ヨーロッパ攻防戦
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5月9日の報告


 奇襲をしかけられた、敵海上勢力は、瞬く間にその数を減らし、一掃される。バグア側に防衛の隙を与えなかったのが大きい。
 小隊【瞬雷】がLM−015機の編隊を組み、進む。
「海はもう、貴方達だけのテリトリーではないのですよ」
 W−01を駆使する小隊アナイティス、水鏡・シメイ(ga0523)等が、ワームやキメラを追い込む。アナイティスと海中戦で連携を取るのはテンタコルス海兵隊、海坊主、ゲソレンジャーだ。小隊S.Gも3人だけの連携を組み、海中を自在に動き回る。
 テンタコルス海兵隊の美海(ga7630)が叫ぶ。
『野郎ども、コルシカの海からバグアどもをたたき出すのですよ』
 オーガン・ヴァーチュス(ga7495)は、攻撃をしかけつつ、迎撃される機体を引き上げて、安全地帯まで牽引する。海中での救助は、たとえコクピットが浮かぶとしても、被弾した機体に安心を与えてくれた。

 コルシカ島で人の代わりに陣取っているのはヘルメット・ワーム、タートル・ワーム、ワームのKVとも言えるゴーレム。そして、上空にはこのヨーロッパ戦で新たに出現したキューブ・ワームが、機器を狂わせ、搭乗者をも頭痛に落とし込む怪音波を出しつつワームを守る。
「お願いします」
 メアリー・エッセンバル(ga0194)は、UPC軍に、その戦力の増強を迫った。まずは、この足がかりの島、コルシカ島を落とさなくては、先が続かない。美しい島の首飾りをバグアから取り戻すのだ。
 一気に叩き込まなくては、そう思考を固める。
(「皆! ちょっと待っててね。今すぐ追いつくから」)
 彼女の部隊ガーデンは大きい。大きいだけでは無い。細かな役割分担が決められ、その戦いは疾風怒濤。連携を取る他の部隊も、腕に覚えのある者達が揃う。
 大部隊は、もうひとつある。若葉隊だ。
 若葉隊隊長、篠森 あすか(ga0126)が、集った仲間達へと、これから始まる戦いに向けて、声を届ける。
『若葉隊隊長より、【蕾】に接続する全機に通達。──無事に戻りなさい!』
 次々に空へと飛び出して行くナイトフォーゲル──KV。
 H−114岩龍により、ワームとの戦いは楽になった。その人類側の努力を哂うようにキューブはヘルメット・ワームの周りに浮いている。
 しかし。
『Romeoより各機へ。勝負時やで〜‥‥ガチコン言わしたろうやないの!』
 篠原 悠(ga1826)率いるRomeoは、単独で飛ぶ仲間達に声をかける。単機では、危険も大きい。良ければ、一緒に戦わないかと。やはり、UPC軍の増援をとも声を上げ。
 コルシカ島へ向かう能力者達とUPC軍の混戦部隊は、かつて無い数と勢いであった。
「我等ハヤブサ特攻隊!」
 フルブーストで前線に突っ込んだレイスニール(ga8234)は、全裸で何が悪い! と力強く言い放ちながらキューブを狙う。しかし、突出する機体は、敵の集中砲火の餌食になる。仲間達は救援に間に合わない。
 ガーデン空戦部隊アイリス分隊長セラ・インフィールド(ga1889)がにこりと笑う。狙うはヘルメット・ワーム。
「多少は無理もしないと、格好がつきませんよね」
「奏でましょう、勝利の調べ。Musaの名にかけて!」
 アイリスと交互に前衛に回るのはカトレア分隊。智久 百合歌(ga4980)。
「頼もしい分隊長と僚機、やりがいのある戦いだ」
 同隊のガイスト(ga7104)は、H−114岩龍に乗っていても、この仲間達の中では、迫る危険をあまり感じずに居た。真っ先に狙われる機体だが、みっちりと組みあがった連携の中で、その役割を十二分に発揮する。
『俺達は空を掃討し、陸戦部隊の道を切り開くぞ!』
 デイジー分隊を率いるガーデン副隊長緋沼 京夜(ga6138)の言葉は、すぐに現実のものとなる。
 連携を組んだ小隊が、次々とキューブを落として行く。
『八咫烏隊、全機突入! CWを片っ端から啄ばみますよ!』
 小隊八咫の烏叢雲(ga2494)の声に比良坂 和泉(ga6549)をはじめ、6機の翼が答える。先行突撃。いかにして早くキューブを落とすか。それのみを考えて、ガーデンと連携しつつ、彼等は戦場へと向かう。
『厄介な敵には、早めにご退場願うとしましょうか‥!』
 鏃陣形が、キューブを切り崩して行く。ガーデンを挟んで、反対側からは、『たそがれ』の軍勢が、キューブを狙う。
 隊長機であるルード・ラ・タルト(ga0386)のやんちゃ振りに合わせ、僚機は確実にキューブを落とす。
『さっさと終わらせて、皆でピッツァ・マルガリータ喰いにに行こうぜ』
 神楽克己(ga2113)が笑う。
 小隊、私設傭兵団【神城台】4機が、こっそりと派手に弾幕の雨を降らせ、フルーツバスケットα、櫻第一小隊、ラビットフットβ、チームヒメミヤ、ヴァルキュリアーズの上空強襲班とスカーレット、Legions、咎人がキューブ中心に空戦を仕掛ける。
 カルル・ローディス(ga6826)、ペルツェロート・M(ga0657)、アルガノ・シェラード(ga3805)。単機行動の岩龍が、チームを組まず、小隊に入らない仲間達の援護へと飛ぶ。
「戦いは苦手なんですけどね‥」
 通常ならば、真っ先に狙われる岩龍だが、今回は、共に飛ぶ仲間達が多く、その傷は少ない。 
「袋叩きはごめんだよね」 
 単機で飛ぶもの達は、身のかわし方を考える。古都 洋恵(ga7634)は、ありったけの弾を撃ち尽くす。
 若葉【壱】は、無数に飛ぶキメラを狙う。ワームほど手強くは無いが、決まった軌跡を描かないキメラ達もやっかいな敵である事には変わり無い。
 UPC軍空母から、戦闘機から、次々とミサイルの雨が降り注ぎ。島からは、タートル・ワームの猛火が襲う。
 だが。
『制空権確保、確認しました』
 佐倉祥月(ga6384)の声が響く。その畳み掛けるような攻撃に、バグアは、早々に制空権を手放した。若葉【蕾】が、H−114岩龍を囲むようにコルシカ島上空へと進入する。

 コルシカ島制圧部隊が続々と降下して行く。
 鋼の翼が可変し、みるまに人型に変わり、バグアに蹂躙された地へと立つ。
 猛攻。
 一番近い島という事もあり、補給路は太い。
 フルーツバスケットβ、ラビットイヤーα:1、ラビットイヤーα:2、ラビットイヤーα:3、ヒヨコ隊、櫻第二小隊が補給路の確保に動く。
「絶対に負けない! 退かない! 勝ってみせる!」
 ここで負けたらイタリア開放なんて出来ない。神崎・神無(ga1871)は、R−01がどれほど傷だらけになろうと機槍ロンゴミニアトを振るう。
 ガーデン陸戦部隊ダリア分隊、リュイン・カミーユ(ga3871)が声を上げる。
『怯むなぞ――我の辞書にあらず! 咲けchardon!』
『落ち着いて対処すればそれほど怖い敵ではありません、全機殲滅を開始します』
 同部隊、ガーベラ分隊の月神陽子(ga5549)の声が飛ぶ。苦戦したはずのタートル・ワームですら、連携された攻撃と、投入される攻撃力の数の力に、崩れて行く。
 ダリアのテュレル(ga7382)とティリル(ga7384)落としたフレア弾は、キメラとワームを炙りだす。ごうごうと燃え盛る炎に巻かれるように、戦い続ける。
 ガーデン陸戦部隊アスター分隊は、ゴーレムへとその機体を向けて走る。
 鈴葉・シロウ(ga4772)は、機体の機動性を仲間達の連携の上で補い、その強力な武器を振るう。
『五大湖での借りは、必ず返すわ』
 その足を使い、ゴーレムを惑わすリゼット・ランドルフ(ga5171)は、思う事がある。その思いを今叩き付け。もう遅れをとる事は無い。
 己の力を過信しない戦いに、隙は見当たらない。
 同じく、ゴーレムに向かうガーデン陸戦部隊ルピナスへガーデンの総隊長がやってくるのもあと僅か。アシュラ(ga5522)は、同じ名を冠する機体に恥じぬようにと、戦いを続ける。
 若葉【壱】は、何所からとも無く現れる、キメラに対峙していた。連携し、次々に、屠る。
『最初が肝心だからなぁ、気合入れてこぉっ!』
 天城 彦(ga6669)の元気な声が響く。
 無理はせず。きちんと補給に帰る小隊は少なくない。次々と、装備し、再戦に現れる能力者達に、バグア軍勢力は、なす術もなかった。
 ブラックアサルト、ワンショットスターズ、蒼穹武士団が、続々と押し寄せる。
『そう簡単に止まると思うなよ』
 九条・命(ga0148)率いる、小隊FANGは、3人の連携を密に、動く。大型キメラに仕掛ける波状攻撃は、敵に反撃する間を与えない。
 小隊【我武者裸】は、岩龍1機を軸に、【仁】【義】のチームに分かれ、当たるを幸い撃ちかかる。ガーデンと連携を取っているため、当たる敵は大物が多かった。
『まずは生存。そして防衛。最後に撃破! 3段コンボ完成っす!』
 櫛名 タケル(ga7642)が、こくりと頷いた。何所のお笑い界だろうというぐらいの笑いを交えながらの戦いは、しっかりとした連携と攻撃の手段を持っていてこそなのだろう。
『さてと‥さっさと黙らせましょうかね』
 ワームの姿を見つけると、周防 誠(ga7131)は、仲間達に振り返る。
 小隊、乙女組は、タートル・ワームにこだわりがあるようだ。決め台詞を言いながら、タートル・ワームへと攻撃を始める。
「たかがR−01一機だ。無茶は出来ん」
 御山・アキラ(ga0532)は呟く。しかし、その1機が無ければ、あるいは戦局は変わるかもしれない。近接して戦う仲間に合わせて、攻撃の手を緩めない。
 BWB隊リオン=ヴァルツァー(ga8388)は、御剣 葵(ga8698)のS−01に搭乗し、生身のまま罠解除へと向かう。いくら、安全を確認している場所だとはいえ、ひとりで行くのは無謀だ。
 小隊EGGの面々は、部隊後方に控えつつ、空母に乗り込んだまま、簡単な修理を手伝う。運び込まれる怪我人を手当てに当たり。櫻第二小隊の一部も、怪我人の手当てに回る。

 あまりにも早く制圧されたコルシカ島へと、バグアイタリア軍からヘルメット・ワームが多数襲来する。空には、再び、戦いが始まる。ギリシャからの増援でバグア軍の逆上陸作戦も展開されそうになるが、一端制圧したコルシカ島の防御は厚く、その防衛網の前に、水際で叩き落され、バグア軍の被害は増加の一途を辿った。
 その物量、動員数により、コルシカ島はUPC軍と能力者達の圧勝であった。

<担当 : いずみ風花>
 


●Take of
 同時刻――サルディニア島。

 UPCのサルディニア攻略艦隊は、さしたる抵抗も受けず、サルディニアに接近した。
 意外な事に、島からの反撃は散発的だった。現時点においては、攻略部隊にさしたる被害は出ていない。考えられる可能性は二つ。一つは、防衛戦力が不足しており、篭城戦の構えを取っている場合。そしてもう一つは、逆撃、待伏せ。
「やはり来たか!」
 空母のブリッジで将官が叫んだ。
 その背後にはサルデーニャ自治州旗が掲げられている。
 おそらくは、バグアにはバグアなりの作戦、算段があったのだろう。一定の距離まで近づいた艦隊の前方に、中型、大型のヘルメットワームが喰らい付いた。
 だが、人類とて馬鹿ではない。
 この逆撃を予想して、手駒には、精鋭を控えさせている――傭兵だ。

 総出撃命令。
 UPCからの下された命により、傭兵達を中心としたKV部隊が上空へ展開する。
「死なせません、皆でもう一回イタリアの土を踏むんだから!!」
「愛する空を守るために‥‥リーゼロッテ、出るわよ!」
 決意を新たにするアリッサ・コール(ga8506)やリーゼロッテ・御剣(ga5669)に、リーゼロッテと並んで飛行するサーシャ・ヴァレンシア(ga6139)。
 空母から、或いは上空待機していたKV部隊が、次々とサルディニア島へと集結する。
「行くわ‥‥サルディニアへ」
 麓みゆり(ga2049)が呟く。上空に展開した【シャスール】がキューブワームへの攻撃を開始した。
 CWへの攻撃に集中し、一機一機確実に叩き落していく。
「不安だ‥‥後ろでも不安だ」
「Simorgh1より全機。大変な戦争だ、大変な目に遭わないよう注意せよ」
 他にも、後から続いた千葉・達哉(ga4916)、ジョン・J・ルーキン(ga8106)の率いる、【小隊「八十六」】や【Simorgh】が激しい航空戦に突入した。
「デカイ奴は放っておけ!まずは数を減らすぞ!」
 【TEAM:UVA】の戦闘隊長、ルフト・サンドマン(ga7712)が声を張り上げる。
 敵味方が入り乱れる中、突出した小型のヘルメットワームに対して僚機達と共に集中砲火を加え、撃墜していく。
「地道な戦法だよね。でも、明日の勝利に繋がる大きな一撃だもん」
 【ミナス・ティリス】所属のチャペル・ローズマリィ(ga0050)が舌を噛みそうになりつつ、キューブワームの側面に回りこむ。だが、ヘルメットワームの死角へと廻り込むKVは彼女だけではない。
「さーさ、パーっと行ってさくっと片付けちゃおうぜー」
 リリエーヌ・風華・冬堂(ga1862)のKVが、前衛に展開する空戦部隊の援護に回った。ペアでの攻撃を加える吾妻 大和(ga0175)に間 空海(ga0178)や、イーリス(ga8252)、愛紗・ブランネル(ga1001)など、サルディニア島の攻略戦には――無論この島の攻防に限らず、傭兵達の参戦は広範に及び、様々な立場の傭兵達が、地中海の只中、各地で航空戦を演じている。
「京の字もジの字もいないのかなー?」
「真珠の首飾りを紡ぐためにも‥‥ここは譲れない!」
「明鏡止水、心穏やかに研ぎ澄ませば斬れぬ物は存在致しません」
 口を閉じ、加速を掛けるレールズ(ga5293)や、夜明・暁(ga9047)。
「うわあ〜ン、敵が〜敵が〜なんかいっぱいいる〜!」
 涙声になりながら、スモール・ロシウェル(ga9208)が友軍の支援へと駆け回る。
 しかし、心なしか、バグアからの攻撃は弱い。上空を飛び交うヘルメットワームの種類は不揃いにも思われ、攻撃にも統一感が見て取れない。だが、バグア側の軍勢がやや劣勢と思えるとはいえ、それは普段と比べての話。サルディニア島周辺の制空権を巡る戦いは一進一退。
「まだ、始まったばかりだ、急ぐな!」
 ヘルメットワームの攻撃を回避し、MIDOH(ga0151)が叫ぶ。
 この混乱の様子、戦力の急ごしらえ感は何故?
 傭兵達が皆、直感的に違和感を感じ始めていた。誰かが口に出すかと思われた、まさにその時だった。
『コルシカ島、陥落しました! コルシカでの戦いは我々の勝利です!』
 誰の言葉だったかは解らない。しかしその言葉は、傭兵達の攻勢に勢いを付けさせるには十分だった。特に、【燕・スワロウトレイル】や【月狼】といったような大部隊は、個々人の勢いを部隊全体に拡散させ、攻勢を更に強めて行く。
 もはや、勢いにのる空戦隊の勢いを、バグア側が押しとどめる事は不可能だった。


●電撃戦
 苛烈な攻勢にさらされたバグアの軍勢は徐々に戦線を縮小し、サルディニア島の拠点へと撤収していく。
 更なる追撃を掛け、あるいは水中戦を展開する。もはや、これらの攻撃を押し留めるだけの決定打が、バグア側には欠けていた。
 接近する艦隊から、圧倒的な火力の艦砲射撃、ミサイル等が放たれ、上陸予定地の露払いを開始する。艦砲射撃の合間を縫い、紗霧・蛍(ga8667)のS−01がサルディニア島上空へ達し、抱えていたフレア弾を投下した。
「やられるわけには、いかないもの」
 続けて優奈(ga8225)が煙幕を張り巡らせ、その煙に紛れて撤退する【ファフニール】の対地攻撃班。そのまま、【フェニックス】の周辺に部隊が展開する。
 地がえぐれ、見慣れないものが目に付いた。
 ――隠れトーチカや地雷の類の、罠だ。
 【Erfolg】の雨竜 尊(ga8415)、篠森 露斗(ga5125)が罠を潰す為、攻撃を打ち込む。或いは、後方からの艦砲射撃が地表もろとも吹き飛ばしていく。
 上陸部隊の援護を狙い、【404隊】が突出した。先陣として陸上に残った対空砲を攻撃し、後続のエスコートにまわる。
「エスコート? あぁ、よーは喰っちまえばいいンだろ?」
 OZ(ga4015)は上空に残るヘルメットワームを撃墜し、毒づいた。

 地表近くで変形したKVが、岩を弾き飛ばしながら強行着地した。
「バグアがどれ程の力か試させて貰おう」
 サルディニア島一番乗りを果たしたのは【Elevado】所属の東雲・東吾(ga8443)であったが、着陸直後、集中砲火を受けた彼のKVが横転する。続けて恐慌着陸を試みた数機のKVが、バグアからの攻撃を受け、爆発する。
「ええいっ! 落ちちゃえっ!」
 横転する東雲機の後ろから飛び出し、ヴァンゼ・ウェイン(ga9080)は長距離バルカンの弾幕をはった。
「タイムリミットのある任務か‥‥面倒だな」
 接近し、上空からトーチカや対空砲火を狙うライアン・スジル(ga0733)。
「‥‥ん?」
 ロックオンに捉えたその瞬間、レーダーの乱れと、猛烈な頭痛に襲われた。
 カモフラージュされた岩肌から姿を現したのは、ゴーレムだ。その傍らには、頭痛の正体‥‥キューブワームがぞろぞろと姿を現している。上空で表れたキューブワームはその一角でしかなかったらしく、航空戦の際とは比べ物にならない妨害が傭兵達の動きを鈍らせ、ゴーレムとの戦闘を妨害する。
「バグアはぶっ潰すのよ」
「ちっ、準備不足も良いとこだ‥‥」
 ミサイルを次々と放つクリス・ディータ(ga8189)。【T−ストーン】所属のディアブロ部隊が、先頭に立って敵陣を突き崩す。風間・夕姫(ga8525)の舌打ちは、爆音の最中に、掻き消された。
 【月狼】の十得・梨緒(ga0524)はスロットルを絞り、展開するバグアを睨みすえた。
「前回みたいに長期戦ならないよう、速攻でいこうか」
「電撃作戦だー。がおー」
 気勢をあげるハルカ(ga0640)の胸が、心なしか‥‥というか露骨に揺れている。
 目ぼしいトーチカは既に無く、今迎撃に当っているのは、ワームやキメラの混成部隊に、最前線へ表れたゴーレム軍団に、数多のキューブワーム。
 人類側は怯む事無く、次々と強行着陸を敢行する――人類側の攻撃は、事実、電撃戦と称しても構わぬほどに苛烈を極めた。

 開けた補給地で、生身の傭兵が走り回っている。補給品のリストを睨みつける風巻 美澄(ga0932)だ。
「ナニィ、ケガしただぁ? ツバでもつけとけ!」
「あたしは、あたしが出来ることを頑張るの!」
 救急セットを机へぶちまけ、月森・ミューカ(ga4776)が叫んだ。
 もっとも、彼女が道具をぶちまける前には、書類が山ほどぶちまけられていたのだが‥‥喧嘩する訳ではなく、とにかく、忙しいのだ。
「エネルギー補給完了っと。さーて、行きますか」
「はう‥‥お話に入りたいな‥‥」
 指を鳴らし、キャノピーを閉じる宮武 征央(ga0815)。
 Innocence(ga8305)は精一杯の手伝いを続けながら、手を振って再出撃組を見送った。
 戦線がじりじりと南下を続ける中、少しずつ、補給の為に帰還するKVの数が増えてきた。ここへ来て、多少の息切れが生じているのだ。補給地点は、まさしく眼も回るような忙しさと化していた。

 バグア側の反撃は、未だ途絶えない。
 傭兵達が強行軍によって確保した上陸地点、橋頭堡目掛けてゴーレムが殺到してくる。
「私は‥‥帰りたい場所、守りたい笑顔のために‥‥」
 岩龍へと向うゴーレムの横合いへ接近した、金城 エンタ(ga4154)。
 速度の限り突進するゴーレムを前に、マニュピレーターは試作雪村の柄を掴んでいる。
「戦うと決めましたっ!」
 居合い切りのような鋭い一閃が、ゴーレムの胴を寸断する。
 レミング・ダイブ(ga7391)が率いる【レミング隊】や、名実共に兄弟の【花咲兄妹】等が続き、露払いを掛ける。
 だが――UPC上陸部隊の本隊が上陸してしまえば、戦局は決する。
 それと同時に、この橋頭堡を失えば、人類は大きな痛手を負う。
 危険性の高い強襲、変形着陸を再び試みなくてはならない。――いや、それだけではない。上陸後に撃墜された傭兵や兵士達が、サルディニア島に取り残される事になるのだ。
 それだけは、避けなければならない。
「地球の軍事科学力、なめるでねぇ!」
 内藤新(ga3460)の東北弁が、ヘルメットの中に反響した。その絶妙なアクセントは、日本人にしか解らないだろう。多分。おそらく。ともかく、【ブルーレパード】の眼下には、上陸を目指す輸送艦が水飛沫を上げ、サルディニア島へと向っている。
「‥‥Simoon01より、全機へ‥‥僕らの、空」
「各隊とのリンク開始します」
 ラシード・アル・ラハル(ga6190)が、静かに呟き、パティ・グラハム(ga7167)が応じる。【空戦部隊Simoon】が南下を続ける部隊の上空、制空権を確保し、辛うじて残るバグア側飛行キメラ、小型ヘルメットワーム等を次々と撃墜、敵制空権を切り開いていく。
 先頭の船が、接岸した。
 輸送ハッチが展開され、物資が積み降ろされる――が。
 長距離砲の嵐が降り注ぐ中、うち一発が、未だ海上に浮かぶ輸送艦目掛けて飛来したのだ。
「危ないっ!」
 潮彩 ろまん(ga3425)が機体を滑り込ませ、自機を盾に攻撃を防ぎ、砂浜に滑り込んだ。
「ディアブロ、ファイナルアタックだ!」
 動けないKVへ近づくキメラめがけ、同部隊、勇姫 凛(ga5063)はドリルを突きたて、これを弾く。
「どこまで被害を軽減できるか、それが私の戦い‥‥!」
 救難信号を受け取り、ナオ・タカナシ(ga6440)が現場に急行、ろまん機を引きずって退却して行く。
 その後ろ、海岸線には、輸送船が次々と接岸。正規軍を中心とした陸軍が、サルディニア島に展開する。
 もはや、大勢は決した。
 上陸した陸軍と連携しながら、傭兵達のKVは次々とバグアのゴーレム、キメラを撃破していく。あるいは仮設のトーチカを潰し、制空権を巡って争い、あっと言う間に南下。バグア軍は各地で分断され、反撃は散発的なものへとなる。
「やらせるか!」
 疲れも見える隊員達に対し、遊撃的な位置を心がけた伊河 凛(ga3175)が割り込み、ホーミングミサイルをばら撒く。
「さって、と‥‥どう料理しちゃおうかしら?」
 近藤勇美(ga6548)が、レア・デュラン(ga6212)の支援砲撃を受けつつ、敵の陣地へと突貫。大部隊を擁する【燕・スワロウトレイル】が殺到し、火力で圧倒した。そこへ更に、今の今まで戦力の全てを温存してきた【Cadenza】が部隊を展開する。
「こちらキラートマト。支援射撃を開始する‥‥死ぬなよ、兄弟」
 夜十字・信人(ga8235)の言うキラートマトこそ宇宙人のような気もするが、それでもバグアよりは可愛げがあるものだ。
 もっとも、もはやバグアに組織的抵抗力は残されていない。
 サルディニア島は、その最南端に至るまで、完全に人類側の勢力圏となった。
 イタリアからは数度に渡る援軍もあったものの、一度確保されたサルディニア島が再度バグアに制圧される事は無かった。少なくとも、コルシカからサルディニアに至るまでの戦線は、人類側の勝利に終ったのである。
 やがて――サルディニアの南端に、サルデーニャ自治州旗が掲げられた。

<執筆 : 御神楽>


●シシリー島強襲!
 イタリア沿岸。
 青き海に浮かぶ島のひとつであるそこは、豊富な地中海の海産物と、美しい天然ガラスを名産とする風雅な島。
 だが既にその面影はなく、ガラス細工の代わりに、良く似た色のキューブワームが無数に浮かび、その足元には、海産物の代わりに、幾匹ものワームが宙を泳ぐように出迎えていた。
(‥‥1人では開かぬ扉、けれど皆の気持ちが1つとなれば、きっと開ける空への扉。___穢される事のない空を目指して‥‥!)
 ジャミング機能を搭載した岩龍の中で、祈りをこめて静やかに歌うNORUN(ga5405)。その歌声は、傭兵達が張り巡らせた情報網・天の糸を通じ、シシリー島上空全体に広がって行く‥‥。
「データにはなかったのに‥‥。どかーんとやっつけちゃうぞぉ!」
 栄神・千影(ga8194)が明るくそう言って、突っ込んで行く。だが、『チカに近づくと危ないよ〜?』とばかりに、無差別に叩き切る間に、彼女の機体もまた、修理が必要なほど傷ついて行く。
「亀の化け物・・・・・・タートル・ワーム、と言ったか。ざっと100数匹・・・・・・避けられるな」_
 不敵にそう言って、この日のために新調した剣を取り出す飛燕(ga8908)。タートルワームの集中砲火が食らわされる中、亀の切り身にせんと挑みかかる。しかし、避け切れず被弾してしまった。
「出てきたな。ペガサス分隊、フォーメーション展開。目標を可能な限り多く撃破せよ!」
「了解!」
 ペガサス分隊の白鐘剣一郎(ga0184)が、部下達を前後左右へと布陣させる。G放電とAAMが軽くスパークを立て、頭痛を引き起こそうとしたキューブワームへ攻撃を食らわせる。概ね成功したものの、隊員の1人クレア・フィルネロス(ga1769)が、白煙を上げた。
「く、ヘルム隊各機。穴埋めを!」
 稲葉 徹二(ga0163)が苦戦しているらしきエリアのフォローに回るよう、指示を飛ばす。他にも、僚機を上陸させんと、キューブワームを掃討して回る者達が多い。
 こうして、傭兵達の中でも、特に精鋭ともいえる面々が集い、その矛先を向けたキューブワームはと言うと、他の場所に比べて、数が余り多くない。最初こそ苦戦するものの、火力の高い攻撃を前にキューブ・ワームは脆く、徐々に押し始めていた。
『UPCより通達。このまま押していると、アフリカからの援軍が考えられます。一気に制圧しちゃってください』
 本部のリーフが、傭兵達にUPCからの指示を告げる。わぁっと制圧班が沸き立つ中、時を同じくして、海面から島を目指す一団があった。
「海上の皆さーん。もう少しでシシリー島だよー」
 非水中専用機を牽引していた【OMG】&【IA】隊のレーン・M・アルトナー(ga4384)が、他の機体へ警告を発した。同時に、単機で行動していたシリル・メイキュール(ga0111)とゼロ・フジワラ(ga4665)達にも声をかける。直後、機雷が爆発するような音を立てて、シリル機が被弾。しかし、そのおかげで海上へと誘導されたキメラ達を、ゼロが粉砕していく。
「無理はするなよ。まだ序盤戦、戦力を温存しておくに越した事はない」
 周囲を鼓舞するように、そう言うUNKNOWN(ga4276)。被弾しながらも、通信口で告げる。
「俺達が到着するまでもうちょっと待ってろと、軍に伝えろ。頼むぜ」
『はいはい。念には念を‥‥と言う奴ですね』
 若干偉そうに聞こえるその口ぶりにも、リーフさんは顔色一つ変える事無く、にこやかに伝令役を引き受けてくれる。傭兵達の中にも、指揮を取る者が多くなってきた中、竜王 まり絵(ga5231)、森里・氷雨(ga8490)ら、【裏飯屋】の面々が、アングリフ海賊団の面々と共に、爆撃と攻撃機の鯉口を切っていた。
「水無月 魔諭邏、出陣いたします」
「さあ、いくわよ〜♪」
 それを皮切りに、次々と海上で水柱が上がる。それを見た他の機体が、空中から援護の刃を放ち、海上強襲が始まった。特務部隊:零小隊の面々が二手に分かれ、それぞれの持ち場を目指す。水無月 魔諭邏(ga4928)、マリオン・コーダンテ(ga8411)達が、洋上から攻撃を開始し、失われた弾薬を、篠崎 公司(ga2413)達が補給する。
「よし、そろそろ頃合だな。制圧部隊各機、俺に続け!」
 時を同じくして、着陸地点を確保するべく、制圧部隊が降下する。部隊を率いていた緑川安則(ga4773)、バルカンで牽制がてらキューブをぶち抜くと、ブレイクホークを手にして突撃命令をかけた。
「ガチな戦闘は久しぶりなんだ。たっぷりと暴れさせてもらうぜ。陸戦万歳だ!」
「了解、目標補足。排除します」
 部下の高嶋・瑞希(ga0259)達が、その後に続く。他にも、島を制圧せんと、降下を開始するKV達。ステア・シェリンドン(ga8275)とヒシウ・ツィクス(ga8287)のペアが、出鼻をくじくとばかりに、手数勝負で襲い掛かれば、鳳・朱雀(ga9178)、白虎(ga9191)、天道・大河(ga9197)のように、単機で暴れまくっている御仁達もいる。中には、大垣 春奈(ga8566)やカリム・エストローネ(ga8852)のように、突出しすぎて怪我をする者もいる。楓華(ga4514)のいる突撃機動小隊【魔弾】、御影・朔夜(ga0240)のいる渡鴉も同様で、戦場は次第に乱戦の様相を呈して行く。
「カオスって来たな。なら、頭を潰すまで!」
 その混乱振りに乗じて、雪切・冬也(ga8651)が変形し、アグレッシブファングを放つ。青白く煌く練力が、目標としていた大型に一撃を食らわせる。しかし、簡単に落ちはせず、逆に被弾してしまった。
「傷ついた機体は、順次回収してください! 無事な機体も、燃料に注意して!」
 胸に雀蜂の紋章を抱く斑鳩・眩(ga1433)達補給部隊が、回収に回る。カーラ・ルデリア(ga7022)率いるハニービー小隊もその一つ。
「ボスは他の面々に回して下さい!  ミツバチは花の蜜‥‥じゃない、怪我人を集めて回るのです〜」
 隊長のカーラ・ルデリア(ga7022)の指示が飛んでいる。空港の制圧に回った部隊で、傷ついた者たちは、次々と彼らの手で運ばれ、着陸を阻害している仕掛けられた罠を、クラウディア・マリウス(ga6559)、ステラ・レインウォータ(ga6643)が解除して行く。邪魔だとばかりに迫ってくるキメラ達。KVを降りている彼らは、格好の獲物に見えたのだろうが、それは玖堂 暁恒(ga6985)と東條 夏彦(ga8396)が許さない。
「まだまだ来る! 被害は出来るだけ少なくするんだ!」
 護衛をするのは、ハーベスター小隊の霞倉 那美(ga5121)、シエラ(ga3258)達。イエローラインの蜂達に守られながら、負傷者には続々とハーブの癒しが施される。
「エンジェル・フェザーの初戦闘・・・負ける訳にはいかないわ」
「記憶が無くても・・・戦う事はできる・・・行きます!!」
 その間、前衛に立ったのは空漸司・由佳里(ga9240)とアリエイル(ga8923)の2人。エンジェル・フェザーの名を冠した彼らは、ガトリングを撃ちながら接近し、スピアで止めを刺す。それでも越えて来るワームやキメラには、由佳里が止めを刺す。その間を縫うように、ハニービーの面々が、怪我人を運んで行く。が、ワーム達はそんな彼らにも容赦はしなかった。
「仕事は増える一方です‥‥」
 怪我人に錬成治療を施していた高須 アルフレッド(ga7812)が、眉根を曇らせながら、悲しげに呟く。治療をしていた扇揚(ga8552)を庇ったアリス・ロックベル(ga8693)が傷つく等、既に怪我人の数は20人を超えていた。  と、その時である。
「アフリカ方面から増援! 気をつけてください!」
 アフリカ方面を警戒していたレーシュ(ga8701)から警告が発せられた。
「出てきたわね。これだけ暴れてたら当然か‥‥きゃあっ!」
 直後、自身の部隊を率いて、周囲を観察していたランツェンレイター伯爵(ga0666)の横を、真紅の機体が、まるで悪夢の開始を告げるかのように、駆け抜けていた。直後、キューブが活性化し始める。その瞬間、増幅された妨害電波が、周囲の傭兵達へと襲い掛かった。
「見つけた! レッドデビルは俺が倒す!」
 その瞬間、戦場に迷い込んでキューブワームを相手にしていたラー(ga9243)が、赤い悪魔へ突撃を敢行する。
「って、その装備じゃ無理‥‥!」
 すぐ側にいた、同じガトリング砲を装備していた皇 千糸(ga0843)が悲鳴を上げた。だがそこへキューブワームが群がり、彼女は回避せざるを得なくなる。
『無謀な攻撃には死、あるのみ!』
 キャノピーの向こう側で、そう口が動いた。直後、振り下ろされた腕が、ラーの機体を捕らえる。
「ダメぇぇぇっ!」
 目の前で切り殺される同じ機体に、腕をのばす皇。だが、その腕は僅かに届かない。

 盛大な、爆音だけが響いた。

「ま、負けるなっ。ペガサス小隊はまだその辺で戦ってるな? 何とかして時間を稼げ!」
 アングラー小隊のエミール・ゲイジ(ga0181)、自らも頭痛に耐えながら、配下へ攻撃命令を出した。ある者は至近距離から、ある者はヒット&アウェイで。
「わ、私には一度限りの機会なの! 多少の無茶は覚悟のうえよ」
 覚醒し、何とか頭痛に耐えながら、G放電管のスイッチを入れる黒崎 美珠姫(ga7248)。至近距離から放たれたそれに、ファームライドが起こしたのは。
「はっはっは。残念ながら、私だけではないのでね」
 キャノピーごしにいたのは、老人と言って差し支えない年齢の男性だった。最悪な服装センスだが、髪とお肌はぴちぴちの彼、目の前にいた黒崎嬢にその刃を振り下ろす。至近距離から放たれる一撃。避け切れない。
『大丈夫かい?』
「カラス様‥‥」
 が、推進部への被弾だけは、何とか免れたようだ。
「今だわ!」
 その隙をつくようにして、ヤヨイ・T・カーディル(ga8532)が、アグレッシブフォースを使った。しかし、その直後、被弾したのはヤヨイの方。見ればファームライドがもう2機、姿を見せている。
「さすがに早いな。だが、速さを重視してんなら小回りが利かない、逆なら速さが出ない筈!」
 今まではキューブワームを相手にしていたスコール・ライオネル(ga0026)が、そのうちの一体である槍を持った方に挑みかかった。しかし、共に挑んだ面々と共に大きくなぎ払われてしまう。
「どうします? 所長」
「んー。あの暴れてるのは、天衝隊の諸君に任せようかねー。我が研究所は、ジジィを相手にしようじゃないか」
 双眼鏡で相手を確かめていた国谷 真彼(ga2331)が、上司であるドクター・ウェスト(ga0241)似判断を仰ぐと、彼はびしぃっと最初に出てきたレッドデビルを指し示す。
「私がハンマーボールでぶっ叩くから、その後から攻撃すると良いのだね〜!」
 独特の口調でそう言うと、ドクターはぶんぶんとボールを振り回し、ファームライドへと投げつける。だが、そのボールは、まるでバレーボールを打ち返すかのように、弾かれてしまった。続く攻撃は、何とかシールドで防いだものの、ファームライドの攻撃は止まらない。そればかりではなく、地上からはタートルワームの集中砲火まで始まってしまっていた。
「地上のあれは、我々でどうにかしましょうか」
「そうですな。所長のフォローが私が」
 ハワード・ラヴクラフト(ga4512)、ランドルフ・カーター(ga3888)、ロバート・ブレイク(ga4291)の3人が、手傷を負いながらも、そのタートル達の牽制に向かう。その間、ドクターたちをフォローして回っているのは、無荒戸 哲夫(ga3815)の仕事だ。
「各機、あの赤い悪魔を先に叩けと、UPCからのお達しだ。ただし、無茶はするな!」
 天衝隊の総長ある漸 王零(ga2930)が、60名近くまで膨れ上がった隊員達にそう命じた。まだ序盤戦と言う事で、各隊員達も、つかず離れずと言った状況だ。だが、壁になった第二班の面々と、緋室 神音(ga3576)、西島 百白(ga2123)、王 憐華(ga4039)、南雲 莞爾(ga4272)、葵 宙華(ga4067)が、攻撃を避け切れず被弾、補給部隊送りとなった。
「見えないなら、見えやすくするまでだ。持ち物には、名前だよっ!」
 そんな中、ノビル・ラグ(ga3704)と葵 コハル(ga3897)の煙幕に紛れて、水理 和奏(ga1500)が、弾丸にペイント弾を混ぜる。彼女の名前と同じブルーの塗料は、赤い装甲にべっとりと絡みつく。
「よし、いい子だ。後は、叩きのめすのみ!」
 彼女の属する天衝【迦楼羅】小隊長の、煉条トヲイ(ga0236)が、追撃命令を出す。しかし、自慢の機体にペイントを投げられて、怒り心頭なのは、相手も同じらしい。槍を持った方のファームライドが、スピードを上げて向かってくる。その速度は、強化した彼らの機体をも蹴散らし、しばし修理が必要な状態にしてしまった。
 激しくなる戦火。無数のKVが舞い、キューブとワームが飛び交い、戦場を赤く染め上げて行く。と、その時だった。
 ファームライドの一機が、片手を上げた。見れば、地上のあちこちから煙が上がり、沿岸部から続々とKVが上陸している。長引く戦いに、ファームライドの一機が撤収を命じたようだ。
「逃がしませんよ!」
 君島 穂乃香(ga6328)が、撤収しようとするファームライドに向かってブレス・ノウを上乗せしたG放電管のスイッチを入れる。命中を確かめず、続けざまに煙幕とラージフレアを放つ彼女。だが、ファームライドの速度は早く、追いつけない傭兵達。と、その直後だった。
「こちらガンアンツ! 地下からデカいのが出てきて、手が足りない。増援頼む!」
 天の糸を通じて、南部へ攻勢に出ていた地上部隊のガンアンツ、キザイア・メイスン(ga4939)が、そう伝えてきた。聞けば、地下から表れた巨大なミミズ型ワームにさえぎられ、時雨・奏(ga4779)、比留間・トナリノ(ga1355)らが怪我をしたそうだ。
「向こうの方が一枚上手か‥‥」
 ぎりっと唇をかみ締めるファーザー・ロンベルト(ga9140)。既にAstraea隊のメンバーである不破 梓(ga3236)が負傷している。
「さすがに一筋縄ではいかないな‥‥」
 リンクス隊の霧島 ケイナ(ga5808)が、苦戦しているメンバーの援護に回りながら、そう呟いた。既に進軍が滞り、セルゲイ・バトゥーリン(ga4438)が後ろから襲われて怪我をしている。
「地中から衝撃! まだまだ来ます!」
 並木仁菜(ga6685)が警告を発して、砲撃を放つ。見れば、地響きと共に、地面が揺れていた。敵が来ると察知した六堂源治(ga8154)が、主兵装で近接攻撃に持ち込むが、その質量に弾き返されてしまった。そんな光景が、あちこちで続いている。
 シシリー島での戦いは、ファームライドを退ける事が出来たかに見えた。だが、赤い悪魔にダメージを与えられてはいない。その証拠に、南部では未だ激戦が続いているのだった。

<担当 : 姫野里美>



「こちらGiftradio、Program『Gr』起動します。想定していたより数は少ない模様ですが、気を引き締めていきましょう」
 共有情報網『Gr』を通じて、380戦術戦闘飛行隊所属の秋月 祐介(ga6378)が海上封鎖に乗り出す参加者全員に訴える。その言葉が示している通り、今回の第一フェイズは明らかにUPCが押していた。

 今回の作戦の舞台であるコルシカ、サルディニア、シシリーの3島の戦力値はキューブワームの存在もあり、はっきりとわかってはいなかった。そこで敵の虚を付くべく奇襲作戦を慣行したUPCだったが、どうやらそれがうまくいったらしい。直接3島に乗り込んでいるわけではない海上封鎖班ではあったが、逆にどこかの島に専属しているわけでもないため、全体の様子を肌で感じ取っていた。
「了解です。そちらも引き続き調査をお願いします」
 耳だけは通信のほうに傾けながらも、機械のように正確にキューブワームを撃ち落していくのは【護龍】所属の深音・フラクタル(ga8458)。彼女がそう伝えるのは信頼できる仲間、キィル・テスタロッサ(ga8381)、レーヴェ・ウッド(ga6249)がいたからだった。
「始まったか」
「呑まれるなよ」
 通信には『Gr』の中に混ざってキィル、レーヴェの2人の声も入ってくる。冷静に考えれば邪魔な存在かもしれない。だが短いながらも掛け合う言葉は、状況把握に務めるために重要なものだった。そしてその2人の存在もあってか、まだ始まったばかりではあるものの、勝てない相手ではない事を感じ始めていた。

「Braveより各機へ、ジャミングが酷い‥‥僚機を見失わないように」
 勝てない相手ではないと思えるようになった理由の1つが、ジャミングに対応すれば何とかなるという事を、身をもって体験できたからである。アイギス所属であり、部隊の指揮を握る赤村 咲(ga1042)は僚機との距離を確認しつつ、全体への指示も出しながら射撃のタイミングを計っている。一方僚機を務める橙識(ga1068)も同様に距離を確認しながら、主兵装である短距離高速型AAMを打ち込んでいた。
「短期決戦ほど思い切って動ける作戦はないよね」
 誰にも聞こえないよう、1人愚痴を吐く橙識。まだ彼の前には無数ともいえるキューブワームが存在している。

 海中においても戦闘はUPC有利で進んでいた。SES機関の関係で水中と陸上の武器は換装しなければならないというデメリットを抱えつつも、佐伯(ga5657)など試作隊のメンバーは機雷を使って水中から突破を狙うワームを撃破していく。機雷を水中に設置しホーミングミサイルをもって起爆させるという方法だ。しかし機雷の本来の使い方ではないためか、常に十分な威力を発揮してくれるわけでもなかった。また周辺海域を他小隊が誤って侵入しないように呼びかける必要もあった。
「まだ速やかとはいえませんなぁ」
 動く相手を誘導するのならまだしも、足止めを狙う相手に狙ってダメージを与えることは難しい。また機雷を設置できる場所もそれほど多くはない。一網打尽を狙うには効果的かもしれないが、残念なことに今はそれほど数が多くはない。だが1つの可能性を示したことには間違いなかった。
 そしてアクアリウムのメンバーも別の意味で今回の作戦に可能性を見せていた。各メーカに水中戦力の充実と水中用KVのを訴えるためである。
「欲張っていくわよ。ここで実績あげなきゃ始まらないしね!」
 カプロイア社製のナイトフォーゲルKF−14に跨り、アクアリウムのチームリーダーである鯨井昼寝(ga0488)は、自分自身に言い聞かせる。現在発表されている水中用KVは2種類しか存在しない、もっと選択肢を広めるという意味でも開発を求めるという、彼女の心の叫びでもあった。
 だが問題なのは、思ったほど敵の攻勢が激しくはないことである。このままでは十分に結果を出すことはできるかどうかは微妙であった。そこで少しずつ機体を慣らしつつ、アクアリウムは戦線を少しずつより戦闘が激しいと思われる南部のシシリー島の方へと向けていった。


 一方シシリー島周辺も、時間の経過とともに戦線は徐々に安定し始めていた。序盤は苦戦していたものの、中盤以降は北部のコルシカ島がある程度落ち着き始め、援軍がやってきているからである。現在押しているとまでは言えなくも、均衡を保つ状態だった。
「これで何とかなりますか」
 作戦開始当初から南部で戦っていた8246小隊α分隊所属のリディス(ga0022)は、現在の状況をそんな風に分析していた。一番北に位置するコルシカ島の方面から、UPCの援軍がやってきている。最南端に位置するシシリー島で五分の戦いができるというのなら、コルシカ島では有利に戦いが進んでいるのだろう。とはいえ彼女自身戦闘に手を抜いているわけではない、メンバーに指示を飛ばすことは忘れていなかった。
「ここは抜けさせられんな‥‥お帰り願おうか!」
 そしてまた1機、キューブワームが沈んでいった。

「後の問題は補給ですか」
 今回初参戦となるLH水泳部所属の要(ga8365)は小隊のメンバーと連携を図りつつ、ワームを撃退していく。当初は緊張もあってか戸惑いを見せていた。そのためかまだ無駄な動きも多く、練力が底をつきかけている。にゃんこ(ga5312)が絶えず練力を供給しているおかげで戦線そのものは維持出来ているものの、心情的に楽観視できるとはあまりいえなかった。

 そして好んで口にするものはほとんどいなかったが、不安材料は補給以外にもう1つある。ファームライド、通称レッドデビルと呼ばれる赤い機体の存在であった。名前だけは事前の報告で誰もが耳にして入るわけだが、実際に目にしたものは少なく、更に一戦交えた者となると極一部に限られてしまう。名前だけが一人歩きしている感がないわけでもなく、実際一機や二機のKVで戦況が大きく変わる可能性は少ない、だが敵の士気が上がってしまうのが問題であった。
 加えてまだ相手の情報が少なく、どういう攻撃を仕掛けてくるのかも定かではない。光学迷彩を採用しているという話もあるため、榊分隊所属のクラリッサ・メディスン(ga0853)はペイント弾を手持ちのガドリングに潜ませている。だが当たるかどうかというのはまた別の問題、それはクラリッサも理解していることであった。だが苦労して手に入れたナイトフォーゲルEF−006ワイバーンを無駄にする気も毛頭なかった。
「折角手に入れた新機体、有効に使わせていただきます」
 意気込むクラリッサ。だがそんな様子を気にしたのか、彼女のKVに通信が入る。
「出て来ないものを心配しても仕方あるまい」
 榊分隊の小隊長を務めるの榊兵衛(ga0388)からの通信だった。
「まずは作戦通りバグアどもを通さぬ事が肝要、違うか?」
「そうですね」
 答えたのは同じく榊分隊所属の香倶夜(ga5126)、今はクラリッサとロッテを組んでいる。
「よお〜し、改めて頑張るからね!」
 気合を入れなおす2人だった。

「何とかなりそうですね」
 戦闘開始から数時間後、周辺領域にやってくるバグアの数も目に見えて減少している。共有情報網『Gr』に報告される発見数も比例して減少していた。無論見逃したという可能性も否定できないわけではない。だが視界内にヘルメットワームやワーム、キメラの姿が無い事も事実、カルヴァリオ所属の菱美 雫(ga7479)はモニターにキューブワーム等、バグアの機体がなくなったのを確認して、一息ついていた。
「まだ気を緩めるのには早いですよ」
 だがそんな菱美の言葉を聴いて、ペアを組むカルヴァリオ所属の里見・さやか(ga0153)が、冗談っぽく軽くたしなめる。
「私達が死力を尽くして戦っているのと同じように、相手も全力でぶつかってきているはず。別にそれを全力で受け止めるような義理や必要はないけど、甘く見るのだけはよくないわ」
 その時二人のKVがヘルメットワームの急接近を知らせる。二人はすぐさま散開、再び迎撃体勢に入っていた。

 更に数時間が経過、三島で最も北に位置するコルシカ島に補給艦が到着した。第一フェイズが終盤に入ったという証拠である。共有情報網である『Gr』にもサルディニア、シシリーの他2島もまもなく制圧できるだろうという報告が入っている。
 周囲には緋霧 絢(ga3668)などIMPメンバーによる歌が流れ、戦闘を盛り立てている。不利な状況に立たされているわけではなかったが、最後まで気を引き締めてやろうという意味での歌である。しかしまだ全体的に余力を残していたのは事実だった、理由はやはり敵新型機と言われているレッドデビルことファームライドが姿を現さなかったことにある。
「レッドデビル出てきませんでしたねぇ」
「とりあえずお疲れだな。だがまだ終わったわけではないぞ」
 満身創痍となったKVを労わる様に飛ばしつつ、静かに溜飲を下ろすのはヘイムダル所属のエレノア・ハーベスト(ga8856)。初の大規模作戦を無事終えた達成感からか、心地よい疲れを感じていた。前衛を務めた同隊所属の劉・宵月(ga5163)からは先輩らしい厳しい言葉も聞こえてくるが、それさえも今は気持ちよく聞こえていた。
「さて、次はどうなるのでありましょう」
 まだ完全終結したとは言えないまでも、残るは掃討戦のみ。三島の制圧はほぼ間違いないだろう。その時、彼の耳に飛び込んできたのはヘイムダルの隊長である嶋田 啓吾(ga4282)からの連絡だった。
「スペインにいた在留軍がこの機に乗じて猛攻を仕掛け、戦線を押さえていた部隊も後退を余儀なくされた、どうやらファームライドが加勢しているらしい。一度体勢を立て直す、ここまできて各個撃破だけは避けたいからな」
 それは第二フェイズ到来の合図でもあった。
 
<担当 : 八神太陽>


(監修 : 音無奏・みそか)

(以下、死亡・負傷者一覧)
●死亡
ラー(ga9243)  ファームライドの攻撃を受け、機体爆発。

●機体大破・重体(次回出撃不能)
レイスニール:ga8234

●機体大破   (次回該当機体出撃不能)
 栄神・千影 ga8194
 神崎・神無:ga1871
 潮彩 ろまん(ga3425)
 東雲・東吾(ga8443)

●重傷     (生命力・練力減少注意)
飛燕(ga8908)
クレア・フィルネロス(ga1769)
稲葉 徹二(ga0163)
レーン・M・アルトナー(ga4384)
シリル・メイキュール(ga0111)
緑川安則(ga4773)
ステア・シェリンドン(ga8275)
ヒシウ・ツィクス(ga8287)
白虎(ga9191)
大垣 春奈(ga8566)
カリム・エストローネ(ga8852)
雪切・冬也(ga8651)
玖堂 暁恒(ga6985)
シエラ(ga3258)
空漸司・由佳里(ga9240)
アリエイル(ga8923)
アリス・ロックベル(ga8693)
ランツェンレイター伯爵(ga0666)
黒崎 美珠姫(ga7248)
ヤヨイ・T・カーディル(ga8532)
ハワード・ラヴクラフト(ga4512)
ランドルフ・カーター(ga3888)
ロバート・ブレイク(ga4291)
緋室 神音(ga3576)
西島 百白(ga2123)
王 憐華(ga4039)
南雲 莞爾(ga4272)
葵 宙華(ga4067)
水理 和奏(ga1500)
ノビル・ラグ(ga3704)
葵 コハル(ga3897)
煉条トヲイ(ga0236)
君島 穂乃香(ga6328)
時雨・奏(ga4779)
比留間・トナリノ(ga1355)
不破 梓(ga3236)
セルゲイ・バトゥーリン(ga4438)
六堂源治(ga8154)
桂 護(ga4925)
空禅(ga4927)
衛門 護(ga4948)
影 皐月(ga4950)
孤鉄(ga4954)
時の迷い子(ga4930)
射郭(ga4951)
天津(ga4988)
列(ga5010)
撃(ga5012)
剛(ga5013)
戒(ga5014)
剣 双一(ga6816)
ゼロ・クロイツベル(ga5137)
セン・カーン(ga6314)
ゴエイ・カーン(ga6315)
コウ・クウ・ボ・カーン(ga6316)
センスイ・カーン(ga6317)
E・ジス・カーン(ga6318)
ガレリア(ga7431)
泰乙(ga7432)
タ・ソン(ga7433)
大内山夜叉丸(ga7434)
レッドアーマー(ga7435)
エル16(ga6547)
エル1(ga1874)
エル3(ga1876)
エル5(ga1878)
エル6−2(ga1879)
エル2(ga1875)
エル4(ga1877)
エル7(ga1880)
エル8(ga1881)
エル14(ga6545)
リオン=ヴァルツァー(ga8388)




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