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(※ゼオン・ジハイド4 ザ・デヴィル)
ジブラルタル海峡の地中海側の入口には、『ヘラクレスの柱』と呼ばれる地が二つ存在する。
一つはイベリア半島側、通称『ジブラルタルの岩』と呼ばれる標高四百メートル余りの岩山。
もう一つはアフリカ大陸側、スペイン領セウタにあるアビラ山。
これらにはともにスペイン領の要塞が存在していた。
過去形なのは、バグアの侵略により彼らの手に渡ってしまった為である。
『Pearl Necklace』作戦の最中、あるイギリス艦隊がジブラルタルの西方沖に接近したことがあった。
その時は(そもそもそれが目的ではなかった為)東方への突破を行うことはなかったが、バグアはこの事態をジブラルタルの制海権を脅かすものと判断したのか――かの大規模作戦の終了後、彼らが手中に収めているアビラ山の『柱』の要塞に、新たに何かを建造し始めた。
アビラ山は巨大な岩山である。一時的に、ではあったが、その岩山を斜めにくり抜くように穴が開けられたのである。
もっともその穴は間もなく塞がれた為に、偵察でそれ以上の情報を得ることは不可能となったが。
皮肉なことに、最近完成したと思われる『それ』の正体は人類側の被害とともに判明することになる。
支援の為にアフリカ上陸の先陣を切ったUPCの小艦隊が海峡に到達したところ、『それ』から放たれた光線砲一発で壊滅したのである。
それにより、偵察で判明していた表面での作業の正体も判明する。穴の内部で建造されたと思われる光線砲の射出方向を調整する為の巨大なミラーだったのである。穴が塞がれたのは、この殲滅の時を待つ為の偽装だったと考えられる。
一発を放つまでの充填時間がある故か、追撃の一発を放つことはしなかったものの――追撃が無くとも軍の各将校の目を剥かせ、またこの海峡を渡りきること、渡りきった後に待つ苛烈な状況を思い知らしめるには十分だった。
しかし、充填時間以外にも弱点を抱えていることは明白であった。ミラーを破ってさえしてしまえば、方向を定める術を失った光線砲は役に立たないものとなる。
その故か、岩山を上りミラーに至るまでには厳重なる警備が敷かれていた。多数のキメラの他、少数だがゴーレムやタートルワームも存在している。
――そうして『それ』は暫定的にかつての要衝の名をあて、『ヘラクレスの砲台』と呼ばれ。
すぐ後に『アニヒレーター』というバグアが名付けた正式名称が知られることになる。
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