己丑北伐 ‐基礎情報‐
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己丑北伐――基礎情報

●中国遼寧省〜鞍山市近郊
 低く雨雲のたれ込めた曇天の下、かつてバグアとの激戦で無人の荒野と化した大地をUPC中国軍機械化部隊、及び護衛のKV部隊が進んでいく。
 作戦の第一段階である遼東半島解放はほぼ達成し、橋頭堡を固めたUPC軍の先遣部隊は、威力偵察も兼ねてバグア側の要衝・瀋陽を目指し北上していた。
「『雷公石』の攻撃はなしか‥‥司令部の予想通りだな」
 陸戦形態を取った斉天大聖のコクピット内から高性能カメラで周囲を警戒しながら、先遣部隊の中国人指揮官が呟いた。
 極東ロシア開発を脅かすバグア軍新兵器「雷公石」。
 ひとたび発射されてしまえば迎撃不可能という恐るべき兵器だが、その発射手段として奉天製の鹵獲兵器・対艦弾道弾を流用していることが弱点でもある。
 すなわち一度軌道上へ打ち上げられる弾道弾の性格上、一定の近距離圏内にいる敵部隊に対してはほぼ無力。その点は、当時の奉天兵器データの分析からもはっきりしている。
「懐に入ってしまえばこちらのもの‥‥もはや傭兵達の力を借りるまでもない」
 周囲の状況をモニターしつつ、指揮官はほくそ笑む。
 重要拠点である瀋陽まで百kmと離れぬ地点だというのに、バグア軍の抵抗は拍子抜けするほど貧弱だった。相変わらず地上には中小型の対人キメラが多数徘徊し、時折対KVクラスの大型キメラが襲いかかって来るものの、これは前衛のKV部隊がガトリング砲や高分子レーザー砲でたやすく撃破した。
「虎落平陽被狗欺(油断大敵)‥‥バグアども、『雷公石』の性能と瀋陽要塞の護りに頼り切りでろくな野戦部隊も配置してないと見える」
 ならば、こちらはその隙を思う存分衝くまでだ。地上部隊で瀋陽を包囲し、二度と雷公石を発射できないようにロケット、ミサイル、榴弾砲などで徹底的な砲撃を加える。そのため後方で待機する本隊には、中国軍にとって虎の子であるゼカリアやロングボウといった長距離砲撃型KVも多数参加していた。
 指揮官は決意を固め、後方の本隊司令部に通信を送った。
「こちら第42偵察中隊。敵軍の抵抗、極めて軽微なり。繰り返す、敵軍の抵抗は――」

 突然、コクピット内の明るさが増した。
 ちょうど風防越しに、頭上の雲が光ったとでもいうように。

「雷か‥‥?」
 訝しげに顔を上げた指揮官の視界で、上空を覆っていた灰色の雲が一瞬にして円形に吹き払われ、その中央で凄まじい閃光が輝いた。
 それは能力者である指揮官の視神経を焼き切るのに充分な死の光。
 否。目が潰れる前に、指揮官の肉体そのものが搭乗KVもろとも蒸発していた。

「な、何が起こったっ!?」
 10km余り後方で先遣部隊と交信中だった本隊司令部はパニックに陥った。KVも含め、1個中隊に及ぶ友軍部隊が目の前で消滅してしまったのだ。
 雲を貫き垂直に降りてきた、淡紅色の光の柱に包まれて。
 慌てて双眼鏡を覗く本隊司令官の目に映ったものは――。

 直径2kmにも及ぶ巨大なクレーターであった。

●最終兵器グレプカ
「ラインホールドの主砲だと?」
 ラストホープのUPC総本部。各国UPC軍代表が列席する緊急会議の席上で、参謀の1人が聞き返した。
「間違いありません。驚異的な破壊力といい、効果範囲といい、ラインホールドが主砲としていた大口径プロトン砲と考えていいでしょう」
 EAIS(東アジア軍情報部)部長、ロナルド・エメリッヒ中佐が答えた。
「バカな! あれは極東ロシア戦で我々が沈めたはずだ。瀋陽に2番艦が配備されたなどという話は聞いておらんぞ!」
「発射元は瀋陽ではありません。それについては、彼が‥‥」
 エメリッヒ中佐に促され、未来研から出席の天文学者が席を立ち、会議場の大スクリーンにプラネタリウムのごとく星空が映し出された。
 バグアに軌道上を制圧され、観測衛星を全て破壊されたため21世紀に入ってから大きく停滞を余儀なくされた天文学だが、それでも地上の天文台からの観測によりその研究は営々と続けられている。それはまた、人類側が宇宙空間におけるバグア軍の動向を探る唯一の手段でもあった。
「ひと月ほど前のことです。我々はオーストラリアから大型衛星が打ち上げられたとみられる、瀋陽上空の静止軌道に乗るのを確認しました。当初は、我が軍による遼東半島攻撃を監視するための偵察衛星と見られていたのですが‥‥」
 天文学者が手元のリモコンを操作すると、星空の一角が拡大される。それは一見、花弁を開いた巨大な薔薇を思わせる、奇妙な形の人工衛星だった。
「衛星本体は大型HWほどのサイズですが、問題は周囲に展開されたこの花弁のようなパネル。直径にして数kmに及びます‥‥これが反射鏡として、遠方から発射されたプロトン光線を反射・増幅し、地上のUPC軍を狙い撃ちしたものと思われます」
「反射衛星‥‥だと?」
「これを仮にメインサテライトとすると、その後一回り小さなサブサテライトが複数個打ち上げられ、現在は南北に沿って一列に並んでいる状態です。そしてその列を辿ると‥‥オセアニア大陸の北西に位置する親バグア国家、すなわちカメル共和国が発射元と推定されます」
「カメルだと? しかしいくらバグアの技術とはいえ、そう短期間にラインホールドほどの巨大兵器を再建できるとは思えんが」
「本体をまるごと建造する必要はないのです。カメル駐留バグア軍司令官のシモン(gz0121)は、おそらく主砲部分だけを復元したのでしょう」
 エメリッヒ中佐は捕捉説明を行うと共に、この仮設を裏付ける数々の資料――セルベルク基地から発見されたラインホールド設計図、カメル・バグア軍が独自に開発し、プロトン砲反射能力を有する支援ワーム「エリン」、そしてUPC軍偵察機・斉天大聖が危険を犯して撮影したカメル西部山岳地帯の航空写真などを軍高官達に公開した。
 あのウダーチナヤパイプに比べれば遙かに小さいが、クレーター内の休火山口と思しき穴のあたりに、ちょうどサイロから発射直前の大型ミサイルを思わせる「砲身」がちらりと頭を覗かせている。
「つまりシモンはラインホールド主砲のデータと『エリン』のプロトン砲反射・増幅技術を組み合わせ、休火山口に垂直固定した巨大プロトン砲から軌道上に発射した光線で元型のラインホールドを遙かに上回る超長距離砲撃を可能とするシステムを造り上げた‥‥最近、カメル軍の暗号通信で頻繁に使われている『グレプカ』はその呼称と思われます」
「ちょっと待て‥‥カメル本土から5千kmも離れた鞍山近郊を直撃だと? それでは、もしその妙な衛星がもっと数多く打ち上げられたら――」
「お察しの通り。ただ1門の巨大プロトン砲で、このL・Hを含め地球上のありとあらゆる都市を即時に攻撃可能。その脅威は『雷公石』どころか、シェイドやギガ・ワームすら上回るでしょう」
「‥‥」
 会議場の将軍や参謀達は、青ざめた表情で情報将校の顔を凝視した。
「そんなもの完成させてたまるか!」
 激昂した将軍の1人がデスクを叩く。
「ただちに発射元のカメルを攻撃せよ! 親バグア化してまだ1年のカメルなら、瀋陽などより遙かに脆いはずだ!」
「しかし、現在UPC軍の主力は瀋陽攻略のため遼東半島、及びハルピン付近に展開しております。これを今からカメル方面へ転進させるというのは‥‥」
「その必要はない。現在、太平洋上を増援として移動中だったUK弐番艦のブラット准将に要請し、カメル攻撃へと向かわせました」
 東アジア軍代表、椿・治三郎(gz0196)中将の発言に、会議の列席者からも「おおっ」と愁眉を開くような声が上がる。
「そして我が東アジア軍の切り札。『彼女』達も‥‥」

●バンダ海の悪魔
「くそっ‥‥何だ、こいつらは!?」
 インドネシア沖合、バンダ海上空のUK弐番艦から発進、カメル攻撃に向かったUPC軍KV部隊は予想外の苦戦を強いられていた。
 カメル領空の手前で迎撃してきた数知れぬHWとCW、飛行キメラ群――これは当初から織り込み済みの敵戦力だ。
 だがその中で特にUPC軍パイロットを悩ませたのは、機体を青くカラーリングした4機編隊の本星型HWだった。
 2機1組でロッテを組んだ本星型HWは巧みな空戦機動でバイパー改の砲火をかわし、逆にプロトン砲の光線が走る度、1機、また1機と人類側KVが撃墜されていく。
 しかも「彼ら」は撃墜機から脱出したパイロットさえ見逃さず、容赦なく拡散フェザー砲で焼き払っていった。
『ウフッ‥‥クスクス‥‥』
 オープン回線の無線から、凄惨な戦場に不似合いなあどけない笑い声が響く。
「‥‥子供?」
 パイロット達の困惑をよそに友軍の被害は増すばかり。このままではカメル本土攻撃どころか、後方にいるUK弐番艦すら危うい。

「トマス、マティア。あまりハメを外すんじゃないぞ。仮にも僕らの初陣なんだから」
「は〜い」
 NDF(ネオ・デビルフォース)リーダー、マルコの通信に、幼い少年少女の声が渋々答えた。
「でも、案外脆いのね。あんなのが人類軍の精鋭部隊だなんて‥‥私でも笑っちゃうわ」
 青い本星型HWの機内で、褐色の肌に銀髪をカールさせた少女がクスリと笑う。
『そう? なら見せてあげるわ。本当のエースの実力を』
「――誰!?」
 返答代りに撃ち込まれた8式螺旋弾頭ミサイルの炸裂が、強化FFを通し本星型HWの機体を揺すぶった。
「フェニックス!? いったいどこから――」
『おっと。ボクらのことも忘れないでね♪ っと、援護の方ヨロシク!』
『了解なんだよー』
 遙か後方のロングボウから発射されたK−02ミサイルがマルチロックオンで4機のHWへ同時に命中する。
 そしてあっという間に距離を詰めてきたシラヌイS型が、ソードウィングの吶喊でHWの外装甲を切り裂いた。

「ブルーファントムか‥‥嫌な連中が来たな」
 相良・裕子(gz0026)、チェラル・ウィリン(gz0027)、そしてリーダーの冴木 玲(gz0010)。
 情報として知らされてはいたが、よりによって初の機体戦で、UPC軍きってのエースチームとの遭遇に舌打ちするマルコ。
 とりあえず周囲のHWとCWを呼び寄せ態勢を立て直そうとした矢先、「司令官」からの通信が入った。
『もうよい、下がれ。あれはおまえ達の敵う相手ではない』
「――はっ。面目ございません」

「うわっ、ステアーが来たっ!」
 青いエース機部隊と周辺の無人HW群があっさり引き下がり、その後方から矢の如く加速して来る赤黒い機体を目にしたチェラルは思わず声を上げた。
 カメル・バグア軍司令官。そしてゾディアック「射手座」シモンの搭乗するステアーだ。
「落ち着いて。もうステアーも無敵じゃないわ――裕子は後方から援護射撃を、チェラルは奴を近距離から攪乱、私が接近するための隙を作って」
「OK!」
「頑張るんだよー」
 シラヌイSをブーストオンしたチェラルは試作型超伝導ACEを展開、ステアーから打ち込まれる20連装プロトン砲の衝撃に耐えつつ肉迫した。
 いったんすれ違うと見せ、急降下半ループで素早く敵機の背後を取る。
「いっけぇーーっ!!」
 超伝導アクチュエータ起動。南米で傭兵部隊が切り落としたという片翼の先端部を狙った剣翼突撃。
 その時、奇妙なことに気づいた。
(「あのステアー、何かおかしい‥‥?」)
 KVよりわずかに大きなその機体を、ぼんやりと青白い光が包んでいる。
 強化FFや練力消費による一時強化とは明らかに違う。
 考える間もなく、シラヌイの翼刃がステアーの主翼に食い込んだ。
 だが――。
「うわぁあああっ!?」
 渾身の一撃がステアーの主翼を切り裂く代り、大きく弾き返されたのはチェラル機の方だった。機体を立て直す暇もなく、至近距離から連射されたバグア式スナイパーライフルの砲弾がシラヌイSを撃破し、眼下の海面へと叩き墜とした。

(「――来る!」)
 能力者として、同じスナイパーとしての直感。
 遙か前方にいるシモンの狙いが、次は自分に向けられたことを裕子は悟った。
 離脱か、それとも応戦か――少女の脳内を凄まじい速度で思考が駆け巡り、過去のデータから推測されるステアーの性能、そして自らのKVのそれを比較する。
 裕子は迷うことなく応戦を決意した。
 一般的に防御が脆いとされるロングボウだが、エース仕様機として独自にカスタマイズした彼女の機体はもはや別物といってよい。
「プロトン砲、スナイパーライフル、多目標ミサイル‥‥何が来ても、裕子の機体なら最初の1撃には耐えられるよ!」
 新型複合式ミサイル誘導システム、起動。全兵装を叩き込み、差し違え覚悟でシモン機にダメージを与えるべく機体をブーストさせる。
 ステアーの機首部分が光った。
 プロトン砲でもSライフルでもない。凶暴な光の奔流がロングボウの機体ほぼ半分を消し飛ばし、そのまま遙か後方のUK弐番艦へ命中。激しい爆発が起こり、空中母艦の巨体が大きく傾く。
 その場に居合わせたパイロット達、全員が我が目を疑った。
 ディメント・レーザー。かつて五大湖戦で、シェイドが一撃でUK壱番艦を撃沈した同じ兵器を、なぜステアーが搭載しているのか?

「よくも‥‥っ!」
 実の妹にも等しい仲間2人を目の前で撃墜され、玲は怒りに唇を噛みしめた。
 だが冷静さまで失いはしない。そのとき、彼女のフェニックスは既にディメント・レーザー発射のため速度を落したステアーの至近距離まで迫っていた。
「SES2000」オーバーブースト、空中変形スタビライザーを同時発動。
 練剣「雪村」実体化。
「おまえはここで墜とす! いま中国で戦ってるみんなのためにも!」
 応戦する様に空中変形したステアーが、腕代わりに伸ばした2本の触手からレーザーブレードを実体化させた。
「‥‥?」
 その瞬間、玲もまたチェラルと同様の違和感を覚えた。
 陸戦形態を取ったステアーの胴体部分に、青白く光るケーブルらしき細い管が複数走っている。角度により非常に見辛く、トップクラスの能力者である玲の動体視力だからこそ発見できた、既存ステアーとの違い。
(「もしや、性能向上のため増設された機関?」)
 咄嗟の判断により、ケーブルの1本に切りつける。
 光の刃がケーブルを切断すると、ステアーの挙動がほんの僅か、揺らいだように見えた。
「やっぱり‥‥この機体はただのステアーじゃない!」
 残る行動力で他のケーブルも切断しようとする玲。
 だがその前に激しい衝撃を受け、フェニックスの機体が止まった。
 ステアーのレーザーブレードの1本が右肩口、もう1本が左脇腹に食い込み、空中で玲の機体を捕らえたのだ。
『惜しかったな。いかにエースといえども、貴様ら地球人にこのステアーZCは墜とせん』
 初めて耳にするシモンの声。風防越しに、奇妙なヘッドギアを被った若い男の姿が覗いた。
「くっ‥‥せめて、もう一太刀!」
 しかし無情にも2本のレーザーブレードに切り裂かれ、4つに切断されたフェニックスの機体は炎を引いてバンダ海へと墜ちていった。

 玲機を撃墜した直後、シモンはステアーを再び飛行形態に戻し、何を思ったかおもむろに機首を翻した。
「臨界モード解除。ノーマルモードに移行‥‥」
 無数のケーブルでコクピットに繋がれたヘッドギアを脱ぎ、額の汗を手の甲で拭う。
「ふむ。肉体にかかる負荷もバカにならんが‥‥実戦テストとしては上出来か。これならエミタ・スチムソン(gz0163)のシェイドにもひけをとらん。ふふふ‥‥」
 NDF、その他の配下にも帰還命令を出してカメルへと進路を取ったステアーの傍らに、簡易光学迷彩を解いた漆黒の本星型HWが寄り添った。
「お見事です。シモン様」
 シモンの側近、そしてバグア工作員でもある結麻・メイ(gz0120)。彼女は直接戦闘には加わらず、やや離れた距離から改造機・ステアーZCの戦闘データを記録していたのだ。
「‥‥しかしよろしかったのですか? 敵の母艦にとどめを刺さずに」
「深追いは禁物だ。どうやら生体エネルギーの伝導ケーブルを1本切られた様なのでな。なに、基地に戻ればすぐにでも修復できる」
「伝導ケーブルを‥‥? まさか、ステアーZCの秘密を悟られたのでは?」
 メイの声に微かな不安が混じる。
「判らん。まあ、一応対策を講じる必要はあるな」
 機体を覆っていた青白いオーラは消え、それはいつもと変わらぬ赤翼のステアーへと戻っていた。

●一縷の希望
 将官の1人が耐えかねたように叫んだ。
「やはり、今からでも全軍を転進させて、グレプカ破壊に全軍を差し向けるべきだ!」
「グレプカの破壊に成功すれば、敵の動揺を誘えます。その気に乗じて救出部隊を接近させます!」
「それに、このタイミングを逸すれば極東ロシアはすぐに厳冬期だ。瀋陽からの再侵攻軍を凌ぎきれないぞ。極東ロシアを失陥するだけならばともかく、鹵獲していたラインホールドの修復、最悪、今度こそ重力エレベーターが完成させられる可能性もある」
 作戦を立案した参謀と科学者達が口々に説得する。
 グレプカは脅威であるが、瀋陽を放置するわけにもいかない。まさに「前門の虎、後門の狼」である。
「救出作戦が失敗したら? 決死隊であることに変わりない。オーストラリア方面で通信電波量が増えているという報告もある。最悪、オーストラリア・バグア軍からの援軍も考えられるぞ」
「それでも、どちらで成し遂げなければ! 敵新兵器が地上の全てを射程に収めるか、宇宙からバグア軍が大挙して押し寄せてきます!」
「困難な二正面作戦を同時に達成するのに、どちらも正攻法というのは無理です! SJブースターによる奇襲作戦は、北と南の作戦を同時に成功しえる現状でもっとも可能性の高いあるプランです!」
「‥‥最悪、全滅の可能性があることを傭兵に伝えたうえで、決死隊を編成しましょう」
 おもむろに椿中将が口を開いた。
「同時にグレプカ破壊の為にはシモンのステアー、ならびにカメルの防衛部隊を誘き出す必要がある。UK弐番艦を中心に、正面から攻撃を仕掛ける陽動部隊を同時に編成する。この増援部隊はグレプカ破壊後は救援部隊にシフトします」
 中将はゆっくり席を立ち、まだ不安そうな面持ちの各国代表を見渡した。
「グレプカを破壊し、なおかつブースターを失った決死隊をも必ず救出する。さらには瀋陽の解放作戦も継続。この難事を成功させるため、彼ら傭兵と正規軍双方が緊密に連携し、全人類の団結を以て作戦を実施する‥‥それこそが、天が我々に与えた一縷の希望でありましょう」

執筆 : 対馬正治
文責 : クラウドゲームス


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