DE-011 ワイズマン
●概要
 ドローム社が開発したAEW&C型の電子支援型ナイトフォーゲル。
 AEW&Cは「Airborne Early Warning & Control」の略で、「早期空中警戒、および管制」という意味である。
 似た言葉としてAWACS(airborne warning and control system=早期警戒管制システム)が存在するが、両者の明確な差異は存在しない。ただ、一般的に処理能力の大きな機体がAWACS、相対的に処理能力の低い機体がAEW&Cと呼ばれる場合が多い。
 DE-011の場合には、単座型の機体である為、その管制能力が相対的に低いという点でAEW&Cに分類されている。
 前線での管制を行うという点で、FAC(Front Air Control=前線航空管制)に近いという指摘もある。

 機体構成がメルス・メス社製のリンクスによく似ている機体となっているが、これはドローム社がリンクスへの開発協力の見返りとして共通フレームを使用しているからである。

 搭載されている「タクティカル・プレディレクション」は、管制官の不在を補う為の自動化されたシステムである。
 他の機体特殊能力と同様に効果そのものに使用者の能力に依存する点はないが、使用タイミングの判断はパイロットの戦闘センスや味方との連携を試されるものである。

 高出力・高利得通信機である「ハイ・コミュニケーター」は、それそのものには自機や味方機を直接的に強化する機能は備わっていない。しかし、通信が戦場において重要なファクターであることは事実であり、活かすも活かせぬも能力者の創意工夫次第というものである。
 シラヌイS・甲型以降に注目されている「C4I」の一種である。

●「水空両用撮影演算システム」との違い
 ワイズマンの「タクティカル・プレディレクション」は、ナイトフォーゲルXS-09Aオロチの「水空両用撮影演算システム」と似ている。
 「情報取得によって味方機を支援する」という点では似ているが、両者の在り方は大きく違っている。
 水空両用撮影演算システムが直接的に敵の動きを追いかけた情報から味方への支援情報を演算しているのに対して、タクティカル・プレディレクションは敵味方を含めた戦場全体の情報から演算予測している。
 この違いは両者の効果範囲や使用条件に大きく関わっており、敵にスポットをあてた水空両用撮影演算システムは敵中に突入しなければならないという条件の代わりに、対象敵機を射程に収めている味方機全てに対して支援効果を発揮する。敵と味方の両方を演算対象としているタクティカル・プレディレクションは敵機に接近する必要はないが、演算対象の増加によって支援可能な味方機が限定されるのである。

●能力者管制官という可能性
 DE-011には、さらに支援能力を強化した発展型の研究が行われている。
 簡易補助シートではなく、管制要員(RIO、WSOなど)を配した複座型支援KVという可能性である。
 具体的には二つの案が検討・研究対象となっている。
 第1案は、後席に情報収集、情報解析、指揮管制に関するインタフェースを後席にまとめて、専属の管制官を置くというものがある。
 これによって、コクピットの簡略化や視界確保、そもそもの役割分担による負担軽減などによって、自衛能力も含めた戦闘能力の向上も機体できるとされている。
 第1案は音声や入力データのリンクによる指揮管制であり、その能力は戦術級のものとなると思われる。
 戦闘中における瞬間的な判断などは音声やデータ入力では間に合うものではなく、その指揮管制は味方機の直接的な戦闘能力の向上に繋がるものではない。
 F-15EなどのWSO座席を移植したコクピットに改修した概念実証機などが作成されている。
 ただし、戦術級の指揮管制であれば、通常のAWACSでも十分な役割を果たせることもあり、こうした機種を今後どのように運用していくのか、人員の確保なども含めての研究課題となっている。
 余談であるが、現在のワイズマンの簡易補助シートにはインターフェースの類は存在しない為、仮に補助シートの搭乗者が収集された情報を見ようとした場合、パイロット越しにのぞきこむ必要がある。それがどれほど危険な行為であるかは説明の必要もないだろう。

 第2案としては、エミタとダイレクトリンクした情報システムを作り出すことで、瞬間的な判断を要する戦闘級の指揮管制が可能とするものである。これは戦闘において、味方機の直接的な戦闘能力の向上に繋がるものである。
 ただし、これは既存の「タクティカル・プレディレクション」で代替できるものであり、そもそもが前衛に立って戦闘をメインとするものではないワイズマンに若干の戦闘能力向上をもたらす為に貴重な能力者を二人使うことは不合理であるとされている。
 第1案を内包するシステムとなるであろう為、第1案が採用された上でさらなる性能追求の手段として検討されるべき項目であると言える。

 今のところ、いずれも研究段階の代物であり、実用化の目途は立っていない。