F-196 スカイセイバー
●概要
 ともすればF-201A『フェニックス』の廉価版と考えられてしまうF-196『スカイセイバー』であるが、実際には初めて設計段階から空中変形を前提とした設計された中型特殊作戦機であり、兵器としての完成度や信頼性では『フェニックス』を上回るとされる。
 しかも、その開発は『フェニックス』を送り出したドローム社の第3KV開発室ではなく、『フェニックス』のライバルであったYF-194『スカイタイガー』を設計した第2KV開発室という何かと因縁の多い機体である。

●第2KV開発室の不遇
 これまでドローム社のKV開発において確固たる実績を持つ第2KV開発室ではあるが、ここ1年程の間は社内で鳴かず飛ばずの状況が続いていた。
 きっかけは1年前に行われた社内コンペ。同開発室がユニバーサルナイト2番艦の艦載機として主設計を担当したYF-194『スカイタイガー』が、第3KV開発室のYF-201『フェニックス』に敗北し、社の次期フラグシップ機の座を奪われたのだ。
 2室はさらに、ULT主催で行われたNMV計画に際して、YF-194を低コスト化・攻撃特化機として再設計したYF-194Bを送り出したが、これも銀河重工の『シラヌイ』に敗北。ドローム社内における2室の権威は一気に失墜した。以降、2室はKVの主設計から外れ、それまで3室が担当していたような『場末の仕事』──他の開発室の設計した機体の検証・改良や、各種機材を搭載する実験機の為の再設計等、地味な仕事に掛かりきりとなる羽目に陥った。社内ではCOPKV計画など新たな企画が立ち上がったが、それに2室が関わる事もなかった。

「俺たちの作った機体が他社の‥‥他開発室のそれに性能的に劣っていたわけではない」

●復活の2室
 臥薪嘗胆の年を抱き続けた2室の技術者たちに新たな転機が訪れたのは2010年に入ってからだった。北中央軍の特殊部隊、および海兵隊が発注した中型で信頼性の高い特殊作戦機──その社内コンペが開かれたのだ。
 『フェニックス』の『空中変形スタビライザー』、その改良案の一つを担当していた2室は、その改良案の一つを元に新型空中変形システム『エアロダンサー』を作り上げ、機体案の一つとして提出した。名目上は、YF-194の改良型の一つとして。しかし、実質的には殆ど新規設計の機体と呼べる程の技術と労力がそこに注ぎ込まれていた。
 YF-194譲りの高い信頼性と整備性、非常に高い攻撃力。そこに潜在的な攻撃力を高める空中変形。海兵隊や特殊部隊が求めた外地での攻撃的な任務を担う特殊作戦機に相応しい資質を備えていた。
 第2KV開発室の技術と実績は失われてなどいなかった。圧倒的な実力でコンペを突破、正式採用を決めたYF-196は、その完成度の高さから傭兵向けに販売される事も決まった。第3KV開発室が『フェニックス』の主機たる『SES-200』エンジンの改良に手間取る中、それを抑えて『第2の空中変形機』を完成させたのだ。‥‥まさに、2室の技術力の面目躍如と言った所だった。

●スカイタイガーの血
 なお、本機はF-201よりも新しい最新鋭機であるが、2室長のエルブン・ギュンターは「これはあくまで『スカイタイガー』の改良機である」と主張し、200番台の形式番号を辞退。営業部の反対を押し切り、試作機にあてがわれていた190番台の形式番号をそのままスライドさせている。そこには『スカイタイガー』という機体に対する開発者たちの愛情と‥‥なにより、自分たちの技術に対する技術者の意地のようなものが垣間見える。