●UPCの横槍
「さすがにこれは‥‥装甲がスカスカすぎるんじゃない?」
奉天公司が岩龍の後継機を求めていたUPC軍に対して提案した新型機は骸骨のような外見をしており、その際立って華奢な様子にUPC軍の軍人達は難色を示す。
「攻撃が当たらなければどうということはありません。それを現実のものとするだけの機動性を備えています。飛び抜けた回避性能は他の追随を許しません。最高級機であるシュテルンも含めてです。最前線に立つ傭兵の意見も取り入れた上でのものですし、この機体で正面からの殴り合いをするわけでもありませんから」
奉天の営業マンが機体のアピールを続ける。
「傭兵の意見‥‥ね。傭兵向けの偵察機としてなら使いどころもあるでしょうし、使いづらいけど一芸のある機体を使うのも自己責任だしね」
各地の戦線にスポット投入される傭兵が使用する機体としてであれば、確かに使い道も考えられるし、完全に使い道を割り切った設計は合理的である。何より任務に応じて、自分のスタイルに応じて機体を使い分けることもできる。
しかし、正規軍のパイロットは一部の例外を除けば、部隊ごとに搭乗する機体は決まっており、機種更新があるまでは一蓮托生の関係である。
「傭兵の意見で変わる前の機体の方が、まだ正規軍向けではあるようだ。我々としてはこちらを仕上げてもらいたいな。装甲ももう少し増やしてもらいたい」
資料をめくりながらUPCの軍人が意見を出した。
この意見により新型機の方針を再度翻さざる得ない結果となったのである。
●かくて完成したのは‥‥
かくて完成を見たのが、上記の写真の「H−223A 斉天大聖」である。
計画が二転三転したものの、基礎フレームにはほとんど手をつけなかったこともあり、開発費用の高騰は回避されている。
傭兵への貸与価格は100万C以下になるとされており、岩龍の後継機として申し分のない安定感のある機体に仕上がっている。
だが、しかし‥‥。
「傭兵からは苦情がきますね。コレじゃない、と」
「ある程度はやむをえまい。最終的に決断するのはUPC軍やULTだ」
「文句ならUPCとULTに言ってくれとは思いますよ。だからといって、奉天として知らぬ存ぜぬとはいかないですしね」
UPC軍からの要求とはいえ、KV開発の方針を大きく変更せざるをえないという事情はメガコーポレーションとしても常に悩ましい問題である。
「そうだな。開発に関わった関係者全員に報いたいという意味でもどうにかしたいところなのだが」
「‥‥この機体、開発は二転三転してても、フレームはほとんどいじってないんですよね?」
ふと一人の社員が開発資料を見ながら呟く。
「そうだな。初期開発から時間が経っているから、部品単位で性能の底上げはしてるが、その気になれば初期案の斉天大聖に戻すことも‥‥」
「それですっ!」
はたしてこの社員が思いついたこととは?
且聴下文分解
●骸龍の完成
はたして社員が思いついたものとは?
「骸龍の為に大規模な生産ラインを作ることは難しくても、個別の傭兵のオーダーで改装作業を請け負うことは可能です」
社員の一人が主張する案は、斉天大聖は斉天大聖として販売し、傭兵の個別のオーダーに応じて改修作業を行うという、完全受注形式であった。
「なるほど。それなら斉天大聖と骸龍両方の生産ラインを用意せずに済みそうだな」
「骸龍の部品を一部生産するようでしょうが、そのあたりも工賃に含めることで対応することは可能です。基本的には骸龍への変更は簡略化が中心となります」
「骸龍から斉天大聖への再改修も視野に入れよう。装甲などが余ることになるからな」
既に設計が完成している骸龍については、斉天大聖からの改修に関するマニュアルの作成が作成されることとなった。
かくて、完成したH-223は短時間の改修作業でA型「斉天大聖」とB型「骸龍」として切り替えが可能という、今までにないKVとして発売されることになった。
(※斉天大聖から骸龍への『バージョンアップ』(有料)が可能です。購入後、マイページをご確認ください。また、骸龍から再び斉天大聖に『バージョンアップ』し直すことも可能です)
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