ボリビア防衛作戦
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――敵情報 第2フェイズ


●ギガワーム:
「ソフィア、人類の文献で見つけたのだが、この言葉はいいと思わないか。『友情の為に』、そうつけるだけで何をしても美しく響く」
 ギガワームの艦上で、キュアノエイデスは涼しげに笑っている。たとえば友情の為に虐殺する、とか。そう剣呑な事を呟いて、青年の姿の異星人は図上を見た。エルドラド、と名づけられた小国家が進路上に存在する。
『‥‥その場所の破壊は、リリアが禁じているわ』
「確かに。では対象から外そう」
 野良キメラが迷い込む程度は仕方が無いが、と言うキュアノに、モニター越しのソフィア=グリムは小さく頷いた。人間の怪我人のように包帯まみれの姿は、培養液に漬かる時間も惜しいという事らしい。
「で、アルゲディはどうした?」
『錯乱しています。要塞から出る気は無いようですね』
 その会話に、横の画面から遠慮の無い笑い声が聞こえた。もう若くは無い、女性の物だ。
『何、宇宙人でもゼツボーとかする訳? マジ受けるー』
 プリマヴェーラ・ネヴェ。今では残り少なくなったゾディアックの、山羊座を名乗る女だ。聞いていたアスレードが隅で舌打ちをする。同じくゾディアックの魚座である彼だが、強化人間のネヴェと違って人ではない。このヨリシロを得てから久しいバグアだ。彼にしてみれば、宇宙人と一括りにされるのは、納得いかないらしい。
「バグアも人間もねぇ。そいつが弱いだけだろ」
「全くですね。美しくありません。必要と許可さえあれば、私が処分してさしあげても構いませんが?」
 あくまでも自分は客、というように微笑む風祭・鈴音。確かにこの方面の指揮官はソフィアであり、鈴音やリノ、アスレードらは助力しているだけなのだ。もしもこの敗戦の責が問われることがあるならば、ソフィアであろう。地上の戦況に関心など無さそうなブライトンがそのような事をするかは疑問だが、何事にも最初というのは存在する。
『ネブリナ山はもう駄目でしょう。ですが‥‥』
 自分はここで更迭される訳には行かない、とソフィアは言った。成果が必要だ、と。キュアノエイデスは僅かに目を細めてから頷く。
「確かに、そうだろうな。『友情の為に死す』、というのも、フフフ‥‥、悪くない気分だ」
 言ってから、艦内の「客分」達へ慇懃に頭を下げた。自分の為の駒となって欲しい、と。


●ネブリナ山:
「どういうことですか。こんな馬鹿なことが‥‥。あれだけの設備を用意したというのに‥‥」
 ネブリナ山の指揮室で、アルゲディはいらいらと歩き回っていた。防衛施設は完璧だった筈だ。実際、敵の攻撃をほぼ食い止めていた。それがたった一発のラッキーヒットで逆転されるなど、ありえない。整った顔立ちの青年の中に巣食う異星人の思考は、彼の歩行と似て、ぐるぐると同じ場所を回っていた。
「で、どうするんだ? このスーパーバグアの俺様が知恵を貸してやろうか? ん?」
 ニヤニヤ笑うシェアトの様子に、オリ=グレイは内心で肩をすくめる。多分、知恵を貸してくれと頼まれたところでシェアトの引き出しにはきっと何も無い。プライドだけが高いアルゲディにそのような事ができないと知って、あざわらっているのだろうか。
(‥‥No、それは無いネ)
 爬虫類系の瞳をぐりぐりと回しつつ、彼はそれを否定した。シェアトはそこまで深く考えて物を喋らない。バグアのある一面を極めて純粋に体現したような男だ。オリ=グレイも大概自信家ではあるが、あそこまで完璧に自信過剰にはなれない。なりたくもない。
「あいつら結構クールだゼ? 俺に一汗かかせる位にはナ」
 爬虫類系なのでそもそも汗はかかないのだが、オリ=グレイはニヤニヤ笑いつつそう言った。あながち、冗談ばかりではないのだが。
「クッ」
 アルゲディは考える。何か手はあるはずだ。そう、今自分が手に入れているヨリシロは、防衛戦の名手だったという。一度失敗したからといって、この知識は無駄ではないはずだ。こいつの知識に、もう一度チャンスをくれてやろう、と彼は考えた。記憶を探り、この状況についての答えを求める。
「‥‥あった」
 青年は会心の笑みを浮かべた。正面の守備部隊が壊滅した状況から、戦果をあげて五分まで押し返した作戦を、この自分は持っている。言葉は、すらすらと出た。
「ホラディラダムを奪って敵はいい気になっています。もう予備の戦力などないと思っているでしょう。その油断を突けばいい。簡単な事です」
 びし、と図面の上の一点を指すアルゲディ。その場所には、マナウスと書いてある。
「シェアト殿、オリ=グレイ殿。この地を強襲していただきたい。その間、私とドット殿はこの要塞で敵の攻撃を受け止めましょう。‥‥フ、フフフ。敵の驚く顔が目に浮かびます」
 オリ=グレイは横のドットとチラリと目線を交わした。戦力を二分する必要がある状況で、新鋭機を擁するドットを手元に置くと言うこの男もまた、バグアのある一面だけ引き出したようなタイプだ。しかし、シェアトと違って戦友にはしたくない奴だ、と彼は思う。その思考を読んだかのように、ドットの機械の目が一度だけ開いて閉じた。


●ギガワーム:
「戦えるなら否やは無い。が‥‥」
 拗ねるような口調で、ティターンを壊してしまった、とリノは口を尖らせる。もう一人の失機者、アスレードは窓の外を向いていた。生身であっても相応の戦闘力を発揮する両名だが、高速移動する戦場には人の姿はいかにも不向きではある。
「私のフォウン・バウをお貸ししてもいいですが、そうすると私が困りますわね」
 唇に指を当てて、困惑の表情を作る鈴音。と、救いの手は画面の中から訪れた。
『あたしのファームライド、貸したげよっか?』
「お、気が利くじゃねぇか」
 パッと立ち直ったアスレードに、ネヴェは渋面を向け。
『あんたに貸すわけ無いじゃない。壊されたら困るもん』
 言い返そうとしたアスレードが、口を閉じる。ゾディアックリーダーとして生身では絶大な実力を誇る彼だが、機体の扱いのまずさにもまた、信頼と実績がありすぎた。
「お前は使わないのか?」
『え、マジ今回そんなの使えないし。デカすぎ、みたいな』
 リノの質問に、ネヴェはぱたぱたと顔の前で手を振る。元来単純なリノは、納得したように頷いた。が、横で聞いていたキュアノエイデスが首を傾げる。
「プリマヴェーラ、好奇心で聞くが、貴女がそうまで手を貸す理由は?」
 帰ってきたのは、鋭い殺気の篭った言葉だ。
『あんた達にはわかんないよ。永遠に。‥‥いや』
 あんたならわかるかもね、と呟いた彼女の視線は、包帯に覆われたソフィアの目を見つめていた。キュアノエイデスは不思議そうにその様子を見てから、アスレードに向き直る。
「では、アスレード。あなたは待機を願おう」
 アスレードが言い返す前に、片手をあげてキュアノエイデスは彼の声を封じた。
「策は、敗れた時の事も考えて張るものだ。あなたは私の切り札なのだよ」
「‥‥聞かせろよ」
 どか、と座り込んだアスレードへ、キュアノエイデスは言葉を続ける。ややあって、アスレードはニヤリと笑って提案を受け入れた。




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