−02をランスの様に上へ掲げ、KVレッドマントをつけた橘川 海(gb4179)のウーフーが前線の陸軍を鼓舞する。
 海の所属する【ラウンドナイツ】はナイト・オブ・ゴールドを支持する騎士の集まりであり、『騎士の誓い』を守るものと共に戦場を進軍していた。
 【イエローマフラー隊】【エンジェルフェザー】も彼らと共に最前線を切り開く。
 物々しく武装した巨人達が、戦線を闊歩するさまは中世の騎兵隊のようにも見えた。
「地殻変化計測器に反応! アースクェイクが来るよ!」
 【AliceDoll】が設置した地殻変化計測器の反応をうけ、海は進軍しながら、戦域にいる皆へとオープン回線で情報を伝える。
 地面を揺らす振動が大きくなり、巨人達は互いに支えあって耐えた。
 地を割り、アースクェイクと呼ばれる巨大なミミズワームがその姿を見せる。
 なまこのような口には、いくつも生えた鎌のように鋭い牙が蠢いていた。
「囮に引っ掛かってきたか‥‥いくぞシュテルン‥‥いや、ドラゴン・レイダー!」
 現れたアースクェイクに、【プロジェクトSG小隊】の絶斗(ga9337)はガドリングナックルを撃ち込む。
 弾丸が鋼鉄の巨体に叩き込まれるも、アースクェイクの勢いは止まらず、そのまま近くのKV目掛けて鎌首をもたげ体当たりを仕掛けた。
 攻勢を受け、ギリギリまで攻撃をしていた隊員達も一斉に距離をとる。
 しかし、出遅れた一人がアースクェイクに狙いを定められた。
「危ないっ! くっ、間に合え!」
 絶斗が味方を守るためにブーストで割り込み、最後までアースクェイクに向かってガドリングナックルを叩き込む。
 アースクェイクは目標を絶斗へ変えると、大きな口を更に開いて丸呑みにしようと動いた。
 そのとき、援軍としてきた【アークトゥルス】の一部がアースクェイクに向かって一斉に攻撃を仕掛ける。
 轟音を立てて、アースクェイクが絶斗のシュテルンを丸呑みしたかと思ったとき、内側からその体がはじけた。
『こちら絶斗‥‥ギリギリ助かったが‥‥動けそうにない。離脱する』
 倒れたアースクェイクの残骸の中から、絶斗の声が弱弱しく響いた。

●赤キ敵来タレリ
「戦闘が始まっているようやね。ここに来る前に敵に落ちたら意味が無いし、輸送機到着まで何としてももたせよっか」
 カーラ・ルデリア(ga7022)はミールヌイの基地に先行して到着し、こちらに向かってきている【ハニービー】の護衛と連絡を取りつつ基地の防衛を固めだす。
 中間の補給拠点として、ミールヌイに繋がる補給路が確保できれば、進軍や撤退に際しても有利に動くのだ。
 作戦にあたっている【ガンアンツ】や【白銀の魔弾】の工兵班も共に、少数ながらも徹底抗戦を行っている。
『ガンアンツ総員砲打撃戦用意! ‥‥撃てぇーッ!』
 雷電をもって、比留間・トナリノ(ga1355)が220mm6連装ロケットランチャーを敵陣へ撃ち込みながら突撃を敢行した。
 『超伝導アクチュエーター』が唸りをあげ、敵の攻撃をかわしてはメトロニウムシャベルがゴーレムの頭を凪ぐ。
 ゴーレムの数は減り始めてはいるものの、トナカイキメラの群れは数をもって、体当たりによる攻撃を基地へと仕掛けてきた。
 警戒をしていた【チームヒメミヤ】【ラビットフットβ】【ワンショットスターズ】が、ミールヌイ基地内部の防衛や避難、救護などの対処に回るが、上手く立ち回れないでいる。
 基地の中は敵勢に押され、負傷兵の手当てをしていた高原真菜(gb2894)は劣勢を見かねて、翔幻に乗り込んで出撃した。
「この基地を! ここにいる人を‥‥失わせるわけには行きません」
 ディフェンダーを構えて戦場に立つ、コックピットの中でふと顔を上げれば、上空を横切る黒い何かが見えた。
 一瞬の空白を挟んで轟音、嫌な予感が促すままにその場を飛び退けば、強い熱風が機体を薙いだ。
「どこから……!?」
 巻き添えを厭わず放たれたグレネード、方向からして傭兵側からではあり得ず、バグア軍側からは元凶が見あたらない。
 要塞化が半端完了していた基地は直撃には至らず、構築したバリケードを粉砕しただけで済んだ。
 グレネードを放った元凶は見あたらず、動揺を押さえつけながら状況を確認しようとして、またグレネードが後方に向けて飛来してくる。
 着弾と共に間髪入れず爆発、発される衝撃に耐えるべくKV達が身構えれば、弾かれたようにその巨体が揺らいだ。
「え……?」
 状況が把握できず、困惑するフェブ・ル・アール(ga0655)。スローモーションに見えた一瞬を隔て、今度はがら空きだった胸元の装甲が砕かれた。
「…………!!」
 胸を穿つ衝撃に身悶え、たたらを踏んで後退する。
 負傷した彼女を庇うため、他の味方機が反射的に割り込み、奇襲を警戒していた織部 ジェット(gb3834)がようやく状況を把握すれば、オープン回線を通じて警告が飛んだ。
「ファームライド…ッ…」
 その言葉を辛うじて残し、今度は織部の機体が脇腹を穿たれ、槍に突き倒されて沈黙する。
 間合いを確保するため、敵がいると思われる中心点から全員が距離を取り、確か持ってきている筈だと、皇 千糸(ga0843)が武装を持ち替えた。
「このっ……!」
 射出された照明弾に照らされ、空間が光の歪みを示す。傭兵たちが見えない光学迷彩の下で、プリマヴェーラは口元をつり上げて笑みを作り、晒された姿を意にも介さず、槍を振り抜いて傭兵たちの陣営へと切り込んだ。
「させるか……!」
 示される歪みと勘を頼りに、城田二三男(gb0620)がファームライドを迎撃する。【白銀の魔弾】に所属するアヌビスたちが鬼火を起動し、自分たちに優位な重力波を作り出す。
『アンタたち、実はちょっとたるんでるんじゃない?』
 嘲りを言葉に混ぜ、プリマヴェーラは受け止めるガードをすり抜けて、城田機の腕を砕いた。役目を引き継ごうとヨネモトタケシ(gb0843)が割り込めば、超至近距離でフェザー砲を叩き込み、熱を受けたヨネモト機の装甲が爛れて溶解するのも一瞬の間、燃料に引火した機体は飛び退いたファームライドを巻き込む事なく、爆発する。
 ただ、爆散した機体の欠片が当たり、纏う光学迷彩を解かしただけだった。
 痛みの中、辛うじて脱出ボタンだけは押したのか、放り出されたヨネモトを【ハニービー】の面々が受け止め、傷に障らないように注意しながら、後方へと運んでいく。
『ファームライド……この基地を狙っているのですか?』
 攻勢を受け止めるために隊員を数人やられ、トナリノが低く声を上げれば、それには言葉が返った。
『んー、そう思ってたけど、もーちょっとイイカンジの相手が来るっぽいし? そっち行くわー♪  ‥‥アンタたちの通信網って、便利ね』
 今回の作戦概要を全て聞いているかのような口ぶりでプリマヴェーラは笑み、助走を隔てない跳躍で変形する人外技を見せつけた後、進軍してくる陸軍の方へとエンジンを吹かして向かっていく。
「深追いはしないで! ……私たちの目的はこの基地の維持やね」
 反射的に、追いかけようとする味方をカーラは制して、内心地上部隊が迎撃してくれることに願いを託す。
 そして、すぐに回線を通信網へと向け、ファームライドの出現情報を送るのであった……。

●護衛任務完了
『おっけー‥‥! 新型ふくごー‥‥ナントカ発動! 全弾発射あぁーーっ!!』
 負傷者を後方に残し、大きな声と共に、【白銀の魔弾】に属する氷雨 テルノ(gb2319)のロングボウから何種類ものミサイルが放たれる。
 ミーヌルイを空襲しようとしていた、増援のヘルメットワーム達にそのミサイルが命中し、爆発を起こす傍から次々と墜落していった。
「歌を歌えー! 補給物資のご登場だー!」
 ミルーヌイ基地上空の敵機を、【小隊【HB】】の燐 ブラックフェンリル(gb1956)が135mm対戦車砲にて撃つ。
 起床ラッパのように音が響き、防衛戦を強いられてきた基地の兵士達に活力が戻った。
『すぐに後続隊も着ますから、もうしばらくの辛抱です』
 高坂 旭(ga6643)が翔幻で輸送機を直衛しつつ、ミールヌイ基地へと状況を伝える。【ハニービー】【ブルーレパード】などが中心となり、輸送機をミールヌイまで運び終える。
『どけどけぇっ! 邪魔をするなら片っ端から落としていくぞ!』
 単機ではあるものの、他の小隊とも連携をしていた来栖 祐輝(ga8839)のシュテルンが、地上にいるトナカイキメラの群れに対して奉天製ロケットランチャーを落とすが、空対地攻撃故に成果がふるわない。
 戦闘に区切りがつきだすと、【若葉【蕾】】や【本管付属炊き出し隊】などの情報管制小隊や、救護や食糧配給を主とする部隊が輸送機と共にミールヌイ基地へと収容されていった。
「ロシアって‥‥さむ〜い」
 防寒装備をしてきた夢姫(gb5094)だが、あまりの寒さに思わず自らの体を抱きしめる。
 だが、それよりも先にやらなければならないことを思い出し、自らを奮い立たせた。
 被害が少ないとはいえ、基地での負傷者は多いはずだ。能力者とてKVを駆使する戦いで疲労しているだろう。
「一人でも多く助けなくちゃ」
 一通り周囲を確認したあと、夢姫は自機に乗りこみ負傷したKVの回収に出向いた。
 地上部隊が見えてくれば、この地は再び激しい戦場となる。
 ひと時の休憩時間かもしれないが、やるべきことは山のように用意されていた。

●敵野戦基地ヲ突破セヨ
 中継拠点で補給を受けつつ、地上部隊はミールヌイを目指して敵野戦陣地へと突撃する。
 【私設傭兵団【神城台】】【ヘルム】【LH水泳部】が同行する陸軍の周囲を囲み、被害を押さえるように立ち回った。
 敵野戦陣地に近づくほど、対するゴーレムや地上ワームの攻撃が激しくなる。
 陸軍へ被害がでないように、【ヤタガラス】【S.G】は隙間隙間で盾をもったりして防衛に回り、【オルタネイティヴ】【Infanity】を中心としたソロKV達が基地へと率先して攻撃を仕掛けていった。
 ガトリング砲から放たれる弾幕がゴーレムを穿てば、ショーテルを持ったゴーレムによってKVの片腕が斬り落とされる。
 敵も味方も入り混じった戦いの中、大地が揺れた。
「地殻変化計測器がアースクェイクの存在を捕らえました。全機警戒、及び対処に向かってください」
 30機弱の部隊を率いて、【スタートライン】の御崎緋音(ga8646)が迎撃に出向く。
 【咎人】【若葉【弐】】もそれに続いた。
 大地が大きく揺れ、アースクェイクが3体地面を割って飛び出してくる。
 先行部隊でもアースクェイクの存在は発見され、撃破こそ出来ていたものの、積み重なった被害報告もまた同時に届いていた。
 それでも退くわけにはいかない。
 飛び出してきた場所に向け、最大火力を持ち、もぐら叩きの要領で3小隊が連携しながら砲撃を行い、確実に一体ずつアースクェイクを屠っていく。
 砲撃を痛がるようにアースクェイクは暴れ出し、ビームコーティングアクスをもった蓮角(ga9810)機の体半分を食いつぶした。
 機体の一部を奪い、咀嚼する音を立てるアースクェイクを、統制の取れた【スタートライン】のメンバーがフォーメーションを組んで取り囲み、集中攻撃を行う。
 3.2cm高分子レーザーとガトリング砲によって肉を削り、近づいてはビームコーティングアクスやディフェンダーでもって斬りつける動きは熟練者にも負けない勢いがある。
 だが、残り2体のアースクェイクもその身を大きく動かしてKV達を弾き飛ばし、反撃に出た。
 はじき出されたKVの穴を埋めるように、【咎人】【若葉【弐】】が連携を密にして砲撃を続ける。
 負傷したKVは、随伴していた【源星】によって回収され、パイロットの手当てを施されていった。
 ――戦闘はしばらく続き、バグア野戦基地はUPC軍によって制圧される事になる。
 
●赤キ敵ヲ撃テ
「【裏飯屋】より入電だ。マインドイリュージョナーはいないようだが、ファームライドがこっちに向かってきているらしい。食えないキノコよりは食べでがありそうだが‥‥」
 補助シートに座り、重体でありながらも大規模作戦に参加しているクリス・フレイシア(gb2547)は、前のシートに座る夜十字・信人(ga8235)へ声をかける。
「来ているなら出迎えるぞ、他だって忙しいだろう。予定通り大火力で丸焼きだ」
 信人の指示を受け、【アクティヴガンナー】がスナイパーライフルを構えて時を待った。
 マインドイリュージョナーなどの強敵に備え、温存していた戦力を持ってファームライドの迎撃を目指したのだ。
 雪上迷彩を施した機体を雪原に潜め、黙々と機を待つ。
 解かれた迷彩は再起動しなかったのか、無彩色の空にふと深い赤がよぎり、傭兵たちがそれに反応して頭上を仰げば、プリマヴェーラのファームライドが姿を表していた。
 近づいてくる姿が一層明瞭に移る。高空から急降下で接近、空中、地上共に向けられる銃弾を軽々とかわし、陸軍に近づくぎりぎりで、機体から一部の何かを切り落とす。
 ――やばい。そんな思考を全員が共通で持ち、次の瞬間、着弾地から勢いよく炎が吹き出した。
「今度はフレア弾か……!」
 炎上を後目に旋回して変形、着地。
 待避する部隊の後ろから機槍を振るい、反応する時間を与えずに穿つ。味方を庇うため、空漸司・由佳里(ga9240)がシールドを掲げて割り込み、盾ごと砕かれかけながら、辛うじて後ろを逃すことに成功していた。
(「……もう少しだ」)
 戦いを目にしながら、【アクティヴガンナー】は慎重に存在を潜めて照準を合わせる。プリマヴェーラによって周囲が打ち払われ、その機体が自分たちの狙う範囲内に入った時――。
「今だ、スナイパーライフル一斉発射!」
 有効圏内の更に手前、確実に命中する距離に敵をひきつけ、信人は大きく吼えると共にトリガーを引いた。
 雪上迷彩によって、確認しづらくなったKV達から一斉に赤が生え、放たれた弾丸がプリマヴェーラのファームライドへ嵐のように飛来する。
『不意打ちなんてして……女の子に嫌われるわよ☆』
『問題ない』
 瞬間の判断による斜め横への跳躍、奇襲を受けたにも関わらず、プリマヴェーラの軽い口ぶりが戦場に響いた。
「まだ相手は無事だぞ。良く狙って撃ったのか?」
「キノコじゃなかったから、やる気がでなくってね」
 クリスからの指摘に、本気とも冗談とも思えない口ぶりで信人が答え、立ち上がって次の行動へと動き出す。
 機爪「プレスティシモ」と機盾「レグルス」へ装備を持ち替えようとして……その隙間は、プリマが間合いを詰めるのに十分だった。
『お返し!』
 装備を変えようとして、態勢の整っていない信人をプリマヴェーラの槍が更に突き崩す。
 押されて信人が後退し、その隙間からはじき飛ばそうと番 朝(ga7743)が距離を詰めれば、自在に振るわれる槍が今度は番の方を向き、移動を迎えるように突き刺さってきた。
 自分から刺さりに行くのを止めようとして、踏みとどまる機体がよろめき、動きを止めた一瞬で腹部を貫かれる。
 何の躊躇もなく、強引に槍を引き抜かれた傷口から機体がショートし、膝を突いて動きを止めた。
 【アクティヴガンナー】を追撃しようとするプリマヴェーラに、陸軍を待避させた他の傭兵たちが迫ってくる。
 挟み打ちは流石に嫌ったか、深追いを諦めたプリマヴェーラは後退して立ち位置を調整、機体練力を確認した直後に舌打ちが漏れた。
 槍の間合いを保ちつつ、槍を向けて攻勢を削ぐ。
 武藤 煉(gb1042)、カララク(gb1394)、冥姫=虚鐘=黒呂亜守(ga4859)などをなぎ払って牽制するも、緻密に組まれた連携は突出し貫かれるような隙を見せず、複数を相手にするプリマヴェーラの旗色は悪くなっていった。
「鬱陶しいのよメンドクサイ!」
 距離を取るため、大きく跳躍。追いすがる傭兵たちに向けて、まだ残していたのかグレネードを投擲し、彼らが回避行動を取る隙を縫って更に間合いを離す。
「ウザイ☆」
 跳躍の邪魔になる位置にいたカイン・セッター(ga6552)を蹴り倒し、ようやく空間を確保すると、また一度跳躍変形を行い、空へと逃れた。
 逃げるのか。そう言わせる暇すら与えず、ファームライドはあらゆる機体を圧倒する速度で戦場を離脱する。
「‥‥食べ切れなかったか。引き続き、キノコ探しをしてくれ。損傷の酷いのはミールヌイへ向かう部隊と合流すること」
 緊張がゆるみ、戦闘に区切りがついて周囲が落ち着きを取り戻した頃。ファームライドが飛び去ったあとをじっと眺め、信人は一息をついてそう指示を下していた。

●地上部隊凱旋セリ
「地上部隊の案内をしてきましたが、どちらに向かってもらえばいいのでしょうか? それと補給も頼みたいのですが‥‥」
 【アクアリウム】の遠石一千風(ga3970)が、援護しつつ、地上部隊を中継地点からミールヌイ基地へと案内してくる。
 【ラビットイヤーα:1】【ラビットイヤーα:2】【ラビットイヤーα:3】らも援護に向かい、一時落ち着いた戦場では休息が促がされていた。
 被害は多少なりともでたが無事、地上部隊もミールヌイへと運ぶことが出来た。
 輸送機と地上部隊の合流を果たし、ミールヌイ基地は次の戦いへの準備を整えだす。
 随伴してきた【SMG】は残党兵力を無力化するために、周囲を偵察しては最後の戦闘を行っていた。
「ここの周囲も激戦区だったようですね」
 期待の補給と共に自らの休息をかねて、配給担当の傭兵からココアを貰い一息つく。
 通信を聞く限り、強敵はファームライド1機だけだったようだ。
 他の地域がどうなのか、不安にも思うが、今は任務を果たせたことを素直に喜びたいと遠石は思う。
 戦いの終わったロシアの大地は寒さを取り戻し、眠りにつこうとしていた。

<担当 : 橘 真 斗 >


<監修 : 音 無 奏 >

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