ヨーロッパ攻防戦
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5月12日の報告5月9日の報告

「ば、馬鹿な‥‥」
 UPC欧州陸軍・第314機械化旅団長、ディエゴ・エルナンデス大佐は悪夢を見ている心持ちだった。
 スペイン国境地帯の防衛にあたっていた彼の部隊はSES兵器の滑空砲を搭載した戦車を主力に編成され、侵攻してきたスペイン・バグア軍に対しても互角の戦いが出来るものと信じていた。
 だが、その戦車部隊が予期せぬ奇襲により、真っ先に壊滅してしまったのだ。
 ゴゴゴゴゴ‥‥‥‥
 低い地鳴りと小さな地震が起こったかと思うや大地が割れ、ぽっかり開いた穴の中へ戦車も装甲車も呑み込まれていく。そして次の瞬間には、中の兵士ごと原形を留めぬ無惨な鉄塊と化して再び吐き出されてくるのだ。
 バグア軍の地中ワーム、アースクエイク。「地底からの奇襲」という予想もしない攻撃手段に対し、人類側に打つ手は全くなかった。
 とっさの判断で狙われそうな大型車両から兵士を降ろし、比較的地盤が固い付近の岩山まで退却させる事で人的被害を最小限に食い止めたものの、丸腰同然の歩兵部隊だけでは目前に迫ったバグア軍主力に対しとても太刀打ちできまい。
「(もはや、これまでか‥‥)」
 絶望に頭を抱えたエルナンデス大佐の元に、強力な援軍到着の報せが届いた。
 総勢431機にもおよぶ能力者傭兵のKV部隊であった。
 キューブワームの電子妨害下、ノイズ混じりの短波無線から、それでもUPC軍兵士達を勇気づけるかの様に流れる歌姫部隊【ヴァルキュリアーズ】の歌声。
『皆様、このようなところで、死なないでください!』
【ガーデン突撃部隊】千神 悠人(ga9141)は無線でUPC兵士達に呼びかける。
 動揺するUPC防衛軍の前に立ち、押し寄せるバグア軍に先制攻撃をかけたのは【咎人】、【蒼穹武士団】、【魔弾】、【ガーデン】、【Romeo】、【ヴァルキュリアーズ】各隊を主力とする傭兵部隊だった。
「バケモノめぇ! 歌の力を舐めるんじゃない!」
 シェリー・ローズ(ga3501)は歌唱作戦で友軍の士気を鼓舞する一方、自部隊を率いてタートルワーム、アースクエイクを主力に大小無数のキメラを伴うバグア陸上部隊に対し攻撃態勢に入った。
「陸戦特化部隊ガーデン、本領発揮ね。皆、めいっぱい暴れましょう!」
 メアリー・エッセンバル(ga0194)が情報網「月詠」で敵味方の位置情報を確認しつつ、護衛のキメラを蹴散らしつつタートルワームの密集地へと兵を進める。
 出現当時はその底知れぬ耐久力と大口径プロトン砲の火力により人類側を恐怖させたタートルワームだが、今や傭兵達も奴の弱点については研究し尽くしていた。
「スペインらしく闘牛っぽく行ってみっか!!」
 九条・運(ga4694)は【FANG】3機の仲間、それに他部隊とも連携しつつタートルワーム部隊が放つプロトン砲の十字砲火をくぐり抜け肉迫、知覚攻撃に脆い大亀型ワームに対し高分子レーザーを照射した。
 他の傭兵部隊もそれにならいレーザー、粒子加速砲、BCアクスなど知覚兵器をメインに攻撃、移動砲台ともいうべき敵陸戦ワームを切り崩していく。
 群れをなすキューブワームが低空すれすれまで降下し妨害音波で傭兵達を悩ませるも、これについては傭兵側も織り込み済みだ。
「先制、迎撃班が専念できるよう‥‥俺らに出来ることをがむしゃらに!」
 蓮沼千影(ga4090)率いる【我武者裸】、【ガンアンツ】、【R】所属のメディウス・ボレアリス(ga0564)、あるいはフリーの神無 戒路(ga6003)、ゴリアテ(ga6067)らが電子戦ワーム掃討にあたり、また岩龍、LM−01搭乗の者達がアンチジャミングで友軍の通信網を支えた。
『みんなの邪魔はさせないよー♪』
『ジャミング解除、皆聞こえてる?』
 一時は乱れていた回線が復旧し、【瞬雷】所属のヴィス・Y・エーン(ga0087)、八重樫 かなめ(ga3045)らの声がはっきりと友軍兵士の耳に届く。妨害音波による頭痛は相変わらずだが、戦場で仲間と情報を、いや「心」をひとつに共有できる心強さは何にも増して能力者達を力づけた。
 だが決して油断はできない。今回の攻防戦で新たに出現し、まだ対抗策はおろか索敵手段さえ見いだせない未知の敵アースクエイク。そしてまた、本来ならバグア地上軍の主力をなすべきゴーレムが数えるほどしか見あたらないのも却って不気味である。
 バグア側も状況に迫られ強引に押し出してきた戦力――という楽観的な見方もできる。だが、逆に考えればゴーレムなしでもUPC軍を蹴散らせる何らかの「切り札」が準備されている可能性も充分にあった。
 ふいに大地が割れ、湾曲した螺旋状の牙が、ガトリング砲とディフェンダーでキメラをなぎ払っていた大垣 春奈(ga8566)の機体を巨人の掌のごとく包み込んだ。
「きゃああああ!?」
 辛うじてコクピットから脱出した彼女の前に、無惨にひしゃげたR−01が地響きを立てて放り出された。
 複数の巨大な物体が地面の下を動き回っている。生身の状態でそこに立っていれば震動と地響きですぐに判るはずなのだが、戦闘のため激しく動き回るKVの機内からそれを察知するのは能力者をもってしても困難だった。
「アースクエイク‥‥あらゆる面で予想以上ね」
 ジェミリアス・B(ga5262)が悔しげに唇を噛む。
 何とか地中ワームの接近を察知しようと身構える傭兵達をあざ笑うかのように、相次いでKVが地中に引き込まれ大破していった。飛行形態を取り空中に逃れれば、そこにタートルワームの集中砲火が待っている。
 その間にもスペイン方面からはバグアの後続部隊が陸続と押し寄せ、いったんは人類側優勢と見えた戦況は膠着し、互いに消耗戦の様相を呈してきた。

 前線での戦闘が激しさを増すにつれ、後方の救護所兼補給所には傷ついた傭兵、あるいは損傷したKVが次々と搬送されてくる。
【ハーベスター】、【BWB隊】、【月狼】の一部、その他有志の傭兵達が負傷者の介抱、およびKVの応急修理や燃料・弾薬の補給作業にあたった。
「‥‥がんばって‥‥ください‥‥」
 姫藤・蒲公英(ga0300)が重傷者に錬成治療を施しながら元気づける。
 彼女や月森・ミューカ(ga4776)の様に、あえて戦闘には参加せず負傷者の治療に専念した者、戦場を駆け回り逃げ遅れた民間人の避難誘導に尽力した京本・かすが(ga8327)、猫瞳(ga8888)のような者達も少なくない。
 その一方で、
「ガタガタぬかすとセメダインでくっつけるぞコラァ!」
 と負傷者にカツを入れつつ、救護と補給整備を両方こなす風巻 美澄(ga0932)の様な猛者もいたが。
「ふん、あちらさんも、馬鹿じゃねぇってか‥‥良い事なのかな、これは!」
ケヴィン・ウェーラー(ga2524)はぼやきながらも、【月狼】長夜(ga6994)、【ハーベスター】森野風音(ga5147)らと補給物資の輸送と護衛に励んだ。

 一進一退と見えた戦場を、ふいに異変が襲った。
 何処からとも判らぬ攻撃で、唐突に数機のKVが火を噴いて大地に倒れる。
 傭兵達の間に戦慄が走った。
「奴」が、いや「奴ら」が来た――。
 スペインで、そしてシシリーで、幾多のKVを血祭りに上げた「レッド・デビル」――カプロイア社の試作機を奪い、バグア側が独自の技術も加えて完成させたファームライド。正確な数は不明だが、そのうちの何機かがこの戦線にも投入されていたのだ。
 人類側の流用兵器とも思えぬ超絶的な性能。ことに光学迷彩を隠れ蓑にした奇襲による被ってきた損害は大きい。だがその分、傭兵側も対抗策を準備してあった。
「はーーはっはっはっはっは!!!! 一体たりとも逃がさないよ!!」
 七瀬 帝(ga0719)が高笑いを上げ、【我武者裸】の僚機とも連携しつつ攻撃が放たれたと思しき方角へ一斉にペイント弾を発射。
 無数の炸裂と共に色とりどりの染料がまき散らされ、その中から2つの異様な機影が浮かび上がった。
 ヤドカリの殻に両手を生やした円錐形のフォルム。人型――とは言い難いが、2本のアームに槍のような武器を持ったその姿は、おそらくFRの陸戦形態なのだろう。
 功を焦った何名かの傭兵が無謀な突撃を図るも、鎧袖一触による返り討ちという形でその代償を払う事となった。
『奴らと単独で戦うな、連携を密にして当たれ!』
 ファファル(ga0729)が友軍に警告を発する。だが、その時には既に敵の方が動いていた。
 1機のFRが槍を構えたと見るや、疾風のごとく傭兵部隊に突撃してきた。
 一見、何も考えていないような猪突猛進。ただしそのスピード、運動性、攻撃の正確さ――全てにおいて人類側KVのレベルを遙かに超えていた。
 部隊としては最大戦力となる【月狼】を初め各隊が迎撃体勢を取る前に懐へ飛び込まれ、さらに数機のKVが犠牲となる。
「ガーベラ分隊は中央最前線にて敵を受け止めます!」
 敵の猛攻を阻止するべく、月神陽子(ga5549)のバイパーが立ちふさがる。機槍ロンゴミニアトを構えた彼女の目に、一瞬敵のパイロット――黒光りする肌に呪術師のような刺青を施した若い男の相貌が焼き付いた。
「(老人でも子供でもない? これまでの報告には――)」
 思考は激しい衝撃と痛みに寸断され、機槍もろとも片手を粉砕された陽子の機体は大地に倒れ伏していた。

 猛牛のごとく暴れ回る味方機とは対照的に、もう1機のFRは機体性能をフルに活かしたゲリラ戦法に徹し、損傷機やまだ戦闘経験の浅いと目をつけた傭兵達を、老獪なハイエナの様に情け容赦なく狩っていく。
「退きなさい。私の仲間には傷一つ付けさせませんっ!」
 勇気を振り絞って飛び出した聖・綾乃(ga7770)にその矛先が向いた。妹のピンチを目にした聖・真琴(ga1622)がすかさず割って入る。
「は! 調子くれてんじゃねぇよッ!」
『‥‥対馬島では世話になったな、小娘』
 無線を通して響く、陰にこもった中年男性の声。
「!? あんた、ギルマ――」
 その名を言い終える前に機体生命の半分以上を削る衝撃に見まわれ、真琴のS−01は大きく弾き飛ばされていた。
 僚機の篠原 悠(ga1826)、恋人の月影・透夜(ga1806)が救援に駆けつけると、FRは機首を翻し、次の獲物を求めるかのごとくその場から飛び去った。
「相手は2機だ! 数で押し潰せ!」
 そう叫んだ傭兵のKVが、全く別の方角から放たれた徹甲弾に貫かれ大破した。
 ――もう1機いる!
 光学迷彩に身を隠した第3のFRは、傭兵達が撃ち込むペイント弾の弾幕すら易々とかわし、人類側のスナイパーライフルを上回る射程と威力を持った遠距離兵器で1機1機、確実に仕留めていった。
 この戦闘に参加したある傭兵は後に語る。その動きは、あたかも隠密潜行を使う能力者のスナイパーの様だった――と。
 たった3機のFRの前に、400機のKV部隊が徐々に押し込まれていく。
 もはや戦線の崩壊は必至か――誰もがそう思ったとき、バグア軍の後方で巨大な炎の半球が膨れあがり、ワームやキメラを芥子粒のごとく吹き飛ばした。
 フレア弾の空爆。上空で戦っていた友軍が制空権を握り、ようやく支援爆撃が可能な状態に持ち込んだらしい。
 この空爆開始で、再び戦況は逆転した。
「貴方がたの好きにはさせない‥‥月狼の牙は闇を裂き光は全ての闇を照らす‥‥!」
 月狼隊長、終夜・無月(ga3084)が部隊に檄を飛ばし、体勢を立て直した能力者達は所在の判るFR2機に対しバルカン砲から粒子加速砲まで、あらゆる火箭を集中させた。
「レッドデビル、アースクエイク‥‥正直、怖いですが、退くわけには――!」
 全ての仲間の思いを代弁するように如月・由梨(ga1805)が決然と叫ぶ。
 ギガワーム。シェイド。ステアー――これまで幾多の強敵に打ちのめされ、何度絶望の淵に立たされてきたことか。それでも彼ら彼女らは膝を屈する事なく、無月の言葉通り暗闇の中から希望の光をつかみ取ってきたのだ。
 今までも。そしてこれからも。
 突然、暴威を振っていたFR3機が空中に舞い上がり、飛行形態に変わってスペイン方面へ飛び去って行った。
 フレア弾に怖れをなして撤退したか? ――誰もがそう思った。
 だが、理由はもう一つあったのだ。

『我々が貴官らの目となり耳となる。貴官らは地中ワームへの攻撃に専念して欲しい』
「月詠」のデータリンクを介し、エルナンデス大佐からの通信が入る。
 UPC陸軍部隊が申し出た提案は驚くべきものだった。
 いったん山岳地帯に撤退させた歩兵部隊を、広大な戦場に展開させる。彼らはキメラやワームに襲われる危険も省みず、生身の人間なら容易に感じ取れる地鳴りと震動――EQ接近の予兆を捉え、無線や信号弾でKV部隊に伝えるというのだ。
 この原始的ともいえる索敵手段が、意外にもEQ対策の決め手となった。
「モグラ叩きじゃなくてミミズ掘り‥‥」
 陸軍部隊からの通報で急行し、囮の無人トラックに食いついてきたEQの頭部を、月森 花(ga0053)のD−02Sライフルが狙撃する。
「えぐらせてもらうぜ、EQ!!」
 EQ対応班【Elevado】のR・A・ピックマン(ga4926)が、やはり地上に頭を突き出した大ミミズにドリルを叩き込んだ。
 いかに地中を自在に移動できるといっても、飛行ワームほどの速度が出せるわけではない。位置さえつかんでしまえば、後は待ち伏せて集中攻撃を加えるだけだった。
 最前線の友軍がFRと死闘を繰り広げている間、後衛に控えていたKV部隊は陸軍歩兵部隊と連携し、文字通りモグラ叩きのごとくEQ狩りを続けていたのだ。
 大きさが大きさだけにその生命力は半端なものではなかったが、それでも数機を撃破した段階で、地中ワームの群は潮が引くように撤退していった。
 ファームライドと地中ワーム部隊。2つの切り札が撤退した事で、間もなくバグア軍全体もスペイン方面への退却を開始した。
 スペインの防衛戦は辛うじて守られたのだ。
 KVを降りた傭兵達と正規軍兵士が、能力者と一般人が歓声を上げて互いの肩を抱き、分け隔て無く勝利の歓喜にひたる。

 だが、スペイン・バグア軍もまだ完全に退いたわけではない。
 前線を数kmほど後退させたところで動きを止め、彼らは何かを待つかのように不気味な沈黙を続けていた。

<担当 : 対馬正治>



 疾駆する、舞う機影は無数に、空中には弾幕が連続し、競い合うかのように軌跡を描く。
 描く方向はバグア軍から能力者達へと。鳴り響く爆音は戦闘開始の合図であり、能力者へと差し向けられた迎撃だった。

 鼓膜に錯覚する超音波、息を乱す不快感。機械類は乱れ、濃度の高い怪音波に悲鳴を上げる。
 スペイン戦線上空、戦線に辿り着いた能力者達を、キューブワームの強力なジャミングが迎え出た。
 取り巻く敵数は然程多いわけではなく、しかし個体の強さはずば抜けている。

 戦況は現在スペインバグア軍の圧倒的有利。しかし、能力者達はこの戦況を覆すために来ている。
「……いくぞ!」
 接触した。ジャミングはヘルメットワームすら対応困難にさせるほど濃度が高い。
 【天衝本隊】、【天衝第二班】を含めれば総勢54名の大部隊が空を舞う。
 朱翼、白翼、蒼翼、玄翼の四神隊がキューブワームへ、威警、無影、援壁の三隊がヘルメットワームへと向かった。
 玄翼小隊長・龍零鳳(ga2816)がジャミングを中和し、神威、迦楼羅、紅天による援護の元、弾幕が舞う。
「四神隊、蒼翼……目指すは青龍!!」
 蒼翼小隊長、千道 月歌(ga4924)の叫びに唱和し、連続して鳴り響く爆音。その戦果を示すように、機械類の動作が少しずつ回復する。
 それに負けじと、【八咫烏】が追い討ちを放った。
「箱は我々の獲物です。一機残らず落としますよ! 全機突入!」
 隊長叢雲(ga2494)の先導の中、鏃型を描く陣形で近距離戦を挑む。強くなる機械類の悲鳴。当然か、減らしておいたとはいえ、接近すればそれだけ強くジャミングの影響を受ける事になるのだから。
 皇 樹(ga4599)の岩竜が施す僅かな援護の中、キューブワームを蹴散らすも、被弾が重なる。
「落ち着け…訓練通りに動くんだ、大丈夫」
 過剰稼動している心臓を抑え、紫藤 文(ga9763)は敵に牽制を放った。しかし限界か、木花咲耶(ga5139)、不知火真琴(ga7201)の機体には傷が次々と刻まれ、撤退へと追い込まれる。
 叢雲も離脱中に負傷し、遊撃に参加していた百瀬 香澄(ga4089)も強い一撃を受けて吹き飛ばされる。
「……さっきのは……」
 佐柄 麟(ga0872)が声を上げた、ヘルメットワームの攻撃に紛れる一際強い一撃。弾幕に紛れてよく確認出来なかったが、恐らくは―――。
「……来たか」
 【OMG】&【IA】のUNKNOWN(ga4276)がぽつりと漏らす。その言葉に呼応し、[CtR]が動き出した。
 ディスプレイの一角に赤外線カメラを起動する、緩やかな動作のそれはまどろっこしく、しかし敵を捉える確実な手段の一つ。
 ―――見つけないと。はやる心を抑え、【IMP】所属の夕凪 春花(ga3152)が声を上げる。
「……いました! ファームライド……!」

「あ、なんか気付かれちゃった」「気付かれちゃったね」
 クス、と回線に二重唱が響く。無邪気な声はやけにはっきりと響き、瞬間、機影がカメラの視界外へと逃れた。
 ツァディ・クラモト(ga6649)、周防 誠(ga7131)がそれを追う、【天糸】を通じ、ファームライドの情報が傍受している全機へと転送される。
 秒単位で送られる情報を前に、裏づけを取る余裕はなく、偵察班の報告を信用するしかない。否、信用する以外の選択肢がどこにある?
「BBW成功させる。全ては笑顔の明日の為に、皆に聖闇の加護を。行くぞ!!」
 傭兵達が動く、漸 王零(ga2930)が叫び、連携作戦〔BBW〕が発動した。最新情報が入ると同時に、天衝本隊を中心に放たれる大量の弾幕、その数、勢いは最早幕というよりは網に近い。
「三度目の正直ッ!狙うは“点”じゃなく“面”…行くぜッッ!!」
 ノビル・ラグ(ga3704)がそう叫んだ。網といっても何重も張り巡らせた包囲網だ、退路を断つもの、ペイント弾を混ぜ合わせたもの、無秩序に放たれたもの。  【アングラー】がBBW参加機後方に煙幕を放ち、上空に陣取って奇襲へと備える。
 広範囲に渡るそれがバグア軍へと降り注ぎ、
「……あら」
 二重唱とは違う、艶を孕んだ声が回線に漏れた、爆音が連続し、着弾の煙がバグア軍を覆う。
 捕らえたか。油断なく対峙する傭兵達はまっすぐに視線を離さない。
 煙が晴れ、ページをめくるように、光学迷彩が剥がれた。露出する赤の機影、その数四体。ペイント弾に色づけされた機体はもはや隠れる事無く、しかし傷も負わぬ姿でその姿を晒しだす。
「……機体が汚れました」
 四つ目の声、淡々とした女声は不愉快だと言わんばかりに低く、静かに殺意を孕んでいる。言葉は瞬間だけ、瞬時に戦場は動き始めた。
 ファームライドを討とうと、【スカーレット】【渡鴉】が動く、
「ファームライド――いつぞやの借りは返させて貰うぞ、仲間と共にな…!」
 御影・朔夜(ga0240)が叫び、その声には意外と返答があった。
「……ああ、貴方ですか。……この前は実に残念です、貴方の機体、ぜひコレクションに加えたかったのですが」
 返答したのは四つ目の声、声は朔夜へと向けられている。声には聞き覚えがない、だがこの言動、……サラゴサにいた奴か。声は本人の意志など関係ないと言わんばかりに、言葉を続いて紡ぐ。
「鹵獲した暁には、撃墜され醜く歪んだ姿のまま庭に飾ってあげますね」
「ふざけるな……!」
「いえ、大真面目です。今日こそ置いていって頂きたく――処女宮<ウィルゴー>、参ります」
 ウィルゴーが駆るファームライドが向かってくる、イリアス・ニーベルング(ga6358)、伊流奈(ga3880)、崎森 玲於奈(ga2010)を含む四人が当然のようにそれを迎え撃った。
 キューブワームの撃墜数は既に十分、無論全滅させてなどいないが、それは他の部隊に任せても大丈夫だろう。
 他のファームライドにも、弾幕が群がる。BBW第二波が襲い掛かり、なりを潜めていた天衝三部隊【神威】【迦楼羅】【紅天】がその回避軌道へと突撃する。
「今度はみんなの力合わせて…K1わかな型ミサイル全発射プラスわかなロケット!」
「天衝全軍、一斉に牙向き穿て!! 紅喰天槍いっけー!」
 水理 和奏(ga1500)、葵 宙華(ga4067)の叫ぶ声。前には高密度の弾幕、横は後続の射線上。外す筈がない、そう、並の機体が相手ならば。
「仕方ありませんわねぇ……」
 艶のある声がもう一度響き、相手が微笑したような気がした。そして、赤い機体が消える。
「え……!?」
 違う、それは消えたように見えただけ。突然速度の上がった相手に視覚が着いてゆけず、一瞬見失う。
 出鱈目な速度を出し始めた機体が紅光を帯びる、追いすがる牽制を次々とかわし、誘導されたルートにいるにも関わらず、本命の攻撃をかいくぐって回避。赤い尾光を描きながら、能力者達に肉薄する。
「早い……!」
 ヘルメットから漏れるパイロットの黒髪が操縦室で靡いた。牽制の銃弾が放たれる、機体は回避しない、捉える、しかし装甲を貫通出来ない。
 叫ぶロックオンアラート、弾幕が宙華へ差し向けられた。連続して響く着弾の爆音、傾く宙華の機体。
「敵機、速度上昇中、恐らくは攻撃力、防御力も……!」
 偵察班【天神】小隊長、桜神羅 乃衣(ga0328)が回線に向けて叫ぶ。機体固有の能力なのか、それとも本気を出し始めたのかは判らない。現状判ってることだけを端的に報告する。
 ファームライドの攻勢は止まらず、Zakkiel(ga9470)が食われた。棗・健太郎(ga1086)、暁・N・リトヴァク(ga6931)が負傷し、山本千夕(ga4919)が吹き飛ばされる。
「あ……っ!」
 危険承知で囮になろうとしたミンティア・タブレット(ga6672)が被弾し、撃墜。畳み掛けられるように葵 コハル(ga3897)が更に負傷し、【ヘルム】隊に守られて次々と戦場を離脱する。

「う、うわぁ……」
 後方部隊、次々と送られてくる負傷者に、言瀬 一文(ga6253)が思わず声を上げた。
 次々と上がる報告と要請、負傷者に次ぐ負傷者、オーバーワークなのは一目瞭然で、物資こそ手厚い護衛と輸送で十分だが、使う人間の方はそうでもない模様。
「手が足りないなんて…モンじゃない気が…」
 古都 洋恵(ga7634)が漏らす。足りないというべきか、状況自体が無茶苦茶とでもいうべきか。それこそ猫の手も借りていいだろう、役に立つのなら。
 前線の状況は小耳に挟めるが、それを気にする余裕は後方にない、分厚い護衛体制が幸いしたか、死者は出ていない事さえ判れば十分とも言えた。
「全力で全開で行くぞ!! …と、気合入れる必要はないか」
 二階堂 審(ga2237)率いる【旅風】は部隊がかりで機体の整備に当たっている。此方は此方で手の空いた覚えがない、修復がなくても補給があるのだ、物資の搬送・振り分けなどやる事は幾らでもある。出し惜しみなしで使っているせいか、その消耗具合は速い。
 使われた傍からInnocence(ga8305)がスタンバイ済みの物資を補給し、回転速度を落とさないようにと走り回る。
 外はまだ寒い気候にあるにも関わらず、整備テント内は熱い。排熱された空気にあぶられ、整備員達の額に汗が浮かぶ。

 味方撃墜数は20を余裕で超えている。対してファームライドの撃墜数はゼロ。
 キューブワームやヘルメットワームはかなりの数を落とせてはいる、ジャミングは当初ほど強くなっている訳ではなく、ややきついかな、といったレベル。
 しかし、それで尚ファームライドは捕らえられない。
 光学迷彩が効かなくなった分、まだまともな戦いにはなる。攻撃も完全に当たらない訳ではないし、別段傷を付けられない訳でもない。しかし、浅すぎる。
 キューブワームにはジャミング増幅以外にも、バリアーを強化するという能力も持つ。後方に陣取るそれらは決して前に出る事はなく、傭兵達の射程外でバリアーの強化に専念している。
 ――……厄介な。
 進撃を食い止める事が出来ているだけまだマシなのだろう、しかし、長く持つとは思えない。
 しかし、当然神は傭兵達に味方する訳で―――。

「……ジェノヴァ方向より新勢力出現! あの紋章は……カプロイア社です!」

 突如、【天糸】を通じて響く報告に全員の動きが一瞬止まった。
 流れる微妙な空気、すぐに再開される戦場の轟音。どう反応すべきか、そんな空気が一瞬回線に流れる。

「それと……ドローム社、向かってくる機体は見たことがありません、率いるのは准将です!!」

 神様は見捨てていなかった。
 まだ頑張れる、そんな力が傭兵達に沸いてくる。
「攻めに出なければ負けが続く。然し勇気と無謀を履き違える気は無い……!」
 押し返すように南雲 莞爾(ga4272)が攻勢に出た。小隊の面子はかなり減っている、小隊長である王 憐華(ga4039)も負傷し、風(ga4739)の援護の元、一旦戦線を離脱したばかりだ。
「赤い機体は俺だけでいいんだよ!」
 そんな事を叫び、【スカーレット】の霧島 亜夜(ga3511)がG放電装置による襲撃を仕掛けた。

 瞬間、ファームライドが大きく回避行動を取った。
 先ほどまでファームライドがいた場所を、急降下した機体が掠めていく。その加速形式は、
「ソードウィング、それにツインブースト……カプロイア伯爵!」
 機体は下方で旋回し、ファームライドもまた上空で旋回する、そのファームライドを狙い、連続して光の奔流が襲い掛かった。
 その攻撃はカプロイア社によるものではない、無論、傭兵達も誰一人として動いてはいなかった。奔流が収まった後、目の前に現れるその『新機体』。
「PM−J8、通称<アンジェリカ>。まだ生産ラインに乗ったばかりの、ドローム社の力作だぞ……!」
 准将率いる援軍だった。
 ファームライドが機体を立て直す。装甲に傷らしいものは見当たらなく、直撃は避けられたらしい。ただ掠ったと思われる場所には薄く煙が立ち、装甲が熱を持っている事を示している。
 加熱した装甲板、掠っただけで目に見えるほど熱を持つなら、直撃したらどうなるか。
 すぅ……と、ファームライドのパイロットの間に、冷たい空気が流れた。
「嫌な奴だ」「嫌な奴だね」
 双子宮<ジェミニ>の二重唱が響く。
「良いとこ取りとは感心しませんわね。……はしたなくってよ?」
 艶を持つ声も響いた。ファームライドが動き出し、傭兵達もこの機を失うまいと戦闘を再開する。
 ファームライドが再び赤光を宿した、アンジェリカを狙い、弾幕の雨が降り注ぐ。ついでのように狙われ、邪魔だと吹き飛ばされる伯爵のK−111。同じツインブーストを搭載しているとはいえ、基本能力が違いすぎた。
 アンジェリカも辛い、攻撃性能こそ見た目の通りだが、防御面でずば抜けてるとは言い難く、被弾が重なる。
「させるか……っ!」
 【ヘルム】が援護に入った、南部 祐希(ga4390)の機体から煙幕が吹き上がり、アンジェリカとK−111を覆い隠す。
 強引に割り込んだため、何発か弾幕があたるが気にしない。そのまま煙幕に紛れ、自分達も後退していく。
「このまま撃っちゃおうか」「誰に当たるかな」
 さらっと、無邪気に発言が零れ出た。
 脅しでも冗談でもない、言った瞬間に双子の機影から弾幕が放たれる、煙幕に突っ込んでいく。爆音、対象こそランダムだが、高性能レーダーに任せて打ち出した弾幕は外す事を知らない。
 体に走る痛覚で、稲葉 徹二(ga0163)、ジーン・SB(ga8197)の二名は自分が被弾した事を知った。アンジェリカは……無事か。そのまま後方へと向かう、一旦下がらないと拙い。

「……時間切れです」
 突如、戯れていたウィルゴーが機体を引いた。
 【渡鴉】の面々に被撃墜者はいない。突っ込んできた醐醍 与一(ga2916)が落とされたりなど、負傷者はかなりの数出ているのだが、彼ら自体は軽傷だった。つくづく邪魔な人たちです、そうウィルゴーが首をすくめる。
 機体の赤光は途絶えている、それを好機だと受け取ったのか、突っ込んできた亜夜が返り討ちに遭い、共にいたエレナ・クルック(ga4247)も負傷し、大きく距離をとられる。
「……仕方ないですわね。ごきげんよう、またどこかで会いましょう」
 金牛宮<アリエス>、ジェミニも機体を引いた。追う人間はいない、今回の目的はファームライドの撃墜ではなく、進軍の迎撃。消耗が高い事もあるが、深追いを志す部隊はいなかった。

 ファームライドが引いた、その隙を狙い、【0’s】が真っ先に、続いて【ヘイムダル】【IMP】が打って出る。
 地上との連携は【月読】【天糸】を通じて行われており、【ヘイムダル】護衛隊に守られ、爆撃隊が陸上戦場上空に向かう。
 彼らの任務は航空からの【陸上補助】、要するに【空爆】の事だ。大量の危険物<フレア弾>を積んだ機影が空を舞い、まだかまだかと指示を待つ。
 【IMP】が口ずさむ歌が回線に響いた、希望を謳う歌が。爆撃隊の出撃と同時に、地上部隊が退避していく。
「【月読】からの情報を確認した。さて、お客さんにはそろそろお帰り願おうか」
 いけ、と。回線に耳を傾けていた嶋田 啓吾(ga4282)が指示を出した。
 広範囲爆撃が始まる、落下するタイムラグを待ち、地上に咲く緋色の花火。火の絨毯、いや花壇と呼ぶべきか。煙に遮られて具体的な戦果は見えない、しかし爆撃隊はそれを気にする事無く、【月読】の情報に従って爆撃を重ねていく。投下しきったら、帰還して補給して次へと。
 火と爆音が地上を舐め、破壊を繰り返し、やがてそれは爆撃要請がなくなった頃に停止する。

「バグア軍が引いていきます……!」

 見れば、爆撃地からバグア陸上軍は引いていた、同時に航空部隊もそれに合わせて戦線から離脱している。
 後退したのは極僅か、互いを視界内に収めながら、しかし両方共に仕掛けない。
 エンジン音が空に響く、各自聞こえるのは回線のノイズと、やけに重く響く自らの呼吸だけ。

 とりあえず、進撃は阻止した。しかしその沈黙は未だに機を伺っているかのように見え、決して油断出来るものでは有り得なかった――。
 (担当 : 音無 奏)

【忍び寄る悪夢】

 合流阻止に赴いた能力者が見たものは、3島に配備されたものとは、比べ物にならないほど大量の、ワームとキメラ、そしてキューブワームの連合軍だった。
「やる相手には事かかねぇなぁ。死なないように、囲まれんなよ!」
 そう言って、空中を浮遊するキメラへと挑みかかるジャクソン・ウェストフ(ga7009)。ホーミングミサイルの射程ぎりぎりから狙い撃つが、HWは他の部隊にお任せだ。
「苦戦必至か‥‥。主力じゃないんだよな、これ」
 その他の部隊に所属していないメディオ(ga9460)が、そう呟きながら、同じ様に狙撃へと移る。ただし、狙うのはキメラではなくワームだ。見れば、御山・詠二(ga8221)と葛城・観琴(ga8227)が、お互いを庇いながらも、盛大に黒煙を撒き散らしている。結城加依理(ga9556)と結城玖沙久(ga9646)も同様だ。
「やれやれ。逃げるのは得意なんだけどな」
 真神(ga9780)が面倒そうにそう言って、敵をひきつける為の囮になった。本当は、余り敵のいないところに行きたかったのだが、どうやらそうもいかないようだ。
「出来るだけ撃ち落とさねばならんか‥‥。根気比べになるな」
 長期戦になりそうな予感を感じながらも、ヴィラスト・シャウゼン(ga8210)はトリガーを引く。援軍が到着するまで、撃墜数を稼いでおきたかったが、減少する装甲値を見ると、そこまで機体が持つかどうか怪しかった。
「ここは一機も通さないよっ!」
 やる気の減少している面々とは対照的に、十六夜 紅葉(ga2963)が気炎を上げるかのようにそう言って、スナイパーライフルを乱射する。うっとおしがって近づいてきたワームには、ミサイルポッドで弾幕をはりながら、島とは逆側に距離をる彼女。
「故郷を失うのはもういや‥‥」
 それは、∞リディ∞(ga9532)も同じ様だ。過去、自分の故郷を失った事があるためか、島の方向へ行かせまいと必死である。しかし、その無謀なチャレンジは、彼女の怪我を持って結果を示していた。
「ソロ機は、出来るだけ小隊と合流してくれ! ドラグーン1より各機、やつらにここを抜けさせるな!」
 380戦術戦闘飛行隊の伊藤 毅(ga2610)が、バラバラに動く個人機へ、そう呼びかけている。何機か合流する動きを見せる中、元々の隊員達に指示を下す彼。
「ソロ各機へ。こちらGiftradio、Program[Gr1.1]起動します」
 攻撃を他の隊員達に任せた秋月 祐介(ga6378)が、自身のKVモニターにヘクスマップ式の地図を浮かび上がらせる。が、レーダーの聞かない状況では、その地図に映るのは味方機ばかりだ。それでも、ユーニー・カニンガム(ga6243)所属の【護龍】、指示に従い、一緒にくっついてきていた藤森 ミナ(ga0193)等が、それを利用してワームへと攻撃している。
「怪我をした人は、順次こちらへ!」
 そうして、前衛に立ったものの中には、怪我をして戻ってくるものもいる。緊張の為か、飴をころころ口の中で転がしながら、負傷者や避難民を誘導する乾 智世(ga1739)。
「おし、終了ッ。次! じゃんじゃん持ってこいや!」
 誘導先の一つ、扇揚(ga8552)の設置した救急キャンプの中では、手当たり次第に治療を施す刃金 仁(ga3052)がいた。その武器は錬成治療と手元の救急キットだ。
「ナイチンゲールには程遠いけどねぇ。まっ、母艦に居るときくらいはリラックスしなよっ」
 一通りの手当てを終え、整備待ちをしている傭兵達に、桜井 唯子(ga8759)が笑顔を振りまいていた。持ち前の姉御肌と明るさで気さくに振る舞っているその姿は、傭兵たちの心のケアを勤めているようだ。
「必ず生きて帰って来いよ‥‥」
 治療を手伝っていた虎牙 こうき(ga8763)、飛び去って行くKV達に、そう言い送っている。不利な状況は相変わらずだったが、傭兵達の士気は、中々低下しなかった。
 だが、海のほうでは、そうも行かない。物量に物を言わせて進軍してくるバグア軍。それを出迎える形となった海上・水中部隊が見たのは、次々と撃沈されて行くUPC欧州軍の空母だった。
「この暗い深海で死ぬ気はないからね!」
 ソフィア・アナスタシア(ga5544)が、ぎりっと唇をかみ締めながら、その空母を沈めたワームに撃ちこんで行く。
「深追いは禁物。無理すんなってんだろ!」
「わかってるわよ! 皆、手伝って!」
 救援に駆けつけ、庇って怪我をしているたセミ・バストルナーク(ga8690)に怒鳴り返した彼女、周囲にいる水中機に呼びかける。反応したのは、綾嶺・桜(ga3143)、響 愛華(ga4681)、イスク・メーベルナッハ(ga4826)の所属するチームS.G。櫻が前衛に立ち二機への攻撃をなるべく受け止め、その間に_他の2体が攻撃している。イスクが、敵を確認次第魚雷を撃ち、以後ガウスガンで射撃していたが、当てる事よりも、仲間の攻撃が当たり易くなるよう追い込む事を重視した為、仲良く救急キャンプ送りだ。
「各水中部隊へ。連携して撃破してください。敵部隊を削り取る感じで!」
 【テンタコルス海兵隊】の美海(ga7630)が、僚機と共に攻撃しながらm【海坊主】と【アナイティス】の各機にそう指示している。
「このヤロウ! 落ちろってんだよ! 串焼きにするぜ!」
 そのアナイティスの一員である虎・紅海(ga8980)がトライデントを振り回している。その隙間を埋めるようにして、水鏡・シメイ(ga0523)が、魚雷を発射したが、バグア軍とて黙っているわけではない。メガロワームが大口を開け、漁師を餌食にせんと、虎へ迫る。
「危ないっ」
 人型へと変形したシメイが割って入った。KVがメリメリと音を立て、耐久力を落として行く。それは、すぐには修理出来ないほどのレベルだ。しかし、仲間の命を重んじた彼、その場を引かずに食いとめ続ける。
 と、その時だった。
「ふんぐるい・むぐるうなふ・げそ・ふたぐん!」
 謎の掛け声を上げて、人型になったKVが割り込む。声から察するに這い寄る秩序(ga4737)のようだ。
「大丈夫? シメイさん」
「わ、私は。けど、機体がボロボロです」
 苦笑しながらも、そう答えるシメイ。と、生存を確かめたミヅキ・ミナセ(ga8502)は、仲間の援護を受けながら人型へと変形した。
「ゲッソーの力を魅せて、あげるッ♪ ゲッソォォーー!レェェーーーザァアァーークロォーーッ!!」
 高分子レーザークローが、メガロワームに直撃し、引っかくようにその後部にあった物資コンテナらしき物を叩き落としていた。落ちたそれを、まるで投げられたボールを拾いに行くかのように、何故か犬耳ナース服姿のわんこ(ga5343)が回収して行く。
「怪我人はこっちへ! 麻酔、いけますか?」
「大丈夫です」
 その物資を救急キャンプへ運び込み、痛み止めを打つシルヴィア・グリューン(ga8454)。もっと酷い怪我の傭兵には、大曽根・ミヅホ(ga8831)が麻酔を打って対処だ。
「補給部隊を襲うってのは、セオリーだけどねっ」
「こまき様には、触らせませんよ!」
 その救急キャンプの盾になっているのは、築田ひかる(ga8208)とビフレスト(ga8247)。こうして、彼らの所属する最古&斧小隊が、後方支援に徹している間、傭兵達の間に、UPCから悲鳴じみた防衛ライン構築の命が届く。
「防衛って言ったって、右も左も敵ばっかりじゃない‥‥!」
 シャスール・ド・リス小隊の麓みゆり(ga2049)が、左右に広がるワーム達を見て、そう呟く。敵の流れを気にしているが、その出所はイタリアとアフリカ、両方面から、次々と流れ込んでいた。
「弾幕薄いぞ! 長距離バルカン掃射! 煙幕切らすなよ!」
 事実上挟撃される事となった合流地点で、同じチームのダイゴ・イザナミ(ga9016)が、カモフラージュを行っている。クラーク・エアハルト(ga4961)が、相変わらず単独で作戦行動している面々に呼びかけ、そんな彼らをカバーするように、須佐 武流(ga1461)、リュス・リクス・リニク(ga6209)、Cerberus(ga8178)の3人が、自身が傷を負うのを厭わず、弾をばら撒いている。
 と、その時だった。
「‥‥!」
 冬月 雪那(ga8623)が、何かに気付いたように、顔を上げる。自身の搭載力を生かして、物資の搬入を行っていた彼女が、足元から響く振動に気付いたようだ。直後、UPCからの警告が鳴り響く。
「気をつけて! アースシェイカーが来ます!」
 そのサイレンを纏うように表れるのは、巨大な‥‥新型ワーム。キューブ達が歓声をあげるかのように、盛大に妨害電波を発生させた。
「越えさせるか! <Quena>より全機へ。前線へ必ず送り届けよう─俺たちが勝利の鍵だ」
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)が、その妨害電波をキャンセルするべく、チーム・カルヴァリオを率いて、岩龍を囲い込む。
「兎々、しっかり捕まってろよ。ジェットコースターよりきっついからな!」
 チームメイトの雑賀 幸輔(ga6073)が、補助席に乗せた兎々(ga7859)にそう言った。当の本人は「はーい」と、心なしか楽しそうに、シートへとしがみつく。だが、回避行動をしたにも関わらず、前衛の3人は、思いっきり被弾してしまった。僚機の盾になったと言うのも、その理由だろう。
「戦力が追いつかない‥‥!」
 防衛ラインを敷くよう指示は出ているが、被害が増大して、それどころじゃない。
「TEAM:UVA、全機いきますよ〜っ♪」
 それでも、隊長機を勤めるシエラ・フルフレンド(ga5622)は、明るさを失わなかった。1番機として、7番機までの隊員達を引き連れ、積極的に切り込んで行く。頭数を減らせば、何とかラインを確保できるとばかりに。
「急速に接近する物体があります! 気をつけて」
 プルナ(ga8961)が注意を促す。直後、その側面からブラッドレッドの機体が現れ、彼を吹き飛ばしていた。
「ブルナ! く! 現れたか!」
 続く一撃から、彼の機体を守ろうと、盾になる雷(ga7298)。おかげで、機体は大破したものの、重傷は免れたようだ。
「現れたわね。レッドデビル! 燕中隊、嵐燕作戦発動!敵増援部隊を裁断する!!」
「おっしゃ!一発派手にぶちかますで!」
 その真紅の姿に、藤田あやこ(ga0204)が、自身が率いる燕・スワロウトレイルの面々に、そう指示を下した。チームメイトであり前衛の三島玲奈(ga3848)が答え、試作型リニア砲をチャージしながら切り込んで行く。
 だが。
『温いよ。お姉さん☆』
 聞こえたのは少年の声。中央で砲台代わりを勤めていたレナに、肉薄する。
「危ない!」
『大人は嫌いだよ』
 庇ったあやこごと、機体を大破させる赤き悪魔。
「アレを抑えれば、俄然有利になります! 頑張りましょう!」
「おし、いっちょやってみるだか!」
 ブルーレパード隊の霞澄 セラフィエル(ga0495)と内藤新(ga3460)が、果敢に挑戦するものの、その動きに翻弄され、重傷の憂き目に合っていた。
「一体何体いるんですか、これは‥‥」
 そのレッドデビルの障害を、少しでも減らそうと、後ろからスナイパーライフルで、キューブワームを狙っていた真壁健二(ga1786)にも戦慄が走る。見れば、キューブワームを相手にしていた面々の中にも、被弾した者達が多く、特務部隊:零小隊、404隊、8246小隊、それと連動していたFM−Revにも、多数の重傷者が出ていた。
「気をつけな!そこらにいる敵に喰われるぞ!」
 それでも、ゼラス(ga2924)は、自身の率いる放課後クラブ隊のメンバー、空間 明衣(ga0220)、ファティマ・クリストフ(ga1276)共に、空から挑みかかっていた。メンバーの柚井 ソラ(ga0187)がペイント弾を混ぜ、そんな彼らの無事を願い、石動 小夜子(ga0121)が、神様にお願いしながら援護する。
『麗しき友情って奴? 分断してやるよ!』
「こんな所じゃ終わらねぇ! テメェらの喉笛裂き飛ばすまではな!」
 味方の援護を受け、ゼラスがミサイルをお見舞いする。強化したホーミングミサイルを、片手で止めるレッドデビル。跳ね返されて、ゼラスの機体に、規定値を越える損傷が出来た。
「ゼラスさんっ!」
「心配すんなっ! 死にゃしねぇ!」
 ファティマが悲鳴じみた叫びを上げる。既に戦死者も出ているこの戦いで、大切な隊長を失うわけには行かなかった。
「何とか止めないと。アクアリウム、いくよ!」
 既に、いくつかは突破を許している。その突破を、これ以上進ませないよう、アクアリウムを率いる鯨井昼寝(ga0488)は、文字通り水属性の機体で、いつものようにY字陣形を取る。ただし、水中から。
「OK、ここから先は、私達の仕事。狙うは敵主力!」
 答えたアグレアーブル(ga0095)が、じゃきりとガウスガンを発射する。
『伏兵か! ちょっと、亀ちゃん、仕事してよね』
 それはちょうど、ファームライドの足元を狙うような形だった。だが、その足止めをになうはずだったメガロワーム達は、ゴールドラッシュ(ga3170)と鏑木 硯(ga0280)に止められている。まるで、水の抵抗にも似た動きで、中央へと追いやられた彼らを、中央左前のジュエル・ヴァレンタイン(ga1634)が弾き飛ばし、遠石 一千風(ga3970)が人型へと変形して、トドメを刺していた。
「さぁっ! 次はどいつだいっ!」
「落ち着け。相手はまだこっちに仕掛けてもいないぞ」
 好戦的な妹に、兄の鯨井起太(ga0984)が諭した。既にエメラルド・イーグル(ga8650)が、誘導ミサイルで切り崩しに入っているが、ファームライドには余り当たっていない。
「んな事言ったって、赤いのはやる気満々だよ!」
『やれやれ。そんなに相手して欲しいなら、なってやるよ!』
 昼寝がそう言うや否や、ファームライドがブーストを吹き上げた。一瞬、視界から隠れたその赤い機体が、彼女の直前へと現れる。
「海神の槍は三叉槍って相場が決まっているのよね。坊や!」
 ヴぃいぃぃんっと、高分子レーザークローで受け止めながら、そう言い返す昼寝。左右のモーターが悲鳴を上げる。ぎりぎりと押さえ込まれる彼女。
 が。
『ナメんな、バカ』
 冷たい、声。
「きゃあっ!」
「昼寝っ!」
「隊長!」
 直後、盛大に弾き飛ばされる昼寝。続く攻撃を防ぐ起太と、庇うを発動するジュエル。ぶち当たるエネルギーとエネルギーのあおりを食らって、盛大な水柱が上がる。
 一進一退の長期戦と化した戦場に、変化が訪れたのは、その直後だった。
『シシリー島バグア司令部、イタリアへ逃走。奪還成功です』
 覚醒し、無機質な電子音声状態となったミクの報告が届く。相手のファームライドにも同じ報告が届いたのだろう。それまでの攻勢を止め、上空へと引き上げる。それは、アフリカバグア軍の猛攻を何とか受け止め、イタリアへの援軍を防いだ証だった。
 だが。
『高速で移動する物体が!』
 エメラルドが周囲に報告している。レッドデビルがスピードを上げ、戦場を離脱しようとした直後、そう言いたげに、バグア軍の中から、ある機体が、現れたのだ。
『何をやっている。遊ぶのは後回しだと言っただろう』
 そう。それは、傭兵達にとって忘れるはずのない、あの黒い機体だった‥‥!

<執筆 : 姫野里美>



 UPC軍は、前回の戦いで、シシリー島北部に拠点を作成していた。決して、劣勢では無い。その勢いのまま、南部バグア軍拠点を落とし、シシリー島制圧の為に進軍する。
 能力者達のKVの部隊が、UPC軍と共に動き出す様は圧巻であった。陸戦部隊の人型と、空から一気に霍乱し、攻撃に移る空戦部隊が、それぞれの軌跡を描き、空に、陸に、海にと散らばって行く。
 若葉の名を冠する、大部隊へ、篠森 あすか(ga0126)の声が響く。
『島は‥‥返してもらう! 皆、行くよっ!!』
『ネックレスの鎖、きちんと繋がなければな。さぁ水晶退治だ。行くぞ!』
 白鐘剣一郎(ga0184)率いるペガサス分隊は、楔形陣形を作りつつ、空を駆け抜ける。ヘルメットワームの数は多いが、それを護衛する、忌々しいキューブワームの姿は少ない。前回の戦いから日が無い。増援も間に合わないといった所か。
 敵機の動きに変化は無さそうだと、朧 幸乃(ga3078)は楔形を牽引するかのように飛ぶ分隊長の左から、油断無くバグア軍を睥睨する。
 同じく、剣一郎の右僅かに後方からは、斑鳩・八雲(ga8672)が、飛ぶ。
『さて、刈り残したものは責任を持って‥‥刈らせて頂きましょう!』
「今度は前回のようには行きませんよ」
 その楔形後方で、クレア・フィルネロス(ga1769)が呟く。それは、この作戦参加の仲間達全ての思う事に違いない。
 岩龍を操るみづほ(ga6115)が、回線をオープンにする。
『こちらペガサス分隊。敵戦力を発見。交戦に入ります』
 ミサイルが‥。あちこちの部隊から、バグア軍に襲い掛かるのと同じように、バグア軍からも、赤や紫の光線が、一斉に発射された。
 戦いが始まる。
 空戦部隊Simoonの部隊が、シシリー島南部へと流れるように、空を飛ぶ。
『Simoon01より、各機へ‥‥真珠の、最後の一粒‥‥確実に、拾うよ‥‥』
 ラシード・アル・ラハル(ga6190)が、如月(ga4636)、鞠絵・エイデル(ga8236)の頷きを聞く。4班に分かれた小隊は、それぞれが、それぞれの役割を過不足無く果たし、危なげの無い戦いを続けていた。
『スペインで戦う友のため、この地を奪回するとしましょう』
 Simoon04フリューゲル(ga6829)は、気合の入ったB班リーダー、ジェサイア・リュイス(ga6150)とノエル・イル・風花(ga6259)と共に、戦火の煙が上がる空を飛ぶ。
 フォル=アヴィン(ga6258)は、信頼という言葉だけでは足らない仲間達に声をかける。
『ここから先は通さない! 各機、全部堕とす気で行きますよ!』
 縦横無尽に慣性を無視して飛ぶヘルメットワームだが、何組も連携して挑まれれば、その動きも封じられる。 『零れ落ちる真珠を繋げる最後のチャンス‥‥逃しませんわ』
 絢文 桜子(ga6137)が、鳳 つばき(ga7830)が、共に油断無くフォルの後をついて飛ぶ。彼等が自在に飛び、攻撃をする中核を成すのは岩龍を据えたE班の存在だ。
 仲間には指一本触れさせない。そんな思いを乗せて、Simoon08E班リーダー真神 夏葵(ga7063)とプリエッタ(ga8306)は空を飛ぶ。二人に護られ、パティ・グラハム(ga7167)は、近隣の情報を収集し。
『蕾網‥‥各小隊‥‥Link‥‥OK!』
 若葉を掲げる、仲間達は数が多い。その中でも若葉隊【蕾】は、戦線の情報を一手に引き受け、各小隊へと、集まった情報を再び流す。
 佐倉夜宵(ga6646)が、その回線をオープンにし、爆音轟く戦場で、決して孤立する事のないようにと、声を届ける。
『こちら【蕾】の岩龍〜。大丈夫、あなたはちゃんと私達と繋がってますよー』
 そんな、岩龍を護りながら、アキト=柿崎(ga7330)は呟く。
『今回も確実に。と行きたい所ですね〜』
『守り抜くよ』
 未来の為にもと、呉葉(ga5503)が頷く。
 若葉【壱】は、固まって、キメラの掃討へと向かう。初戦の者が多く、機体の扱いなどもおぼつかない。しかし、同じような仲間達が声をかけあい、歴戦の先輩が、その引き際や補給の目安を教え、はぐれる者の無いようにと、気を配れば、襲い来るキメラも怖くない。ディフェンダーで打ち払い、ミサイルの弾幕を作り、近距離で切迫すれば、バルカンで牽制をし、戦いつつ、若葉【蕾】の岩龍へ攻撃が向かわないようにと気を配る。
『気持ちから相手に飲まれちゃダメだって‥‥隊長や皆が言う通りだね』
『3島封鎖ライン、なんとしても完成させましょう!』
 柊 理(ga8731)が、ホーミングミサイルを撃ち放てば、岩龍を守る夕風悠(ga3948)の機体から3.2cm高分子レーザー砲が、放たれる。
 まずは、能力に見合った敵を攻撃かと、ロシアンルーレット(ga6529)は思う。小隊に属さない傭兵達も、着実に敵勢力を削いで行く。
 若葉【弐】も、【壱】と【蕾】との連携を重視する。
『今回は取りこぼしが無ければ良いのですが‥ね』
『はいはーい! 賃貸期限は切れましたんで、退去願いまーす! 延滞はナシ!』
 空戦部隊から、落とされる、ミサイルなどに炙りだされたゴーレムへと、飯島 修司(ga7951)の機槍「ロンゴミニアト」が、ゴーレムの装甲を引き裂く。ミア・エルミナール(ga0741)は、同部隊の岩龍を守りつつ攻撃をかける。
 小隊夜修羅は、空を飛び、前線へと突入する。
 山崎 健二(ga8182)はじめ、仲間達のミサイルが、制圧目標地点上空の敵に、次々に飛んで行く。
 A、B2班に分かれた小隊は、空を背にして、まずはA班が可変し、降下する。その降下を助けるために、B班は視界をクリアにする為、ミサイルの雨を降らせる。空に、地にあるバグア軍の隙をついて降り立った。
 イレーネ・V・ノイエ(ga4317)が、ぽつりと呟く。
『‥‥幸運を、な』
「出来る事を全力でやるだけどす」
 エレノア・ハーベスト(ga8856)のスナイパーライフルが、着実に遠くの敵を屠る。
 小隊Astraeaからも、弾薬の雨が降り注ぐ。
『蒼天も、人のノゾミも‥‥全てを取り戻してみせる、絶対に!!』
 地上支援をと、ナオミ・セルフィス(ga5325)は思う。Astraeaの援護を受けて、リンクスが機動遊撃へと、その機体を動かす。
 小隊『たそがれ』の軍勢が、当たるを幸い、その力を振るう。

 遊撃隊「雀蜂」が、チーム『G・L』を援護しながら、戦場を走り抜け。フルーツバスケットαとβは多くの仲間と共に、空と陸とを進軍する。自由なる疾風、ブラック・アサルトの面々が、綺麗な連携を決め、バグア軍へとその攻撃の手を緩めない。
 小隊【西研】ランドルフ・カーター(ga3888)は、手近なタートルにミサイルを全弾撃ち切った。
『地盤を固めだ。なあに、敵は向こうから来る!』
 仲間達のミサイルが、次々に、飛んで行く。
 ディアブロを前衛に押し出し、小隊T−ストーンは引く事を知らぬかのように赤い壁となり、バグア軍に襲いかかる。
 小隊Cadenzaは、タートルワームへと向かう。地を行く仲間達と、陣形を組む。正面中央には鋼 蒼志(ga0165)。巨大なタートルワームの背から放たれる攻撃をかいくぐりツインドリルを打ち込みに。
『Cadenzaの名に相応しく、終わりを告げる! いくぞ、Bicorn!』
『【リヒター】、突入。ドン亀退治を開始する』
 蒼志と呼吸を合わせ、黒江 開裡(ga8341)の3.2cm高分子レーザー砲が攻撃の隙を作り、風羽・シン(ga8190)も共に迫る。
『さてと、いい加減に不法滞在者には纏めて出て行ってもらおうか!』
『いいか! 何としてでも決めろ! それこそが我々の存在する意義だ!』
 中衛からはゼシュト・ユラファス(ga8555)、夜十字・信人(ga8235)、アズメリア・カンス(ga8233)の援護が飛ぶ。
 ここにも岩龍が、攻撃にさらされつつ、仲間達を守る。当然、岩龍は狙い撃ちにされるが、護衛として動く仲間達が居る。決してそのまま撃たれる事などない。
 きちんと役割を決めた小隊は、強かった。
 凶悪な敵はこの戦場には見当たらない。多くの能力者が警戒していた、地を揺るがし、地中から現れるというアースクエイクは、この戦場には姿を見せなかったのが幸いだった。
 小隊アイギスとWaBは、連携して、前線を駆け抜ける。
『助太刀します!』
 出来る限りの援護をと、ボイル(ga9062)は、身体を張って突っ込んでいく仲間達の背後から、フォローに回る。空にも、地にも防衛する仲間達の中には、やはり個人で岩龍を駆使して、戦線を有利に運ぼうと奮闘する者も居る。単機の岩龍は狙われやすいが、この上空はやはり単機で仲間達を守ろうと飛ぶ者が多く、小隊の多くが、単機を気にかけ、孤立を防ぐ。

 小隊雪風の雪村 風華(ga4900)は、攻撃の手を緩めず、海上を急襲する。
『あ〜あ、とっとと逃げちゃえば楽になったのに‥‥。地獄を見せちゃうよ?』
『今度はキッチリ制圧しやがる、です』
 青い海原に浮かび、水中からも防戦をするバグア軍をシーヴ・フェルセン(ga5638)は淡々とした表情で睨む。 『対CWのトマト投げ祭、楽しそうですねぇ‥‥。負けずに大漁旗掲げましょう!』
 古河 甚五郎(ga6412)がミサイルとレーザー光線が飛び交い、爆炎と煙があちこちで上がるシシリー島を確認すると、キメラへと向かう。
『母なる海に抱かれて消えな!』
 一箇所に留まる事無く、マートル・ヴァンテージ(ga3812)は攻撃を仕掛け続け、艦への攻撃を防ぐ。
 海上襲撃の小隊は、霞、【裏飯屋】、アングリフ海賊団、Erfolg、特務部隊:零小隊など。空母から打ち出される無数のミサイル、海中を渦巻く魚雷。決して、近寄らせはしないと、仲間達は動くが‥‥。
 榊兵衛(ga0388)率いる小隊榊分隊は、戦いに身を投じながら、アフリカバグア軍の増援を警戒していた。バグア軍の増援は、スペインからでも、イタリアからでも無く、アフリカ方面から押し寄せたのだった。
『何っ?!』
 叫んだのは誰だったか。
 アフリカからのバグア軍増援は、空戦部隊だけでは無かった。
 海中から静かに接近してきていたのは、水中型ゴーレム。水中防衛ラインが甘かったのかもしれない。それは、脇目もふらず、司令部を目指していた。海中戦を繰り広げていたUPC軍と傭兵達は、一気にその攻防が激しくなり、被害を受けた者も少なくなかった。
 司令部を守れ。
 制圧戦の最中である。撤退では無く、戦力をそこから割く。
 バグア陣営の司令部を落とすまであと僅か。戦いは、双方の司令部近辺で、混乱を辿りつつ繰り広げられた。
 このままでは、戦線の長期化もありうる。
 そんな嫌な空気が流れ始めた、その時。バグア軍が崩れた。イタリアへと敗走を始めたのだ。

 ───シシリー島制圧。

 3島の制圧はここに達成、イタリア包囲網作戦は完了した。
 司令部より、各員にPNの最終段階に突入する旨が伝えられたのであった。

<担当 : いずみ風花>


(監修 : 御神楽・みそか)


(以下、死亡・負傷者一覧)
●機体大破・重体(次回出撃不能)
 緋龍 レオナ:ga9037
 水鏡・シメイ(ga0523)
 フリスク(ga6626)
 九頭(ga6630)
 鬯魃鬯魃(ga6632)
 霧雨仙人(ga8696)
 斉藤 曜(ga6627)
 ゲス(ga6629)
 粕田さん(ga6631)
 弁慶(ga9829)
 ココノ(ga9144)
 パー(ga9146)
 ヒチ(ga9147)
 リク(ga9148)
 イツ(ga9150)
 キール(ga9699)
 たぬにゃー(ga9743)


●機体大破   (次回該当機体出撃不能)
 大垣 春奈(ga8566)
 月神陽子(ga5549)
 イグニス:ga6063
 古河 甚五郎:ga6412
 森里・氷雨:ga8490
 セン・カーン:ga6314:
 ゴエイ・カーン:ga6315:
 コウ・クウ・ボ・カーン:ga6316:
 センスイ・カーン:ga6317:
 E・ジス・カーン:ga6318:
 絶斗:ga9337:
 ブルース・ガロン:ga4749:
 J・御堂:ga8185
 鯨井昼寝(ga0488)
 ゼラス(ga2924)
 空間 明衣(ga0220)
 ファティマ・クリストフ(ga1276)
 プルナ(ga8961)
 雷(ga7298)  藤田あやこ(ga0204)
 三島玲奈(ga3848)
 霞澄 セラフィエル(ga0495)
 内藤新(ga3460)
 MIDNIGHT(ga0105)
 ライサ・フォッシュ(ga7179)
 キラ・ミルスキー(ga7275)
 ノーラ・シャンソン(ga7276)
 忍ロボ・KOEI(ga8310)
 真田・孤影(ga8311)
 天草・渉(ga0015)
 霧隠・孤影(ga0019)
 霧隠・孤影(ga4702)
 L45・ヴィネ(ga7285)
 L14・レライエ(ga9113)
 L3・ヴァサーゴ(ga7281)
 L70・セエレ(ga7284)
 L8・バルバトス(ga7424)
 朱雀院沙羅(ga5440)
 碓宮椿(ga4675)
 アリス・クレセント(ga5101)
 朱雀院麗羅(ga5444)
 和泉かえで(ga5445)
 香林さくら(ga0086)
 シリス・レモネード(ga0088)
 ロゼッタ・セレニア(ga4428)
 リーファ・クレオ(ga4430)
 エレン・クレセント(ga5227)
 月宮魅夜(ga5449)
 林白麗(ga8332)
 ユニシル・チェルン(ga8408)
 ミュゼ・ノルン(ga8638)
 天宮夏美(ga5529)
 甘井智代子(ga5533)
 マーニャ・シルキィ(ga8339)
 ミリアン・フェイルレス(ga5528)
 ミュー・ラムダ(ga8572)
 秘色・織(ga8241)
 近伊 蒔(ga3161)
 霧島 亜夜(ga3511)
 稲葉 徹二(ga0163)
 ジーン・SB(ga8197)
 Zakkiel(ga9470)
 葵 宙華(ga4067)
 ミンティア・タブレット(ga6672)


●重傷     (生命力・練力減少注意)
 聖・真琴(ga1622)
 MAKOTO(ga4693)
 ラガーナ・クロツ(ga8909)
 ライアン・スジル(ga0733)
 イカヤキング(ga6332)
 弓亜・優乃(ga0708)
 フィーロ(ga7235)
 リタゼリーナ・ブルー(ga0003)
 荒志波 霧人(ga0414)
 ネーヴェ(ga6502)
 エマ(ga8395)
 リオ・マクドール(ga9044)
 チョー(ga9236)
 竜王 まり絵:ga5231:
 御山・詠二(ga8221)
 葛城・観琴(ga8227)
 結城加依理(ga9556)
 結城玖沙久(ga9646)
 真神(ga9780)
 ヴィラスト・シャウゼン(ga8210)
 十六夜 紅葉(ga2963)
 ∞リディ∞(ga9532)
 伊藤 毅(ga2610)
 セミ・バストルナーク(ga8690)
 綾嶺・桜(ga3143)
 響 愛華(ga4681)
 イスク・メーベルナッハ(ga4826)
 這い寄る秩序(ga4737)
 ミヅキ・ミナセ(ga8502)
 ビフレスト(ga8247)
 築田ひかる(ga8208)
 須佐 武流(ga1461)
 リュス・リクス・リニク(ga6209)
 Cerberus(ga8178)
 雑賀 幸輔(ga6073)
 兎々(ga7859)
 篠崎 美影(ga2512)
 緑川 安則(ga0157)
 リチャード・ガーランド(ga1631)
 緑川 めぐみ(ga8223)
 植松・カルマ(ga8288)
 ツィレル・トネリカリフ(ga0217)
 ネヴァン(ga7635)
 ブレイズ・カーディナル(ga1851)
 岸・雪色(ga0318)
 柊神・祢玖呂(ga8237)
 ブラッディ・ハウンド(ga0089)
 大河・剣(ga5065)
 零・ネイン(ga8255)
 ルュニス(ga4722)
 ゴールドラッシュ(ga3170)
 鏑木 硯(ga0280)
 遠石 一千風(ga3970)
 ジュエル・ヴァレンタイン(ga1634)
 メシー・フローネル(ga7174)
 フローシァ・アベノチカ(ga7175)
 ミリセント・ウイレム(ga7177)
 ニナ・ライト(ga7178)
 エル11(ga6486)
 エル12(ga6488)
 河崎・丈治(ga8331)
 氷川・瑞希(ga8334)
 ルティア・ネレイド(ga8336)
 興津・宗一(ga8345)
 高嶋・梢(ga8346)
 篠崎 公司(ga2413)
 河崎・統治(ga0257)
 河崎丈治(ga6877)
 エレナ・クルック(ga4247)
 星野 空(ga3071)
 天龍・七瀬(ga8323)
 南部 祐希(ga4390)
 筍・佳織(ga8765)
 山本千夕(ga4919)
 棗・健太郎(ga1086)
 暁・N・リトヴァク(ga6931)
 天・明星(ga2984)
 緋室 神音(ga3576)
 王 憐華(ga4039)
 葵 コハル(ga3897)
 叢雲(ga2494)
 比良坂 和泉(ga6549)
 木花咲耶(ga5139)
 百瀬 香澄(ga4089)
 マスマー(ga6680)
 ヤヨイ・T・カーディル(ga8532)
 アイロン・ブラッドリィ(ga1067)




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