アジア決戦
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12月1日の報告


 マドリード正面で大軍同士の激戦が行われる中、トゥーロンからはグラナダ南部へと迂回する突入部隊が送り出されていた。
 視界は青と青に挟まれ、海上には突入戦力を乗せた艦隊、周囲及び空中には護衛のKVたちが随行し、陣形を展開している。
 先行して空より偵察するのは小隊【サイレントヴェール】、海上の哨戒には【裏飯屋】が立ち、情報網【竜脈】を通じて警戒態勢を整え、道程の安全を確認しながら敵情報をいち早く察知して全部隊へと伝える役割を受け持つ。
 消耗はなんとしても避けなければいけない。要塞突入のための本隊は無論のこと、着岸した後、突入部隊を援護する支援部隊の戦力もだ。
 空中からの敵勢力接近の報に続き、海側からも敵影を確認した旨が伝わり、偵察に先んじた面々が戦闘へと身を投じていく。
「味方の数は少ない‥‥けれども、そこは連携でなんとかするわ!」
 ――戦力に押しつぶされる心配はさほどない、それはマドリードの面々が引き受けてくれている。
 しかし、それ故に回すことが出来た護衛戦力も十分であるとは言い難かった。それを振り払うように紅・サルサ(ga6953)は【LH水泳部】を指揮し、試作型水中用ガウスガンで牽制しながらワームとの距離をつめていく。
「姉さま、要がんばります★」
 指揮を受け、要(ga8365)がそれに続いた。後方、レディー・M(ga8354)・クリス・フラウト(ga7247)二名の支援を受けながら、高分子レーザークローで損耗したワームにとどめを叩き込む。
「‥いつもの‥2倍‥3倍の力を‥出しきる気持ちで‥頑張る‥ですよね‥♪」
 艦隊を防衛しようと、ユナユナ(ga8508)たち【ゲソレンジャー】も奮戦するが取りこぼしはどうしても出てしまう。
 這い寄る秩序(ga4737)が負傷し回収される中。敵戦力の厚いところをカバーしようとセミ・バストルナーク(ga8690)が動いた。
「そりゃあ、簡単に入れてくれるとは思ってませんでしたが‥‥」
 百も承知、しかし押されているプレッシャーがやはり意志力を削りとる。
 攻勢を止めきれず回収される傭兵はシーク・パロット(ga6306)、ファルル(ga2647)と増え続け、ついには船底に取り付かれれば、ユイリ・プライム(ga2944)がガウスガンを横から突き刺して吹き飛ばした。
 ――消耗戦を続ける戦力は傭兵たちにはなかった、強引に突っ切らないと。
 幸い敵は急造の迎撃部隊であり。突っ切るならリスクも『護衛内』の範囲で収まってくれるだろう。
 きっとそれが最善の選択。無論、痛い目は逃れそうにないが。
「水平線の彼方には夢がいっぱい詰っているんだ! 守って見せるぜ! オイラ達の海!」
「海は綺麗だけど‥‥バグアがいなけりゃもっといい!」
 覚悟を決めたソフィア・アナスタシア(ga5544)が敵をひきつけ攻撃の隙を作ろうと吶喊を仕掛け、注意のそれたワームを天草・渉(ga0015)がニードルガンで狙い打つ。
 空からの情報支援もあり、この場をしのぐ事はなんとかやっていけそうだった。

 空中ではUPC側の猛烈な攻勢が繰り広げられている。
 敵軍との接触まであと僅か、迎撃体制を展開した自陣から【I.C.E】が先行して飛び立ち、照明弾を敵軍ど真ん中に向かって放った。
「さて、派手に行くか。‥‥グラナダの空、俺等の車輪で轢潰してやろう」
 光を反射して影が煌き、レイヴァー(gb0805)がそれを目印にペイント弾換装済みの20mm高性能バルカンを打ち込んでいく。
 射撃を続けながら敵との距離を調整し、UK-10AAMで派手な弾幕を撒き散らしながら左側へ移動。
 ワームたちが釣られて機首をそっちに向ければ、右側から【ラーズグリーズ隊】がブーストをかけて突撃した。
「ヘッ、らしくなってきやがったな‥‥さぁて、派手に引っ掻き回すぜッ!」
「大盤振舞‥‥ですよ‥‥ッ!」
 前方に狙いを定め、鈍名 レイジ(ga8428)の84mm8連装ロケット弾ランチャー、耀(gb2990)のH-044短距離用AAMが一斉射撃に合わせてトリガーを叩き込まれる。
「さぁて、ショータイムの始まりだ! 各機、最大加速でぶっちぎるぞ!」
 立て続けに響く爆音。隊長、ブレイズ・S・イーグル(ga7498)自ら先頭に立って仕掛けた突撃がワームたちを打ちのめし、爆発による黒い煙の中に赤い炎の花が咲いた。
「全力でぶっこんでいくんで夜露死苦ゥ! ‥‥なんてね♪」
 リロードは行わず、弾が尽きたらそのままUターンして補給へと戻る。
 アリス・L・イーグル(gb0667)のウーフー、翁 天信(gb1456)の岩竜によるジャミング中和が生存率を少しでもあげようと小隊を覆い、突撃前に放たれたラージフレアがそれを駄目押ししていた。
 とはいえ、やはり追撃は免れる事が出来ない。バグア軍からの反撃が後退する【ラーズグリーズ隊】を追う。
 ラージフレアの効果が途絶え、ホーミングミサイルがクレイフェル(ga0435)に追いついて着弾、今度は炎の花が【ラーズグリーズ隊】の方で上がった。
 雪村・さつき(ga5400)も弾幕を浴び、失速しながら必死で飛行を維持して艦隊の方へと戻る。
 彼らへの攻撃を阻止したのは【榊分隊】による更なる突撃だった。
 第三編隊は情報管制並びジャミング中和を受け負い、第一・第二編隊が攻勢に出る。管制の情報を元に連携を仕掛け、損耗の蓄積したワームたちを仕留めていく。
 自分からは突っ込まず、後方に陣取った【美女と野獣【B・B】】は迫りくる敵軍にまずはミサイルポッドをばら撒き、それを抜けて近づいてくる敵から三機集中攻撃して落としていった。
 単騎の護衛たち、テトラ・シュナウザー(ga0218)も突出しない範囲でライフルの援護射撃を加え、道を切り開かんとキラ・ジェネシコフ(ga8267)がソードウィングを携えて飛翔する。
 情報網に耳を傾け、付近の情報収集をしながら防衛を抜けてきた敵を地道に潰していく羽曳野ハツ子(ga4729)、135mm対戦車砲を構え、機動性を生かし敵が近づく前に叩きにいく御山・詠二(ga8221)。
 到達出来るか―――水際を視界内に収め、突入部隊が身構えたときにそれは起こった。

 スペイン海岸手前にてUPC軍を出迎えたのは、タートルワームの長射程砲撃による水際での迎撃だった。
 偵察以前の話だ。急造とは言え迎撃が来るということは、こっちの動きは察知されているという事なのだから。
 予想以上に早くなった、正しくいえば警戒の薄かった交戦に混乱が混じり、砲撃によって艦隊が損傷を負う。
 【雪風】が艦上より出撃する。幾らAU−KVがあるとは言え、ドラグーンを中心とした【竜装騎兵】が亀と斬り合う事に向いてるとは当然言い難く、単騎の面々も生身装備の傭兵が多かった。
 海上護衛の面々はここに来るまでに損耗しているし、空中は空中で新手の戦力と交戦を開始している。
 後方では人型に移行したリッジウェイがもたつきながら上陸しようとするが、かなりの確率でいい的だろう。
 薄いところを突破出来れば――とは当初思ったものの、敵に接近がばれてる今だとそれも叶わない。空と海から単騎の面々が何人か抜け、【雪風】に加勢した。
「作戦を妨げる要素は、全て排除します」
 ティーダ(ga7172)の3.2cm高分子レーザー砲がタートル・ワームを切り裂く、放たれる知覚攻撃は物理に強い彼らに対して致命打になり、艦隊への損傷を少しずつでも減らしていく。
 飯島 修司(ga7951)も同様に知覚武装を携えていたが、出撃前に回復しきってなかったのか、本調子でない彼は少し前に負傷して回収されてしまった。
 知覚武装を持たないファルル・キーリア(ga4815)、ヴァイオン(ga4174)、シェリー・神谷(ga7813)は偵察がてらキメラの駆除に回り、周囲を確認するも亀以上の強敵は見当たらない。
 大物を想定していた装備はその力を振るう事なく終わりそうで、‥‥どうやら主力は本気でマドリード・要塞方面に向かったらしい。
 自分たちはこっちを止めたほうがいいと思ったのか、【IMP】の面々がやや強引に陸上へと着岸、レーザー砲を一斉に亀へと向けた。
「今回は歌は無し。マジでいくわよ‥‥最初から最後まで、徹底的に狙い撃つ!」
 この場で言うなら、亀が最大の敵で間違いないだろう。出し惜しみするべき状況でもなく、鷹代 由稀(ga1601)もレーザーガン「デルタレイ」を解き放つ。
 強い閃光を絶えず瞬かせ、視界で飛びあう光撃と光撃。避けられては海岸に破壊の痕跡を残し、着弾の轟音を響かせた。
「‥‥押し切りますっ!」
 腕を掠めた痛みに耐えつつ、レーザーのリロードを済ませた夕凪 春花(ga3152)が再び敵に照準を合わせる。
 大和・美月姫(ga8994)、ジーラ(ga0077)が狙うのと同じ方向に銃口を向け、撃ち合いに加勢すれば所々凹む機体が電光を帯び、損耗が限界に達したタートル・ワームが爆散した。
 焦らずに、一機ずつ。次の目標を見定めるミオ・リトマイネン(ga4310)の横で、弾幕を迂回し、側面に回りこむキメラは隊長の緋霧 絢(ga3668)がソードウィングで叩き返す。
 UPC軍対スペインバグア軍の攻防戦、戦いは空中戦力がヘルメットワームを殲滅し、地上に加勢した所でUPC軍の勝利に終わった。

 ――ハプニングは起こったが、作戦は上陸に移る。
 補給の面々を艦隊に残し、幾人かが護衛に残った上で【竜装騎兵】【ヒヨコ隊】の面々が偵察にと赴く。
 【トライデント】がその後詰めを担い。随行し、探査の眼を起動した単騎のエキスパートたちが罠を見つけてはその破壊を手伝ってもらっていた。
 罠の解除と付近のキメラの掃討を隔て、ひとまずの進路を確保すると後方、揚陸の済んだリッジウェイと輸送車両の進行が開始される。
 掃討は無論したものの、統率の取れていないキメラの襲撃は続き、その度に先行の面々が迎撃に入り、護衛たちがその後ろについた。
「ちっ、うじゃうじゃとウザッったいったらありゃしねぇ!」
 イアリスを振り回し、キメラを切り裂いてスコール・ライオネル(ga0026)が毒づく。フランベルジュでの鍔迫り合いを押し切り、すかさず一閃した古織 霜月(gb3459)が敵を切り伏せた。
 疾風脚を起動した崔 美鈴(gb3983)がゼロで一撃を加える、防衛網を抜けてきたキメラは九音(gb3565)が小銃「シエルクライン」を向け、仕留めていく。
 戦闘能力を持たず、無防備な輸送車両にとっては十分危険すぎるこの場所。しかしリッジウェイを中心に防戦する傭兵たちは輸送車を背に一歩も引かない。
 奥から増援が出現すれば、美空(gb1906)駆るリッジウェイのヘビーガトリングが手始めにそれを出迎えた。
「野郎共、この車は目的地までノンストップだ、忘れ物はないな!?」
「送迎バスのお通りだ! 道を開けろ!! いや、むしろ踏まれて道になれ!!!」
 ‥‥リッジウェイの操縦者にワイルドな人たちが目立つのは多分偶然。
 徒歩の傭兵たちがひとまずの敵を蹴散らし終えれば、クライブ=ハーグマン(ga8022)、三田 好子(ga4192)が乗っていくかとリッジウェイに誘う。
 情報網【竜脈】はここでも機能を果たし、情報共有・AU−KVの急行により重大な被害を喰らうことはついになかった。
「ナナだって皆と一緒に戦うのですよ!」
 無理をするべきではない場面を判断し、剣と盾を使って七海・シュトラウス(gb2100)が堅実に戦いを進めていく。
 情報網に耳を傾けながら、嵐 一人(gb1968)は接近戦に備えて機械剣に持ち替えた。
 ヨグ=ニグラス(gb1949)から負傷者がいると聞けば、情報管制を担う鬼道・麗那(gb1939)が手の空いてる人に回収を要請する。
 制空権を確保し、先に先行を派遣する隊列も功を奏したのだろう。輸送車の被害も少なく、
「‥‥着いたぞ!」
 一行はついに目的地へ、損耗を抑えた状態での到達を果たした。

<担当 : 碧風凛音、音無奏>




●救助部隊
 スナイパーライフルを掴んだS−01改が、がりがりと地を削りながら着地した。
「ここは抑えておきます、鍾乳洞の中へ!」
 外部スピーカーから発せられる蒼井(ga2848)の声。
 他にもアングラー隊等がKVを中心に展開し、周辺からの攻撃を厳重に警戒する。
 その後ろをAidFeather隊やハーベスター隊のリッジウェイが走り抜けて行く。鍾乳洞の中へと突入した傭兵達が避難民の集団を発見するのに、そう長い時間は掛からなかった。
 UPCの傭兵達と気付いた避難民達が顔を明るくし、ドッと殺到する。
「皆さま、20人ごとに小集団となって下さい。人数を把握しなければならないのです。ご協力、お願いいたします」
 人数をある程度纏めつつ、アイロン・ブラッドリィ(ga1067)はぺこりと頭を下げた。
「大丈夫、皆で帰れるから‥‥ね?」
「あちらに友軍が待機してますわ」
 藤森 ミナ(ga0193)がはぐれそうになる人へ手を貸して歩き、ぞろぞろと歩き出す避難民達の前にはフォルテュネ(gb2976)が立ち、ロープを伸ばす。そのままロープを岩に引っ掛けて回り、凡そのルートを示していく。鍾乳洞の中でも、可能な限り頑丈な地質の場所へと誘導する為の措置だ。
 藤森らサイエンティスト達は、避難民の脱出と同時に医療品や超機械を取り出し、負傷者の治療も開始した。
 周囲には青い薔薇隊やハヤブサ特攻隊等が展開し、キメラからの攻撃を厳重に警戒する。
「皆様落ち着いて行動してください」
 木花咲耶(ga5139)が次々と現れる避難民に笑顔で語りかけ、誘導していく。
 そんな中、どこからともなく、断続的な地鳴りが響いて鍾乳洞を揺らした。大規模な崩落こそ起こらないが、パラパラと岩や石が降り注ぐ。
 そうした岩の一つを、黒羽・ベルナール(gb2862)が砕く。閉所でも問題なく進入可能なAU−KV故の利点だ。そうやって落石を払い、避難民の安全を確保する。
「‥‥始まったわね」
 天井を見上げ、金色要塞隊のウルスラ・ゴルドバーグ(gb3759)が呟く。
 彼女の手にはLEDや反射テープ。LEDはリッジウェイから電力を供給され、淡く輝いている。これを洞窟内に並べれば、避難民が進むべき経路が明確となる。爆撃が始まった今、急がねばならない。
「周囲に敵影は?」
「今のところ問題ありませんわ」
 KVを駆る銀龍(ga9950)に問い掛けられ、堀川陽菜(ga9222)は小さく頷いた。フルーツバスケットβ所属の彼女は、避難箇所の周囲に鳴子を設置して廻っていた。
 護衛を担当する傭兵達も次々と集まり、敵からの攻撃には充分な備えがなされていた。だが、しかし。
(キメラの姿も無い。妙だな‥‥)
 一人、アイギス隊の赤村 咲(ga1042)は心の中で呟いた。
 彼はキメラ等からの襲撃を警戒する傍ら、トランシーバーから常時手を離さず、避難民の列にヨリシロが紛れていないかに注意していた。
「‥‥」
 列の最中、眼鏡を掛けた一人の男が胸の中に手をやる。
「おい、何をして――ッ!!」
 問いかけようとして、彼は反射的に地を蹴った。驚いた男が手をあげる。その手には拳銃が握られていたが、彼の攻撃で弾かれ、拳銃は地に転がった。
「まさか、バグアの工作員が?」
 難民の後尾に位置していたナレイン・フェルド(ga0506)が、慌てて駆け寄り、銃を拾い上げる。赤村に取り押さえられた男は激しく抵抗するが、能力者が相手で勝てる訳も無い。
 彼が一撃を加えると、男はぐらりと崩れた。
「気をつけて下さい、避難民の中にバグアの工作員が紛れています」
 無線機に向け、声を張り上げる赤村。
 だが、その可能性について懸念していたのは、彼や暁鉈 ネル(gb3310)だけだったのだ。多くの傭兵達は難民の保護や救助に気を取られ、その可能性について思い至っていなかった。
 彼の警告はアイギス隊の『茨』を経て他の情報網に乗り、素早く各地の傭兵達へと伝えられたが――遅かった。
「え? 工作員が――」
 真田 音夢(ga8265)の問い掛けは、爆発音に遮られた。
 ハーベスター隊が展開し、避難民に配っていた食料品の近くで、何かが爆発を起こしたのだ。セリス(ga7290)が治療の為にと設置したテントも、爆風に煽られて倒れた。
「何てこと‥‥っ」
 打ち付けた頭を抑えつつ、起き上がるセリス。
 彼女達のように、治療や物資配布に当たっていた傭兵達も、こうした攻撃を前にしては、手を止めて警戒に当たらざるをえなかった。
「まったくあの変なおやじめ、やってくれるな」
 ザン・エフティング(ga5141)は思わず舌打ちした。
 避難民達の内部から攻撃を仕掛けてくるのでは、KVに危険は無いだろうが、工作員を撃破する事も難しい。KVでは火力が大き過ぎ、周囲の避難民を巻き込んでしまう。そうこうしているうち、多発的に工作員の攻撃が展開され、避難民達は混乱に陥った。
「資料を作成している暇も、ありませんわね?」
 ピコ・ブラウニー(gb3814)の指示を受けつつ、鍋島 瑞葉(gb1881)がAU−KVで駆け回り、避難民達に声を掛けて廻る。
「皆さん落ち着いて! 冷静に行動して下さい!」
 ハニービー隊の一員としてKVに搭乗していた宮明 梨彩(gb0377)は、思わずKVから降り、探査の眼を発動した。
「ソラさん、右手ですっ」
(今回は――『助けに来た』って、ちゃんと言うんだ!)
 梨彩の警告に、柚井 ソラ(ga0187)は地を蹴った。
 手榴弾のピンを抜こうと起き上がった避難民を、一撃で横転させる。
 各地で工作員の撹乱に対処しつつ、傭兵は避難民達を落ち着かせようと奔走する。一度恐慌に陥ってしまえば、その収拾は極めて困難となってしまうだろう。そんな中、黒崎 夜宵(gb2736)が、突然声を上げた。
「‥‥キメラがくるわ!」
 探査の眼を用いて、鍾乳洞の奥を睨みつける。
 彼女自身は、人の命を救うなんて冗談のようだと思わぬのでもなかったが、しかし、今の彼女は、確かにその為に動いていた。
 そして、その警告に反応して、充分な数の傭兵達が展開する。
 先程フルーツバスケットβ隊が設置した鳴子が、カラカラと音を立てた。
 武器を握り締め、キメラを待ち構える、アイギスやイエローマフラー隊といった各小隊に、聖矢(gb3708)やこうき・K・レイル(gb0774)ら、フリーの傭兵達。
 岩々の隙間を抜けて、多数のキメラが飛び出した。
「一匹残らず‥‥」
 白い髪が、薄暗い洞窟に揺れた。
 直後、先頭のキメラが叩き潰され、周囲に鮮血を飛び散らせる。
「潰してあげる‥‥」
 月守 雪奈(ga9613)のハンターアックスによる一撃を合図に、傭兵達が一斉にキメラへ攻撃を加える。クラウディア・マリウス(ga6559)がトルネードで攻撃を仕掛けたかと思えば、桜木 刹夜(gb2624)が真デヴァステイターでキメラを撃ち抜いて行く。
「くそっ、数が多いな」
 活性化によって己の傷を塞ぎ、神崎 葵(gb1457)が呟いた。
 彼等傭兵は、暫くキメラとの戦闘に忙殺される事となった。


●岩盤突破作戦
 大まかな検討をつけ、奉丈・遮那(ga0352)が採掘箇所を指示する。
「調査隊の努力を無駄にしない為にも‥‥」
「あたしのツルハシが光って唸る! 岩を砕けと轟き叫ぶ! どぅえーい!」
 機動小隊『修羅の風』、美崎 瑠璃(gb0339)のKVがメトロニウムピックを振るい、眼前の岩盤をガリガリと削る。愛輝(ga3159)や、月狼のユウ・エメルスン(ga7691)ら第二十四番隊も、掘削にあたっていた。
「ここを治療場所にします。負傷したら、一旦ここまで戻って下さいね」
 無線機へ通達を入れ、エレナ・クルック(ga4247)はテントを開く。
 ある程度掘削が進んだ時点で、月村・心(ga8293)が手を掲げた。
「もう良いだろう。発破するぞ、下がれ!」
 その言葉に傭兵が一歩下がったのを見て、月村がコードを繋ぐ。バチリと電気が通って、岩壁が爆破され、ぽっかりと大きな穴が開いた。
「よし、突入――ん?」
 武器を手に穴へと脚を掛けた傭兵達が、土埃の向こう側へと眼を凝らす。
「‥‥ようこそいらっしゃいました。そしてサヨウナラ」
 待ち構えていたのはメイド姿の女性。
 そして――山のような銃口。機械化キメラの群れ。
「くっ!」
 その並ぶ銃口を前に、フルーツバスケットαの辰巳 空(ga4698)は、サッと身を隠した。今まで彼等がいた空間を、多数の銃弾が切り裂いていく。猛烈な弾丸が洞窟を振るわせる。
 しかしその攻撃に怯む事もなく、†Mephisto†やFANG、月狼といった各隊はキメラ群への攻撃を展開し、その火力によって敵をじりじりと追い込む。
「2人とも、無茶だけはしちゃ駄目だからね!」
 言葉と共にS.Gの響 愛華(ga4681)が身を乗り出し、フルオートショットガンの引き金を引く。猛烈な攻撃が、敵の弾幕に一つの穴を穿った。その隙を狙い、イスク・メーベルナッハ(ga4826)は瞬速縮地で敵に接近し、メイド目掛けてロエティシアを突き出した。
 右手を貫くロエティシア。
 だが、右手はそのままガチンと腕から外れ、腕の中から銃口が覗いた。
「なっ――!」
 慌てて回避し、横転するイスク。
 横転したイスクを負い、メイドが銃口を向ける。だがその瞬間、彼女の左半身が盛大に吹き飛ばされ、今度はメイドが地に打ち付けられた。
 夜明・暁(ga9047)ら二十三番隊の攻撃だ。
 生身でKVからの攻撃を受ければ、ひとたまりも無い。

 指示が出されなくなり、徐々に乱れを増すキメラの群れ。その隙を付いて、傭兵達はKVを含む優勢な火力を発揮し始めた。
「お‥‥のれ‥‥!」
 床に転がったメイドが、頭をもたげた。
「まだ動けるのか!?」
 キメラをイアリスで貫く最中、宮武 征央(ga0815)は振り返った。
 メイドの身体は既に、その殆どが機械化されていた。KVからの直撃弾を受けて尚、辺りに火花を散らしながらも、ゆらりと起き上がる。
「おのれェ!」
 起き上がったメイドが上半身を弓なりに反らせると、その腹部に亀裂が入り、腹部からガトリングガンが現れた。次なる攻撃に身構える傭兵達。その中から、小柄な少女が一人飛び出す。
「そうはいかないよ〜!」
 二丁の拳銃を構えたロシアンルーレット(ga6529)が、強弾撃と二連射を発動し、S−01とスコーピオンの弾丸を同時に撃ち込んだ。
 ほぼ同時に、弾丸が首を貫く。
 火花を散らせながら、メイドの首が床に転がる。
 ニコニコとした笑顔を崩さず、その首へと再び銃を向けるロシアンルーレット。
「掛かっ‥‥たな‥‥!」
「――?」
 どういう事だと周囲を見渡した瞬間、頭上で何かが爆ぜた。
「後退しなさい!」
 いち早く罠に気付いた水円・一(gb0495)が、叫ぶ。
 岩盤、そして岩盤を支える柱が爆炎に包まれていた。キメラや傭兵達を巻き込む大崩落が起こる。後方の傭兵や瞬天速を持つ傭兵達は辛うじて難を逃れたが、前進していた傭兵達はその崩落に巻き込まれ、キメラともども、かなりの痛手を負う事になってしまった。
 一拍を置いて、傭兵達が掘削を始め、負傷者を岩の中から引きずり出す。
「大丈夫ですか?」
 次々と重傷者を運び出すカリン・マーブル(ga7507)。
「大丈夫だけど‥‥あいたた」
「くそっ、化け物扱いは結構だが、本当に容赦ねえな」
 岩に押しつぶされていたロシアンルーレットを、紅蓮・シャウト(ga9983)が引っ張りあげる。他にも巻き込まれた傭兵達がいるが、幸い死者はいない。とはいえ、能力者でなければ全滅していただろう。
「よし、通信は確保したぞ」
 瞬雷の、ゲック・W・カーン(ga0078)はLM−01をその場で留まらせ、アンチジャミングの範囲内を調整する。その隣を、Dr.Q(ga4475)が数十メートルクラスの延長コードを手に、走っていった。
「有線も繋いだ。まず通信にこまることもなかろ」
「ま、通信まで確保されたし、敵は突破した。となればだ‥‥」
 ツカツカと壁面に歩み寄ったベーオウルフ(ga3640)は、おもむろに屠竜刀を取り出し、躊躇なく斬り付けた。切断されたケーブルから火花が飛び散る。手当たり次第というほどでは無いが、これはと見れば次々と攻撃を加え、破壊して廻る。
「二人は嫉妬キュア! 中華のしっ闘士・嫉妬ショタ参上♪」
 そうしてベーオウルフが施設を破壊したかと思えば、白虎(ga9191)が真白(gb1648)を引っ張りながら走り回り、施設目掛けて火炎瓶を投げ込む。
 そうこうしないうちに、基地の通信、送電網はズタズタに破壊された。
「むぅ‥‥」
 そして、それを忌々しげに眺める一人の老人。クリス・カッシングは司令室で各所のモニターを睨みつけていた。
「野蛮だ‥‥」
 バンとモニターに手を叩きつけ、椅子に腰掛ける。
 彼は自分の作ったものが破壊されては嫌だ、という程我侭な男ではない。だが、価値を認めようともせずに無思慮に破壊して廻られるのは我慢ならなかった。
 一瞬、司令室の電源が落ちた。
 即座に非常電源へと切り替わり、室内は薄暗く照らされる。
「送電線をやられたか」
 顎に手をやり、呟くカッシング。
「ク、クッククク‥‥」
 そんなカッシングの様子に、ジャックは一人、口元を抑えて隠してを堪えていた。何が面白かったのか、それは定かでは無い。どちらにせよ、ああいって笑いを浮かべてる時は、何も手伝ってくれはしない。


●クリス・カッシングの憂鬱
 水中で、気泡が浮かび上がって行く。
(この日が来るのを待っていたのでありますよ)
 テンタコルス海兵隊の美海(ga7630)は、万感の思いだった。これまで幾度か要塞に潜入してきたが、今日こそ終わりだ。彼等潜入経験者は、それまでに見知ったルートを活かし、先頭を泳いでいる。
(今日こそ打ち止――?)
 ハッとして、美海は身を翻した。
 そうして姿勢を崩したところへ、小さな影が切るつけてくる。
(水中キメラ!?)
 肩にパックリと開いた傷口から赤い血が流れ出す。
 ターンし、更に切り付けんと迫る魚型のキメラ。再びせまったそのキメラを、椎野 のぞみ(ga8736)のアロンダイトが切り裂いた。その痕跡に、一直線に気泡が走る。無言で頷く椎野。水中故に言葉を交わす事は出来ないが、不要だった。
(急げ、突破するんだ!)
 ハンドサインで味方の移動を促す白鐘剣一郎(ga0184)。彼の後を追い、傭兵達は先を急いだ。
 先行する傭兵達の後を追わんとするキメラ。
 その行く手に、佐伽羅 黎紀(ga8601)が立ちはだかり、突きを繰り出す。反撃とばかりにキメラが襲ってくれば引き、そうして自ら囮となり、キメラを閉所へ閉所へと誘い込んだ
 司令室で、カッシングはじっとモニターを見詰めていた。
「む‥‥回りこまれたか?」
 水没地区で水中型キメラがロストした。傭兵達がここを通過したのだとすれば、動力炉を狙っているとしか考えられなかった。司令室の中に、ジャックの姿は既に無い。彼は小さな溜息をつき、司令室を後にした。
 やれやれ、最近の若いものは――そう愚痴をこぼし続けてきた先人たちの事を考えて、彼は、心の中で再び溜息をついた。


 水中より次々と浮上する傭兵達。
 歩兵小隊ゾルダートは、水中でも先陣を切り、陸上での橋頭堡を確保していた。有線通信が接続されているかどうかを確認する周防 誠(ga7131)。
「‥‥よし、大丈夫」
 彼等の小隊は後続の傭兵達から重荷となる水中用装備を預かると共に、その場に留まって退路を確保する。
「突破するわよ!」
 リーゼロッテ・御剣(ga5669)ら、プロジェクトSG小隊が先頭を切って敵基地へと歩を進める。傭兵達は敵からの奇襲を警戒しながらも、先を急いだ。まごまごしていると、敵に防御の為の時間を与える事にもなりかねないからだ。
「こちらです、急いで!」
 要塞への潜入経験がある鏑木 硯(ga0280)が、大きく手を掲げ、動力炉があると思しき方角へ友軍を誘導する。その付近ではミステイク(gb2775)やグン・ノーマンズランド(gb0776)が探査の眼を用い、罠等が無いかを注意深く観察して走る。
 自動制御らしき監視カメラがあると見れば、ファサード(gb3864)などはスパークマシンを掲げ、機械をショートさせ、少しでも敵に発見されまいと努めた。
 もちろん、幾ら少人数とはいえ、ここは敵地。それも、敵の腹の中とでも呼ぶべき場所だ。どこから位置を知ったのか、彼等の行く手をキメラが阻み始めた。
「邪魔をするな!」
「敵も仕事なんだろうさ‥‥」
 横合いから攻撃を仕掛けるキメラ群を無視しつつも、それぞれ月狼の十八番隊と十九番隊である、宗太郎=シルエイト(ga4261)と烏莉(ga3160)は、立ちはだかるキメラを次々と捌き、押し通る。
「くっ、少しでも練力を温存しなきゃいけないのに!」
 自身に襲い掛かったキメラを切り払い、雪村 風華(ga4900)は歯がゆい思いをした。殆どの傭兵は最深部への突入を最優先としていた。その為、キメラの奇襲へ対応する専門の者がおらず、何割かの傭兵は散発的なキメラの相手をせざるをえなかった。
 特別強力でも無いが、だからこそ、余計に苛立ちがつのる。
「こんな所で死なせるか‥‥誰も!」
 フォルトナでキメラを仕留め、鐘依 透(ga6282)が声を張り上げた。
「突破する人は急いでッ!」
「おうッ、すまぬな!」
 白髪をなびかせ、巽源十朗(gb1508)は瞬天速でキメラの追撃をかわす。
 とにかく、キメラの妨害は散発的なのだ。最深部を目指す傭兵達は百戦錬磨の兵揃いで、一時的な足止めであればともかく、この程度の攻撃で部隊全体が動きを封じられる程ではない。
 彼等は散発的な妨害を排除しながら基地を駆け抜け、広く、長い廊下へと差し掛かった。
「おそらくこの奥に――」
「危ない、伏せてっ!」
 奥を指し示していた鏑木が、ルクレツィア(ga9000)の言葉に、自ら横転した。
 紙一重で、弾丸を避けた。
「ドアの前に敵。2‥‥いえ、3人!」
 探査の眼でじっと奥を見詰めるルクレツィア。
 その視線の先には、上層階でも見られたメイドらしき人物が、三人。うち一人が数メートルもあるような大型のライフルを抱え、百メートル以上先から傭兵達を狙い据えていた。
「‥‥止まる訳には参りませんわ。ここを突破しなければ、本当の意味で勝てませんから‥‥」
 銃へ貫通弾を装填し、壁から廊下の奥を見やるみづほ(ga6115)。白鐘も突撃を掛ける準備は出来ていた。あとは、いかにしてあの長距離射撃を封じるかだ。
「よし、俺が行こう」
 ジュエル・ヴァレンタイン(ga1634)の言葉に、傭兵達が振り返る。
「ならば、私もでしょうか?」
 続けて前へ出る鷹司 小雛(ga1008)。
 彼は大型の盾を構え、ニッと笑みを浮かべた。二人とも、如何に大口径砲が相手とは言え、一発や二発の敵の攻撃であれば、耐えてみせる自信がある。
 その言葉に応じて、エメラルド・イーグル(ga8650)達、ジュエルと同じアクアリウム隊の面々はもちろん、紫藤 文(ga9763)やその他数名の傭兵がそれぞれに武器を構えた。
「行きますわよ‥‥!」
 久々のスリルに身を任せ、鷹司が地を蹴る。
 続いてジュエルがシールドを手に飛び出し、可能な限り距離を稼ごうと全力疾走する。一瞬の後、大型ライフルが火を吹き、先頭を走る彼等を襲った。
 盾の表面が捲れ上がる程の衝撃を受けて、ジュエルが吹っ飛ぶ。
 しかし、直撃は避けた。弾丸ははるか上方へ弾かれ、第一撃を捌ききったのだ。
「なにっ!?」
 次弾を装填しようとボルトを操作するメイド。だが、遅い。
 紫藤等、その後ろに続いていた傭兵が引き金を引き、射撃手のメイドを撃つ。
 残り二人が、弾かれるように地を蹴った。それぞれ、徒手空拳だった。
「――其処を退け。立ちはだかる敵は、例え何者であろうと討ち倒す‥‥!」
 前衛から一歩踏み出し、煉条トヲイ(ga0236)は紅蓮衝撃や流し斬りを併用した一撃をメイド目掛けて加える。素手でこの動きならば、必ず仕留められると見てのものだ。しかし、迫る刀を前に、メイドの肘から鋭利な刃が顔を覗かせた。
 火花が散り、肘の刃を砕いて胴を寸断する。
 鮮血が迸った。
 その様子に怯む事もなく、もう一人からも同様の刃が出現し、それを振るう。
「させるかッ――」
 冥姫=虚鐘=黒呂亜守(ga4859)がメイドに飛び掛り、豪力発現と共に首襟を掴んで、壁に叩きつけた。ごきんと鈍い音がして、相手はぐったりと動きを止める。
「カッシング様の敵に‥‥死を‥‥」
「‥‥カッシング。それで、貴様は何を求める」
 ゼロを突き出し、冥姫は眼を閉じた。放っておいても死んだだろうが、じわじわ死ぬのを黙ってみているのは、目覚めが悪くなりそうだった。
「突破するわよ!」
 アクアリウム隊長の鯨井昼寝(ga0488)以下、数名が攻撃を加え、動力室に向かう最後のドアを破壊し、突入する。
「これが‥‥」
「感慨に浸る暇は無いぜ」
 思わず動力炉を見上げた神凪・辰夜(gb3258)の背中を、宗太郎が叩く。
 破壊するだけ破壊したら、後は借用してきた爆弾を設置して退避するまでだ。
「え〜と、ここがこうなってるから‥‥爆弾を設置するのは‥‥うぅ、めんどい! 叩いて壊す!」
 バスターソードを振るい、やたらめったらに動力炉を殴りつけるイリス(gb1877)。
 こう見ると彼女だけがさつに見えなくも無いのだが、要は動力炉の機能停止に成功すれば良いのだ。彼女だけでなく、小田切レオン(ga4730)もクラウドを振るって好き放題に暴れているし、爆弾の設置箇所をきちんと検討している傭兵以外は、とにかく目に付くものの全てを破壊して廻った。カッシングが貧血を起こしかねない酷い光景だった。
 粗方破壊し、爆弾を設置し終えた彼等は互いに頷きあうと、一斉に動力炉を後に駆け出した。
「おのれ、一歩遅かったか‥‥!」
 まさに通路を抜けんとしたその時、わき道からカッシングが現れた。
 だが、カッシングの目的は傭兵の殲滅ではない、動力炉に設置された爆弾の解除だ。そして同様に、傭兵達の目的も、動力炉へ向かうカッシングを阻止する事だった。
「そこをどけいっ」
 カッシングがマントを翻す。
 空中に何かがキラリと光ったかと思ったその瞬間、床や壁に次々と針が突き刺さる。正体不明の攻撃に警戒し、飛び退いた傭兵達。そこに生じた隙目掛け、カッシングが強引な突破を試みる。
 が――その彼の眼前で、連続して小爆発が巻き起こった。
「‥‥皆の、邪魔は‥‥許さない‥‥」
「貴様は、確か‥‥?」
「久しぶり‥‥ねぇ、ちょっと、相手‥‥してよ‥‥!」
 ゆらりと地を踏みしめ、アルファルを構えたリュス・リクス・リニク(ga6209)がカッシングを睨み据える。対するカッシングの爪が、奇妙にすらりと伸びた。
「悪いが、君達の相手をしている暇は無い」
「そっちには無くとも、こっちにはある!」
 月詠を抜き放ち、白鐘が横一文字にカッシングへと迫る。
「勝負ッ!」
「ここで足を止めてもらいます」
 影撃ちを発動し、ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)は彼の攻撃に続けてグラディヴァの引き金に力を込める。 「――えぇいッ!」
 翻したマントの表面が瞬時に硬化したかと思うと、その表層に弾丸が弾かれる。
 あくまで動力炉へと急ぐカッシング。老人は反撃もそこそこに、攻撃を受け流し、回避する事に専念しながら廊下を走る。リニクも、あくまでカッシングに拘るが、当のカッシングにその気が無いのであれば、背に目掛けて矢を追い縋らせるしかなかった。
 それでも、傭兵の層は厚い。
 幾らカッシングが傭兵達を無視しようとも、一瞬の内に全員を突破できるものでもない。
「まだ、行かせる訳にはッ!」
 蛍火を手にするクリム(gb0187)が、カッシングの行く手に立ちはだかる。
 命を、全てを投げ出す覚悟だった。
 誰かの役に立ちたかったから、自分が誰かの役に立っているという自信が無かったから。
 だが、真正面からの一撃を叩き込もうとした彼女の全身に、先程のニードルガンが炸裂した。全身をニードルの嵐が貫き、クリムの覚悟は、彼女自身の膝と共に折れ、倒れた。
「ま、待て‥‥ッ」
 彼女は、自身を顧みもせずに走るカッシングを、なおも追わんとして、傷だらけの上体を起こした。
 ごつん――鈍痛が頭の中に響いて、そのまま意識を失った。背後に、半ば涙目のまひる(ga9244)が立っていた。チェーンソーで殴ったせいで下手をすれば致命傷だった気もするが、とにかく、彼女は誰も無駄死にさせる気は無かったのだ。
 武器を片手に満身創痍のクリムを抱え上げ、元来た道へと振り返る。
「引き上げるぞ、もう間に合いはしない!」
 誰かが大声を張り上げた。
 誰だったのかは解らないが、その一言で、傭兵達は一斉に引き上げ始めた。一人廊下を駆け抜けるカッシング。だが彼が動力炉へ辿り着くよりも早く、重苦しい振動が動力炉から響き渡る。
「ぬう、何たる事だ‥‥!」
 カッシングの目の前で火を吹き上げ、崩落を始める動力炉。部屋を満たした爆炎が通路にまで走り出し、彼はマントを翻して自身を包んだ。
 黒いマントの表面を走る炎。
 このままでは、奴等の動力炉の重要システムをくれてやる事になる――彼は懐から『自爆牡丹』と記されたスイッチを取り出すと、躊躇無く押し込んだ。再度の爆発が、動力室に広がった。

●終結
 大きな揺れが、鍾乳洞にも響き渡った。
「伏せてっ」
 湯を沸かして避難民達を暖めていたソフィア・シュナイダー(ga4313)が、口に手を当て、声をあげる。
 降り注ぐ岩盤等をリッジウェイのドリルで粉砕し、ロイ・キューブリック(ga4439)は思わず上を見上げた。揺れはまだ続いており、大小の岩石が降り注ぐ。幸い、救助や避難誘導に当たっていた傭兵達は、特に頑丈そうな場所を選んで誘導していた事もあり、大規模な崩落には巻き込まれなかった。
「何事でしょう。まさか作戦が失敗したりしたのでは‥‥?」
 懸念を口にし、通信回線を開く。
「‥‥今のところそういう話は無いわね」
 無線機を手にしたまま、カーラ・ルデリア(ga7022)はKVのコックピットから顔を出した。足元に居た避難民達に、怪我を負った者達は居なさそうで、彼女はそのまま、安堵の溜息と共にシートへ沈む。
「怪我をした方はいらっしゃいませんか!?」
 AU−KVにまたがり、夏目 リョウ(gb2267)が声を張り上げる。
「こちらは大丈夫です」
「来てくれ、肩を挫いた奴がおる!」
 ヴィー(ga7961)やオブライエン(ga9542)からそれぞれ言葉が返され、リョウはAU−KVを走らせる。彼等のようにAU−KVで小回りの効く傭兵達は、そうして怪我人を乗せては、医療班が待つ場所へと怪我人を運んでいった。
「手を貸してくれ、一人足を挟まれてる」
 神山 翔紅(gb2366)が大きな岩を肩で押し上げようと地を踏みしめるところへ、AU−KVを着た芹沢ヒロミ(gb2089)が現れ、共に岩を押し上げる。
「そちらを押し上げて下さい」
 岩と地面の隙間にAU−KVの腕を挟ませて、エリア・エリン(gb1882)が問い掛ける。
「良いですか? せーのっ」
 そうして岩盤を押しのけると、医療道具を手にしたリヒト・ロメリア(gb3852)が駆け寄り、下敷きになった人の手当を始めた。
「‥‥地下の様子はどうなっているのでしょう」
「詳しい情報が来ない事にはな‥‥」
 AU−KVの上から汗を拭おうとして、ヒロミはつい苦笑を浮かべた。
『皆聞いてくれ!』
 鍾乳洞の中に、KVからのスピーカー音声が響く。
 エミール・ゲイジ(ga0181)だった。
『作戦は成功した、安心しろ、すぐに軍が回収部隊をよこしてくれる!』
 避難民達から、大きな歓声が巻き起こった。

<担当 : 御神楽>


<監修 :音無奏、紀藤トキ、みそか>


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