銃の構造自体は、設計者のキャサリン=ペレー女史の言葉を借りれば「かなり単純」なのだそうだが……。
 『アクティブ・スラスター』なる特殊能力も見逃せない。
 これは可動式スラスターとしてソルダードの外見的特徴となるものだが、その原理も開発者のフィリップ=アベル博士によると「単純」なのだそうである。
 そしてこの「単純さ」が、ソルダードの生産性・整備性・信頼性という三要素を大いに高めることにつながった。
 懐事情の厳しい南中央軍にとってこれは願ってもないことであり、「既に相当数の発注が行われている(事情通)」とのことだ。
 また、復興間もないボリビアにおいて、同機の特別仕様機を用いた特殊部隊が設立される、との情報もあり、一説には「ミカエル・リア国王を(名目上の)リーダーとする近衛部隊では(事情通)」ともいわれている。
 なお、この計画の裏で、ドロームの横槍を封じるべく両社間で様々な取引があったとまことしやかに囁かれているが、サイファーの経緯を知る者ならばそれも納得であろう。

ボリビア王国特殊部隊

 ソルダードの発売に先んじて、本紙記者は、その特別仕様機の主な売り込み先と見られている南米の内陸国家、ボリビアへと飛んだ。
 まず我々を驚かせたのは、『ボリビア防衛作戦』にて戦禍を被った首都・スクレにおける目覚ましい復興の様子である。
 整備修繕された街を行き交う人々の表情は晴れやかで、道路沿いのスタンドに並ぶ新聞には、国外の記事も多く掲載されている。商店の棚には、国産だけでなく、様々な外国製品が同じく並んでいた。

ソルダードの背面図。変形機構から独立したエンジンは非常にシンプルである。
 UPC加盟により諸外国との国交が回復し、外国製品が格段に手に入り易くなったのだという。国内企業が利益を損なうとの声もあるが、取材に応じた近所の主婦たちはこの問題について、「中立時代も悪くは無かったけれど、とにかく物とお金が無いのが辛かったのよ」「今は欲しい物がすぐに手に入るし、働き口も増えたわ」「国内企業も、外国と競争した方が、よっぽど良い物を作ってくれるでしょ」とのコメントを寄せている。
 国情の変化を受け入れ逞しく生きる彼女らボリビア国民に、本紙記者が心からのエールを送った一場面であった。

 続いて我々は、噂の『特殊部隊』の情報を掴むため、政治と経済の中心都市・ラパスを訪れた。
 匿名を条件に情報提供を了承したメルス・メスの営業社員は、白い帽子とスーツの襟を整えながら、ソルダード特別仕様機による特殊部隊編成の噂について、以下のように語った。
「特殊部隊の編成の情報は確かなもので、既にそれ専用の特別仕様機の配備も完了している。国王様の近衛部隊って話だが、年中ボリビアに張り付いているわけじゃない。【JTFM】なんかの戦場にも、ボリビアは軍を派遣しているからね。特殊部隊の活躍の場は、情勢次第ってところさ」
 彼の話では、兵器の現代化と能力者の発掘が進むボリビアではKVが不足し、ソルダードの配備にはかなりの期待が寄せられているという。特別仕様機に関しては、UPCボリビア軍に所属する能力者のうち、旧ボリビア国軍出身など、指揮官となるべき経験・階級を持つ者達に優先的に貸与される。そして、その中でも選りすぐりの精鋭たちで編成される特別仕様機のみの部隊が、噂の『特殊部隊』なのだという。
 急速な現代化と再編の進むボリビア軍に、ソルダードの導入がどれ程の戦力強化をもたらすか。今後の彼らの活躍に期待したい。



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