タイトル: 泥河に橋を架けろ マスター:塩見 純
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UPC軍大尉
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シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
 2009/01/07 15:03
●オープニング本文

 ジャングルを駆け巡る巨大な河アマゾン川。
 その支流のうちの一つ、泥色に濁った河川の対岸に今、多数の戦闘車両が展開していた。
 UPC南中央軍所属の戦車中隊、通称ノゲイラ部隊である。
「大尉、工兵部隊準備完了しました」
 副官のホジェリコ准尉の言葉にうなづくノゲイラ。
「よし、では架橋を開始せよ!」
 ノゲイラの言葉を復唱し、無線で呼びかけるホジェリコ。
 命令を受け、工兵部隊のトラックからパネル状の浮橋が滑り込むように水面へと落とされていく。
「准尉、あとどれくらいで架橋は可能だ?」
 工兵が水面に落とされた橋をつなぎ合わせるのを見ながらノゲイラが問う。
「4時間で完了です、渡河が終了すれば5時間で作戦領域に入ることができますから、パーティーには間に合いますよ」
「だと、いいがな」
 ホジェリコの言葉に素っ気無く答え、ノゲイラは煙草を咥えた。

 UPC南中央軍はバグア前線基地に対し、戦車部隊を中心とした攻撃作戦を開始。それに伴いノゲイラ部隊には別方面からの奇襲任務を命じられた。
 だが作戦を行うにあたり、障害となるのが基地への進路を横切る、この川。
 船で渡るには水深が浅く、かといって車両で渡河するには深く、川幅も広い。
 故に今回、工兵部隊による浮橋での架橋が行われていた。
 次々と川に流される浮橋とそれをつなぐ工兵たち。作業は順調に進む‥‥と思われていた。

「准尉、対岸には兵士を配置しているな?」
「はい、警戒のために歩兵1個小隊が展開していますが‥‥」
 双眼鏡で対岸を覗く上司の言葉に答えるホジェリコ、その顔に浮かぶのは疑問の表情。
「無線で呼びかけてみろ、全員やられている」
 上司の言葉に青くなるホジェリコ、あわてて無線手の所へ行こうとしたとき、川のほうから爆発音が響いた。
「工兵部隊より連絡です! 対岸より狙撃を受けています!」
 無線手が声を上げる。
「工兵部隊引き上げさせろ。准尉、各員に戦闘態勢を順達。それと無線手、大隊司令部にチャンネル開け」
 双眼鏡から目を離し、部下に指示を下すノゲイラ。その表情には焦りの色が見えた。
「ラストホープへの援軍が必要だとな」

「UPC南中央軍より、作戦支援の要請がありました」
 オペレーターは全員の顔を確認し、口を開いた。
「渡河作戦を行っているUPC南中央軍戦車中隊を足止めしている狙撃兵の排除をお願いします」
 そう言って端末を操作すると、画面に移るのはジャングルとそれを横切る大きな川。河岸の片方には戦車中隊の記号が記されている。
「現在、一個中隊及び工兵小隊が架橋を行おうとしていますが対岸からのフェーザーによる狙撃を受け、足止めされています。皆さんには上流から川を渡ってもらい、森に潜む狙撃兵を倒してもらいます。
 確認されている敵戦力は狙撃兵1名、フェーザー兵器を使用しており、おそらくは強化人間と思われます。ひょっとしたら他にもキメラが居るかもしれませんので注意してください」
 彼女の言葉に合わせて表示される矢印。そして敵の戦力(といっても殆ど不明ですが)
「なお制限時間は河川渡河後、約6時間以内。これ以上かけると敵の援軍が森のほうに来てしまい、現在行われている作戦が失敗となります。難しい作戦だと思いますがよろしくお願いします」
 硬い表情でそう言うと彼女は頭を下げた。

●解説

作戦目的:強化人間と思われる狙撃兵の排除

成功条件:狙撃兵の排除
失敗条件:作戦開始より6時間経過、及び全員の戦闘不能

敵戦力:狙撃兵(強化人間の可能性あり)、他キメラが居る可能性あり。
戦場:ジャングル内

注意:今回、普通に狙撃兵を捜索するには6時間かかります。プレイングで調査するにあたり何を気をつけるか等を記載するとより発見しやすくなるかもしれません。


●マスターより

こんにちは塩見です。
今回は狙撃兵とのバトルを用意しました。
敵には地の利と一撃力がある上に、皆さんと同じことを考えると思ってください。
OP、解説文を確認のうえ、依頼に望んでください。
あ、あと目立ったらかなり不利になると思います。


●参加者・プレイング一覧

比留間・トナリノ(ga1355)│16歳・♀・ス|
<事前準備>
現地の植物を身にまとい簡易のギリースーツを作成します。
また、顔に泥を塗り、なるたけ目立たないように努めましょう。

<捜索>
私は鴉さんと共に探索ですね。

狙撃後、スナイパーは反撃を恐れて場所を転々としていると思われるので、植物が折れている跡などを探しつつ、足跡がないか調べます。
移動は常に前かがみで行い、銃声が聞こえた場合はすぐに地面に伏せます。

他、相手のブービートラップを警戒します。
ワイヤーなどが木々の間にないか確認しつつ、気をつけて探索を行いたいですね。

他の班との連絡は無線で行いますが、音でこちらの位置がバレるとまずいので、なるたけ使用は控えるつもりです、

<狙撃>
クリスさん、神無月さんの二名が相手の狙撃を誘ってくれるそうですので、そこから相手の位置を探ります。
こちらの武器の射程まで隠密潜行で近づいた後は、鋭覚狙撃で狙いをすまし、アンチマテリアルライフルで貫通弾を放ちます。
「バグアは国際なんとか協定には加盟していないですからね…。何の遠慮も無く対物ライフルが使えます」

感慨も興奮もなく、敵スナイパーを排除後は静かに速やかに味方の陣地に戻ります。
「うっうー、ナイス・キル。です」

シア・エルミナール(ga2453)│17歳・♀・ス|
見えないところからの狙撃…それが必殺の威力を持っているとするならば、それは恐怖以外の何者でもない、か…

フィオナさんと同じ班で行動。
迷彩服にギリー服を用意しておきましょう。万事備えておかなければ…
ハットトリックに上手く引っかかってくれれば、探索も少しは楽になるはず…

探索は隠密潜行を使いつつ・樹上、足跡などの移動の痕跡を重点的に探す。後は対岸を確認しやすい場所ですね。高い樹と位置に注意しておきます。方角には注意しましょう。
それらしい跡を発見したら連絡し、注意して探索を続行。
狙撃手を発見したらペイント弾をまず撃ち込んで目印に。

その後相手が樹の上なら枝を狙い打って地面に引き釣り下ろしましょう。対峙できればフィオナさんと連携して逃がさないようにしながら応援が来るのを待ちながら戦います。主に鋭覚狙撃を使っていきましょう。おそらくはライフルタイプの武器だと思われますので、ある程度接近して戦うことにします。遮蔽物に隠れて移動しながら攻撃を加えていきましょう。

ポジションが取れたらまずは敵の銃を狙って撃ってみます。その後には二連撃で攻撃。ある程度の連力は温存の方向で。

同じ狙撃手として…その実力には敬意を払いますが…!

キメラ相手には二連撃で一気に叩いてしまいましょう。時間をかけると狙われてしまう恐れもありますからね。
もし先に発見した場合は隠れながら近くを観察。狙撃手がいるかもしれませんから。


水流 薫(ga8626)│15歳・♂・ス|
「前に狙撃手と撃ち合った時は肩甲骨の近くぶち抜かれた挙句間抜けなトラップにかかってぶっ飛んで、ね……。」 苦笑いで。

●準備
アラビアスカーフは砂漠でよくやっている覆面状に顔に巻く。
適当な保護色の布を3cm幅程に裂いて、8本程度を結び束にする。
それを安全ピン等で戦闘服に留める。
頭(スカーフ)から首にかけてや肩に多めに。
人の輪郭と解りにくく。
敵が温度等で索敵していそうなら泥を全身に。

武器にも布を多量に巻きつけ、スコープは反射しない様に自分のTシャツ等の薄めの布をレンズに被せる。
サプレッサー装着。

暗視スコープは必要なら使用。

●探索
「えぇっと、サルファさん、でしたっけ?改めて、宜しく御願いします、ね。」
同じ班予定のサルファ(ga9419)と相談し探索場所等は決めるつもり。

太陽で逆光になっている所を注意して探す、死体の倒れ方から方向の目安を付ける、という案を。
双眼鏡で広めの視野を取りつつ探索。
トラップやキメラにも注意しつつ焦らず、必要なら匍匐で進む。
罠、敵を発見したら無線で全班に連絡。

●戦闘
「ソ連製のアンティークの改造品だけど舐めるな、よ…。」
狙撃時は銃のバイポッドを展開して固定、左手はストックを右腋の下あたりで支える。
撃つ瞬間は、風の無い時を狙い、一時息を止めて。
距離が有り近寄れず撃てない場合はSESを切って射程を延ばし、敵の武器を破壊。

キメラが出たら基本は援護。近寄られたらストックで殴り距離をとる。

サルファ(ga9419)│22歳・♂・ダ|
依頼開始前に、撃たれた人あるいはその近くにいた人たちに話を聞けないだろうか?その時気づいたこととか…

得物…変形、展開する剣。今回はなるべく目立たないようにするべく、剣にも迷彩(?)加工を施している。持ち運びは固定せず、その時に一番目立たない持ち方で

依頼開始前…簡易ギリースーツ制作。顔等にも泥を塗ったり等、工夫を。(ただし、それに時間をかけすぎないように。
基本は二人一組で行動。自分は水流さんと。
基本行動は他の人の援護&スナイパーの護衛

もしもスナイパーに敵が接近していた場合、武器を展開し戦闘(他の人が同じ行動をしていた時はしない)。戦闘したら目立つだろうな。ある意味、囮みたいになるかもしれないけど――撃たれるかもしれないけど…。その時は他の人がなんとかしてくれるだろう。そう信じている
とりあえず撃たれる可能性があるということは常に心に留めておき、撃たれた場合は焦らずに解ったことを味方に伝える
照明銃を一応持ってきた。敵へ使用したり合図に使ったりしよう
全方位に気を配ろう。移動の際は皆どうするんだろう?匍匐前進か?とにかく、目立たず進もう。匍匐前進する必要があれば、する――まさか、キメラは地面から出てくる、なんてことはないよな?

※重体者には(出来るだけ)常に気を配ろう。

神無月 るな(ga9580)│17歳・♀・ス|
○目標
敵強化人間と思われる狙撃手の排除又は行動阻止

○心情
この大事な作戦前に負傷してしまうとわ…

○班編成
・水流 −サルファ
・比留間−鴉
・シア −フィオナ
・クリス−神無月

○作戦
ダミーによる攻撃誘導作戦
敵の居場所が判明したら全員で狙撃手を叩く

○行動
> 現地に到着後、迷彩服に周囲の植物を縫い込み即席のギリースーツを作製します。
準備ができ次第覚醒し「隠密潜行」で潜伏。
周囲の植物を揺らさない様に又移動音を極力減らし移動痕跡を残さないようにして移動。
(このときは迷彩服を装備しない。
理由:ギリースーツを着て動くと返って目立つ為。)

重体で余り錬力が無い為、短期で作戦を終わらせたい処です…
十分に敵との距離を縮めた後迷彩服を着用(動きが大きくなり目立つようなら羽織るだけで…)
ダミー動かし敵の狙撃を誘発し、敵のフェーザー銃の発射点を確実に見極める。
また、ダミーを動かす際は不自然に見えない様に細心の注意を持って行動。

今回は戦力になれそうに無いので他のメンバーの足を引っ張らないように心掛けます。

※捜索は樹上を重点的に行います。発見しても連絡を取り単独行動はしません。
※敵狙撃手と同じ位注意して敵キメラに見つから無い様にする。

鴉(gb0616)│20歳・♂・グ|
強化人間の可能性に少し興味が…
…とにかく、橋は架けさせて貰いましょう。

>準備
簡易ギリースーツを作成。泥を塗るなどのこともしておく
同時に蝉時雨の鞘に周辺の草と麻布を巻き、反射防止と一応のカモフラージュを施す
無線機にヘッドセットを接続、探索中両手を使えるように
極力時間を詰め、タイムロスを少なく心がける

■班分け
A:水流薫&サルファ
B:比留間・トナリノ&鴉
C:シア・エルミナール&フィオナ・シュトリエ
D:クリス・フレイシア&神無月るな

>動
各班と随時無線で連絡を取り合い、D班を素早くフォローできるように位置に配慮しながら探索
双眼鏡、方位磁石、時計など確認に使用する場合は影で取り扱い反射光を出さないこと
また罠への警戒、低姿勢移動、音を立てないよう注意

探索時は、兵の倒れ方などから粗方の目星をつけ行動に移る
植物が折れる、足跡などの移動の痕跡を探す
狙撃に向く樹上や高台などに警戒し目を向ける
ハットトリック、囮、相手の発砲音、射撃方向などから位置を探る

キメラは遭遇時に迎撃
音を控えるため主に蝉時雨で対応
急所突き使用し短時間で仕留める

敵狙撃手を発見した場合
比留間さんとコンタクトを取り真偽判別
その場で瞬天速後、比留間さんがペイント弾を撃つ場合は俺が照明銃で位置を知らせ、
彼女がペイント弾を撃たないなら俺がペイント弾を撃ち、同時に無線で各班に連絡
目を離さず必要時は追跡(深追いは禁物
隙あらば接近し攻撃か陽動に動く

フィオナ・シュトリエ(gb0790)│19歳・♀・エ|
[準備]
・部隊の人に話を聞いて、狙撃された時の状況等の確認を
・服及び武具に迷彩処理を施し、相手から発見されにくいようにする
「時間に余裕ないから、手早く済ませないとね」

[捜索・撃破]
・シア(ga2453)と組んで行動を
・他の班の位置は把握しておき、有事の際には援護に向かえるようにしておく
・盾に隠れつつ捜索していく感じで、音を立てたり目立つ動きをしないように周囲の木や草に注意
・木の上や高台になっている場所等、位置が高く身を隠しやすいポイントを重点的に捜索する
・足元や近辺にも注意し、狙撃兵やキメラの痕跡が残っていないか調べる
・自分が撃たれた時には、どこから撃たれたかを見て、方向だけでも判別させる
・捜索の際には探査の眼を使用して少しでも発見しやすくする
・キメラとの戦闘になった場合はイアリスで応戦。この時に狙撃兵から狙われないかにも注意してできるだけ物陰での戦闘を
・狙撃兵の居る大体の方向が分かっているなら、盾は常にそちらに向けておく
・他の班とは無線機で連絡を取り合う。声が大きくなりすぎないよう注意
・他の班が危なさそうな時はそちらに応援に向かう
・狙撃兵を発見したら盾に隠れつつ接近し、射程距離に入ったら剣を銃に持ち換えて銃撃戦を
・ダメージはロウ・ヒールで回復するが、錬力がギリギリの場合は探査の眼に回すのを優先
「狙撃兵を探して倒さないといけないとは、また難儀な事だね。頑張らないと」

クリス・フレイシア(gb2547)│22歳・♀・ス| …狙撃にのみ徹した任務か。
LHに来てからは無かった、エミタ適合前以来だ。

まず僕は、神無月さんとツーマンセルを組む。互いに重傷だから、大それた行動は出来ないが。

まず松葉をかじる。どんな些細な口の臭いも消す作用があってね。試してみるといい…
次はギリー服だ。迷彩服に草葉を縫い付け人としての輪郭を隠し、偽装を施す。
匍匐前進で、口にゲイルナイフをくわえ移動。1mに10分を掛ける程慎重に、自然の動き(葉の揺れ)に逆らわないよう動く。
敵のブービートラップに注意を払い、ゲイルナイフで無力化。罠に繋かっても悲鳴や無駄な動きはせず耐える。

罠の作成。
ハット(帽子の)トリックという手法だ。
迷彩服に草葉を詰め人の形を模したものに帽子を被せ、密林から帽子の先端のみ露出させ、迷彩服にワイヤーを引き揺らし『不自然な動き』で狙撃を誘い、弾道や入斜角度、発砲光や音、反動から位置を割り出す。
また、あえて逆光の位置に双眼鏡をおき、反射させ狙撃を誘う罠や、ブッシュから僅かな煙を上げる罠も。

獲物はライフル。重体の身の為SESを外し、射程を上げ、狙撃兵と観測手を捜す。
キメラなら隠密潜行から一撃で仕留め直ぐに身を隠す。ここは神無月さんと連携を

終了後、現場に折り紙で作った白い星を落としていこう。狙撃兵が現場に目印を残すのは、ありがちでね。相手への敬意と弔いと、酔狂だ(苦笑
僕の場合はコレ(ホワイトスター)


●リプレイ本文

●作戦限界時刻まであと6時間
 森の中を通る、泥色の川。
 その濁った川を今、8人の男女が渡っていた。
 8人は川を渡り終えると周囲を確認し、そして森の中に飛び込んだ。
「前に狙撃手と撃ち合った時は肩甲骨の近くぶち抜かれた挙句間抜けなトラップにかかってぶっ飛んで、ね‥‥」
 苦笑しつつ水流 薫(ga8626)は持っていたアラビアスカーフを顔に巻いた。手に持った武器にも布が巻きつけてある。
 その隣ではサルファ(ga9419)が顔に泥を塗り、周囲の植物より枝や葉をとり、ギリースーツを作成している。
 他の面々も同じように周囲の木々を使い、自らの身を目立たなくさせようとしていた。
「狙撃兵を探して倒さないといけないとは、また難儀な事だね。頑張らないと」
 フィオナ・シュトリエ(gb0790)が迷彩を施した盾を用意しながら言った言葉。それが彼女らの行動の理由であった。
 今回、彼らが倒すべき相手はここより下流の森に潜む狙撃兵。対岸に居るUPC南中央軍の戦車部隊を一人で足止めできる実力者。
 故に先に見つかると不利な展開に持ち込まれることが予想される。
 そう考えた傭兵たちは相談の末、現地にて迷彩を施すことを選んだ。
 また、クリス・フレイシア(gb2547)のように持参した迷彩服に草葉を詰め囮用の人形を作るものも居た。彼とコンビを組む、神無月 るな(ga9580)もそれを手伝っていたがその表情は暗い。
(「この大事な作戦前に負傷してしまうとは‥‥」)
 別の依頼で受けた負傷により、彼女は長時間の戦闘参加が厳しい状態となっていた。
 悔しさを隠す神無月、そんな彼女に同じように負傷しているクリスが松の葉を差し出す。
「どんな些細な口の臭いも消す作用があってね。試してみるといい‥‥」
 言われるがままに葉を噛む神無月、口の中に広がる味に顔をしかめるが、その目には強い意志の光が宿っていた。
 そして1時間が経過したころ、彼ら8人はバグアが潜む森へと潜入を開始した。

●作戦限界時刻まであと3時間47分
 深い緑の海を掻き分けるように比留間・トナリノ(ga1355)と鴉(gb0616)は森を進んでいた。
 腰を低くして、前かがみに歩くトナリノ。自らの背を上回る長さを持つアンチマテリアルライフルを器用に使い、巧妙に隠されたワイヤーを見つける。
 彼女らからそう遠くない位置ではクリスがナイフを咥えて匍匐前進し、罠を無力化させる。その後ろでは神無月がバックアップに回っている。
 足跡、枝の折れた形跡、樹上の異変。
 傭兵たちはこれらを中心に森の中を探索していった。
 フィオナのように探査の目を活かし、怪しいものを見つけようとする者や、敵に見つからないように隠密潜行を使う者、経験豊かな傭兵たちは徐々に捜索の範囲を広げていく。
「見えないところからの狙撃‥‥それが必殺の威力を持っているとするならば、それは恐怖以外の何者でもない、か‥‥」
 シア・エルミナール(ga2453)は樹上に敵が潜んでいないか、視線を巡らせながら一人呟いた。彼女自身も狙撃手として何か感じるものがあったかもしれない。
「そうだね、実際‥‥ストップ」
 傍にいたフィオナがシアのことを察し何かを話しかけようとしたが、突然、腕を出し彼女の動きを制すると、森の一方向を指す。
「‥‥キメラ」
 フィオナの指差した先に居る猿型キメラの姿を認めるとシアは無線機で連絡を取り、全員を集めた。
「一体だけ、ですね?」
「そうみたい、例のスナイパーも居ないようだし」
 トナリノの言葉に周囲を双眼鏡で確認した薫が答えた。
「なら、しとめてしまおうか?」
「うん、時間に余裕ないから、手早く済ませないとね」
 鴉の提案に頷くフィオナ、二人の手には接近戦を想定して刀が握られている。
「音は出したくない、接近戦で仕留めよう」
 そう言うとキメラの方へ向かう鴉とフィオナ、そしてサルファが後に続く。
 他のメンバーは三人を援護しやすいように静かに移動し、銃を構える。
 援護に回った人間の準備を確認する鴉、二人に頷くと一斉にキメラに向かって飛びかかった。
「!?」
 突然の襲撃に異形の猿は反応しきれず、断末魔の悲鳴を上げることなく息絶える。
「‥‥ふう」
 無事にキメラを倒し、安堵の息をつくサルファ。覚醒により現れた黒い闘気も幾分、落ち着きを見せる。
「サルファ、その闘気ってずっと出てたの?」
 彼の闘気に気づいたフィオナが思わず問いかける。
「ああ、覚醒状態だから‥‥」
 言いかけて自分の失策に気づき言葉を失うサルファ。しかし、自分が犯したミスを悔やむ前に彼の胸を一条の光線が貫く。
「!?」
 二人の目の前で特徴的なグリップを持った剣を取り落とすサルファ、拾おうと腕を伸ばすがそれも叶わず地面に倒れこむ。
「方向13時! 距離遠い!」
 ヘッドセットから聞こえるクリスの声。鴉は事態を把握すると指示された方向に走り出す。フィオナも盾を構え、それに続く。
「ソ連製のアンティークの改造品だけど舐めるな、よ‥‥」
 ブローンし、第二次大戦時の骨董品であるシモノフPTRS1941を改造した対戦車ライフルを構えながら呟く、薫。狙撃手のいる方向へと援護射撃を試みる。
 だがSESの使用を前提に調整された銃であるためにグルーピングは正確とは程遠い。
 他の仲間とともに二人の方へと走らざるを得なかった。
「どうですか?」
 先に走った二人に合流し、問いかけるは神無月。彼女の問いに鴉は首を振ろうとするが――
「大丈夫。足跡は無いけど、どこに行ったかは分かるよ」
 フィオナの探査の目はわずかにあった痕跡を見逃すことは無かった。

●作戦限界時刻まであと2時間27分
 二丁のS−01を両手に構え、トリガーを絞るシア。
 二つの銃口から吐き出される弾は目の前の肉食獣の肉をえぐり、命を絶つ。
「こちらブルースペード、こっちの敵は倒したわ」
「うっうー! ガンアンツよりブルースペード、神無月さんの方へキメラが向かっています、援護を!」
 無線から聞こえるトナリノの指示に走るシア、その先には神無月とクリスが猿型のキメラと対峙している。
 シアは二人に合流すると、キメラに向かって再び拳銃を二連射した。

 フィオナの見つけた痕跡を頼りに探索を再開し1時間強。
 傭兵たちは複数のキメラによる攻撃を受けていた。
 キメラそのものの強さは大したものではなかったがサルファを失ったことでスナイパー中心の彼らは不慣れな接近戦を強いられることとなった。
「これって足止めだよね」
 別方面からの攻撃を食い止めながらの鴉が言う。
 その後ろではトナリノがライフルを固定している。
「そうですね、だからとっとと倒してしまいましょう」
 答えながらもトリガーを絞り、一体、また一体とキメラを射殺する。
「了解、それにしても強化人間の可能性か‥‥興味あるな」
 蝉時雨を振るい、さらに一体のキメラの首を刎ねる鴉。
 しかし、すぐにまた複数のキメラが彼らに襲い掛かる。
「またか!」
 うんざりした口調で蝉時雨を構える鴉、だが次の瞬間その表情が凍りつく。
 キメラの間を縫って奔る光線。狙撃手が放ったと思われるフェーザーの一撃が刀を持つ腕を貫いた。
 痛みに耐え、射撃方向を辿る鴉。その先には――
「居た!」
 銃のようなものを構えた人間らしき姿。
 それを認めると残った片腕でクルメタルP−38を抜き、構える。
 だが鴉の引き金が指にかかるより速く、2本の光線が彼を貫いた。
 宙を舞うヘッドセット。
 描かれているクローバーマークがトナリノの視界を通り過ぎたときには、既に狙撃手の姿は見えなくなっていた。

●作戦限界時刻まであと1時間54分
 鴉を犠牲にしたもののキメラを全て片付けた傭兵達、彼らは再び探索を続けていた。
 先ほどの戦闘で思ったほど近寄りすぎたせいか、今回は移動の形跡を消すことが出来ず、彼らに大きなヒントを与えることになっていた。
 もちろん、罠の可能性もある。
 その為、彼らは慎重に痕跡を追っていた。
 やがて――
「‥‥怪しいですね」

 最初に見つけたのは薫だった。
 森が切れて、深めの草が生えている一帯。
 その中に生えている数本の木のうちの一本が何か違和感を感じさせるのだ。
 彼の言葉にフィオナも探査の目を使い、確認する。
「枝がそれっぽいよね」
「逆光でちょっと見えにくいのが残念だけど」
 木の向こう側にある太陽に顔をしかめながら呟くシア。
「なら、こっちから炙り出せばいいのよ」
 ダミー人形を持ち出し、迷彩服を羽織った神無月が言った。
「そうだな、やられた分はやり返そう」
「ならば、決まりですね」
 クリスの言葉を聞き、口を開くトナリノ。
 彼らの逆襲の時間が始まった

●作戦限界時刻まであと1時間42分 
 彼は待っていた。
 この森に入り込んだ人間を。
 幾ら優れた肉体を持っていても、見つからなければ問題なく倒すことが出来る。
 誰よりも遠くを見る目、遠くのものを聞く耳、そして誰にも見つからない肌。
 そして、戦車を破壊することが出来る大型のフェーザー銃。
 これがある限り、自分は負けることは無い。
 そう彼は考えていた。
 敵は多いけれど一人一人倒していけば良い。さっきのように。
 ほら、また敵が一人、頭を出している。
 彼はそう考えると草の中から出ている帽子に目掛けて光線を撃った。

 隠密潜行で深草の中を進む神無月の頭上を何かが通り過ぎた。
 視線を上げると、持っていたダミー人形の上半身が消えている。
 それを確認し、笑みを浮かべると彼女は無線に囁いた。
「神無月より全員へ‥‥当たりです」
 同時に銃声が鳴り響き、目標の木に張り付いていた狙撃手にペイント弾が打ち込まれた。
「人型キメラ!?」
 ペイント弾を撃ち込んだシアが思わず声を上げた。
 彼女が見たのは突き出た眼球と大きな耳、そして全身を爬虫類の鱗で覆われた男。
 キメラ化された人間――それが狙撃手の正体だった。
 ペイント弾を撃たれ、自らの身体を染められた狙撃手はすぐに銃口をシアの方に向けようとする、だがフィオナのS−01から発射される銃弾がそれを阻む。
 自らの状況を理解し木から飛び降りる狙撃手。姿を消そうとするがペイントまでは消すことが出来ない。
 身を屈め、必死に走る狙撃手。
 安全な場所に移動しようと走る彼の視野に光が飛び込む。
 即座に振り向き、フェーザー銃を撃つ狙撃手。
 だがフェーザーの光が捕らえたのは傭兵ではなく、双眼鏡。
「‥‥かかったな」
 自らが仕掛けたトラップに狙撃手が引っかかったのを確認するとクリスはライフルのトリガーを絞った。
 ライフリングとSESの力により破壊力を増した銃弾が狙撃手を貫く。
 さらに複数の銃弾が狙撃手を襲う。
「バグアは国際なんとか協定には加盟していないですからね‥‥。何の遠慮も無く対物ライフルが使えます」
 鋭覚狙撃でキメラをターゲティングしトナリノは貫通弾を発射する。照準のようなものが浮かぶその瞳には許容も慈悲もない。
 薫もそれに続いてシモノフPTRS1941で射撃する。
「同じ狙撃手として‥‥その実力には敬意を払いますが‥‥!」
 シアとフィオナのS−01がさらにキメラの身体に穴を穿つ。
 マガジンを抜き、レバーを引いて遊底を開放するトナリノ。
 最後の貫通弾を廃莢口から薬室に装填するともう一度鋭覚狙撃を発動させ、指に力を込めた。
「うっうー、ナイス・キル。です」
 狙撃手が倒れるのを確認すると彼女は感慨なく呟いた。

●作戦限界時刻まであと1時間02分
「こちら工兵部隊! 架橋完了しました」
「よし、全車前進! 急がないとパーティーに遅刻するぞ!」
 ノゲイラ大尉の号令一下、戦車中隊は浮橋を渡っていく。
 揺れの大きい橋を一台、また一台と渡っていく。
「大尉、全車両渡河終了しました!」
 ホジェリコ准尉の言葉に頷くノゲイラ。
 彼は自分が乗車する戦車から身体を出すと、対岸に居た8人に視線を向けた。
「すまない、おかげで助かった。作戦行動時間が迫っているので車上から失礼するが、何かあったら言ってくれ。俺達でよかったら必ず助けに来る」
 謝辞を述べるノゲイラ。
 彼の言葉が終わると全車両のキューポラから兵士が身を乗り出した。
「全員、ラストホープの傭兵に向かって敬れーい!」
 傭兵達に向けられる敬礼。
 それには命を賭して戦う戦士達の敬意が込められていた。 



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