G-100ハヤテ
●G-43ハヤブサの後継機計画
 銀河重工が始めて開発した宇宙用KVであるG-100ハヤテは、細々とした予算で継続されていたG-43ハヤブサの後継機計画のを接収してプロジェクトが進められたものである。
 ハヤブサ後継機計画は文字通りにハヤブサの特徴を受け継いだ新型機の開発を企図したものであったが、運動性特化という点で奉天のH-223B骸龍ほどの割り切りは難しく、バランスの取れたGFA-01シラヌイの多大な成功によって、その存在感は非常に小さいものであった。
 宇宙機開発が現実的なものとなってくると専属の開発チームが必要となったが、同時期にXGSS-03Aシコンの開発が重なっていたこともあり、目をつけられたのがハヤブサ後継機計画である。
 ハヤブサ後継機計画はまるごと宇宙機開発計画に接収され、G-100ハヤテとしての開発が進んでいくこととなる。

●未来科学研究所の「宇宙戦闘機理論」
 研究されていたハヤブサ後継機がそのままでは宇宙用KVにはならない為、ハヤテのフォーマットには未来科学研究所による「宇宙戦闘機理論」を採用している。
 「宇宙戦闘機理論」は宇宙船として必要な機能を漏れなく網羅したものであるが、あくまで基礎設計だけの理論であり、兵装をはじめとするKVとしての機能は付与されていない骨格のようなもので、KVとしての完成形は各メガコーポレーションの個性が大きく出るものとなっている。
 同じ理論を採用したS-02、ラスヴィエート、ハヤテが変型構造などを同一しながらも、それぞれに大きく異なった印象を与えるのはその為である。
 ハヤブサ後継機の為に培われた技術は、この肉付け部分に惜しみなく投入されている。

 「宇宙戦闘機理論」は堅実な「戦闘が出来る宇宙船」を作るものであり、宇宙へ出る前に開発された宇宙用KVであるが故にやや保守的な傾向が見られるものとなっている。
 しかし、宇宙での実戦を潜り抜けたUPC軍、傭兵の戦訓によって、今後の宇宙用KV開発はより自由な形になっていくことが予想される。
 宇宙船としての安定性をギリギリまで削る見極めができるようになれば、より戦闘兵器に比重を置いた宇宙用KVが開発されることだろう。
 現在は宇宙船としての安全マージンが大き目にとられている状況である。

●ハヤブサの後継機として
 ハヤテはハヤブサ後継機計画を接収したという経緯がある為か、ハヤブサの後継機という触れ込みもある。
 しかし、ハヤブサの「翼面超伝導流体摩擦装置」のような突き抜けた運動性強化の特殊能力を持っていない。
 宇宙での戦闘を考慮した特殊能力は、カートリッジを使用する「超伝導 AEC Type.C」、使い捨てロケットブースターを使用する「CRブースター」、ストライク・アクセラレータの消費練力を控え目にした「アサルト・アクセラレータ」である。
 移動力、抵抗力、攻撃力、知覚力を強化するこれらの特殊能力を、あわせて考えると高速度で敵に接近して、敵の攻撃を耐えくぐり、敵に痛烈な一撃を加える一撃離脱的なコンセプトが見えてくる。
 戦闘時間を大きく制限される宇宙という戦場において、敵と追いつ追われつを繰り返すドッグファイトよりも一撃離脱のほうが効率が良いという目論みであるようだ。
 その意味ではハヤテのコンセプトは、必ずしもドッグファイターであったハヤブサに似ているものではない。
 古くからのハヤブサ乗りの中からは「いざというときに敵弾を回避できない気がする」や「お行儀のいい機体。宇宙でも使える翼面超電導の代用品を載せて欲しい」 などの不評を投じる旨もあり、ハヤブサ後継機というにはハヤブサから遠い感は否めない状況だ。
 軽戦闘機ハヤブサが、重戦闘機ハヤテになったという具合である。
 しかし、特殊能力に頼らずともハヤテの運動性は非常に高いものであり、「その気になればドッグファイトも可能な一撃離脱機」とされている。

●SES強化型イオンエンジン
 KVに限らず、宇宙機用のエンジンとして開発されていたエンジンの一種。
 単にイオンエンジンと言っても問題はないが、元々のイオンエンジンの用途とはかなり様相が異なる為、特にSES強化型イオンエンジンとも呼ばれる。
 電気推進の一つで、イオンの持つ電荷を利用して加速するロケットエンジン。イオン推進、イオンロケット、イオンスラスタなどともいう。
 イオンエンジンは非常に高い比推力を持つものの推進密度が低い為、SES開発以前には人工衛星の軌道制御や小惑星探査機の飛行などの用途で使われることが想定されていた「細く長く加速するエンジン」であった。
 しかし、SES開発による推進密度の強化、メトロニウム合金などの新素材の使用などによって、戦闘機動が可能なレベルの強力なエンジンに生まれ変わっている。その推力は大気圏内でも戦闘運用が可能なレベルとなっている。
 比推力が高いことは燃料の相対的な量を減らして、軽量化することにも一役買っている。
 とはいえ、同じレベルであれば他のエンジンに比べれば瞬間的な加速力は相対的に見劣りする為、「彗星ロケット」などはそれを補うものである。
 十分な推力密度を得る為には継続的なSES出力コントロールが必要であるので、エミタを装着している能力者の登場が前提となる。

 このイオンエンジン搭載戦闘機であるハヤテの実用化は、一部のアメリカ人は「日本人はアレを現実のものにしてしまった!」という叫びをあげたという。
 まあ、ハヤテがバグア本星を守る側には回ることはないので安心してほしい。